ロボットが拡張する、人間の知性。教育の可能性を広げる"新たな学習"を紐解く

2018.07.04 10:00

「ロボットと表現」をテーマに行われたSENSORSサロン。全5回にわたってお送りしてきたシリーズの最終回では、ロボットを用いた教育の未来について議論が交わされた。MC齋藤、アシスタント草野の子どもがスマートフォンなどのテクノロジーで知識を拡張していく姿が話題にのぼり、教育とロボットの親和性が再確認されることとなった。

また最後には、小川氏と平田氏の両ゲストから、今後の表現活動についても言及があった。最先端の舞台で研究を重ねるプロフェッショナルたちの展望に注目だ。

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(右より)草野絵美、落合陽一、齋藤精一
(左より)アオイエリカ(アンドロイドアナウンサー)、小川浩平氏、平田オリザ氏

「ロボットと表現」をテーマに行われたSENSORSサロン。第四弾に続く第五弾記事では、「教育」にフォーカスを当て議論を深めていく。YouTubeで言語を学び、ウィキペディアで知識を深める今時の学習など、興味深い話題が飛び交った。

"ロボット×演劇"は語学習得に最適。新たな教育の一手となるか

--続いてのキーワードは「ロボットと教育」です。ロボットと教育現場の親和性についてお伺いしたいと思います。

平田オリザ(以下平田):
演劇を用いた教育を行なっているのですが、そこにロボットを使うと、喋るのが苦手な男の子がコミュニケーションを取るようになった例があります。入力した言葉をロボットに話してもらうことで、会話に参加できるようになるんです。

一つペルソナがあれば、おとなしい子が喋れるようになることも少なくありません。そこで、自己表現を学ぶのです。

また、教育とはそれますが、大きな可能性を感じているのが失語症のリハビリです。年齢の高い失語症の患者さんと若い作業療法士さんのリハビリでは、患者さんの方が「バカにされている」と感じてしまうことがあるのだといいます。

ただロボットなら、そうした感情を抱かなくて済む。自宅でもリハビリができるようになるのです。
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平田:
僕は海外で日本語教育をお手伝いしているのですが、途上国に一人の教員を派遣するのにも莫大な費用がかかります。また、多くの教師は女性なので、出産や子育てなどで国外に出られないケースも多々あるのです。

そこで、実験的にアンドロイドを派遣する取り組みを構想しています。彼女たちが遠隔でアンドロイドを操作し、授業を行う可能性が出てくるのではないかと思っているのです。
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落合陽一(以下、落合):
「人の代わり」ではなく、「新任のロボット先生」として認知してもらえそうです。
平田:
そうなんです!また、日本語教育を海外で学ぼうとする多くの大学生は、アニメや漫画から日本に興味を持っています。なので、ロボットが好きなんです。先生がロボットなら、モチベーションぐんと上がります。
小川浩平(以下、小川):
日本語教育とは逆に、英語教育にも応用できるのではないかと思っています。大人になればなるほど英語を学ぶのが億劫になり、恥ずかしさが生まれますが、ロボットなら家でも練習できます。

そこにオリザ先生は作るスクリプトを応用し、演劇形式で語学学習を行えば、完璧な会話を習得できます。おそらく、飛躍的に英語力が向上するはずです。一時間半の演劇を2〜3つマスターすれば、日常会話を全てカバーできると思います。

子供の可能性を広げるのは、親よりもロボット

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落合:
音楽ジャンルもロボットが得意な領域だと思っています。反復練習がすごく重要なので、繰り返し同じ動作をすることで、身につけられるのではないでしょうか。
齋藤精一:
お話聞いていて思いだしたんですが、子供が僕のケータイを持って隠れるんです。YouTubeを見ているのですが、そうして勝手に語学を身につけているのです。

この前は、突然「お父さん、ここからあそこまでパルクれる?」と聞いてきました。その言語の習得の過程は、親のティーチングでも再現可能ですが、より発展した形だと思うのです。子供のチャンスを広げていくのは、ロボットなのではないかと感じました。
草野絵美:
うちも5歳の子がいて、いつも「Google Home」に向かって「これは何?」と連呼しています。分からないことをすぐにWikipediaで調べる癖がついているみたいです。
落合:
以前、Pepperが教えるプログラミングのワークショップを開催したことがあります。すると、エラーをポジティブに捉えるんです。擬人化しているので、予想外の動きをしても、Pepperのミスを「エラー」と認識せず、「可哀想だ」と感じるのです。ロボットを使えば、ミスも肯定できる。面白い現象だなと思います。

プロフェッショナルたちは、表現でいかに未来を創るのか

--続いて、最後のキーワードです。お二人の「今後の表現活動について」をお伺いできればと思います。

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小川:
「生々しいもの」を作りたいと思ってます。見たときにゾクッとするような、心のうごくアウトプットがしたいです。ゾクッとさせて、なぜゾクッとしたかをリサーチする。そこを突き詰めていきたいと思っています。

なかなか答えのないことですが、まずは開発し、それから分析する予定です。きっとそこには、面白くて重要な問題が隠れているはず。ギャンブリングなことですが、そうした研究をできればと思っています。
平田:
僕は大阪大学の石黒浩先生と共同で演劇を作っているのですが、大学の役割である「さまざまな人が出会い、新しいイノベーションを起こす」ことを追求していきたいです。

大学以外でもロボット演劇に似た取り組みをしているところがありますが、最高の技術者と最先端のロボットで突き詰められる環境はありません。つまり、何かを作れば「世界初」になることができます。こうした環境を用意できることが、大学に残された唯一の役割。そうした環境の中で、表現を続けていきたいです。

ロボットの"人間化"は、ときに悲観論として扱われることもある。「人の職を奪い、人間の役割を奪っていくのでないか」という声を耳にすることも少なくない。

しかしゲストのお二人のお話を聞き、人間の能力を拡張するロボットたちに、思いを馳せることになったのではないだろうか。「彼ら」の助けを借りれば、私たちは遠くに見据えていた理想の未来を手繰り寄せることができるのかもしれない。

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(「ロボットは24時間働けるアイドル!?」平田オリザ氏を交え白熱のブレスト)

構成:オバラミツフミ

1994年、秋田県出身。2016年からフリーランス。各種メディアでのインタビュー連載・ブックライティングがメイン。
Twitter:@obaramitsufumi



編集:長谷川リョー

SENSORS 編集長
編集者・ライター。リクルートホールディングスを経て、独立。修士(東京大学 学際情報学)
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

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