大阪発のアート集団「COSMIC LAB」が魅せる人間のクリエイティビティのルーツとは

2016.09.15 10:00

クリエイティブの祭典Adobe MAX Japan。9月2日東京 有明ビッグサイトで開催されたイベントに2,100名を超えるクリエイターが集った。その祭典を華々しく彩るオープニングアクトとして登場したのが大阪を中心に活動するアート集団COSMIC LABだ。独自に開発したオーディオヴィジュアルデバイス「Quasar」を駆使し、ライブによるオーディオヴィジュアルパフォーマンスを披露、観客を魅了した。大阪・味園ビルを中心としたアートコミュニティに端を発し、これまでに高野山御開創1200周年の式典の演出を手掛けるなど日本の伝統的な価値観と最新のテクノロジーを横断することを目指す、彼らの柔軟なアプローチの秘訣に迫る。
■同じくAdobe MAX Japanに登壇した、米アドビ「テクニカルアーティスト」伊藤大地氏へのインタビューはこちら

■大阪・味園ビルのアートコミュニティから生まれたアート集団「COSMIC LAB」とは?

映画「味園ユニバース」の舞台ともなった味園ビルは、大阪のアンダーグラウンドカルチャーの中心地として現在も名の知られたスポットである。COSMIC LABはそこで開催されていたパーティ「Flower of Life」に端を発し、代表のColoGraPhonicこと三浦泰理氏を中心に、味園ビル近辺で活動するアーティスト同士がコラボレーションするミックスメディア・プロダクションとして存在していた。そして近年はプロジェクションマッピングやオリジナルのデバイス開発を始めとするテクノロジー表現を積極的に取り入れ、日本の伝統文化をリスペクトしながらアップデートするというアプローチを展開し活躍の場を広げている。 SENSORSではAdobe MAX Japanオープニングアクト後の彼らに取材を行った。

熱海美術館で行われたCOSMIC LABによるアートインスタレーション

--現在のメンバー構成はどのようになっているのでしょうか?

Colo:
メインは主宰である僕と、スコットランド出身で彫刻家だったインタラクティブアーティストのJamieと、QOTAROOや240Kというビジュアルアーティストと、制作の高良との五人です。 僕自身はVJとしてライブパフォーマンスや、映像制作、作品全体のディレクションを行っています。
Jamieはハードウェアやインタラクティブなインスタレーションのシステムを制作しています。
僕が、テクノロジーと日本の伝統文化とのコラボレーションについてテーマや理想とするデバイスのコンセプトを設定し、クリエイティブディレクターのJamieがテクニカルな部分を中心にスピーディーにプロトタイピングして、それを実際現場で使い倒してみて、ブラッシュアップを進めていくことが多いです。
今回のライブで使用した「Quasar」もそうやって制作したものです。

COSMIC LAB代表のVJ ColoGraPhonicこと三浦泰理(写真右) とクリエイティブディレクターのJamie Goodenough氏(写真左)。

--大阪を中心に活動されているとお伺いしました。なぜ大阪だったのでしょうか。

Colo:
もともと地元だったからということのほかに、大阪独特のリラックスした雰囲気が好きだったということもあります。あと、ボアダムスというバンドの影響も大きいです。
Jamie:
大阪の人のコミュニケーションの前提が、海外の雰囲気と通ずるところがあると思っています。例えばどんなに会社の偉い人でも、「まいど、もうかりまっか」という言葉ですぐに打ち解けることができる。海外の人が役職にとらわれることなく"hi."と挨拶するような、緩いコミュニケーションの方法が大阪にはあるんです。

