感情、脳波。世界最大級の祭典「South by South West」に次の時代の予兆を見る

2018.05.30 18:00

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SENSORSリニューアル後、第一弾となるSENSORSサロン。歌謡エレクトロユニットSatellite Youngを始め多岐にわたる活動をする草野絵美を新アシスタントとして迎え、Season4の収録が行われた。

記事第5弾では、多くの著名人が注目する世界最大級の祭典「SXSW(South by South West)」を取り上げる。今回は、SXSWを取材したSENSORSスタッフがピックアップした2つのトピックに注目する。

人の表情を読み取りインタラクティブに反応する「Virthal Human」、手足を動かさず脳波のみで操作する「脳波インタフェース」。感情、脳波など目に見えないデータを利用した次世代の作品を前に、MC2人が未来への展望を語った。

新体制でスタートを切ったSENSORSサロン。第一回のゲストときど氏と豊田氏が退場した後、今年の「SXSW(South by South West)」の話題で会場が湧いた。SXSWとはアメリカのオースティンで毎年開催される「音楽・映画・インタラクティブ」をテーマとした大規模な祭典だ。

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公式HP

政治家、映画監督、実業家、研究者ーー。SXSWには毎年、世界各国の多種多様な分野の専門家が集まる。今年のSXSWには、スティーブン・スピルバーグ、イーロン・マスク、レイ・カーツワイルなど、言わずと知れた世界のビッグネームも訪れたそうだ。

そんな世界規模の祭典にSENSORSスタッフが潜入し、最先端のインタラクティブテクノロジーを直に体験してきた。本記事では、SENSORSスタッフが特に注目した二つのトピック「Virtual Human」、「脳波インタフェース」をピックアップし、MC2人にディスカッションをしてもらった。

"感情"の時代がやってくる。画一的な社会を抜けて、パーソナライズに変化する世界へ

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--ここからはSXSWを取材したSENSORSスタッフが、特に気になったトピックスをみていきます。齋藤さん、落合さんは今年のSXSWは行きましたか?

齋藤精一(以下、齋藤):
今年は行ってないですね。最後にSXSWに行ったのは、3年前です。
落合陽一(以下、落合):
僕も齋藤さんと同じで、3年前に行ったきりですね。最近はあまり時間がなくて行けてないのですが、僕が作った作品がSXSWで展示されることはあります。

冒頭で落合、齋藤とSXSWとの関わりを尋ねた後、SENSORSスタッフからピックアップコンテンツが紹介された。

一つ目は『Saya Virtual Human』である。17歳女子高生をモデルとした仮想キャラクター『Saya』が、前に立った人の表情に応じてインタラクティブにリアクションを返してくれる作品である。ディープラーニングによってリアルタイムに対象者の表情を解析し、感情を推定する表情認識AIを使用しているとのこと。

実際に『Saya』がリアクションを返すシーン動画も番組内で紹介された。17歳の少女がふんわりと微笑み、控え目にこちらに向かって手を振る。見ているこちらも思わず笑顔で手を振り返してしまうような、リアルで人間味溢れる映像であった。今まで一方通行だったコンテンツが、受け手の感情に合わせインタラクティブに対応していく"双方向のコンテンツ"へと変化しているのを肌で感じられる。

今後は、マルチ言語対応のデジタルサイネージ、介護における見守りなど応用的活用も視野にいれているそうだ。

-- MCのお二人は、『Saya』のような感情認識×テクノロジーをお仕事で活用されることはありますか?

齋藤:
昨年トヨタ紡織さんとコラボレーションし、『コンセプトモデルVODY』のディレクションをさせていただきました。人の感情に合わせて車内空間が変化する車を作ったのです。このVODY含め、人の感情をテーマにした仕事は多いと思います。
落合:
僕も活用するシーンはかなり多いですね。ただ、僕は感情を中間生成物として捉えているので、感情のみを取り扱った論文を書くことはありません。得た感情情報に紐づく、次のアクションを考えることが多いです。

-- 感情×テクノロジーはどういった分野に応用すると面白いと思われますか?

