誰でもアバター、移動は無料。次世代経営者が創る"個"の時代--ミラティブ 赤川隼一×nommoc 吉田拓巳

2019.04.09 10:00

akagawa-yoshida01.jpg

(左から)吉田拓巳氏、赤川隼一氏、齋藤精一、落合陽一、草野絵美

国内外の広告賞にて多数の受賞歴を誇るトップクリエイター・齋藤精一、世界でもっとも注目される日本人研究者・落合陽一、海外にも根強いファンを持つ歌謡エレクトロユニット「Satellite Young」を主宰する草野絵美----各界を賑わす3名をMCに迎えたSENSORSサロン。

ゲーム、ロボット、評論、写真、建築など複数の領域を横断し、次世代のムーブメントを複眼的に捉えてきたシーズン4。シーズン最終回のテーマは、「次世代経営者」だ。ゲストには、総額35億円の大型資金調達を達成し、"NEXTメルカリ"として注目を集める企業ミラティブの代表・赤川隼一氏、若干23歳にしてこれまで数々のサービスで話題となり、最近では運賃無料の配車・運行サービスnommocをリリースして話題を集めた若手起業家・吉田拓巳氏の2名をお招きした。

前後編の2本立てでお届けする前編。「得意分野をテクノロジーと掛け合わせ、人々の可能性を広げていきたい」赤川氏と「時代の流れを汲み取り、常に新しいサービスをつくる」吉田氏は、サービス開発に至る経緯を熱く語った。クラウドファンディングの活用や副業社員の採用など、新しい組織の在り方を模索する二人は、個と組織のパワーバランスが逆転した時代にどのような思考のもと経営しているのか。次世代経営者が抱く思想について伺った。

草野絵美(以下、草野):今回SENSORSが注目したテーマは、「次世代経営者」です。若くして活躍する新世代経営者をゲストに招き、旧世代と新世代で異なる経営者の違いを深掘りしていきたいと思います。

落合陽一(以下、落合):僕はもう、「若手経営者」ではないかもしれないですね。

齋藤精一(以下、齋藤):まだまだ「若手経営者」ですよ。

落合:でも、僕が手がける領域は、主に"オールドエコノミー"です。クラウドファンデイングやビットコインで資金調達を行うなど、新しい方法論を実践していますが、それ自体を行わなくても成立する社会ではあります。

齋藤:僕もつくっているものは新しいですが、経営の方法や資金調達に関しては"オールドスクール"です。

スマホ一台で、魂解放。"ドラクエやっている感じ"で人類をつなぐ「Mirrativ」

草野:それではトークテーマ「次世代経営者」について、ディスカッションを始めます。まずは、赤川さんから自己紹介をお願いします。

赤川隼一(以下、赤川):スマホ一台でゲーム実況ができるサービス「Mirrativ」を運営する、ミラティブの赤川です。会社が掲げるミッションは「わかりあう願いをつなごう」。

私たちは"わかりあい"や"孤独"が、人類が持つ数少ない巨大な残課題のひとつだと思っています。人が持つ「わかってほしい」という気持ちをつないでいくことで、もっと多くの人が幸せな人生を送れるのではないか?と考え、ユーザーもメンバーも個々人の幸せを追求できるような会社経営を目指しています。

「Mirrativ」のコンセプトは、「友達ん家でドラクエやっている感じ。」です。僕や落合さんは、ドラクエがひとり用のゲームであるにも関わらず、友達の家で一緒にプレイしていた世代だと思います。コンテンツそのものを楽しむだけでなく、その場にいる友達と過ごす「空間そのもの」を楽しむ。その、「好きなもの同士でつながる」体験が、僕たちが言う"わかりあう願い"のつながりです。

akagawa-yoshida01_02.jpg

落合:言語化が難しい、感情の動きは重要だと思います。それこそ、赤川さんがよく言う"エモい"ですね。

赤川:現代は、ロジックよりも"意志"が重要視される時代。仕事も結局、やりたいことをいかにやれるかが大事だと思っているので。

例えば世の中には、歌が上手くても容姿に自信がない人がごまんといます。アバターとライブストリーミング・常時接続の掛け算で、そういった人の可能性や魂を解放させていきたいんです。以前は「ゲームが上手いだけでは飯が食えない」と言われていましたが、今ではゲーム実況でマネタイズができる時代。自分の得意分野をテクノロジーと掛け算することで、可能性を広げることをキーテーマとし、ここ1年会社を経営してきました。