--リラックスしたコミュニケーションの中から得られる大阪という場所のメリットもあるのでしょうか。

Colo:
東京に対抗意識を持っているわけでは決してないのですが、東京にいると確かにエクストリームで魅力的な技能を持った人がどの分野にも必ず一人はいます。一方で大阪を始めとして地方は数がいない分、畑違いの人とも否応なしに同じ場に立つ状況が生まれます。良くも悪くも、イベントなんかのブッキングも方向性がぐちゃぐちゃになってしまったりすることがざらにあります。でも大阪のある種おおらかな雰囲気の中で、領域を横断することで生まれる新しいコラボレーションや、突然変異的に生まれる価値があるんです。COSMIC LABも味園界隈にいるアーティストとのさまざまなコラボレーションを行うことで、そんな新しい価値を提案していくプラットフォームとして機能していると言えます。

■テーマは「生き物万歳」。COSMIC LABが捉えたクリエイションの極意

Adobe MAX Japanのオープニングアクトの中で、「Celebrate Our Creative Roots」をテーマに繰り広げられたオーディオヴィジュアルパフォーマンスは、会場に集まった観客を生命のルーツへと誘い、ビッグバンによる宇宙の誕生から地球における生命の起源、さらには人類が産み出した最先端のダンスミュージックまで、すべての創造物に通底するクリエイティビティへの称揚をCOSMIC LABオリジナルデバイスである「Quasar」のライブ演奏によって表現していた。

ステージ上ではcp:Qaserの盤上が映し出され、観客がステージ上の操作を見ることができた。

--今回のパフォーマンスのコンセプトについてお聞かせください。

Colo:
大きなテーマとしての「Celebrate Our Creative Roots」があって、それに内包される形で「Future & Roots」というサブタイトルをつけさせていただいて、過去から未来へと繋がっていく一つの流れを表現しました。過去のプロジェクトで、高野山御開創1200年のアニバーサリーイベントの演出として、真言密教の声明と、プロジェクションを融合させたことがあって、その時あたりから、すごく古いモノとテクノロジーのような未来に向けて発信しているモノが合わさるレイヤーがあるような気がしていました。
高野山御開創1200周年イベントの様子
Colo:
今回の肝要となったのは、シカゴ発でグローバルに人気を評している現行のダンスミュージックである「JUKE/FOOTWORK」というジャンルと、日本の盆踊りという古くから伝わる踊りを同じパフォーマンスの中に落とし込むことでそのレイヤーを実現した点です。サウンドトラックはJUKEをいち早く日本に紹介し世界的な評価を得てきているDJ FULLTONOとカリフォルニア出身トラックメーカーのErik Lubesに制作してもらいました。

JUKE DANCEと盆踊りという伝統文化とダンスの最先端がクロスオーバーし、会場のボルテージがピークを迎える。

--古くからある盆踊りがルーツとしてあって、そこに最先端のJUKEをかけ合わせたということですね。

Colo:
また盆踊りそのものが、黄泉の国からご先祖さまをお迎えするという、いわば我々のルーツに想いを馳せるという意味性をもった行為として捉えることができます。そんな盆踊りを採り入れることで、我々の生命がどこから来たのかという問いを打ち立て、その答えを宇宙創造の始まりであるビックバンから、生命が創造され、我々へと進化していく様を表現することで追体験できるようにしました。
Jamie:
初めて日本の盆踊りを見た時に、ものすごい歴史、時間の蓄積を感じたんです。地域のお祭りのようなコミュニティを前提にしているところなど、最初は理解するのに苦労したのですが、ご先祖さまを丁重にお出迎えする、すなわちルーツを称揚するという盆踊り自体の機能が良いインスピレーションとなりました。
Colo:
今回のアドビさんのイベントが、「クリエイターの祭典」だったので、クリエイターを我々の創造主として読み替えて、過去に創造されてきたすべてのものを繋ぎ、イベントに集まった実際にものづくりに関わっているクリエイターの人々へのバトンとして渡していくという、未来へ向かっていく表現が出来ればいいと思っていました。

