世の中を変えるアイディアは、「専門家」からは出てこないーー明石ガクト×三浦 崇宏「ブレイクスルーするクリエイティブ」

2019.01.10 18:00

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(左から)三浦崇宏氏、明石ガクト氏、落合陽一

「ブレイクスルーするクリエイティブ」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストに迎えたのは、起業家としてもクリエイターとしても活躍するのオピニオンリーダー、明石ガクト氏(ワンメディア株式会社代表取締役)と三浦崇宏氏(The Breakthrough Company GO 代表)だ。

本記事は、全3回にわたってお届けする最終回。前半は、MC齋藤からのキーワード「時代とメディア」をテーマにトークが展開され、時代と共に変わるメディアのあり方について、ディスカッションが行われた。三浦氏は「マスメディアは、速報性を捨てるべき」と警鐘を鳴らし、明石氏は「個人がメディア化した今、メディアはコミュニティであるべき」と熱弁した。時代の先を見据える二人の意見から、これからの時代に必要とされるメディアのあり方を探っていく。

後半は、落合からのキーワード「一流と二流」をテーマに行われたトークの様子をレポート。昔は、ひとつの分野だけを極めることが「一流」と呼ばれていたが、今はスキルを横展開して幅広い分野で活躍する人が賞賛されている。そんな風潮について、落合はゲスト二人に意見を求めた。

時代が変革期を迎える今、クリエイティブを武器に新しい挑戦をし続ける明石氏と三浦氏。MC二人との議論から、二人の持つブレイクスルー思考を紐解いていく。

次世代メディアは、同じ価値観を持った仲間が集う場所

草野:
ここからは、MC二人からのに事前にあげてもらったキーワードをもとに、トークセッションを行いたいと思います。それでは、まずは齋藤さんからのキーワード「時代とメディア」ですね。
齋藤:
明石さんも先ほどおっしゃっていましたが、時代と共にメディアのあり方が変わってきているじゃないですか。お二人は、今の時代におけるメディアの役割はなんだと思いますか?
明石:
ここ数年で、メディアと読者、メディアと視聴者の関係が変わってきたと感じます。ひと昔前までは、メディアは読者や視聴者の"教育者"でした。たとえば僕は若い時に、『relax』という雑誌を読み、デンマークにあるヒッピーの楽園「クリスチャニア」の存在を知りました。「こんな自治体があるのか、やばいな」と感じたことを、今でも覚えています。インターネットが普及して、情報コンテンツがバラ売りされるようになってからは、個々のメディアの影響力が弱くなっているんですよね。

逆に、強くなっているのは"個人"の影響力。YouTuberのHIKAKINさんの番組ばかりを観る人、落合さんの出ているメディアをひたすらチェックする人など、"好きな人"軸で触れるメディアを選ぶ人が多い。最近よく耳にする「個人のメディア化」とは、こういうことだと思います。

では個人がメディア化した今、メディアが果たすべき役割は何か。僕は「コミュニティ」だと思います。同じ価値観を持った仲間が集まる場所というか...。今の若い子たちに「いつも見ているメディアはなにか?」と聞いてもはっきり答えられないことが多いですが、逆に「いつも追っているコミュニティや好きなトピックはなにか?」と聞くとすぐに答えが返ってくるんです。だからONE MEDIAは、彼らにとっての「コミュニティ」を目指しているんです。
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齋藤:
「HIKAKINさんトライブ」「落合さんトライブ」のように、色々な部族が存在していますよね。それが、いい意味でコミュニティになっているし、1つの部族に所属している人もいれば、5つの部族に所属している人もいる。さらには、日々所属先を変えている人もいると思います。
落合:
僕の本を買う人やオンラインサロンに入会している人は、中堅企業の社長さんが多いんです。つまり、る程度同じ視点で話ができる人たちが集まってきてくれている。僕はマスメディアに出る機会が多いけれど、実際のフォロワーはマスじゃないんですよ。

