「Airレジ」大宮英紀が燃やすユーザーエクスペリエンスへの情熱

2015.04.21 23:00

リクルートライフスタイル社が手掛ける無料POSレジサービス「Airレジ」の勢いが止まらない。昨年11月には10万アカウント導入を突破し、今年1月からは英語版をリリースし海外展開への一歩を乗り出した。「Airレジ」を統括する大宮英紀(おおみや ひでのり)氏に事業戦略やプロダクトへのこだわり訪ねた。

株式会社リクルートライフスタイル 執行役員 大宮英紀氏

「Airレジ」はスマホやタブレットをPOSレジとして利用できるサービス。初期導入費や月額利用費は無料で、主に新規出店の店舗で導入されている。注文入力や会計の機能だけでなく、予約や座席、売上や在庫の管理などができる機能もある。SquareやFreeeといった外部サービスと提携をしたり、「Airレジ」と関連した順番待ちの管理などを行う新規サービスなどもリリースしている。導入店舗からしてみれば、店舗業務を遂行する上でのハブとなる存在だ。

リクルートのビジネスはクライアント(≒企業)とカスタマー(≒消費者)の双方を結びつける"リボンモデル"が基本形。「Airレジ」もその系統の上にあるプロダクトだが、未だに大がかりなマネタイズは実施していない。大宮氏はマネタイズ以前に、「クライアントと消費者双方の体験価値を高めることへの重要性」を語る。

■リアルタイムに近しい情報こそが優れた"コンテンツ"になる

「Airレジ」の利用イメージ動画(CM)

リクルートライフスタイルは、昨年11月「Airレジ」と関連した2つのサービスをリリースした。その1つ「Airウェイト」は紙の受付表で行っていた順番待ち管理をスマホ上で行うことができる。もう1つの「Airリザーブ」は店舗のWEBサイトに埋め込むことができるウィジェットなどから予約管理ができる。こうしたサービスをリリースする背景には、消費者が普通の広告だけでは興味を示さなくなってきていることがある。

大宮:
FacebookやGoogleをはじめたとした様々なメディアが出てきている中で、消費者は単純に広告を出すだけじゃ動かなくなってきている。消費者の行動を支援する、もしくは消費者の利用体験をさらに向上させるようなものがもっと必要になってくるんじゃないですか。そのためには、差別化の意味も含めて、レジで蓄積している情報も使わないといけない時代になってきている。それを持って、メディアから店舗への導線までの全てをシームレスにつなげることを「Airレジ」でチャレンジしたいんです。

--「Airレジ」はコンテンツのとして役割も担っていくということでしょうか?

大宮:
そうですね。レジには店舗のリアルタイムの情報が反映されます。それを活用して「店舗にすぐに入れるか」とか「すぐに予約できるか」という情報を提供することがコンテンツになっていくと思います。消費者体験の価値を高めようとすれば、その人が何かをしようと思っているその時に有益な情報を提供することが大事で、それによって今後リアルタイム情報の価値がさらに向上していくのではと思います。それを活用して、「Airレジ」を導入頂いている店舗のお客様のエクペリエンスの向上に、どんどん役立てていきたいですね。

クーポンや基本情報を掲載してきたリクルートライフスタイル社が手掛けるメディアは、店舗のリアルタイムの情報と連動し、消費者の役に立つコンテンツ主導へと舵を切ることを予感させる。

■より人が人らしい仕事をできるように

「Airレジ」の画面を見ながら説明する大宮氏

「Airレジ」のビジネスモデルは、現段階では様々な可能性を模索している最中。店舗へ無料で導入させた後、急に利用料を取りはじめるのではないかという不安の声に「絶対にそれはない」と大宮氏は断言する。ただ、永続的に無料というではなく、既に「Airレジ」を導入している店舗がこれまでと変わらない形で継続的に利用できるマネタイズを図るとのこと。それもサービスへの投資が目的だ。前提にあるのは、「Airレジ」の導入店舗に勤める人の働く体験も向上させたいという大宮氏の思いだ。

--「Airレジ」のデータを活用したビジネスやサービスの展開は今後あるのですか?

大宮:
ありますよ。消費者の方がもっと便利に感じてもらえるような機能やサービスのために活用することはもちろんですが、私たちは店舗で働く人達の体験を向上することにも役立てると思っています。「Airレジ」のデータを見れば、店舗の人が今困っていることの見当がつきやすくなる。そこに私達の営業担当が困っていることへのフォローアップができる体制をとる。リクルートとクライアントとの関係を強固にして、店舗で働く体験をもっと向上させることにも期待しています。ゆくゆくは業務のバックヤードの部分は、機械に任せてしまい、働く人は人にしかできない接客やコミュニケーションの部分に集中する。そんな仕組みが作れれば良いと思います。

大宮氏のインタビューの中で「体験価値を高めること」の重要性が繰り返し述べられていた。「Airレジ」はプロジェクトの立ち上げからリリースまで1年の歳月を要している。実際の店舗に出向いて何度もユーザーテストを実施したそうだ。消費者やクライアントからの信頼を獲得して「ブランド」を確立することを目指している。まずは質の高いをプロダクトを作ることに専念し、無料で提供する。そして、無料だからこそ人やナレッジが集まり、そこに課金の仕組みを敷いていく。インターネットビジネスの王道どもいえるこの手法を愚直に実行している上に、リクルートが持つ膨大なアセットが加わるとなれば「Airレジ」が生み出す新しいイノベーションの形に期待せざるを得ない。

■「営業」のリクルートはいかに変わるか

リクルートのリボンモデル( http://www.recruit.jp/employment/ribbon-model.html )

リクルートは「営業」が強い企業としてのイメージがある。「Airレジ」のようなネットビジネスは、現場の営業の仕事を奪ってしまうことにもなりかねない。しかし、大宮氏は人が介在することの価値の可能性を説く。

大宮:
極端な話、人を介在しなくてもいいようにできるならしたいですが、介在するなら介在するなりの価値を出したいです。Webだけでは絶対に補完できない部分がある。顔と顔を合わせてないとわからないこと、非言語なところこそが人間の価値が発揮できるところだと思います。言語化できることや煩雑な「作業」は僕らがやる。現場の営業の人たちには、これまでの売り込みや飲み会だけでない、いままではできなかった営業のスタイルや方法を確立する手助けができればと思います。

「Airレジ」は消費者やクライアントの体験だけでなく、自社の仕事のスタイルまでも大きく変えてしまう可能性がありそうだ。リクルートは「リボンモデル」を超えることができるのだろうか。

取材:石塚たけろう

石塚たけろう: ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、大手企業の新規事業開発、VR領域のスタートアップに参画。Webデベロッパー。

最新記事