落合陽一は「射程圏内」。時代の要請を反映した完全無料タクシー「nommoc」

草野:続いて吉田さん、自己紹介をお願いします。

吉田拓巳(以下、吉田):株式会社nommoc代表の吉田です。「こうなりたい」という固定化された"ありたい像"をつくらないことが、僕たちが経営するうえでの信念です。ものすごい速さで変化する時代の流れを汲み取り、いま自分たちがやるべきことを考え、常に新しいサービスをつくることを大事にしています。

直近で手がけたサービスは、誰もが無料で乗車できるタクシー「nommoc」。車両を配車するためにアプリをダウンロードしていただき、その際に取得した個人情報から、個々人に最適化したディスプレイ広告を乗車中に配信します。その広告費で、運送の運賃を賄う仕組みです。

akagawa-yoshida01_03.jpg

落合:タクシーに乗っていると、人材紹介とプロセスオートメーションの広告ばかりが配信されます。完全にターゲティングされていると感じますし、ずっと何かを語りかけられている気がしますね(笑)。

個と組織のパワーバランスが崩壊した現代に、会社ができること

草野:それでは、最初のトークテーマ「若手経営者にしかできない経営とは?」についてディスカッションを行います。吉田さんはクラウドファンディングによって資金調達を行なったとお伺いしていますが、詳細について教えていただけないでしょうか?

吉田:初回の資金調達を、クラウドファンディング形式で行いました。会社の株を少数公開し、購入者を募っています。結果的に、開始から4分半で5,000万円を調達できました。

なぜこのような形式を選んだのかというと、自分たちだけでサービスを開発するより、ユーザーを巻き込んだほうが"今っぽい"と感じたからです。スタートするタイミングで自分たちを応援してくれる方に投資家になっていただき、一緒に盛り上げてもらおうと考えました。そのほうが、ユーザーがサービスを「自分ごと」として感じられるので、成長しやすいと思っています。

落合:株式の購入が、節税の仕組みになればいいと思います。僕の研究室でクラウドファンディングをすると、支援者は実質的に「国立大学への寄付」をしているので、半額が返金されたりする。税法にハマる仕組みを考えられれば、社会を活性化する新たなパイプラインになると考えています。

akagawa-yoshida01_04.jpg

草野:赤川さんの会社は、正社員よりも副業社員が多いとお伺いしています。

赤川:意識してそうした組織づくりをしたわけではありませんが、フルタイムの正社員が25名いるのに対し、副業で手伝ってくれているメンバーが倍近くいます。スタートアップに転職するのは腰が重いと思いますが、副業として手伝ってほしいとお願いすると、優秀な人がたくさん参加してくれたんです。

副業が推奨され始め、優秀な人が成長機会を求めていますが、一方でその受け皿は多くありません。そうしたこともあってか、「優秀な人を最速で集める」ことを目指していたら、結果的に副業が多い現在の形になりました。

齋藤:副業推奨の機運がありますが、「働き方改革」を謳いながら、本当の意味で副業がワークしている企業はほとんど見たことがありません。僕は、副業を提供する企業が、参加してくれる人にしっかりペイできる仕組みを整えることが絶対的に必要だと思います。 関わった人みんなでコミュニティが形成されていかなければ、これから企業はダメになっていく。会社のあり方が問われる時代になっているのではないでしょうか。

吉田:「どのようにして仲間を募るか」は、時代のキーワードですよね。お金だけが重要な時代ではないですから。副業にオープンな会社の方が、つまるところ優秀な人材の集う会社になるかもしれません。

赤川:おっしゃる通りで、僕はもはや会社よりも個人が強い時代だと思っています。「採用」といっても、会社がやるべきなのは、ひたすら機会を提示し続け、選んでもらえる存在になることだけです。もう、ルールだけでは個人を惹きつけられない。なのでミラティブは、「機会を愚直に提示し続けなければ、転職して当然だよね」という前提で組織を運営しています。


続く後編では、「お金の扱い方」「日本が世界で勝てる領域」「失敗の乗り越え方」の3つをテーマに行われたトークの模様をお伝えする。赤川氏、吉田氏は共に「お金を第一に考えて経営をしていない」と語った。二人の思考に共通する共通する価値観とはどのようなものなのか?シーズン最終回を締めくくる、白熱の討論をお届けする。

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(SENSORS|落合陽一がオススメするSXSW2019のコンテンツとは!?ゲスト赤川隼一・吉田拓巳(次世代経営者 1/3))

構成:オバラミツフミ

1994、秋田出身。フリーライター → 長期インターンプラットフォーム「InfrA」を運営する株式会社Traimmu広報PR。構成『選ばれる条件』(木村直人・エザキヨシタカ 共著) アシスタント 『10年後の仕事図鑑』(堀江貴文・落合陽一 共著)など。
Twitter:@ObaraMitsufumi

最新記事