会員登録待ちが続く人気の秘訣は? 服との"偶然の出会い"を演出する「airCloset」

2016.01.08 09:30

昨年以来、音楽や映像など、サブスクリプション型(定額制)のサービスが次々と登場。その波は、ファッション業界にも--。月額料金を支払えば、洋服やアクセサリーが借り放題になるというファッションレンタルサービスが相次いでリリースされている。編集者兼タレントの坪井安奈による各社体験レポートをお届け。

編集者兼タレントの坪井安奈です。3回にわたり、ファッションレンタルサービスの体験や担当者の方へのインタビューを通して、各社の特徴を探っていきます。
今回は、ファッションレンタルサービスの先駆者といえる「airCloset」。株式会社エアークローゼット 代表取締役 CEO・天沼聰さんにお話を伺いました。
昨年末にはEvery Little Thingとのコラボレーションも発表されるなど、今後は様々な方面とのコラボも拡大していくそう。さらに先日1月5日には、事業拡大に向け複数社から10億円弱の資金調達を発表。大きな動きを見せる中、今回の取材では「airCloset」の細やかなこだわりを知ることが出来ました。

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◼︎レンタルは手段。目的は"新しい出会い"の創造。

坪井:
今日はよろしくお願いいたします。今でこそ、ファッションレンタルサービスは注目されていますが、最初に名前を聞いたのは「airCloset」さんだった印象があります。月額6,800円でスタイリストが選んだ洋服が月に何度でも届くという夢のようなサービス。先駆者として、苦労したことも多かったのではないですか?
天沼:
そうですね。私は前々職ではIT専門のコンサルタント、前職は楽天と、これまでファッションとは関係のないところで働いていました。ですので、つながりももちろんないですし、まずは我々が考えているサービスがファッション業界の人からどう見えるのか、価値があると思われるのか、聞いてみることから始めました。
坪井:
そもそも、どうしてアパレル業界に、全く違う業界から入っていこうと思われたのですか?
天沼:
当社は私を含めて3人で起業したんですが、起業にたって次の3つのことを決めていました。それは、

・インターネットが主体のビジネスにする
・シェアリングエコノミーの概念を取り入れる
・ライフスタイルに浸透して長く愛してもらえるサービスにする

ということです。これらの3つを考えると「衣食住」に当てはまるものがいいねという話になり、100以上考えたビジネスモデルの中から『airCloset』に繋がるモデルをやりたいということになりました。衣服って毎日着る身近なものですが、新しいものを着た時って、ワクワクするじゃないですか。そういった、人の気持ちに直接働きかけられるサービスで、人々を幸せにしたいと思ったんです。
坪井:
たくさんの中から選ばれたサービスだったのですね。なかなか理解してもらえない人には、どうやって共感してもらったのですか?
天沼:
私たちの言う"レンタル"というは、あくまでも手段で、目的は洋服との新しい出会い方を作っていくことです。数多くの洋服に触れて、生活の中で試してみたり、これまで自分では買わなかったものに出会えたり。「airCloset」がお客様とブランドとの出会いの場になりたいのだということを伝え続けました。そして、そこに共感していただけたんです。
実際にお客様から、「これは私じゃ絶対に選ばない色味の洋服だけど、着て出掛けたらすごく褒められました」というコメントもたくさんいただいています。まさに、一つの出会いですよね。きっとそのお客様は、今度ショッピングへ出掛けた時にはその色味の洋服をちょっと試着してみようかなと思ってくださると思います。そういった出会いこそが、私たちが提供したい価値です。
また、「airCloset」にはステークホルダーがたくさんいいます。お客様はもちろん、ブランド、クリーニング業者、運送会社、倉庫会社...などなど、皆がハッピーになれるサービスを作りたいとも思っていました。

◼︎出会い方にもこだわる。価格とBOXに込められた想い。

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洋服はこのBOXで郵送されてくる。3点入っているとは思えないコンパクトさ。

坪井:
サービスのターゲット層は何歳くらいなんでしょうか?
天沼:
当初27~35歳を想定していたのですが、現状は30代の方がメインになっています。続いて、40代、20代が多いです。忙しくてショッピングへ行ける機会が少なかったり、ファッション誌をゆっくり見て新しいコーデを知る時間がとれない方々に使っていただければと思っています。たとえば、働く女性や子どものいるママなどですね。
坪井:
月額6,800円という価格設定は他サービスよりも一見高いように思えますが、クリーニング代や送料もコミコミなんですよね?それを踏まえると、おそらく他と同じくらいの価格になりますよね。
天沼:
そうですね。当時、見渡しても参考にできるような同じようなサービスがなく、自分たちで200~300人くらいの女性にヒアリングをして、その分析から価格を設定しました。
ですが、送料を含んだ完全定額制にした一番の理由は、サービス利用時にあまりいろいろなことを考えてほしくなかったからです。「返却時に送料がかかるから、今回返したらいくらになるんだっけ?」などと、その都度考えてもらう時間をなくしたかったんです。
坪井:
純粋に、洋服との出会いだけを楽しんでもらいたかったということですね。他にユーザー目線で、特にこだわられた部分はありますか?
天沼:
たとえば、発送する時のこのBOX。我々が、届けているのは出会いです。その出会いは、感動的だったり、ワクワクする体験であってほしい。そんな思いから、どんなデザインだったら届いた時にテンションが上がるだろう?と、BOXにはかなりこだわりました。開き方もいろいろ考えて、横に開くのか縦に開くのか、スライドして出てくるのか、パカッと開けるのか、上のフタが取れるようにするのか...。いろいろ試した結果、開けた時に洋服とだけ対面できる今のスタイルに決まりました。
坪井:
発送するBOXにそこまでの想いがあったとは。驚きです。
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まるでプレゼントを開ける時のような、ワクワク感とドキドキ感がある。