マスメディアとは、"偶然触れるメディア"。新聞は、もはやマスメディアではない

三浦:
そういえば先日、渋谷のハロウィンを視察しにいった時に面白い光景を目にしました。仮装している人の多くが、渋谷駅の券売機に並んでいて...。つまり、彼らはSuicaやPASMOを持っていなかったんです。
落合:
地方から来ていた人が多かったということですか?
三浦:
そうですね。普段は地元から滅多に出ないけれど、イベントの時にだけ都会に出てくる人がお祭り騒ぎをしていたんです。一方で、渋谷駅にはそんな彼らを遠巻きに見ている人たちもいて...。その光景を見て感じたのは、社会の"分断"です。普段から当たり前のようにICカードを使って電車に乗る人もいれば、たまに東京に行くために切符を買う人もいる。これは収入の差ではなく、"暮らしのIQ"の差。マーケティング業界でも、最近は"暮らしのIQ"別に施策を分けるべきだと言われています。
齋藤:
そのように分断された社会において、マスメディアはどうあるべきだと思いますか?
三浦:
まず、速報性を捨てるべきだと思います。速報性では、Twitterに絶対勝てません。でも、Twitter上の情報には信憑性がない。ハロウィンの日も、横転したトラックの動画が拡散されていましたが、僕のタイムライン上だけでも3人の人が「このトラックは父のものです」と呟いていました。正しい情報を発信するためには、それなりの時間とお金がかかります。だからこそ、十分な予算があるマスメディアがしっかりとやるべきなんですよね。セットや出演者のギャラではなくて、情報の「質」の向上にお金をかけるべきです。
明石:
「マスメディア」の定義も時代と共に変わっていると思います。僕が子どもの頃は、マスメディアといえば新聞やテレビでした。でも今の時代におけるマスメディアとは、"偶然触れるメディア"なのだと思います。ONE MEDIAは、山手線という公共空間の中で多くの人の目に触れたことで、一気に知名度が上がり、マス層にも届くメディアになりつつあります。一方で、新聞は購読の申し込みをしなければ読めません。新聞の購読者数も減っている現代においては、限られた人にしか届かないメディアなんですよね。
三浦:
たしかに、新聞はマスメディアとは言えないかもしれません。しかし、専門家や識者には寄稿してもらいやすいメディアです。僕たちは、そうしたメディアごとの特性を理解した上で、PR施策をプランニングしていかなければいけないと思っています。
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落合:
「新聞に載れば、読んでくれる」と思う人は僕の友達のおじいちゃん100人くらい...。「新聞がマスにリーチするか」ではなく、単純に読者の属性の問題だと思います。
三浦:
齋藤さんが仰っていた"トライブ"ですね。
落合:
でも、あと7~8年ほどしたら「新聞を読むトライブ」は消滅すると思います。だからメディアは常に、「次のトライブは何か」を追っている。世代交代が起きるたびに、メディアのあるべき姿は変わっていく気がします。
齋藤:
インターネットは本来「パーソンtoパーソン」のものなのに、最近は数字で判断されるようになってしまったと感じています。明石さんは、こうした風潮についてどう思われますか?
明石:
僕は、数値指標を軸にした考え方には抵抗し続けています。そもそも、KPIでものごとを語る人や、数字で評価されるメディアが好きじゃない。実は、ONE MEDIAはインターネット広告を出稿していません。広告を出すと、エクセル上のスコアでメディアを評価されてしまうので。

インターネット動画は、2006年頃から増え続けていますが、人が一日の中で動画を視聴する時間は変わらない。その時間を無理に増やそうとするのは、間違っていると思います。たとえば三浦さんが最近、漫画『キングダム』の表紙をビジネス書風にしていましたが、本屋さんに訪れた人が、その表紙を見る時間は一瞬です。しかし、多くの人が写真を撮ってSNSにアップしたことで、話題になりました。SNS上に生成されたコンテンツは、三浦さんのクリエイティブから生まれたもの。要は、クリエイティブに触れる時間の長さよりも、心にどれだけ深く刺さるかが重要なんです。だから、僕たちはPVや視聴時間よりも、コメントやシェアをすごく大事にしています。

なにかを極めた人は、他のジャンルでも一流になれる。時代と共に変わった「一流」の基準

草野:
続いては、落合さんからいただいたキーワードをご紹介します。「一流と二流」です。落合さん、こちらはどういった意味でしょうか?
落合:
昔は「一流のクリエイターは、自分の専門分野しかやらない」と言われていたじゃないですか。写真家なら写真しかやらないし、映画監督は映画しか撮らない人が多く、「専門外のことをやっている人は二流だ」と言われていました。でも今はむしろ逆で、個人のキャラが立っていれば、専門外のことで活躍できる。