齋藤:
感情は、「この分野に活かせる」というより、全ての分野で応用できると思います。IoT化、ICT化が進めば、インターネットによってあらゆるものがつながっていきます。その次に来るフェーズが「生体情報の獲得」です。デバイス、メガネ、カメラ、そして『Saya』のような仮想キャラクター。身の回りにあるさまざまなものが生体情報を収集し、人間の感情に合わせて変化していく。そういった時代が来ると思います。なので、感情はものすごく多様なジャンルに活用できると思います。
落合:
僕は「感情は言語表現が難しい」と思っているので、言語のベクトルに表現し直すとあまり上手くいかないのではないかと思っていますね。そこをキーとして結構研究を進めています。
齋藤:
「感情を言語で表現するのは難しい」は僕も共感します。その研究は面白いですね。
落合:
あと最近は、感情に社会制度が付随していないことにかなり問題意識を感じています。感情は主観的な一人称のものだけれど、社会制度は三人称を基準に構築しようとしています。そこで歪みが生まれる。

たとえば、僕がすごく悲しい気持ちでいるときも、会議のオペレーションは変わらず進むし、電車は何事もなかったかのようにいつものダイヤで運行されますよね。では、主観的なモードと客観的なモードをいかにコンピューターでつなぐか。これはものすごく重要な課題だと思います。

仮想世界で活躍する脳波の力?進化した次世代インタフェースが日の目を見る

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二つ目のピックアップコンテンツは、脳波を使用したインタフェース『BMI(Brain Machine Interface)』。情報の入力を脳波で行おうという試みである。脳波は立体的な認識にも応用できるため、現実世界に3D映像が投影されるMR空間用インタフェースとして注目を浴びている。

従来、入力された脳波を検出するには時間を要し、操作にはトレーニングが必要であった。しかし、SXSWでは最新の脳波のデモンストレーションが公開され、人々を驚かせた。ほとんどトレーニングをしていないプレイヤーが、脳波によってスムーズに操作をしている様子が映し出されていたのだ。

MR世界で3Dオブジェクトを操作するインタフェースはいまだ模索中ではあるものの、脳波活用の大きな進展を受け、一躍注目を浴びているのだという。この脳波インターフェースについて、MC二人は以下のようにコメントした。

齋藤:
特に、デバイスに大きく改善の余地がありますよね。頭部にゼリー状の薬品をつけなければならないなど、デバイスの脱着に手間がかかるんです。

インタフェースとしてはまだまだ課題があるものの、より実用的になれば、手足を動かさずにVR操作ができるようになります。脳波インターフェースがより進化し、デバイスや脳波データの改善が進めばさまざまなことに活用できると思います。
落合:
脳波インタフェースが当たり前の世界になってほしいですよね。ただ、脳波のような従来とは違うインタフェースを普及させるのは簡単ではありません。エンターテイメント分野での活用に留まるのではなく、介護分野など、より実用的な用途で活用される必要があると思います。体の自由が効かなくなった方たちのために、ゼロベースでどうやって脳波を活用するか考える。「手で操作ができない」などのバリアがないと、一般の方が脳波を利用するインセンティブはないと思います。

今回紹介した2つの作品以外にも、SXSWには多くの展示物が持ち込まれた。SENSORSスタッフは今年のSXSW全体を通し、『人間の拡張』を試みる流れを感じたそうだ。「感情を読み取りリアルタイムに変化するVirtual Human」「体を動かさずに情報入力できる脳波インターフェース」。従来では想像もできなかった世界が実現しようとしている。技術の進歩と創意工夫により、"人間のアップデート"が行われる未来もそう遠くないのかもしれない。

構成:伊集院実穂

Twitter:@iju_miho



編集:オバラミツフミ

1994年生まれ、ライター・編集者。ビジネス領域を中心に、複数媒体で執筆中。
Twitter:@obaramitsufumi

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