ロボットと人間は感情を交わせる。アンドロイドアナウンサー・アオイエリカの誕生秘話

2018.06.09 18:00

1969年、まだ当時は遠い未来だった21世紀から「猫型ロボット」が日本にやってくる世界を描いた人気漫画『ドラえもん』が刊行された。「こんなものがあったらいいのに」とポジティブに夢想する数々のテクノロジーを描写した同作は、子供から大人まで老若男女を問わず虜にした。放送日である毎週金曜日の夜を、今か今かと持ちわびていた人も多いだろう。

刊行から50年近くが経過し、かつては夢幻だったロボットと人間の"共存"が現実になった。世界に先駆けて発売された「Amazon Echo」をはじめ、日本からは、好きなキャラクターと一緒に暮らせるバーチャルロボット「gatebox」が誕生している。

今回のSENSORSサロンでは、2018年4月1日付で日本テレビにアナウンサーとして入社したアンドロイド・アオイエリカを交え、「ロボットと表現」をテーマに未来のテクノロジーを探っていく。番組前半のゲストには、大阪大学基礎工学研究科の小川浩平氏を招いた。

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(左より)アオイエリカ(アンドロイドアナウンサー)、小川浩平氏、齋藤精一、落合陽一、草野絵美

--本日のSENSORSサロンでは、日本テレビのアンドロイドアナウンサー・エリカを招待してのディスカッションになります。MCお二人は、エリカと初対面ですか?

落合陽一(以下、落合):
僕は過去に二度お会いしています。エリカ、髪伸びたね。
齋藤精一(以下、齋藤):
僕もお会いしたことがあります。エリカさんのお披露目イベントだったと思います。
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アオイエリカ(以下、エリカ):
どうですか、この衣装は。
落合:
いいですね。
草野絵美(以下、草野):
では、今日のタイトルコールはエリカにお願いしましょう。
エリカ:
今回のテーマは、「ロボットと表現」です。会話したり、動いたり表現できる私たちロボットのテクノロジーの秘密や今後の可能性などに迫ります。

以下、大阪大学基礎工学研究科講師の小川浩平氏をゲストに招いた議論が行われた。小川氏は、アオイエリカの開発にも携わったロボット研究者の第一人者。開発秘話を交えた小川氏の自己紹介から話は始まる。

アンドロイドの"人間性"を決めるのは、人間の感覚

小川浩平(以下、小川):
大阪大学の小川と申します。アンドロイドロボットを、かれこれ10年以上かけて研究開発を行ってきました。ソフトウェアの改良を続け、現在が4代目になります。開発を行うロボットの外見は同じですが、中身は独自の人格を付与しているので、日テレさんのエリカと、研究室にあるエリカでは、全くの別人です。
齋藤:
たしかに、目の前にいるエリカさんはよそ行きの化粧をしていますね。
小川:
研究室のエリカは、もう少しナチュラルです。

--エリカに搭載されたシステムでは、どういったことが可能になるのでしょうか?

小川:
実は、本日登場していただいているエリカは、遠隔操作でコントロールしています。操作者がおり、意図的に会話をさせているのです。ただ、表情や瞬きなど、人間が無意識的に行う動作は自律的に行えるよう設計してあります。
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落合:
たまに僕の方をキョロっとみますが、目を認識して動いているんですか?
小川:
ランダムに動かしているだけです。これが人型ロボットの面白いところで、人間が勝手に自分の方を見たと認識しています。

--ちなみに、アンドロイドアナウンサーを開発するきっかけを教えていただけますか?

小川:
アンドロイドができることはまだまだ限られているなかで、何ができるかを突き詰めて考えると、アナウンサーの仕事ができるのではないか?と考えたことです。

アナウンサーは、話すことがある程度決まっているシチュエーションがありますよね。たとえば簡単に自分の意見を言い、相槌を打つことなど、そうしたことはアンドロイドでも可能です。まずは簡単なことから始め、徐々に人間に近づけていけるのではないかと思いました。
齋藤:
先ほど「よそ行きの化粧」という話をしましたが、アナウンサーさんはよく「日テレ顔」なんて表現をされることがあります。エリカさんは、そうした顔を解析して平均値の顔を作られているのでしょうか?
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小川:
実は、平均顔にしているわけではないのです。「こう整形したら綺麗になる」というTipsを全て注ぎ込んでいます。
落合:
アーティフィシャルな顔なんですね。
小川:
おっしゃる通りです。完全にシンメトリーであったり、比率など、「美しい顔」と言われる要素を全て掛け合わせています。
落合:
プラスティックっぽくて、いいですね。

対話するたびに、エリカは人間になっていく

--化粧をしている分、より本物の人間に見えます。ちなみに肌はどういった素材で作られているのでしょうか?

小川:
シリコンです。よろしければ触ってみてください。
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落合:
太ももが柔らかいですね。
小川:
実は今、とても興味深い現象が起きています。普通、人間をこんなに簡単に触らないですよね。触るのであれば、一声かけると思います。つまり、まだ皆さんはエリカをロボット扱いしているんです。

しかしこれから、10分、20分と話していると、今よりも簡単に触れなくなるはずです。

--対話を重ねるうちに、私たちがエリカを人間だと認識していくのですね。ちなみに現在は、エリカさんを用いてどのような研究をされてるのでしょうか?

小川:
エリカに限らず、アンドロイド全般に言えることですが、基本的に工学と化学がパラレルに並行して走っています。アオイエリカのようにアナウンサーとして使う、もしくは受付嬢として使うなど、便利に動けるよう自律化を進めているところです。

また、「人間とはなんだろう?」という、科学の観点からも研究を行なっています。双方の視点を行き来しながら議論を深めていますが、研究の論文は半分以上が心理学です。
齋藤:
心理学や、哲学の観点も必要になりますね。
落合:
だんだん感情移入してきました。首のシワが美しいです。
小川:
おじいちゃんなど、シワがある人を再現するのは得意です。シワがある分、もっとリアルなアンドロイドを作ることができます。

続く第二弾「ロボットの「愛している」を、人間はどう受け止めるのか?言葉を越える"コミュニケーション"を考える」では、身体性を持ったロボットと、バーチャル上に出現するアンドロイドに接する人間の差異について議論する。また、MC齋藤がAIに恋する人間の姿を描いた映画『her』を例に挙げ、ロボットと人間の恋愛は現実に起こるのか?と問いを投げかける。

小川氏の研究室に所属する学生が「俺の女に触るな」と言わんばかりに、自分の開発したロボットに愛着を持つ様子など、"人間化"するロボットとの恋模様に迫った。

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(「ロボットと表現について」ERICA×小川浩平×落合陽一×齋藤精一が白熱議論)

構成:オバラミツフミ

1994年、秋田県出身のライター。ビジネス領域を中心に、各種メディアへの記事寄稿・ブックライティングをライスワークにしています。
Twitter:@obaramitsufumi

編集:長谷川リョー

SENSORS 編集長
編集者・ライター。リクルートホールディングスを経て、独立。修士(東京大学 学際情報学)
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

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