電脳世界から生まれた18歳女性アーティスト「DAOKO」【前編】- 素顔

2015.04.13 10:30

多くの人が一度は憧れたことであろう、歌手や音楽業界。ひと昔前であればストリートライブで実力を買われデビューなんて話も聞いていたが、今やその場は、YouTubeやニコニコ動画に代表されるネット動画へと変わってきた。最近では「ジャスティン・ビーバー」や「Goose house」もその一例であろう。そしてまた一人、新たなスターが生まれている。それが「DAOKO(だをこ)」である。15歳の時のニコニコ動画配信から始まり、映画「乾き。」にも楽曲が使われ、先日3月高校卒業と同時にメジャーデビューも果たした。そんな注目を集める彼女が辿った軌跡とは?SENSORSブルー・岩本アナが取材してきた。

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渋谷で行われたメジャーデビューライブ

■ ラップのイメージを変える、透明な囁く声と世界観

先日、渋谷の「WWW」にてDAOKO氏のメジャーデビューライブが行われた。会場はもちろん満員。DAOKO氏と親交のあるアーティストも出演し、一緒にメジャーデビューを祝った。

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DAOKO氏が歌う際には、前方にスクリーンがかけられ、歌詞やモーショングラフィックスが投影された。

DAOKO氏は15歳の時にニコニコ動画へ投稿した楽曲で注目を集め、2012年に 1st Album『HYPER GIRL- 向こう側の女の子 -』発売。その後、m-floとのコラボや、中島哲也監督 映画「渇き。」では「Fog」が挿入歌に抜擢され、また、「日本アニメ(ーター)見本市」(公式サイト http://animatorexpo.com/)の第3弾作品「ME!ME!ME!」の音楽を担当し世界的にも注目されるなど、高校生とは思えない活躍を見せてきた。

「ネットが生んだ18歳のラッパー少女。」
この表現は正しいと言えば正しいが、DAOKO氏のイメージを掴みきれない。それくらい、従来のラップのイメージを覆す世界観であるからだ。

インターネットのベールに包まれ、ミステリアスな彼女はいかにしてアーティストとなったのか。

■ 音楽は「動画サイト」で出会う時代。ニコニコ動画が与えたきっかけ

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DAOKO氏

-- 音楽を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

DAOKO:
もともと音楽は好きで、特に椎名林檎さんが好きでした。中学生の時オタクで、ニコニコ動画を観てたらラップに出会って、女性でやってる人も少なかったし、色んなラップを聴いているうちにやってみたくなって始めました。思い立ったらすぐにやってしまうタイプなんです。

-- ネットから出てきたということがすごく"今っぽい"ですよね。小さい頃からインターネットに囲まれた生活だったんのでしょうか?

DAOKO:
そうですね、パソコンもあったし、iPhoneも中学1年生の時には持っていて、YouTubeとかも身近にあったりしたので、それが当たり前でした。逆にインターネットが無かったら、こうやって音楽の世界に踏み出すことも無かったと思います。

-- 曲作りはもともとできたのでしょうか?

DAOKO:
楽器ができるわけではないので、実は楽譜も読めません。感覚的にというか、鼻歌でメロディーラインを作ったり、ラップに関しても、書いてみて、当てはめて、削って、足して。普段は、トラックメイカーさんに曲を提供して頂いてます。今は音楽の世界に深く填っていますが、最初は「とりあえず、やってみよう!」から入ったし、作り手になるとも思ってなかったんです。奇想天外というか、ご縁ですよね。

DAOKO氏は15歳の時にニコニコ動画へ投稿した楽曲で注目を集めたことをキッカケに、その年 1st Album『HYPER GIRL- 向こう側の女の子 -』発売している。
昔はウォークマンやテレビで聴いていた音楽も、今やスマホでは「動画アプリ」で音楽を聴く人が56%となっている。現代の人にとって動画サイトは、"音楽と出会う場"でもあり、"自分をつくる場"でもあるのだろう。

■ 曲作りによって、満たされる

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左 岩本アナ 右 DAOKO氏

-- 曲作りする時は、どういう気持ちで作っているんでしょうか?

DAOKO:
とにかく気持ち良くなりたくて作ってるように思います。うまくメロディが浮かんだり、落とし込めたりしたときに感じる快感があって。だから、本能的な曲作りだなと思います。

-- 有名になりたいなどとは考えていなかったんですか?

DAOKO:
自分に自信がないから、「スターになってやる!」とは思えなかったんですが、他人に認められたい欲求はありました。音楽以外にも絵を書くことが趣味で、褒められたりするのが嬉しくてやっていた部分が大きいんです。誰かに承認されることで、「楽しい」という気持ちになれる。私自身はもともとネガティヴな部分が大きいので、それを頑張ってポジティブに持っていく作業が音楽であったり、自己表現活動なんだなと、最近気がつきました。

-- 表現活動によって満たされている?

