最先端の教育現場『New Education Expo 2015』 ~巨人の肩を乗りこなす~

2015.07.01 12:00

今年で20回目の開催となる教育業界における最新のトレンドと教育現場の活用事例を紹介するイベント「New Education Expo 2015」に訪問。子ども達が使う教材はテクノロジーで大きな進化を遂げていた。

"マジックインキ"で有名な内田洋行が事務局を務める「New Education Expo 2015」は有明で開催された。首から下げるネームプレートを見ていると会場には学校の先生や教材販売会社、教育学部の学生などを中心に多くの人が集まっていた。

筑波大学附属小学校によるICTを活用した算数の公開授業

会場には企業らによる展示の他、実際にICTを活用した公開授業も行われていた。生徒一人一人の机にノートPCが置かれており、先生は電子黒板を巧みに使いながら生徒の関心を引く姿が印象的だ。

来場者が参加できる英語の授業

タブレットの教材画面

"大人"の来場者自らが生徒となって授業に参加できる催しも用意されていた。例えば、タブレットを活用した英語学習。一般的な学校の授業は集団で行われるが、タブレットを活用すれば集団で行う授業の中でも個別鍛錬の時間を多く取り入れることができ、より学習効果の高い英語の授業が実践できる。

■伝導性インクを活用した電子回路の実験教材「AgIC」

AgICのインクが入ったペンで書いた電子回路

電子黒板やタブレット関連の展示の多さは言わずもがな。その中でもこの1年ほで発明されたテクノロジーを活用したものを取り上げたい。「UCHIDA SCIENCE」のコーナーでは最先端の理科の実験教材が紹介されていた。その中でも特筆すべきなのは、導電性インクを活用した電子回路の実験教材だ。AgICは、銀(Ag)ナノインクのペンと専用紙で簡単に電子回路を描くことができるツール。プリンターのインクとして使用すれば電子回路の印刷もできる。これは東大発スタートアップ「AgIC」社が開発がするソリューションで「Tech Crunch Tokyo 2014」のピッチバトルで優勝していたのも記憶に新しい。

凝った絵画のような電子回路を描くこともできる

「UCHIDA SCIENCE」で紹介されていたのは、AgICの技術を活用して内田洋行が教育現場に最適化させたもの。生徒達はお絵かきをするかのように回路を設計し、他に用意された専用のLED電球と電池のセットで実験ができる。LEDと電池の位置を自在に変えながら、どの時に電球がついて、どの時に電球のあかりが強くて、どの時に1つだけ電球がついて...。直線を中心に整理された回路ではなく、任意で簡単に書くことができるので通常の教材よりも現実の事象をより楽しく思考できそうだ。

タブレットが付随した電子顕微鏡

同コーナーでは他にタブレットが付随した電子顕微鏡などが展示されていた。かつて、理科の授業で顕微鏡の部位の名前を覚えさせれた。接眼レンズ、対物レンズ、レボルバー、反射鏡...。そして、それが試験として出ていたこともあった。テクノロジーの進化はこうした試験問題も無くしていくのだろう。

■スマートペン「Neo smartpen N2」

Neo smartpen N2 のデモ

会場の展示の中でも、特に革新性が高かったのがスマートペン「Neo smartpen N2」。N2で紙に書いた手書きの文字がそのままタブレットに保存されるというもの。それもかなりの高精度だ。

Neo smartpen N2のKickStarter PJ

「Neo smartpen N2」は昨年にKickStarterで約36万ドルの調達に成功している。N2を使って書いたものがタブレットに同期される仕組みは、ペン先にあるカメラ・センサーが実際に書いてある文字を識別して送信する仕組み。ただし、普通の紙では効力を発揮せず、使用するには専用のノート「N notebook」が必要で、ノートの表面に印刷された細かいマーカーをカメラが識別して位置を識別する仕組み。N2自体の重さも自然なもので、通常のペンを使っているのと変わらない感覚で扱うことができる。今後、教育分野のみならず幅広い活用が期待できるプロダクトだ。

■「車輪の再発明」と「巨人の肩の上に乗る」

テクノロジーでいろいろなものが便利になったけど、便利なことは子どもの教育にとって良いことなのだろうか。おそらくNew Education Expo 2015を訪れたほとんどの方が心のどこかで思っていること。

「車輪の再発明」という言葉がある。広く受け入れられ確立されている技術や解決法を知らずに、もしくは意図的に無視をして、同様のものを再び一から作ることをそういう。特にIT業界のエンジニアの中では仕事の非効率化を促すためネガティブに使われる言葉ではあるが、教育という文脈において、再発明のプロセスで学ぶことはとても多い。従来の学校教育はこの「車輪の再発明」の考えが主流ではなかっただろうか。

しかしながら、テクノロジーは社会を大きく変化させるし、その流れに抗うの難しい。江戸時代であっても古代中国のように筆と竹簡で勉強はしなかっただろう。なにより、たとえ子どもであってもスマートフォンを通じてこ処理しきれないほどの情報量が手に入るようになり、それを逐一検証している時間もない。そこで、かつてニュートンが言った「巨人の肩の上に乗る」といった考え方が大事になってくるのではないか。先人達が築いてきた知識や技術を最大限に活用し、それを越える発明や成果を生み出すことをそういう。新しいテクノロジーを教育現場には受け入れるには、「車輪の再発明」的な発想ではなく、むしろそれを活用することでこれまでにない大きな成果を生み出すとい考え方がフィットする。さすれば、試験で良い点をとることだけが評価されるのではなく、巨人の力をフルに借りることで、前例が無いことにチャレンジし、実際に行動を起こす子どもたちが増える社会が来るのかもしれないし、テクノロジーを活用した教育がそういう方向にいって欲しい。

取材:石塚 たけろう

ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、EIR(=客員起業家)として複数の大手企業、スタートアップの新規プロジェクトに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

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