日本は"キャラクター信仰"でAIビジネスを席巻する--三宅陽一郎×舛田淳 AIビジネス最前線

2017.12.13 17:00

「AIで最適化される未来」をテーマに行われたSENSORSサロン。三宅陽一郎氏(スクウェア・エニックス)と舛田淳氏(LINE)を迎え、MC齋藤精一×落合陽一がAIビジネスの未来をディスカッションした。

4回にわたってお届けする第2弾記事では、日本独自の"キャラクター信仰"にフォーカスを当て、東洋と西洋におけるAIビジネスの違いを掘り下げる。
「日本人は生命のないものに生命を見出す」と語る三宅氏、「キャラクター信仰のルーツは大化の改新にある」と独自の理論を展開する落合の発言にも注目だ。

■ 人間は"平均的なこと"にも感動する。AIがクリエイティビティを代替する可能性

--「AIにできること」はよく語られていますが、逆に「AIにできないこと」というのはどのようなことでしょうか?

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(左より)舛田淳氏、三宅陽一郎氏

三宅陽一郎(以下、三宅):
本質的に、AIは自分で問題を作り出すことができません。将棋や囲碁など、情報処理の枠を与えてあげればいくらでも計算できますが、不確定要素がある問題を解くことは苦手です。
舛田淳(以下、舛田):
巷ではよく「クリエイティビティは人間にしかないものだ」といわれますが、実はAIも曲を作ったり絵を描いたりすることができるわけです。売れ筋の曲のデータを学習させれば、ある程度売れる曲を作ることだって可能でしょう。

しかしこのご時世、売れ筋のものだけが売れていくわけではありません。AIには、ある種の飛躍といいましょうか、偶発的なヒットを生むことまではできないんです。今人間に任されているこの能力を、いつかはAIが代替するかもしれませんが、現状は人間がやるべきことだと思います。
落合陽一(以下、落合):
僕は、平均的なものを作れることはいいことだと思っています。たとえばゲームの中でアイドルが歌う際に、毎回違う曲を自動生成してくれるだけで満足度が高いじゃないですか。必ずしも全員が心を打たれる名曲じゃなくても、いわゆる平均的なアイドル曲が都度バリエーションを変えて流れてくるだけでも感動があります。
三宅:
かつて、適当なテーマを決めてクマに指示を与え、作った歌詞にダメ出しをしたり添削したりして曲を完成させる『くまうた』というゲームがありました。
初音ミクが登場する4〜5年前のゲームですが、今もYoutubeに動画がアップされるなど人気が継続しています。落合さんがおっしゃられたように、「AIと作り出した」ことに価値を感じているのかもしれません。
舛田:
共作することで、逆に人間のクリエイティビティが刺激されることもありそうですね。
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齋藤精一

齋藤精一(以下、齋藤):
2000年頃にデザインの世界で、たとえばボールペン一つとっても「この形が最適なんだっけ?」と議論になったことがあります。
実は当たり前にあるものでも、それらが最適な形かどうかは誰も分からないんです。
そうした際に、平均値を出してくれたり、もしくは僕が閃かないようなオプションを出してくれたりするAIは非常に便利なツールだと思います。

AIは現在単純作業が得意だとおっしゃっていましたが、逆を言えば人間がものすごく複雑にできているところも、今だからこそ知る機会ですね。

■ 西洋ではキャラクターレスが好まれるが、日本人は初音ミクに生命を感じている

--つづいてのテーマは「リアルワールド」。ゲームはヴァーチャル世界でストーリーが展開しますが、三宅さんはどのようなお考えをお持ちですか?