DAOKO:
すごく満たされています。表現することによって穴を埋められている。でも、満足するのは一時的ですぐ穴があいちゃうので、空くたびに作品を作って、皆さんに聞いて頂いて、心の穴を埋めているような感覚なんです。だから逆の見方をすると、ずっと表現していけるなとも思っています。

-- ネットの世界から出て、メジャーデビューをされて、より人と関わるようになったと思うのですが、何か変化はありましたか?

DAOKO:
たしかに多くの人と関わるようになったので、出会う人によって生まれる刺激があります。アルバム「DAOKO」のタイトルとかテーマには、プロデューサーのアイデアが詰まっていて、そこから私が連想ゲームみたいに作るのは面白いです。ただ、曲作りは結局自分自身との戦いだと思います。

-- それは、どんな戦い?

DAOKO:
自分が納得することへの努力です。楽しんでやっていますが、自分の気持ちの良いところに至るまで作り上げるというのは「戦い」ですね。

-- 歌詞を書いている時はどんな気持ちなんですか?

DAOKO:
没入型というか、作品を書いてる時は作品モードに入るから、あまり作詞中のことは覚えていないんです。あとで作品を見返したら、「こういう気持ちだったんだ」みたいに思うことも多々あります。私生活であった嫌なことを書くこともあって、もちろん、より人に聞いてもらうために脚色したりもするので全て事実が書かれているわけではないのですが、その時の気持ちをそのまま綴ることによって色々忘れることができたり、穴埋めすることが出来ているんだなって思います。

-- 日記のような存在ですね。

DAOKO:
そうですね。15歳の時の1stアルバムの歌詞を見ると、色々思い出します。その時の自分の全てとして反映されていて、また一年ずつ変わっていってるから記録としても作品に残るのは貴重なことだと思います。今回のメジャー1stアルバム「DAOKO」も、今DAOKOはこういう人なんだ、というのが分かると思います。

■ ネットは、電脳の世界を行き来するお手紙

-- 小さい時からネットが身近にあったわけですが、SNSやネットが怖いと思ったことはないんですか?

DAOKO:
ありますね。インターネットは、もう一つの社会だと思っています。でも現実世界とのギャップがあるので、インターネット社会だけに頭を置いてしまうとズレてしまう。インターネットが全てだった時期もありましたが、今は音楽の比率も増えてきて、プロモーション媒体でもあるし、結局コミュニケーションのツールとして使うのが最大限正しいのかな、と。そこにあまり精神を置かないようにしています。

-- 難しい距離感だけど、支えられている存在?

DAOKO:
そうですね。最近海外からの反響もありますが、それもネットがあっての話。私の代わりに、世界中を行き来するお手紙みたいな存在です。実際に私が行けたらもっといいんですけどね。世界中のファンの方の意見も聞けるし、先走らない予防策にもなっています。

■ 音楽は「精神的な血液」

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-- DAOKOさんにとって、音楽とはどんな存在ですか?

DAOKO:
レーベルのオーナーからの受け売りですが、「血液」のようなものです。いろんな人を巡って、最後に自分に返ってきて流れる。それも、生物的なものではなく、精神的な血液なんだと思います。

-- これからつくる作品はどうなっていくと思いますか?

DAOKO:
脳みそが足りていないのか、目の前のことしかできないタイプなので、未来のことは全く想像つかないんです。大雑把な目標はありますが、とりあえず今はやれることを全力でやります。
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産みの苦しみと喜びの虜になるDAOKO氏。高校生の時から注目を浴びながらも、冷静に見つめ、ひたむきに音楽活動に向き合うその姿は素敵であった。

[ DAOKO(だをこ) プロフィール ]
1997年生まれ、東京都出身。
15歳の時にニコニコ動画へ投稿した楽曲で注目を集め、2012年に 1st Album『HYPER GIRL- 向こう側の女の子 -』発売。ポエトリー・リーディング、美しいコーラス・ワーク、ラップを絶妙なバランスで織り交ぜ、他にはない独特の歌詞をみずから紡ぎだす。インターネットというベールに包まれ活動するミステリアスな彼女の存在はたちまち高感度のクリエイターを中心に広がり、わずか16歳にして、m-floに見出され2013年に m-flo + daoko による楽曲『IRONY』が映画「鷹の爪~美しきエリエール消臭プラス~」の主題歌に起用。さらに、中島哲也監督の目に止まり、2014年公開映画「渇き。」では「Fog」が挿入歌に抜擢される。同年、庵野秀明監督が率いる短編映像シリーズ「日本アニメ(ーター)見本市」(公式サイト http://animatorexpo.com/)の第3弾作品「ME!ME!ME!」の音楽を、TeddyLoid と担当。世界各国から大きな注目を浴びることになった。 その後、2015年3月17歳女子高生にしてTOY'S FACTORYから『DAOKO』にてメジャーデビュー。



(SENSORS編集部 文:小林智久)


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