"音のビジュアライズ"が、次世代動画の鍵となるーー明石ガクト×三浦 崇宏「ブレイクスルーするクリエイティブ」

2019.01.08 18:00

「ブレイクスルーするクリエイティブ」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストに迎えたのは、起業家・クリエイターとして活躍するオピニオンリーダー、明石ガクト氏(ワンメディア株式会社代表取締役)と、三浦崇宏氏(株式会社GO代表取締役)だ。

全3回にわたってお届けする第1弾記事では、映像業界の未来を切り拓く、明石氏の思想を深掘りしたトークの様子をお伝えする。「ほとんどの人が、動画を"音無し"で観ている」と話す明石氏は、時代に合わせた新しい動画を追求している。"音無し"でも楽しめるONE MEDIAを、落合も「無音で観ていてもサウンドが想起される」と絶賛した。

自らもクリエイティブ業界の先端に立つMC陣、三浦氏との議論から、映像業界をブレイクスルーするためのヒントを探っていく。

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(左より)齋藤精一、三浦崇宏氏、明石ガクト氏、落合陽一、草野絵美

草野絵美(以下、草野):
今回のテーマは、「ブレイクスルーするクリエイティブ」。起業家であり、クリエイターとしても活躍されている、オピニオンリーダーのお二人をお招きします。落合さん、齋藤さんは、このようなテーマでトークセッションされる機会はありますか?
落合陽一(以下、落合):
僕の場合はブレイクスルーの方法よりも、「何をブレイクスルーすべきなのか?」を聞かれることが多いです。課題の洗い出しや、議論すべきトピックの整理を求められる立場にいることが多いかもしれません。
草野:
アーティストやサイエンティストは、疑問を投げかける側の存在ですもんね。齋藤さんは、いかがですか?
齋藤 精一(以下、齋藤):
僕は、あまりないかな。一時期は多かったですけどね、2,3年前とか。ただ、最近は世間から「都市開発に強い人」と思われているようで、そうしたトピックの質問をされることは多いですね。

都市開発は、あらゆる知恵や技術を集結させて行うもの。ですから、落合君が言っていたような課題の抽出はもちろん、解決方法の考案、そして実装まで一気通貫で携わっています。そう考えると、日々「ブレイクスルーするクリエイティブ」に取り組んでいるといえるかもしれません。
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草野:
今回お越しいただいたのは、ワンメディア株式会社代表取締役の明石ガクトさんと、The Breakthrough Company GO 代表の三浦崇宏さんです。既成の概念や思い込みに縛られず、起業家・クリエイターとして活躍されているお二人は、若手ビジネスパーソンからの注目を集める存在です。

明石さんは、新しい動画表現を追求すべく、ワンメディアを設立。ショートフィルムや山手線車内のデジタルサイネージなど、幅広いジャンルの動画コンテンツを制作されています。先日刊行された、動画がテーマのご著書『動画2.0 VISUAL STORYTELLING』も絶賛発売中です。

三浦崇宏さんは、博報堂でのマーケティング・PR・クリエイティブ部門を経て、2017年にGOを設立されました。日本PR大賞、カンヌライオンズなども受賞されています。

本日はよろしくお願いします。お二人は、すごく仲良しだと伺いました。
三浦 崇宏(以下、三浦):
木曜日にこの番組の打ち合わせで会い、金曜日に別の仕事の打ち合わせで顔を合わせ、土曜日には明石さんが僕の誕生日会に来てくれ...。ここ5日間で4回も会っています(笑)。
明石ガクト(以下、明石):
自分の会社の社員よりも、三浦さんの方が顔を合わせる回数が多いかもしれません。
草野:
収録前も「こんなに趣味が合う人もいない」と仰っていましたよね。
三浦:
世代が近いこともあって、話が合うんですよ。
明石:
今日の洋服も、お互いグレーで被っちゃいました(笑)。

