宇宙飛行士を目指すタレント・黒田有彩--私が宇宙に惹かれる理由

2016.05.10 18:30

中学生の頃NASAを訪れたことをきっかけに宇宙の魅力に惹かれ、"宇宙のことを学ぶためには不可欠"な物理を学ぶべく、大学では理学部物理学科に進学。大学在学時から現在まで、"宇宙の魅力を発信する"という立場から活動。宇宙飛行士を目指すタレント・黒田有彩による連載がスタート。宇宙にまつわるエンターテインメント・テクノロジーを中心に、様々な角度から宇宙の魅力を伝えていく。初回は、"宇宙"に取り憑かれることになった原体験について綴ってもらった。
【連載記事一覧はこちらから

arisa_kuroda_1_1.JPG

情報誌『はれ予報』のインタビューで宇宙服を着用

私には小さな頃から、「なんで雲は落ちてこないの?」「なんで水に手を入れると短く見えるの?」「なんでコンクリートの道と砂の道があるの?」...自分の家から幼稚園や学校、習い事までの狭い世界の中で、たくさんの"なんで"がありました。その"なんで"を解決してくれる多くが、理科という教科。だから私は理科が好きでした。

その理科の中でも、一番ドキドキするのが宇宙のことを考えているとき。
あるとき母が図鑑を見せてくれ、太陽系に色んな色の、色んな大きさの"丸"が並んでいることを知るのです。そのときまでは、自分の住んでいるところは四角いと思っていたので(部屋が四角いから)、地球が丸いことも、地球の外に何やら黒い世界が広がっていることも初めて知りました。

星座にまつわる神話も、この上なく神秘的な世界で好きでした。私はさそり座だったので、特にさそり座の一等星のアンタレスを推していて。アンタレスのことについて調べてみると、直径が太陽の230倍(今では600~800倍とされています)、地球からの距離は500光年。
太陽系の外に、想像できないような大きな世界がある。...宇宙って不思議。宇宙って面白い。

arisa_kuroda_1_2.JPG

種子島宇宙センターの前でN-Ⅰロケットと

そして中学2年生のときに転機が訪れます。

全国の中高生を対象にした作文コンクールがあり、それで最優秀賞を受賞すればNASAに連れて行ってもらえる、というものでした。「NASAに行く!」これをモチベーションに、夏休みを丸々かけて作文を書きました。
今から15年くらい前、21世紀になったばかりのころでした。

---
20世紀、科学の発達によって人々の生活はどんどん便利に、快適になっていった。しかしそれと引き換えに、地球温暖化や酸性雨など、地球環境を破壊してしまう結果となった。21世紀の科学は、破壊された地球環境を再生するために使われるべきではないか。
---

このようなことを自分の実体験などを織り交ぜて書いたところ、最優秀賞に選んで頂き、「NASAに行く!」が現実となったのでした。

中学2年生の春休み、私が訪れたのはアメリカ、アラバマ州にあるマーシャル宇宙飛行センター。ここはスペースシャトルが作られたりしている施設でした。
宇宙開発の歴史を教わったり、実際に宇宙飛行士が訓練で使っていたマシンに乗ったり。それは上も下も右も左も関係なく、速さや回転の方向さえも規則性のない動きをするマシンだったのですが、ジェットコースターが大好きな自分は甘く見ていました。
「早く止めて~!」ようやく止まった時は、興奮と笑いと泣きが一緒に訪れていました。

そんな体験の中で最もドキドキしたのは、実際に宇宙飛行士の方が水中で訓練されているのを見たとき。テレビでは見たことがあったけど、目の当たりにするとその衝撃は想像以上。宇宙に関わる仕事がしたいなと、そのときにはじめて感じました。

arisa_kuroda_1_3.JPG

JAXA 地球観測センターで、実際に行われたことのある宇宙飛行士適正検査を体験(鏡越しに見て、図形の線と線の間をなぞる)

高校では理系クラスに進み、"宇宙のことを学ぶためには不可欠"と教えてもらった物理を学ぶため、大学は理学部物理学科に進学。

そしてまだ大学3年生だったころ、2008年、約10年に一度しかないJAXA宇宙飛行士募集がありました。その当時の募集要項によると、大学を卒業してさらに自然科学系の研究や設計、開発などの「実務経験」が3年以上必要とのこと。応募資格に満たないのですが、自分の宇宙への思いを伝えたくて応募しました。
その後大学を卒業して、宇宙飛行士の方々に実際にお話を聞いたり、その経歴を知ったりしていく中で、自分にはきっとできないんだろうなと諦めていました。

そんなとき、宇宙飛行士の山崎直子さんにお話を伺う機会がありました。「黒田さん、次の宇宙飛行士の試験、受けるんですか?」と尋ねられ、私は正直に、自分には無理だと思うので諦めましたとお答えしました。
それに対して山崎さんは、「これからは"伝える人"が宇宙に行くことで、多くの方が宇宙を身近に感じて興味を持つと思いますよ」と言ってくださったのです。諦めなくていいのだと。
そのお話を聞いてから、自分にもできることがあるのかもしれない...次は何年の募集になるか分かりませんが、宇宙飛行士の試験を受けよう。そう考えるようになりました。

宇宙飛行士には「実務経験」が必要です。
例えば向井千秋宇宙飛行士は外科医として、若田光一宇宙飛行士は航空会社で航空機のエンジニアとして、油井亀美也宇宙飛行士は航空自衛隊のパイロットとしての実務経験を経て、宇宙飛行士に選出されています。
私は大学卒業後、タレントとして発信することを主に活動してきました。つまり、私の実務経験は宇宙の魅力を「発信すること」。それを掲げ、来るJAXA宇宙飛行士の試験を受けようと考えています。

arisa_kuroda_1_4.JPG

種子島の大型ロケット発射場が見渡せる、ロケットの丘展望所

この連載でも、宇宙の魅力、宇宙をとりまくエンターテインメント・テクノロジー、科学の面白さなど、"黒田有彩のSENSOR"に引っかかったもの・ことをご紹介していきたいと思います。

まずは近日"宇宙×漫画"『宇宙兄弟』イベントや、"宇宙×ハッカソン"「NASA Space Apps Challenge」の模様を取り上げていきます。どうぞお楽しみに。

文:黒田有彩

タレント。1987年生・お茶の水女子大学理学部物理学科卒。
中学時代のNASA訪問をきっかけに宇宙に魅せられ、宇宙飛行士になることを目標とする"宇宙女子"。数々の宇宙に関連する番組への出演や、NHK教育「高校講座 物理基礎」MC、読売テレビ「ハッカテン」(ハッカソン番組)ゲストなど、研究や教育に関するメディアへの出演も。「宇宙女子」(2015年・集英社インターナショナル)共著。
Twitter:@KUROARI_RTTS
Instagram:@arisakuroda

最新記事