そうなった時、クリエイターに問われるのが「センス」です。テクノロジーの進化で、動画配信も写真撮影も簡単にできるからこそ、どんなセンスを持っているかが重要になってくると思います。センスがあれば、映画でも写真でも人を惹きつけられるので。そんななか、僕が最近考えているテーマは「非専門家から、専門家を超える人が生まれるのか」。お二人はどう思われますか?
三浦:
"高さあっての広さ"だと思っています。僕は今、さまざまなパートナーと一緒に新規事業を立ち上げたり、WEBサービスを作ったりしていますが、ぼくの場合は全てのベースにあるのは広告を作る技術なんですよね。博報堂時代に、広告クリエイターとしてのスキルを磨き上げたので、それが今活かされているんです。ですから、何らかの分野で一流になった人は、他の分野でも二流を凌ぐ可能性が高い。何かを突破した瞬間に、スキルが横展開できると思うんですよね。

したがって、「なんでもやりたいです」と言う若手広告クリエイターには、「コピーライターでもデザイナーでもCMプランナーでもいいから、まずはひとつの分野を深くやってみよう」とアドバイスしています。ひとつの分野を突き詰めれば、あらゆるジャンルに応用できるようになるので。最初から「なんでもやろう」と思って成功する人は、クリエイター業界ではまだいない気がします。
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(左から)落合 陽一、齋藤 精一

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落合:
では、なにかを突破して横展開している人と、なにかを突破してもなお、それをやり続けている人。どちらの方が一流だと思いますか?

昔だったら、後者の方が一流と言われていたと思うんです。でも今は、前者の方が周りよりも頭ひとつ抜けていると思うんですよね。
齋藤:
僕も落合君と同意見です。一点突破型よりも横展開型の方が、世の中を変えるクリエイティブを生み出せると思います。
落合:
誰も思いつかないものは、横展開型からしか生まれないような気がしますね。
齋藤:
僕はもともと建築をやってましたが、建築の道は完全に諦めて広告にシフトしたんです。でも気がついたら都市開発に携わることになって、また建築の仕事にも関わっています。そういう風にドメインを広げた方が、新しいアイディアが生まれやすいんですよね。今は、広告クリエイターが地方のブランディングをすることも多いじゃないですか。一点突破型だと見えない世界が、横展開することで見えてくることがあるんですよね。
明石:
僕も同感です。ちょうど最近、動画をテーマにした本を出したのですが、動画に関する専門的なことだけを書いても届かない人たちが一定数いると思ったんです。だから僕は、本自体を"動画っぽく"することにしました。つまり、テキストを極力少なくして図をたくさん挿入し、動画のように視覚的に楽しめる本に仕上げたんです。そうしたら、Twitter上でもポジティブな感想がたくさん呟かれていて、おかげさまで結構売れているんです。これは、僕が動画を極めてきたからこそできたことだと思います。あらゆることの定義が変わってきたからこそ、何かを極めた人が別ジャンルでも活躍できるようになっているのだと思いますね。
三浦:
昔と違って、ひとつのことを突き詰めていくと、あらゆる所から声がかかるようになりましたよね。何かを突破した瞬間から多元的に生きていくことが義務付けられているような世の中になっているのではないかと感じますね。

テクノロジーが進化し、社会は大きな転換期を迎えている。そんな時代において、変化の必要性を感じながらも、一歩踏み出せない人や企業は多いだろう。変化とは、未知なるものへの挑戦だからだ。前例のない未知に挑むことは、容易なことではない。しかし、明石氏や三浦氏のように、時代の流れを冷静に見つめ続けていけば、変化を恐れないブレイクスルー思考が培われていくのではないだろうか。

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(SENSORS|落合陽一に興味を持つおじいちゃんトライブとは...ゲスト:明石ガクト・三浦崇宏( ブレイクスルーするクリエイティブ 3/4))
(SENSORS|落合陽一が炎上商法を言い換えると〇〇〇.ゲスト:明石ガクト・三浦崇宏( ブレイクスルーするクリエイティブ 4/4))

執筆:いげたあずさ

株式会社モメンタム・ホース所属のライター/編集者。ビジネス・テクノロジー領域をはじめ複数媒体で取材・執筆。 アパレル販売・WEBマーケターを経て現職。 映画と音楽が好き。未来の被服の在り方、民族学、伝統文化などに興味があります。
Twitter:@azuuuta0630



編集:小池真幸

ビジネス・テクノロジー領域を中心に取材・執筆・編集を重ねる。東京大学で思想・哲学を学んだのち、AIスタートアップのマーケター・事業開発を経て、現職。1993年、神奈川県生まれ。「人文知とビジネス・テクノロジーの架橋」に関心があります。
Twitter:@masakik512

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