お金よりも社会的価値、失敗は経験値。"僕たち世代"が求める正義について--ミラティブ 赤川隼一×nommoc 吉田拓巳

2019.04.16 10:00

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(左から)吉田拓巳氏、赤川隼一氏、齋藤精一、落合陽一、草野絵美

「次世代経営者」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストには、総額35億円の大型資金調達を達成し、"NEXTメルカリ"として注目を集める企業ミラティブの代表・赤川隼一氏、若干23歳にしてこれまで数々のサービスで話題となり、最近では運賃無料の配車・運行サービスnommocをリリースして話題を集めた若手起業家・吉田拓巳氏の2名をお招きした。

前後編の2本立てでお届けする後編では、番組でも大いに盛り上がりを見せた「お金の扱い方」「日本が世界で勝てる領域」「失敗の乗り越え方」の3つのテーマを取り上げる。

「お金よりも、やりがいを大事にしたい」と語る赤川氏は、年俸の高い企業よりもスタートアップの方が人材を集めやすい時代になっているのではないかと考察する。一方で吉田氏は"不確実な挑戦に寛容ではない日本社会"の問題点を指摘し、「失敗か成功で考えず、経験値ベースで物事を判断する」自論を展開した。

社会が求める在るべき姿や人としての価値観がラディカルに変化する現代、次世代経営者たちはどのような思考で社会に価値を提供し、事業を展開しているのか。シーズン最終回を締めくくる白熱の討論をお届けする。

"僕ら世代"が仕事に求めるのは、お金じゃなくて「青春」なんだ

草野絵美(以下、草野):それでは続いてのテーマ「お金の扱い方」について話していきたいと思います。

落合陽一(以下、落合):世代によって異なる価値観の一つに、お金の扱い方があると思っています。僕らより上の世代だと、お金が欲しくて起業した人がたくさんいました。お金を稼ぐことがかっこいいと思われていた時代です。

しかし、今は価値観が変わってきているなと。ちなみに僕はお金に興味がなく、社会が潤滑に動いていくことの方が重要だと思っています。赤川さんも、吉田さんも、あまりお金に興味がないように見えますが、いかがでしょうか。

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赤川隼一(以下、赤川):お金よりも、やりがいを大事にしたいと思っています。年収が900万円を超えると、幸福度は年収といっさい比例しなくなる"900万円の壁"があるとよく聞きますが、自分の経験上も同じ感覚です。

そうした点を鑑みると、今は年俸の高い企業よりもスタートアップの方が人材を集めやすい時代だと思います。もちろん「ストックオプションを保持していっしょに夢を見る」といったことは重要で向き合っていますけど、それは"青春感"というか、"部活感"というか、一体感を作って、企業の成長と個人の報酬をフェアにリンクさせるツールと捉えています。年収だけにフォーカスすれば必ずもっと稼げるメンバーに「選んでもらう」ためには、報酬以上に、やりがいが重要と感じています。もちろん、経営者として、金銭的にも必ずフェアなオファーをするようにしていますが。

吉田拓巳(以下、吉田):以前はよく、仕事には「食べていくために」といった接頭語がついていましたよね。僕自身、上の世代の方から「それで食べていけるのか?」ということもよく言われていました。

齋藤精一(以下、齋藤):お金の価値観自体が、ラディカルに変わってきていますよね。僕が会社を立ち上げたときは、「事業の失敗は許されない」と考えられていた時代でした。

なので、キャッシュフローを担保するために銀行との関係構築をして...。という、経営のいろはの「い」から学んでいました。ライゾマティクスはアーティストが集まって、「最低限生活を担保しながらビジネスを広げていこう」というスタイルからスタートしています。ITバブルの当時からしたら、珍しい会社だったと思います。

とはいえその感覚も、今となっては当たり前の価値観です。「ものを作りたい」というモチベーションをどれだけ持ち続けられるかが重要で、そうでなければ、結果的にプロフィットがついてこないと思っています。

「ハイコンテクストなコミュニケーション」はアジアの強み。世界に広がる日本文化のポテンシャル

草野絵美:それでは、次のテーマに参りましょう。赤川さんも、吉田さんも、これまでにないビジネスを展開されています。お二人が考える「日本が世界で勝てる領域」について、お伺いさせてください。

赤川隼一:ミラティブが事業を展開するアバターコミュニケーション領域はまさに、日本がグローバルで勝ちやすいと思っています。ハイコンテクストなコミュニケーション文化は、単一民族国家や東アジアに強みがあります。世界で初めてメッセンジャーサービスを提供した「KakaoTalk」は韓国発ですし、今では世界の共通言語となった"Emoji"も日本が発祥です。世界を席巻する「TikTok」を展開するByteDanceも中国の企業ですよね。

「Mirrativ」が行うアバターコミュニケーションは、Twitterで複数アカウントを運用するのが当たり前といった、日本人特有の「八百万の神」的な死生観を表しています。つまり、極めて日本的な文脈です。一方で、セカンドライフから映画「レディ・プレイヤー・ワン」まで、変身願望自体はグローバルで表現されてきている。これまでの流れを鑑みるに、世界に広がっていくポテンシャルがある領域だと思っています。

