ロボットの「愛している」を、人間はどう受け止めるのか?言葉を越える"コミュニケーション"を考える

2018.06.19 18:00

「ロボットと表現」をテーマに行われたSENSORSサロン。全5回にわたってお届けする第2弾記事では、MC落合が挙げたキーワード「ソフトウェアのロボティクス」を口切にディスカッションが始まり、AIに恋する人間の姿が描かれた映画『her』を例に挙げながら、ロボットと人間の恋愛について話題が及んだ。

小川氏の研究室に所属する学生が「俺の女に触るな」と言わんばかりに、自分の開発したロボットに愛着を持つ様子など、"人間化"するロボットとの恋模様を紐解いていく。

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(左より)齋藤精一、落合陽一

第一弾記事に引き続き、第二弾のディスカッションの口火を切ったのは、MC落合がキーワードに挙げた「ソフトウェアのロボティクス」。身体性を持ったロボットと、バーチャル上に出現するアンドロイドに接する人間の差異についての話題から議論が加速していく。

VR空間で、人は横柄になる?"生身の人間"を感じるには、モダリティが必要

--それでは、続いてのキーワード「ソフトウェアのロボティクス」について、お話をお願いします。

落合陽一(以下、落合):
「対話エージェント」をロボットと表現する人と、しない人がいます。ソフトなのか、もしくはロボティクスなのかで議論が分かれるんです。「ソフトウェアとしてのロボティクス」に興味があります。
小川浩平(以下、小川):
ロボットに身体がないことも、十分あり得ると思います。実体がなくても、「ロボット」と表現することは正しいはず。ただ、身体がないと機能しない場合もあるんです。たとえば試験監督をロボットにする場合、バーチャルだと思わずカンニングしたくなってしまいます。

物理的な身体を持っていることで生まれるリアリティや迫力は存在します。なので、バーチャルでは表現できないことも少なくないでしょう。
落合:
僕は3Dディスプレイの研究をしているので、非常に興味深いです。たとえば、VR空間で目の前に見えている場合と、身体として目の前にある場合では、どのような違いがあるんですか?
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小川浩平氏

小川:
「触知可能性」に違いがあります。「触ったら、物理的フィードバックがあるだろう」と想像すると、リアリティが生まれるんです。3Dの物体では、そうした感覚が少ないのです。
落合:
なるほど。たしかに、VR空間に入ると、大人も子供も乱暴になるんですよね。フィジカルに存在する場合は「壊したらいけない」と思いますが、VR空間ではそうした感覚がない。
小川:
3Dの受付嬢には、「どうせ怒らないだろう」と考え、多くの人が横柄な回答をする気がします。ただ、エリカになら少しばかり丁寧な対応をするはずです。モダリティが増え、複雑になればなるほど、生身の人間に接する感覚に近づいていく。

たとえば経営者の銅像って、落書きしたくなりますよね(笑)。でも、視線があると急に落書きしにくくなる。情報量が増えていくと、"その人らしさ"が増えてくような気がします。
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齋藤精一(以下、齋藤):
僕がプロダクトを手がけるときに感じることですが、ミリセック単位で狂いのないものを製作すると、逆に美しさが失われる気がしています。人間は、完璧な振る舞いができないからこそ、美しい。アンドロイドを製作するときも、そういった設計にされていたりするのでしょうか?
小川:
エリカは機械ですが、モーターで動いている訳ではありません。指令を与え、空気のピストン運動で動くため、毎回違うアクションをするのです。逆にいえば正確な動きができないということでもありますが、そこに曖昧さが生まれています。

「俺の女に触るな」ーーアンドロイドに愛着を見出す研究生

--続いてのキーワード「ロボットと恋愛」についても、ディスカッションをお願いします。

小川:
非常に難しい問いですね。まず大前提として、「恋をしている」という状態は、人間側の認識に左右されます。

たとえば、アイデンティティは、他者がいないと生まれません。真っ白な部屋に1人でいたら、おそらく理解できないと思うんです。僕がある表情をしたら、誰かが「怒ってる?」と問いかける。すると、「僕は今、怒っているんだ」と気づくことができる。

他者との間にしか感情を定義することはできないので、エリカだけで感情を作るのは、また違う議論になると思います。
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アオイエリカ(アンドロイドアナウンサー)

齊藤:
ちなみに、研究室の学生さんで、ロボットに対して恋愛感情を抱いている人はいますか?
小川:
「恋愛感情を抱いている」かは分かりませんが、「俺のロボットに触るな」という学生はいます(笑)。

見学の人が来て「可愛いね」と言いながらロボットに触れると、「俺の女に触りやがって」といった具合にイライラしているんです(笑)。見ていて、非常に興味深いです。
齊藤:
精魂込めて作ったものに抱く愛着は、恋愛感情に近いものがありますよね。
小川:
彼は、「人に触られると腹が立つ」と言っていました。

ロボットは「恋愛」の概念を理解できるのか?

齋藤:
AIに恋する人間の姿が描かれた映画に『her』がありますが、実体のないソフトウェアと恋愛をする世界観は現実に起こりうると思いますか?
小川:
現時点で、『her』で描かれていたような至極ナチュラルなチャットボットを開発するのは非常に困難です。まだ先の未来になるでしょう。音声認識の技術でコケてしまいます。

次のステップとして、音声が認識できても「理解」ができない。たとえば「あなたが大好きです」と声をかけられても、「大好き」の意味を概念的に理解していなければ、返答はできません。「大好き」に対して「大好き」と返すだけなら可能ですが、恋愛はもっと高度です。
落合:
「愛してる」と声をかけられたときに、世の中の女性が返答するパターンを網羅し、統計的に応答するアプローチをとれば、概念上理解をしているのか、理解をしていないかの判別がつかない境目があるように感じます。そこに到達することは、ご自身のゴールになっていますか?
小川:
人間はもっと複雑な生き物だと思っています。「好き」の返答パターンは、何万通りもあるでしょう。受け取り手の人間が「相手には心がある」と認識するのなら、それでいいと思います。ただ、統計的なアプローチを取っても上手くいかないのです。

言葉の概念理解や、ロボットに欲求を持たせるなど、次の段階の工夫が絶対に必要になってくると思います。

続く第三弾「シンギュラリティ以前に起こる"半自律状態"とは?人間とロボットが共存する未来を探る」では、「人間とロボットの違いについて」をテーマに掲げ、将来ロボットが人権を持つ可能性について議論した。

小川氏は人権の歴史を遡り、「ロボットに人権が付与される可能性はある」と語った。「もしかすると、私の体の中はメカかもしれない」との問いに、SENSORSメンバーはどう答えるのか?

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(「ロボットの人間らしさについて」モダリティから法律まで議論! ERICA×小川浩平×落合陽一×齋藤精一)

構成:オバラミツフミ

1994年、秋田県出身。2016年からフリーランス。各種メディアでのインタビュー連載・ブックライティングがメイン。
Twitter:@obaramitsufumi



編集:長谷川リョー

SENSORS 編集長
編集者・ライター。リクルートホールディングスを経て、独立。修士(東京大学 学際情報学)
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

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