いつかロボットは、俳優を上回る。圧倒的存在感で観客を魅了する「ロボット演劇」の全貌

2018.07.03 18:00

「ロボットと表現」をテーマに行われたSENSORSサロン。全5回にわたってお届けする第4弾記事では、新たに演出家の平田オリザ氏をゲストに迎え、ロボット舞台のリアルとともに表現の可能性を探っていく。

平田氏は、舞台に立つロボットを「存在感がある不器用な女優」と表現し、俳優よりもお客さんの注目を集めると語る。演劇によって急速に精度を高めていくロボットの進化について、議論した。

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(左上より)落合陽一、齋藤精一、草野絵美
(左下より)アオイエリカ(アンドロイドアナウンサー)、小川浩平氏、平田オリザ氏

「ロボットと表現」をテーマに行われたSENSORSサロン。第三弾に続く第四弾記事では、番組後半より新たにゲストとして迎えた、演出家の平田オリザ氏を交えたディスカッションの様子をお伝えする。ディスカッションの前に平田氏が手がけた演劇『さようなら』を鑑賞した落合の感想から、議論は始まる。

ロボットは舞台上で、俳優よりも圧倒的な存在感を放つ

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--MCお二人は、オリザさんの作品を通してどのような感想をお持ちになりましたか?

落合陽一(以下、落合):
対人だと感じる違和感も、お芝居という枠組みの中で見ると、馴染みますね。
平田オリザ(以下、平田):
空間を共有し、コンテクストに乗せれば、あたかもロボットが自ら考えて喋っているかのように見せることができるんです。全米ツアーをした際には、お芝居を鑑賞した後に、アンドロイドに「あの女優さん演技が上手かったね」と声をかけられることもありました(笑)。
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平田:
私の仕事は、俳優が話すべき理想的なセリフを書くことです。なので、ロボットが喋りそうなセリフを書いて、適切な間で喋らせれば、ロボットが意思を持っているかのような演出ができます。
齋藤精一:
ロボットを人間が演じているかのように見せることもあれば、逆に初音ミクのように、息継ぎの必要すらない「ロボットらしさ」をストレートに表現することもあるのでしょうか?演劇の中での使い分けについて、お伺いしたいです。
平田:
アンドロイドと、いわゆるロボットの2種類を演劇で使い分けています。双方を同じ舞台で掛け合わせたことがあるのですが、面白いことに、ほとんどの方がロボットの方に感情移入するのです。ぎこちない姿をみて、「健気だな」と思っているのでしょう。

--ロボット演劇を始められて10年以上が経つそうですが、お客さんの反応はいかがですか?

平田:
ロボット演劇は、世界中どこでも人気です。ただ、目新しさで人気を集めているのか、本当に面白いのか、自分でもまだ分からないのです。ただ、可能性は感じています。

舞台に立つロボットは、たとえるなら「存在感がある不器用な女優」です。不器用な動きをしますが、存在感が圧倒的。お客さんの注目を釘付けにします。なので、俳優さんたちはやがてロボットと舞台に立つことを嫌がるのです。要は、嫉妬をしてしまうわけです。

人間の俳優に取って代わるには長い時間を要すると思いますが、現在も需要は確実にあります。たとえば、危険なシーンでは重宝されるでしょう。空を飛ぶシーンだけ俳優そっくりのアンドロイドが代役をするといった使い方は確実視されています。
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落合:
まさにスタントマンですね。
平田:
過去に、ブロードウェイでスパイダーマンがミュージカル化されたことがあります。その際に、事故が発生したために公演初日が予定よりも伸びてしまったのです。事故が立て続けに起こるので保険料が上がり続けたことが原因でした。

もし、保険料よりアンドロイドの開発費が安くなれば、スタントマンの仕事はなくなります。CGが発展したことで、ハリウッドのエキストラさんが失業したのと同じ事象が起ころうとしています。

緻密な計算と制約下の講演が、ロボット演劇を急速に進化させた

--それでは、続いてのキーワード「劇場とエンターテイメント」についてお話しいただければと思います。

落合:
エンタメとは結局のところ、劇場や映画館の構造も「2次元的なお芝居」を見る仕様になっていると思います。そうした構造では、やはりロボットの存在感が際立つように感じます。ノイズがないので、集中力を保ったまま見ることができる。日常で使うロボットと、劇場で使うロボットでは、大きな差があるなと感じています。
平田:
私たちはよくロボット演劇のことを、"ロボット研究のF1"と呼んでいます。50周、60周と同じ動きを持続しなければならない制約の中で行われるこの競技は、日常生活で起こりえないことです。

こうした制約があるから、飛躍的に自動車研究が進みました。ロボット演劇にも、この構造に似たところがるのです。従来のロボット研究は、実験室の中起こった出来事をビデオに収めて発表するのがお一般的でした。しかしロボット演劇は、何十ステージも同じことを繰り返さないといけないのです。埃っぽい劇場の中で待機させたり、暑い環境で演劇をしたり、過酷な環境下でも常に同じ動きをすることが求められます。

つまり、劇場という特殊な環境があるからこそ、研究開発のノウハウが培われていくのです。
落合:
人間の演者さんを映画で撮る際と、アンドロイドを撮るフレーミングに違いはあるのでしょうか?
平田:
僕は映画の専門家ではないので分かりませんが、演劇を通じて「人間がやるから面白い」ということではない、と認識しました。「空間を共有してるから面白い」のであって、ロボットでも役不足ではない。
落合:
オリザさんが指導するお芝居と、映像で切り取られたフレーミングの差分が見えてきた、ということでしょうか?
平田:
そうですね、間違いなくあると思います。

--小川さんはロボット演劇について、何かご意見はありますか?

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小川浩平:
一緒にアンドロイド演劇を作らせていただいたことがありますが、こけら落としの講演で号泣した記憶があります。その感動でいくつか論文が書けるぐらいに感動したのです。

アンドロイドが詩を詠むシーンがあるのですが、人間が詠む際の"嘘っぽさ"がない。行間を読ませるような設計になっていて、「本気で言ってるかも」と思いました。

一度オリザ先生にインタビューをさせていただいたことがあるのですが、「なぜこのように自然な演出になるのか」を理路整然とお答えになるのです。「計算し尽くされているな」と感じ、アーティストの偉大さを感じました。

続く最終回「ロボットが拡張する、人間の知性。教育の可能性を広げる"新たな学習"を紐解く」では、ロボットを用いた教育の未来について議論が交わされた。MC齋藤、アシスタント草野の子どもがスマートフォンなどのテクノロジーで知識を拡張していく姿が話題にのぼり、教育とロボットの親和性が再確認されることとなった。

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(平田オリザ「ロボット演劇はロボット研究のF1」劇場という特殊な環境が研究にフィードバック)

構成:オバラミツフミ

1994年、秋田県出身。2016年からフリーランス。各種メディアでのインタビュー連載・ブックライティングがメイン。
Twitter:@obaramitsufumi



編集:長谷川リョー

SENSORS 編集長
編集者・ライター。リクルートホールディングスを経て、独立。修士(東京大学 学際情報学)
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

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