【黒田有彩】全世界同時開催!宇宙×ハッカソン「NASA Space Apps Challenge 2016」に潜入

2016.05.17 18:30

中学生の頃NASAを訪れたことをきっかけに宇宙の魅力に惹かれ、"宇宙のことを学ぶためには不可欠"な物理を学ぶべく、大学では理学部物理学科に進学。大学在学時から現在まで、"宇宙の魅力を発信する"という立場から活動。宇宙飛行士を目指すタレント・黒田有彩による連載がスタート。宇宙にまつわるエンターテインメント・テクノロジーを中心に、様々な角度から宇宙の魅力を伝えていく。今回は宇宙を題材にしたハッカソン「NASA Space Apps Challenge 2016」を取り上げる。
前回記事(#1):宇宙飛行士を目指すタレント・黒田有彩--私が宇宙に惹かれる理由

今回はまず、私がテクノロジーや「ハッカソン」に出会うまでを振り返ってみます。

きっかけは、3月の終わりから4月初めに放送された読売テレビ『ハッカテン』。
IoT(モノのインターネット化)などの最新テクノロジーの紹介や、ハッカソン形式で2チームが大阪の名所を舞台にした施策のプロトタイプを生み出す様子に密着した特別番組です。この番組で、私はインタビュアーやコメンテーターを務めさせていただきました。

実はハッカソンはもちろん、テクノロジーについても詳しくは無かったのですが、今の日本の最先端のテクノロジーを自分の目で見、教えていただき、レポートをする役割をいただいたのです。

まさに、百聞は一見に如かず。
どのレポート先でも無条件に楽しくて、指輪型ウェアラブルデバイス「OZON」や可変型ホームロボット「Tipron」など自分でも使いたくなってしまうプロダクトに出会うことが出来ました。 スマートフォンのアプリで制御できる電球「hue」やブロック型の電子タグ「MESH」などの気軽さにも目からうろこで、私はこの取材を通してIoTに関心を持つようになりました。

そして収録では、1ヶ月にもわたるハッカソンに密着。
みなさんそれぞれのお仕事がある中集まり、アイデアを出し合い、それを試行錯誤しながら形にしていく姿は、技術・アイデア・体力・精神力などの総合格闘技戦を見ているようでした。(参照:読売テレビ「ハッカテン」-- 街×テレビ×ハッカソン 実施の意義とは

収録後、番組内のハッカソンチームとして登場していた関治之さん(HackCamp代表)から「今度、黒田さんにピッタリのハッカソンがありますよ」と教えていただきました。
それは「NASA Space Apps Challenge 2016」という、宇宙を題材にしたハッカソン。『ハッカテン』を通して、さらにその世界を知りたくなったハッカソンと、私がもともと興味のある宇宙が、両方楽しめる機会。東京会場に私も足を運びました。

nasa_space_apps_3.jpg

「NASA Space Apps Challenge2016」は、NASAやJAXAのオープンデータを使って世界を良くすることがテーマの、科学者、一般人、企業の三位一体のアイデアソン&ハッカソンです。

世界100以上の都市で同時開催されるこのハッカソン。5回目の開催となる今年は、チャレンジテーマに「Aeronautics(航空工学)」「Space Station(宇宙ステーション)」「Solar System(太陽系)」「Technology(技術)」「Earth(地球)」「Journey to Mars(火星旅行)」が設定されました。

まず審査員のおひとりのHAKUTOの袴田武史さんに、今回のハッカソンが行われる意義を伺いました。
「宇宙開発は、限られた知識を持つ人しか関われないのではないかという閉鎖的なイメージがあると思います。ですが今回のハッカソンで、アイデアは誰にでも出せることを知ってもらいたいし、一般の方にもっと宇宙を身近に、楽しいものだと感じてもらえたらいいですよね。」

宇宙がとても好きだという方からそんなに詳しくないという方まで、参加者の方は様々。いろんな特技をお持ちの方が集まるから、新しいアイデアが生まれるのだろうなと納得しました。
人類の夢、宇宙。
世界100以上の都市で、さまざまな国の方がさまざまな言語で宇宙について議論し新しいものを作りだそうとしていると思うと、とてもワクワクしますよね。

印象に残った発表を、いくつかご紹介します。

Googleの陣取りゲーム『Ingress』からインスピレーションを受けたゲームアプリ『Linkress』。
実際の気象データや位置データとリンクさせることで、例えば、示された場所へ向かうと陣地を広げられるポイント(のようなもの)がたまるのですが、晴れた日よりも雨の日の方がそのポイントが高いのです。宇宙ではたらく人工衛星のデータを、身近なゲームに応用し、雨の日に出かけたくなるようにしてくれるところが面白いと感じました。