天沼:
BOXをキレイな状態でご自宅に置いていただけるように、発送時には透明のビニールで覆ってお届けしています。BOXだけでも配達できるんですが、運送途中に汚れてしまわないように。
また大きさにも工夫して、通勤時などにコンビニに持っていって返していただきやすいよう、なるべく片手で持てる位の大きさにしようと、今のサイズにしました。
坪井:
たしかにこれならサッと持ち運べそう。
さっそく、中の洋服を見てみてもいいですか?

◼︎スタイリストのセレクトで"新しい自分との出会い"が実現。

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入っていたのは、ニット、パンツ、ワンピースの3点。

天沼:
洋服は、当社のスタイリストが3万点ほどのアイテムの中からユーザー様に合わせてセレクトしています。
スタイリスト:
これはマニッシュな感じがお好きな方をイメージして、少しカジュアル目のテイストで選ばせていただいたものです。
まずはテーパードパンツに、シンプルな白のニット。シャツインしたり、お手持ちのシャツやブラウスに合わせていただいても良いかと思います。もう1点はワンピース。こういったロイヤルブルーでシンプルな形のワンピースなら、普段マニッシュなものが好きな方でも着やすいかなと思いました。
坪井:
着回しやすそうですね。3点を選ぶ時のポイントはなんですか?
スタイリスト:
基本的にはオフィスでも着られるような洋服をお送りしているんですが、トップスとボトムなど、コーディネート出来るものが1つ入っているようにしています。あとは、トップスが2点なのか、もう1点がワンピースになのか、ジャケットがなのか、さまざまです。
坪井:
お客様のどういった情報をもとに選ぶんでしょうか?
スタイリスト:
普段は、顔写真・全身写真と好きな色味やチャレンジしてみたい色味などの、お客様の情報や要望を反映してセレクトしています。
時には、ご自身ではあまり選ばないようなものにあえて挑戦してみて頂けるようにもしています。好みとは少し外しているけどきっと似合うかな、思ってお送りした洋服を後日頂いたフィードバックで気に入って頂いているとわかった時は嬉しいですね。
坪井:
時には好みを絶妙に外すことも、ポイントなんですね。
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坪井:
感想やフィードバックはどのように管理し、アップデートされているんですか?
天沼:
当社では全システムを内製化していて、情報は全て社内のデーターベースで管理しています。細かい好みや傾向についてはスタイリスト間でも別途共有しています。
坪井:
スタイリストさんごとに担当のお客様が決まっているわけではないのですよね?
天沼:
現状では、担当や指名の制度は設けていません。スタイリストの一人ひとりが、目に見えないセンスを持っています。そのセンスも新しい出会いになるなと思うんです。いろいろなスタイリストにも出会ってもらいたいと思っています。
我々は突然の出会い"セレンディピティ"をとても大切にしていて、それにはスタイリストたちが持っている無形のひらめきが重要な要素であると感じています。IT企業として、システムの効率さやUXの改善は追求していきますが、スタイリストだからこそ提供できる価値も大事にしていきたいです。
坪井:
人の温かさとテクノロジーのバランスが絶妙だなと感じました。今、あまりに人気で利用開始待ちも出ているんですよね?
天沼:
はい。会員数は非公開なのですが、今でも数千人の方にご利用開始をお待ちいただいている状態が続いてしまっています。1日でも早くお楽しみいただけるように準備を進めています。また今後は、マタニティの方やシニアの方、メンズ、子ども服などターゲット層の拡大も検討しています。
近年、消費に関してのファッション離れが取り沙汰されることも多いですが、ファッションECだけでみると、経済産業省の調査で市場が1.4兆円から2.6兆円に上がるだろうとも言われています。より多くの人が、自由なファッションを楽しみ続けられるように今後もユーザー目線を第一にサービスを運営していきたいです。

天沼さんが何度も口にされていた"出会い"という言葉。IT企業としてテクノロジーを駆使しながらも、洋服のセレクトや価格設定、郵送BOXへのこだわりに人の温かさをしみじみと感じた、今回の取材でした。

取材・文:坪井安奈

タレント&エディター
学生時代はNYでの出版社インターンを経験。新卒で小学館に入社後、ゲーム会社・グラニにてIT業界誌『グラスタ』編集長。編集者としての活躍のみならず、番組やイベントMC、映画やMV出演等のタレント活動を行う。SENSORSでは" Fashion Editor"として「ファッション×テクノロジー」の現場を取材。
Twitter:@anchuuuuuuu
Instagram:@tsuboianna

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