昔は、人種が異なる者同士で構成されている国では、ハイコンテクストなコミュニケーションが成立しませんでした。しかし今や、誰もがスマートフォンを持つ時代です。ベースとなる知識やコンテクストをほとんど全ての人が入手できるので、極論"Emoji"だけでも会話ができます。

世界がどんどん単一民族国家化している時代背景と、人類普遍の欲求である変身願望が掛け合わされば、アバターコミュニケーションは世界に浸透する可能性があると思っています。

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吉田:日本人は「"非"言語化する能力」が極めて高い人種ですよね。まさに、コスプレが代表例です。この「美しい」「可愛い」といった言語にとらわれない感覚は、世界に通用するポテンシャルがあると思っています。

とはいえ、大多数が「いけるぞ」と言わない限り、挑戦できないのが日本社会。不確実な状態でも世界に挑戦できる環境ができてほしいです。

落合:日本発のサービスは、いつも「少し早い」んです。成熟するまでのスピードが早いのですが、そのまま海外の壁を超えられずに終わってしまうケースも多いと思っています。日本の中で成熟しきってしまうと世界に広がっていかないので、若い世代が日本特有の美的感覚をある程度"漂白"し、世界に接続してほしいですね。

失敗よりも、不誠実を怖れよ。脆さに耐えうる"経験値思考"とは?

齋藤:お金の価値観にも通ずる話ですが、皆さんは失敗を怖いと感じることはありますか?僕は「怖くないです」と言い切りたいですが、やはり怖いです。ライゾマティクスには、長く勤めてくれている仲間がいます。彼らには家族がいますし、ローンもあるだろうし、簡単に失敗できないと思ってしまいます。

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赤川:もちろん葛藤はありますが、10年前と比較すれば、失敗が怖くない時代にはなっていると思います。経験がアセットとして評価される時代なので、打席に立ってバットを振った方が、失敗を恐れてバットを振らない人よりも得をする。

僕からすると、恐るべきは、失敗をするよりも不誠実でいること。「経験と失敗がアセットとして評価される」のは、何事にも誠実に向き合っているときのみです。現代は"リファラル社会"と言われるほど、個人の評判は流通して重要視されます。不誠実に過ごしていると、アセット云々の前に、その人の人間性で判断をされてしまいます。

吉田:リファラル社会を生き抜くポイントは、「経験値をいかに貯めるか」だと思っています。そうした視点で考えると、仮に失敗しても、それはそれで経験値が貯まります。むしろ、成功体験よりも大きな失敗をした方が経験値が得られるのではないかと思うほどです。僕は失敗か成功で考えず、経験値ベースで物事を判断していますね。

落合:僕は普段から失敗をしまくっていますよ。常に反省モードの人生を送っています。失敗は、ちゃんと反省したら良いだけです。

赤川:僕は『反脆弱性』という本が好きで、会社の組織テーマに"反脆い"を掲げています。"反脆い"とは、文字通り"脆い"の反対という意味で、「硬い」とも違います。通常、失敗の衝撃を受けることで組織は潰れてしまいますが、その失敗やトラブルを糧にさらに成長できる組織が、"反脆い"組織です。

人類史上長く続いているものの多くは、おおよそ反脆い性質を持っています。たとえば、ワクチンはちょっと異物を入れた方が耐性が強くなる考え方じゃないですか。失敗は必ず起こるものなので、失敗がむしろプラスになることを意識しています。望んで失敗するわけではないですが、「失敗を経験して強くなっていくぞ!」くらいの気持ちを持っていますね。


「これからは、"個"の時代がやってくる」

そんな言葉を初めて耳してから、早数年が経つ。そして事実、会社と個人のパワーバランスが崩壊していると感じることが増えた。テクノロジーによってエンパワメントされた----つまり魂が解放されたことで、誰であっても会社に従属することなく、自分の意志次第で可能性と選択肢を自在に操ることができる時代が既に訪れている。

赤川氏の言葉を借りるのなら、"個"の時代とはつまり、「ロジックよりも意志が重要視される時代」だ。そんな時代に生まれた、お金や名声にプライオリティを持たない"僕ら世代"だからこそ、共に働くには理由が必要であり、共に夢を追うには正義が必要になる。吉田氏が指摘したように、「どのようにして仲間を募るかが、時代のキーワード」になっている。

シーズン4最終回を締めくくる今回のSENSORSサロン。次世代経営者たちの思考から見えたのは、新しい時代を生きる僕たちにも、正義が必要であることの示唆であったように思える。

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(SENSORS|落合陽一はお金よりも社会派!?ゲスト赤川隼一・吉田拓巳(次世代経営者 2/3))

構成:オバラミツフミ

1994、秋田出身。フリーライター → 長期インターンプラットフォーム「InfrA」を運営する株式会社Traimmu広報PR。構成『選ばれる条件』(木村直人・エザキヨシタカ 共著) アシスタント 『10年後の仕事図鑑』(堀江貴文・落合陽一 共著)など。
Twitter:@ObaraMitsufumi

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