サブカルチャー×国策支援で"冬の時代"を脱出せよ--三宅陽一郎×舛田淳 AIビジネス最前線

2017.12.15 15:00

「AIで最適化される未来」をテーマに行われたSENSORSサロン。三宅陽一郎氏(スクウェア・エニックス)と舛田淳氏(LINE)を迎え、MC齋藤精一×落合陽一がAIビジネスの未来をディスカッションした。

4回にわたってお届けする第3弾記事では、国策に参与するMC落合が、日本のAIが世界で躍進する必勝法を語った。
AIビジネスの最先端に立つゲスト二人は、落合の意見をどのように捉えたのだろうか?

■ 日本のソフトウェアは"サブカル視点"でリープフロッグする

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落合陽一

落合陽一(以下、落合):
日本は、1982年から10年計画で行った国策「第5世代コンピューター計画」に失敗した過去があります。10年計画で連想機能や推論機能などを持つコンピューターを開発しようと挑戦しましたが、結果として実用化には至っていません。
しかし、当時はハードが基軸でしたが、現在はソフトが基軸になっているため、可能性を感じています。というのも、ソフトはキャラクター化できるからです。

日本人はハードを作ること自体は苦手ではありませんが、作りきったところで満足してしまうところがある。それよりは、利用者がコメントを残せるソフト作りの方が得意だと思うのです。
日本の文化は上流工程から流れ落ちてくるのではなく、漫画などのサブカルチャーが下流から上がっていき、醸成されることが多い。AIもそうした視点で捉えた方が、アカデミック主体の切り口よりも面白いと思います。
齋藤精一(以下、齋藤):
国策として、たとえば「AIのキャラクター化」など大きな考え方を示すのは可能性があるということですね。
日本発のスーパーコンピューター「京」のコンピューティングは世界でも類を見ないほどの技術力ですが、その中で使うソフトウェアは海外製なんです。これだけソフトウェアメーカーがあるのに、なんだか悲しいと思いませんか?

ソフトウェアの分野でも、国がしっかりと支援体制を構築すれば既存の技術をリープフロッグ(段階を飛び越えて進展)できるような気がするんです。
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(左より)舛田淳氏、三宅陽一郎氏

三宅陽一郎(以下、三宅):
キャラクターを作るにはさまざまな技術を要しますが、それらを実装する際に必要となるモジュールはどれも同じです。
しかし、小さい企業はそれを作る体力がない。国がデータを提供したり、部品を出力できるよう支援したりすればイノベーションが起こる可能性は十分にあります。
企業はインテグレート(統合)するところで競争すればいいのです。
舛田淳(以下、舛田):
三宅さんの考えに賛同します。音声データを例に挙げると、シニアやジュニア、方言などの音声学習は非常に困難な分野です。これを企業単位でやろうとしても、おそらく不可能。
しかし、介護領域でAIの音声学習が活きてくるのは間違いありません。それなら国がお金を出して研究を促し、オープンデータにすればいいのです。オープンプラットフォームを提供すれば、さまざまな領域でビジネスが加速するのではないでしょうか。

■ AIを導入しないことにはAIの価値を測れない

--続いてのテーマ「神経系に得意なこと」についてお話できればと思います。

落合:
ディープラーニングは人間の神経回路を模した技術です。
しかし、神経系が苦手なことは結構多くて、人間は神経系で処理できないことを、耳や目といったハードウェアを実装することによって対処しています。
プロダクトにおいても、シンプルにハードウェアだけで処理する方が効率的なものも多く、「いざAIを導入してみたら、ハードウェアの方が効率が良かった」なんてことも少なくありません。ただしそれは、AIを取り入れて初めて分かることなんです。
だから、まずは全ての事例にAIを当てはめてみた方が圧倒的に効率的でしょう。
三宅:
ヴァーチャルアシスタントを開発する際に、まさに全てをAIに置き換えようとした結果、逆に複雑になりすぎてしまうことがありました。シンプルにハードウェアでデータ処理を行った方が楽なケースもあるのです。
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齋藤精一

齋藤:
「ハードを発達させることが重要だ」と認識するためには、一度全分野をAIに置き換えてしまえばいいということですね。

まさに今日の収録前の話ですが、コーヒー屋さんに行きパソコンをテザリングしようと思ったら、10分間つながりませんでした。これほどテクノロジーが進化しているのに、Bluetoothがつながらないなんて信じられないですよね。
もしこれがスイッチ一つで解決するなら...。そういった視点を持った方が、実は人間の生活を豊かにできる。何が最適なのかはやってみないと分からない。

テクノロジーが向上し無駄を最適化しつつありますが、そもそも最適化するベクトルが間違っていることもあるので、その部分を全て洗い出してみる必要はあるのではないかと思っています。

■ "冬の時代"を越えたAIの未来

舛田:
我々は元々ソフトウェアを扱う会社なので、ハードウェアを作ることが「これほどまでに大変なのか」と苦労しました。
先ほどご紹介した「Clova Friends」にはBluetoothのボタンが付いています。これが最適なのかどうかも、やはり一度やってみないと分からないことなんです。
Googleのような企業なら自社でトライアンドエラーを繰り返せるのでしょうが、実際問題一社単位では難しい。
国策として行うのであればスケールしなければ意味がないので、オープンデータを共有し合うコミュニティを形成すべきですよね。
齋藤:
昔のカーナビって「広尾」と伝えると、「釧路」だと認識するんです。あの裏切られ感を思い出しました。「広尾」と言っているのに「釧路」だと認識されてしまうと、それ以降は音声入力ではなくタイプ入力するようになります。
ソフトウェアなのかハードウェアなのか、ちょうど良いバランスを見出すために、そうした過去の事例をプロファイルすることが僕らの世代に求められていることだと思うんです。
落合:
日本語でプロファイルしなければ、全てのコマンドが英語になってしまいますからね。
舛田:
コマンドの処理も音声認識も、英語の方が楽なんです。
落合:
コマンドが、2つ目の単語の動詞で理解するから。「Playするんだ、はいOK」みたいな。

現在、言葉主流だったところが現象主流に寄ってきたんですよね。
ディープラーニングによって、絵で表現されるものを一発で認識できるようになった。
これは日本人が得意な領域です。つまり、西洋系列の言語的な情報を扱うのが苦手だっただけで、現象側の処理にはもともと優れた技術を持っている。
三宅:
まさに日本のAIブームは画像処理精度の高さに端を発します。言語処理に苦戦し「冬の時代」などと表現されてきましたが、画像認識が可能になったことでいよいよAIが盛り上がりそうです。

続く「AIが最適化するテレビの未来--三宅陽一郎×舛田淳 AIビジネス最前線」ではAIによって視聴者ごとに最適化されるテレビの未来像が議論された。
MC二人はテレビに求めるインタラクティブ性を語り、ゲストの二人はメディア業界でAIが活用されている事例を取り上げ、未知のテレビ体験を示唆する。
最後には、AIビジネスに精通するゲストより次世代起業家に向けて、AI時代を生き抜くためのアドバイスも示された。

構成:オバラミツフミ

秋田県湯沢市出身。趣味は商店街を歩くことと喫茶店を巡ること。
Twitter:@ObaraMitsufumi
Mail: obaramitsufumi[アット]gmail.com


編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
編集者・ライター。リクルートホールディングスを経て、独立。修士(東京大学 学際情報学)
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

カメラマン︰松平伊織

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