三宅:
ゲームはもちろんヴァーチャルですが、いずれキャラクターが人間世界に飛び出してくることが考えられます。
たとえばデジタルサイネージのインターフェースとして、人間とのやりとりを仲介してくれる可能性がある。海外ではキャラクターレスな方向性が好まれていますが、日本人は人格を持ったキャラクターが好きなので、ここにアイデンティティが生まれるのではないかと思うのです。

西洋は神が絶対信仰の対象にあり、その下に人間がいて、人工知能があります。いわゆる縦の関係性です。しかし日本は、初音ミクやたまごっち、ゲームキャラ、アニメキャラ、人間...とどれもが並列な関係になっている。

西洋の映画は「AIが社会を支配する」文脈で描かれるものが多いですが、日本の映画は「AIと一緒に社会を作る」世界観が描かれています。
そうした社会が実現すれば、AIで世界を驚かせることができると考えています。
舛田:
我々が開発するヴァーチャルアシスタントの世界でも、召使いを作りたいのか、もしくはパートナーやファミリーのような関係性を築きたいのかで議論になるんです。いわゆるメイドさんであれば、コマンドに対して適切なアンサーをくれさえすればいい。
しかし、ファミリーとしてのヴァーチャルアシスタントをデザインするなら、キャラクターにする意義があるはずです。キャラクターは、AIにおけるイノベーションになり得る。
三宅:
日本人は生命のないものに生命を見出す文化があります。
たとえば、手紙をキャラクターから手渡されると喜びますよね。西洋にはない文化です。
初音ミクが文化を創れたのも、こうした背景が関係しています。日本人は初音ミクに生命を感じていたのです。

■ 1,500年前から受け継がれる"日本のキャラクター信仰"

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落合陽一

齋藤:
落合君は国策でAIを扱っていますが、日本特有のAIの進化の仕方があると思いますか?
落合:
西洋的か東洋的かという話は興味深いですよね。
日本は大化の改新で一神教的に世界をまとめようと試みた過去があります。もともと多神教ではありましたが、大化の改新後、律令制度を確立していく中で、神話を作り変えてまで中央集権のヒエラルキーの構造を作ろうとしました。
しかし結果として、自然信仰や氏神は残り多神教のままでいます。ヒエラルキーの構造を作ろうとしたけれどコミュニティ構造は残ってしまった。

同じように、人間の下にAIを位置づけるヒエラルキー構造を作ろうとしても、結局、AIと人間はファミリーの関係性になってしまいます。
つまりキャラクターが好まれる構造は、1,500年前から変わっていないんです。こうした特性を鑑みれば、国策としてAIを根付かせやすいといえそうです。

--舛田さんはどう思われますか?

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舛田:
発売前の商品なのですが、「Clova WAVE」の次に発売予定のスピーカーのコンセプトモデル(LINEのキャラクターがデザインされている)を発表した際に、海外のメディアから「やっぱり日本はちょっと変だ」と言われたんですね。
無機質なデバイスよりは、ある種フォルムがあるデバイスの方が愛着を持てるという仮説からデザインしたのですが「これがAmazon Echoの競合か(笑)」と。

また、我々のグループ会社であるGateboxは"Living with character"をコンセプトに掲げ、可愛らしい女の子のホログラムとコミュニケーションが取れるIoTデバイスを開発しています。
こちらもやはり「日本はクレイジーだ」と言われています(笑)。

とはいえ海外からの購入者も少なくありません。
こういったアプローチは海外のユーザーに対して新鮮に映るでしょうし、日本ならではの価値を発揮できるのではないかと考えています。

続く「サブカルチャー×国策支援で"冬の時代"を脱出せよ--三宅陽一郎×舛田淳 AIビジネス最前線」では国策に参与するMC落合が日本のAIが世界で躍進する必勝法を語った。
AIビジネスの最先端に立つゲストの二人は、落合の意見をどのように捉えたのだろうか?

構成:オバラミツフミ

秋田県湯沢市出身。趣味は商店街を歩くことと喫茶店を巡ること。
Twitter:@ObaraMitsufumi
Mail: obaramitsufumi[アット]gmail.com


編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
編集者・ライター。リクルートホールディングスを経て、独立。修士(東京大学 学際情報学)
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

カメラマン︰松平伊織

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