--今回「Quasar」によってライブをしていらっしゃいました。こちらのオリジナルのデバイスはどのような役割を果たしていたのでしょうか。

Colo:
昨年開催したCOSMIC LABのショウケースで製作したものをアップデートしながら使っています。まだ正式リリースはされてないのですがDepthkitというアプリケーションを使って、kinectとsony α7をマウントさせて撮影した高解像度のビデオテクスチャが貼りついた3Dモデルアニメーションンや、アドビのAfterEffectsやPhotoshopなどを使用した動画素材をそれぞれのキャップに収め、それを円盤の上に配置することで映像と音楽を再生できるというものです。

円盤上に動きとそれに応じた音楽のデータをインストールしたキャップを配置していくことでパフォーマンスを操作していくことができる。

--その場でパフォーマンスすることにはどのようなこだわりがあるのでしょうか。

Colo:
これまでVJのパフォーマンスをやってきた中で、やはりライブだからこそ生まれる緊張感が一番重要だと思っています。メディアアートそのものの機能として、観客が参加することで一つの作品として完成するということがあるのですが、ライブでVJパフォーマンスをすることで、お客さんを作品の中に引きずり込むような、そんな緊張感を大事にしていきたいです。 あと例えば、ライブ中にお客さんにもQuasarを触ってもらうパートを設け、僕たちが創り上げた祝祭的なオーディオヴィジュアル空間で非予定調和的なコラボレーションをすることで産まれる偶発的な表現にも可能性を感じています。
Jamie:
お客さんと同じ空間と時間の経験を共有していることが大事です。
Colo:
まさしく「間を作る」という言葉で表されると思うのですが、例えば、茶道でも差し出されたお茶に対して何かしらのリアクションをとる必要がある。茶道における緊張感は、目の前でお茶をたてているというライブ的な行為があるからこそ生まれるのだと思います。プレイヤーと観客の間で目に見えない何かしらのやりとりがなされる。僕たちがライブでやったパフォーマンスに対して、お客さんが拍手で返してくれるのも、その証拠だと思います。そんな「間」を一緒に作り上げているというのがライブの醍醐味であって、それを大事にしていきたいですね。

--これから大切にしていきたいことについて教えて下さい 。

Colo:
今回のコンセプトだった「Future & Roots」をはじめとして、今生きている生き物すべてに宿るクリエイティビティを尊重して、生きていく上でポジティブになれるようなものを作っていきたいです。生き物全般を含めたクリエイティブに関して、ずっと何かしら続いているもの、いまにつながっているもの。そういう部分は感じていきたいし、そこに対して今できることをして未来につないでいきたいな、と思います。率直に「生き物万歳」という一言でアピールをしていきたいです。

デザインやエンジニアリングというジャンルで語られることの多い「クリエイティビティ」という言葉は、ある種使い古されたものとしてその意味が軽くなってしまっている。そんな状況の中でCOSMIC LABは生き物が創造され進化してきたという厳然たる事実に本当の意味での「クリエイティビティ」を感じ取り、それを追究する姿勢を持っている様子が印象的だった。今後も当たり前のものとしてあるような「伝統」を様々な気鋭の文化やテクノロジーとクロスオーバーさせ、新しく塗り替えていくその活動から目が離せない。

クリエイターとして活動する人だけでなく、いち観客としても作品の理解のためには、本記事で語られたような「ものづくり」に携わる人々の意図や手仕事に触れることが重要になってくる。
その機会は近年広く開かれ始めている。アドビの公式サイトでも、COSMIC LABがAfterEffectsなどのアドビ製品を使用して製作活動を行っている模様や、様々なクリエイターによる制作に関するトークの模様が楽しめる。この機会にクリエイターの仕事を覗いてみてはいかがだろうか?

取材・文:兵藤 友哉

1995年生まれ。フリーライター。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系在籍。専らの興味は「メディアテクノロジーの進歩による人間の認知の更新」。SENSORSでは「VR」「ドローン」の記事を担当。
Twitter @do_do_tom

写真:Razy ISOI、松平伊織

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