二つ目は、ウェアラブルお風呂。
今現在、宇宙飛行士がISSなど宇宙空間に行った際、お風呂に入ることができません。無重力の状況下では水は丸くなり、それが飛び散るとさまざまな機械に影響しますし、入浴後、浴室内の水を時間をかけてふき取る手間を考えたときに、シャワーなどは使わない方針になったのです。
でもやっぱり宇宙でもお風呂に入りたい!という欲望を叶えてくれるのが、ウェアラブルお風呂。行く行くは首から下の全身への展開を考えているそうですが、まずは手湯、足湯バージョンを試すことができました。

nasa_space_apps_4.jpg

何も入っていない状態から、手を入れるとお湯が注ぎ込まれていきます。目をつぶって感覚を研ぎ澄ませると、少しこそばゆい感覚がありますがとても気持ちよかったです。
やがてお湯が抜かれタオルで拭きながら手を抜くと完了。首の動きなどを読み取ってお湯の調整をするセンサーも併せて開発されていました。宇宙でお風呂、現実になれば宇宙飛行士もリラックスできるでしょうね。

三つめは今周回している3,500もの人工衛星を、より身近に感じられるアプリ『チャテライト』。
深層学習や言語処理、リアルタイムレンダリングを使って、キャラクター性をもった衛星がチャットのように宇宙の情報を楽しく教えてくれます。 例えば、太陽観測衛星「ひので」だと、太陽のような男・松岡修造さんの言葉を学習させたそう。
以前、人工衛星を作っている工場に取材に行ったことがあるのですが、携わる方々は、一つ一つの工程を丁寧に正確にされていくうち、だんだんと愛着が湧き、最後は衛星が生き物のように思えてくると。そんなオンリーワンな人工衛星だからこそ、擬人化という着眼点はピッタリだと思いましたし、人工衛星からどんな情報や恩恵を私たちが得ているかを知ることは、教育的にもとてもいいと思いました。

最優秀賞にも選ばれたこの作品。SENSORSでもおなじみの、アーティスト市原えつこさんも 「人工衛星のキャラクター化は今まで発想したことがなく、とても面白いと感じました。世界に発信したときに、日本的な感性をアピールできるし、キャラクターは日本の得意分野だと思います。これからの世界大会でも期待したいですね。」とおっしゃっていました。

nasa_space_apps_1.jpg

さらにハッカソン終了後にも、審査員の方々からお話を伺いました。

JAXA広報部長の庄司義和さんは、「宇宙は"研究開発"だけで終わってはいけないんですね。国民生活を豊かにするために、どんなふうに"宇宙を使っていけるか"を考えていかなくてはいけない。今回は、いろんな視点からの宇宙の使い方を見せていただきました。例えば、海の男たちをサポートする海洋の最適航路アプリは、すぐに実現できそうですよね。思いもよらない宇宙の使い方を教えていただき、とても得るものがありました。個人的にも純粋に楽しみました」とおっしゃっていました。

SpaceApps Tokyo前事務局長で今回も審査員を務めた湯村翼さんは、これからの宇宙ハッカソンに期待するものとして「サービスを発表・公開して、それだけで終わるのではなく、1年2年さらには10年単位で使っていただけるサービスやプロダクトが、SpaceAppsから生まれればいいなと思います」とおっしゃっていました。

nasa_space_apps_2.jpg

今回、取材させていただいて、「次は私も参加してみたいな」という意欲が出てきました。

例えば、人工衛星などから得たデータを分析して、各惑星・小惑星の"香り"を調合して作ってみたりしても面白いかなと思うし、無重力の状況下でもパウダーなどが舞わずにお化粧ができるようなものがあればいいなと思います。
あとは、宇宙に関するクイズが人工衛星から送られてきて、正解したら人工衛星が褒めてくれるなどといったものがあれば楽しく宇宙のことを学べるかもしれません。

全世界同時開催の『NASA Space Apps Challenge』自体は年に一回の開催ですが、ピッチイベントなど、日本国内では定期的に集まる機会を設けていきたいとのこと。
宇宙とどんなもの・ことを掛け合わせると楽しいか、ワクワクするかを私も日々考えていきたいなと思います。

【関連記事】
宇宙飛行士を目指すタレント・黒田有彩--私が宇宙に惹かれる理由

文:黒田有彩

タレント。1987年生・お茶の水女子大学理学部物理学科卒。
中学時代のNASA訪問をきっかけに宇宙に魅せられ、宇宙飛行士になることを目標とする"宇宙女子"。数々の宇宙に関連する番組への出演や、NHK教育「高校講座 物理基礎」MC、読売テレビ「ハッカテン」(ハッカソン番組)ゲストなど、研究や教育に関するメディアへの出演も。「宇宙女子」(2015年・集英社インターナショナル)共著。
Twitter:@KUROARI_RTTS
Instagram:@arisakuroda

最新記事