ジェイ・コウガミに聞く、2016年総括と2017年展望「21世紀のデジタル音楽ビジネス」

2016.12.14 09:00

SENSORSメンバーおよび今年SENSORSが取材したトップランナーに聞く『2016年総括、2017年展望』。 第五弾はデジタル音楽ジャーナリスト ジェイ・コウガミ氏にインタビュー。

テクノロジー&エンターテインメント業界のトップランナー達が時代をどのようにとらえ、未来に向かうのか?『2016年総括、2017年展望』シリーズ第五弾はデジタル音楽ジャーナリスト ジェイ・コウガミ氏に伺う。

SENSORS『2016年総括、2017年展望』シリーズ
【第一弾】チームラボ猪子寿之「体験型アートの可能性」
【第二弾】NewsPicks佐々木紀彦「日本3.0」「境界線を超えられる人の価値」
【第三弾】ライゾマ真鍋大度「リオ五輪」「人工知能×クリエイティブ」
【第四弾】PARTY中村洋基「スタートアップ×クリエイティブ」
【第五弾】ジェイ・コウガミ「21世紀のデジタル音楽ビジネス」
【第六弾】LINE谷口マサト「バズるコンテンツの方程式」
【第七弾】Mistletoe孫泰蔵「コミュニティ型スタートアップ」「防災テック」
【第八弾】バスキュール朴正義「データ×エンターテインメント」
【第九弾】コルク佐渡島庸平「"言語の壁"を超える熱狂」
【第十弾】落合陽一「幽体の向こうへ」
(※当シリーズは各位に固定質問+1に答えてもらうメールベースの取材である)

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--2016年、一番印象に残った出来事を教えてください。

ジェイ:
日本のデジタル音楽ビジネスでは、「Spotify上陸」は歴史的な出来事でした。場所と時間に制限されずに音楽が聴ける「アクセス」モデルのスタイルを浸透させる可能性を秘めている意味で、すごいパラダイムシフトに立ち会っている感じがします。そしてコンテンツと人の関係において、Spotifyは定額制やキュレーション、参加型プレイリスト、徹底的なパーソナリゼーションなどイノベイティブな考え方を持ち込み、日常的なリスニング体験をより引き出してくれると思います。まだ聴かれていないクリエイターが発掘される機会も増えるはずですし。
テクノロジーの力を借りた音楽サービスの中でも、クリエイターとリスナーの両方を追求したSpotifyは、21世紀を象徴する音楽チャンネルだと感じます。

--2017年、注目すべき人、テクノロジー領域、サービス・ビジネスを教えてください。

ジェイ:
「ストリーミング世代」のクリエイターや起業家に注目しています。SpotifyやApple Music、NetflixやTwitchなどインフラによって、音楽や動画のビジネスや表現に変化が現れています。すでにBoilerroomMusical.ly、クリエイターではKygoなどはストリーミング世代を代表する存在として成功を収めています。今後、世界ではWeb2.0以降に登場したビジネスやサービス、クリエイターさらにはフェスが、無視できない存在になるでしょう。彼らが作るデジタル音楽時代の新しい価値観やルールにも注目しています。

--「2017年の抱負」を教えてください。

ジェイ:
デジタル音楽の分野で活動するクリエイターやビジネスパーソン、テクノロジストの方々の声を、より多くの人に伝える手伝いができればと思っています。
成功のレベルや年齢、役職に関係なく、革新的で意欲的な人のアイデアには、異業種の人のコラボレーションや、イノベーションが生まれる可能性の連鎖があると感じます。デジタル音楽で尖った人たちに刺激されて、新しい世代が枠組みを越えてデジタル音楽のクリエイティブに参加してくれて異分野が繋がればと、強く思います。
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デジタル音楽ジャーナリスト ジェイ・コウガミ氏(最左)に2016年総括と2017年の展望を伺った。写真は「定額制音楽配信サービスの出現で、音楽はどのように聴かれるのか〜小室哲哉/ユニバーサル ミュージック/AWA/ジェイ・コウガミ が語る音楽業界の未来」より。

--音楽史を語る上で「2016年」はどのような1年として語られることになると思いますか?

ジェイ:
2016年は、音楽史上、初めてデジタル中心の音楽産業が誕生し、第一歩を踏み出した年です。特に定額制音楽配信が世界に浸透し始めビジネスやアーティストの選択肢が拡大したことからも、音楽とテクノロジーによる価値創造の新時代が始まったと思っています。

--最後に、今手がけているプロジェクトについて教えてください。

ジェイ:
最近は来日する世界の音楽業界のキーパーソンやクリエイター、テクノロジストへの取材や企画に携わることが増えています。 僕の活動では、「世界のデジタル音楽トレンドを日本に伝えること」が大きいので、まだチャレンジするべきことは沢山ありますし、ジャーナリストとして大手メディアでは取り上げないデジタル音楽のトピックを今後も積極的に取り上げていきます。

--ジェイ・コウガミさん、ありがとうございました。

キャリア22年のHYDEに取材した際に、一流ミュージシャンであったとしても現在は時代の変化が激しく「対応力が求められる」と語っていた。(「HYDEが語るライヴ、ソーシャルメディア、テクノロジー、音楽ビジネスの今」)。いままでのやり方では通用しないリスクとともに、テクノロジーの進化によりマイナー・メジャーの壁を越えて音楽が聴かれる状況が作れるメリットも顕在化したのが2016年のデジタル音楽ビジネスだ。ただ、これはジェイ・コウガミ氏の言葉を借りると「音楽とテクノロジーによる価値創造の新時代が始まった」ばかりである。2017年以降デジタル音楽はどのように変化するのか?さまざまなジャンルの境界が溶け始めている現在において「音楽」が果たすエンタメ、ビジネスの領域はさらに拡大していくことだろう。
次回はLINE谷口マサト氏の『2016年総括、2017年展望』をお届けする。

SENSORS『2016年総括、2017年展望』シリーズ
【第一弾】チームラボ猪子寿之「体験型アートの可能性」
【第二弾】NewsPicks佐々木紀彦「日本3.0」「境界線を超えられる人の価値」
【第三弾】ライゾマ真鍋大度「リオ五輪」「人工知能×クリエイティブ」
【第四弾】PARTY中村洋基「スタートアップ×クリエイティブ」
【第五弾】ジェイ・コウガミ「21世紀のデジタル音楽ビジネス」
【第六弾】LINE谷口マサト「バズるコンテンツの方程式」
【第七弾】Mistletoe孫泰蔵「コミュニティ型スタートアップ」「防災テック」
【第八弾】バスキュール朴正義「データ×エンターテインメント」
【第九弾】コルク佐渡島庸平「"言語の壁"を超える熱狂」
【第十弾】落合陽一「幽体の向こうへ」

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ライター:西村真里子

SENSORS.jp 編集長 国際基督教大学(ICU)卒。エンジニアとしてキャリアをスタートし、その後外資系企業のフィールドマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブ会社のプロデューサーを経て2014年株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×デザイン×マーケティングを強みにプロデュース業や編集、ベンチャー向けのメンターを行う。Mistletoe株式会社フェロー。

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