無音なのに、音が聞こえてくる。"音のビジュアライズ"が、視聴者の心を揺さぶる

草野:
ここからは、ゲストのお二人が代表を務める会社のタグラインをもとに、明石さんと三浦さんの根底にある思想を深掘りいきたいと思います。

まずは明石さんが代表を務めるワンメディアのタグラインから。「あなたの一日、人生、そして世界観を揺さぶるような体験を」です。こちらは、どういった意図が込められているのでしょうか?
明石:
近年、「コンフォートゾーン」を出ようとしないメディアが多いと思うんです。「SNSで"いいね"をもらえればOK」みたいな。だから、僕らが運営している動画メディア「ONE MEDIA」では、大麻などの比較的ニッチなテーマを積極的に取り上げています。あえて"いいね"を狙わずに、既存のメディアがあまり取り上げないものをコンテンツにしているんですよね。ミレニアル世代の人たちに「なんだこれ、知らなかった」と感じてもらえるような情報を、日々配信しているんです。
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草野:
MCのお二人は、ONE MEDIAについてどのようなイメージをお持ちですか?
落合:
パキッ、ズバッ、シャッみたいなイメージです(笑)。
明石:
擬音の感じですね。
落合:
それがすごく良いなと思っています。
明石:
今、落合さんがONE MEDIAのイメージを擬音で表現してくださいましたけれど、そこは我々のこだわりでもあります。この収録も、"音あり"で行われていますが、実際にスマホで動画を視聴するほとんどの人が"音なし"で観ているんですよね。かつて、音と映像はワンセットで制作されていましたが、それがテクノロジーの進化と共に変わってきている。にも関わらず、コンテンツの在り方は長らく変わっていませんでした。そこで「"音なし"で視聴者に刺さる動画とはなにか」と考えた結果、"音が聞こえてくるような"動画に行き着きました。
落合:
ONE MEDIAを観ていると、無音再生でも出演者の声が聞こえてくるんですよ。ビジュアルからサウンドが想起されるというか...。そこは、かなりこだわっていますよね?
明石:
はい。出演者には、必要以上に「動いて」もらっています。これは、テレビ業界ではあまり取られない手法です。ONE MEDIAは、お茶の間で観ることがメインのテレビとは異なり、落ち着いた環境で視聴されるメディアではない。電車を待つ間の2分、食後の5分など、限られた時間の中で観られることが多いんです。そういう状況で観る人に対して、伝えたいことを100%伝えるための工夫をしています。

「納品」がゴールではない。配信後のことまで、考えることが重要

齋藤:
明石さんは、若手育成についても考えていらっしゃいますか?「自分が先陣を切って、映像業界を切り開いていく」みたいな。
明石:
めちゃくちゃ考えています。SENSORSでこんなことを言うのも恐縮ですが、映像業界ってすごく体育会系なんですよ。「長くやっている人が一番えらい」と言われる、年功序列の世界。だから、若い子が自身のセンスやクリエイティビティを発揮できるようになるまでに、すごく時間がかかるんですよね。でも本当は、若い人ほどセンスがあるし、アイデアをたくさん持っている。TikTokを観ていると、驚きますよ。
齋藤:
何が驚きなのでしょう?
明石:
彼らはTikTokの既存機能とiPhoneだけで、すごく面白い動画を作るんです。そういった才能が、商業的に活かせるような仕事を作っていきたいと考えています。だから、弊社の採用は「センス」を重視していて。映像の仕事が未経験でも、ビジネスマナーがなくても、関係ない。ワンメディアには正社員が45人いて、平均年齢が27歳です。時々「社内に大人がいないですね」なんて言われます(笑)。
齋藤:
組織の新陳代謝は激しいですか?辞める人っています?
明石:
全然辞めないですね。
齋藤:
じゃあ、どんどん増えていく感じなんですね。
明石:
そうですね。
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齋藤:
僕も、経営者として"働く環境を作る"立場にあるので、明石さんの考え方にはとても共感できます。僕の考え方を社員に植えつけているので、能動的に仕事をする奴が増えているんです。
明石:
僕は、社員によく「動画を納品することがゴールじゃない」と言っているんです。今は、YouTubeやTik Tokなどがあって、誰でも動画配信ができる時代。かつては、NHKとキー局合わせて10局程度しかなかった配信ネットワークが、無限に広がっているんです。だから、クリエイターには「自分が作った動画をどんな人が観て、どんな反応をされたか」までしっかり見届けてほしい。この先、映像業界はさらに進化していきます。だからこそ、配信された後のことまで考えられるか否かが、業界で生き残れるかの境目になると思うんですよね。
齋藤:
企画から制作、配信手法を考えるところまで、担当者が一人で行うのですか?
明石:
基本的に一人でやりつつ、必ずみんなで話す場を設けています。かなり厳しい発言が飛び交う会議なんですけど...。僕は「実際に会うと、物腰柔らかいですね」とよく言われるのですが、会議中はすごく怖いです(笑)。でも、そんな感じで喧々諤々でやらないと、スキルが磨かれないですよね。

続く第2弾記事では、三浦氏が代表を務めるGOの「The Breakthrough Company」という呼称をテーマに行われたトークの様子をお届けする。漫画『キングダム』をビジネス書として打ち出したプロモーションや、物議を呼んだケンドリックラマーの黒塗り広告などの、斬新な施策の裏にある三浦氏の思想を紐解いていく。

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(SENSORS|落合陽一と齋藤精一が現場で嘆く言葉とは!?ゲスト:明石ガクト・三浦崇宏( ブレイクスルーするクリエイティブ 1/4))

執筆:いげたあずさ

株式会社モメンタム・ホース所属のライター/編集者。ビジネス・テクノロジー領域をはじめ複数媒体で取材・執筆。 アパレル販売・WEBマーケターを経て現職。 映画と音楽が好き。未来の被服の在り方、民族学、伝統文化などに興味があります。
Twitter:@azuuuta0630



編集:小池真幸

ビジネス・テクノロジー領域を中心に取材・執筆・編集を重ねる。東京大学で思想・哲学を学んだのち、AIスタートアップのマーケター・事業開発を経て、現職。1993年、神奈川県生まれ。「人文知とビジネス・テクノロジーの架橋」に関心があります。
Twitter:@masakik512

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