AIが最適化するテレビの未来--三宅陽一郎×舛田淳 AIビジネス最前線

2017.12.19 15:00

「AIで最適化される未来」をテーマに行われたSENSORSサロン。三宅陽一郎氏(スクウェア・エニックス)と舛田淳氏(LINE)を迎え、MC齋藤精一×落合陽一が日本におけるAIビジネスの未来をディスカッションした。

4回にわたってお届けする最終回。
第4弾記事では、AIによって視聴者ごとに最適化されるテレビの未来像が議論された。MC二人はテレビに求めるインタラクティブ性を語り、ゲスト二人はメディア業界でAIが活用されている事例を取り上げ、未知のテレビ体験を示唆する。
最後には、AIビジネスに精通するゲストより次世代起業家に向けて、AI時代を生き抜くためのアドバイスも示された。

■ 全体最適なテレビ番組が、AIで個人最適化される?

--それでは最後のテーマ「テレビとAI」に移りましょう。

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(左より)舛田淳氏、三宅陽一郎氏(右より)落合陽一、齋藤精一

三宅陽一郎(以下、三宅):
テレビの制作現場も、多くの人材を割いていた工程がAI自動化され、少ない人数で番組を作れるようになってきていると聞きました。
舛田淳(以下、舛田):
カメラ割りやライティングなどはAIに置き換えられないことはないですよね。撮影した動画の編集も、ラフくらいまでならある程度作れるのではないでしょうか。
齋藤精一(以下、齋藤):
IBMが開発したAI「ワトソン」は映画の予告編を作っていますよね。
もしかしたら、良い部分だけを集めて切り貼りしたテレビ番組が作られるということも将来的にはあり得る話だと思います。オンデマンドのイメージです。
三宅:
VRを用いて、放送内容とは違う角度から物語を楽しむこともできます。
先週見たアニメを、今度は主人公ではない目線から観ることも可能になるので、一方通行のマスメディアではなく、ユーザーが自分自身でコンテンツと関われるようなメディアが現れてくると思うのです。
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落合陽一(以下、落合):
クイズ番組を子供と観ていたら、振り仮名をふったり、出てくる解説文を変えたりするようなカスタマイズが最初に入ってくるだろうなと思います。

僕は子育て中なので、妻の母が家に来ているんです。
ただ、妻の母と僕では会話が全く通じない。AIの番組を観ていると、僕は「いまいちだ」と言い、妻の母は「あら凄いわね」と言っているんです。
ドラスティックに変える必要はないにせよ、このギャップはテレビ側に埋めて欲しいですね。
三宅:
もしくは、Gatebox(LINEのグループ会社が販売するバーチャルホームロボット)のキャラクターが横で用語を解説してくれてもいいと思います。視聴方法も変わってくるでしょう。
舛田:
よく言われるのは、万人に合わせた番組を放送しようとした結果、「最近のテレビ番組はチャレンジしなくなった」ということ。
しかし誰が観ているのかを可視化し、フィルタリングができれば特定の視聴者にはアグレッシブな番組を放送することもできますよね。

■ MC落合が考える"未来のテレビ"のあるべき姿

齋藤:
ちなみに、リアルタイムでテレビを視聴している方を解析する方法はあるんですか?
スマートスピーカーがプロファイルを集めることができれば、先ほど舛田さんのおっしゃった世界観が実現すると思います。
舛田:
実は現在、プロファイル技術を開発しているところです。「今は子どもが喋っている」と声紋認識ができるようになりますし、「今ボタンを押したのはお父さんだ」ということも分かるようになります。
今後はますますデータ収集の方法が増えていくことは間違いありません。
落合:
ユーザーデータをダイレクトに取得することに対して、テレビ業界はセンシティブさが大きいように思います。
でも僕は、「今はそういう時代じゃない」と声を大にして言いたい。

テレビを観ている人には、文字通り「テレビを観ている人」と、「テレビをつまみに別の話がしたい人」の2つのパターンがあると思います。僕は妻の母が熱心にテレビを観ている横で、「裏ではどういう会議をやっているんだろう?」なんてことを考えている。
人によってコンテンツの楽しみ方は異なるため、多様な視聴方法を応援する仕組みが欲しいんです。出演するタレントに興味があるのではなく、タレントのギャラがいくらなのかに知的好奇心が動かされる人もいるわけです。
舛田:
落合さんが「平均的なものを作れることはいいことだ」 とおっしゃっていましたが、平均化する意味はテレビの改革にも当てはまる文脈だと思います。
AIによってクオリティを均一化しながら番組を制作し、その分、抜きん出るところには時間とお金を投資する。テレビ制作の現場はものすごく忙しいと聞いています。そうしたなかで、自動化できる部分をAIに代替すれば働き方改革も起こりうるかもしれませんね。

■ "AI革命"のパラダイムシフトの最前線に立ち、時代の寵児になれ

--最後に、これからビジネスを始めようとしている若者にゲストのお二方からヒントや心構えをお聞かせいただけますか?

三宅:
ちょうど今が若者にとってチャンスの時代だと思っています。
これまでに産業革命が起こり、情報革命が起こり、そしてWeb革命が起こりました。その度に、小さなベンチャー企業が大企業に成長するチャンスが生まれています。現在はAIがそのフェーズに差し掛かっている。

AIの前にはフロンティアが広がっていています。そういう時代はなかなかないので、このチャンスをぜひ活用して欲しい。特に日本は少子化なので、ロボットとAIが国を支えていく二大産業になります。そのチャンスを掴み取るような仕事についていただけたらと思います。
舛田:
まさに今は「AIブーム」ですが、このブームも当然終わりを迎えます。
ただ、それはAIが廃れるのではなく、至極当たり前の存在になるからです。身近な存在になる前にチャレンジをしておけば、たとえ失敗したとしても大きな財産になります。

こういったパラダイムシフトに立ち会える人はそうそういません。
なので、今私もそうですし、見ていらっしゃる皆さんも含めて非常に運がいいんです。この幸運な機会に全力でチャレンジをすることが大切だと思います。

AIはしばしば「人間の仕事を奪う脅威」として連想され、歴史上、新しいテクノロジーが登場する度に、それにより雇用が失われるなどといった懸念の声は繰り返し出てきた。
一方で私たち日本人にとって馴染み深いアニメ『ドラえもん』の世界では、「こんなものがあったらいいのに」とポジティブに夢想する数々のテクノロジーが描かれている。

今回の座談会でも、「クリエイティビティまでもがAIの領野になりつつある」ことが指摘された。今私たちが考えるべきは人間とテクノロジーのトレードオフではなく、人間とテクノロジーが共存するポジティブな社会像ではないだろうか。

MC齋藤は映画『her』で描かれた"人間がAIと恋に落ちる世界"が訪れる可能性について触れたが、人間の感情を手に取るように読み解く人工知能が、確実に私たちの生活に溶け込み始めている。

今回登場いただいたゲスト二人とのディスカッションから、AIが最適化する未来像、そしてAIにより社会が様々な変化を迎える中で、今私たちが何をすべきなのか、そのヒントが垣間見えたのではないだろうか。

構成:オバラミツフミ

秋田県湯沢市出身。趣味は商店街を歩くことと喫茶店を巡ること。
Twitter:@ObaraMitsufumi
Mail: obaramitsufumi[アット]gmail.com


編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
編集者・ライター。リクルートホールディングスを経て、独立。修士(東京大学 学際情報学)
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

カメラマン︰松平伊織

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