イノベーションを創出する環境とは?「Ars Electronica Tokyo Initiative」キックオフイベント

2017.06.15 16:00

PHOTO:Ars Electronica Tokyo Initiative / Hitoshi Motomura

「アルスエレクトロニカ」は、オーストリア・リンツ市で30年以上行なわれる、アート、サイエンス、テクノロジー、そして社会を紐付けたフェスティバル。今回、アルスエレクトロニカと博報堂は、イノベーション創出コミュニティ「Ars Electronica Tokyo Initiative」を始動する。SENSORSはいままでもアルス・エレクトロニカの活動を追ってきたが今回は"東京イニシアチブ"のキックオフフォーラムをレポートする。SENSORSのMC落合陽一氏のコメントにも注目だ。

■ 国内でもアルスエレクトロニカの取り組みを

PHOTO:Ars Electronica Tokyo Initiative / Hitoshi Motomura

その歴史あるアートフェスの熱気は、国内にも影響を与えている。今年、日本人では、STARTS PRIZEグランプリを、やくしまるえつこが受賞。そして、ハイブリッドアート部門では、三原 聡一郎、加賀谷 雅道、デジタルミュージック&サウンドアート部門では、佐々木有美+ドリタ、ノガミカツキ+渡井大己が受賞し、日本人とも縁が深い。

2014年から博報堂とアルスエレクトロニカは、「Future Catalysts」という協働プロジェクトを実施してきたが、活動範囲を広げるため、今回のコミュニティを始動することとなった。キックオフイベント「Ars Electronica Tokyo Initiative Kickoff Forum ~Create for Tokyo Together --Art×Industry 未来への問いかけ」が、2017年5月25日(木)に東京ミッドタウンで行われた。

このコミュティは、「これからの東京、ひいては日本社会を良くする為に、我々は一体何が出来るのか」をミッションとし、企業・イノベーター・アーティスト等、様々なステークホルダーと未来社会を創り出すアイデアを共創し、社会への実装に向けて活動することが目的となる。その意識を共有するためのキックオフイベントだ。

■ 「アートシンキングで企業のイノベーションを促進させる」

PHOTO:Ars Electronica Tokyo Initiative / Hitoshi Motomura

イベントの登壇者は、産業界、アート領域のスペシャリストが名を連ねる。アルスエレクトロニカ総合芸術監督のゲルフリート・ストッカー、博報堂ブランド・イノベーションデザイン代表の宮沢正憲、バイオアーティスト・福原志保、デジタルネイチャー研究室の落合陽一など、そうそうたるメンツが集ったトークセッション・パネルディスカッションに、業界関係者含めた観客の熱い眼差しが集まった。

PHOTO:Ars Electronica Tokyo Initiative / Hitoshi Motomura

まずは「なぜ今『東京』にイノベーション創出コミュニティが必要なのか」「アートシンキングとはなにか?」などをテーマに、ゲルフリート・ストッカー、宮沢正憲によるトークセッションが始まった。

宮沢:
「普段はブランドを魅力的にする仕事をしていますが、お客さんがイノベイティブなブランドにしたいという要望がある。デザインシンキングとアートシンキングがどのようにブランドをどう魅力的に出来るかを実践したい」
ストッカー:
「アートシンキングは機会を見つけるための考え方。問題解決のためのデザインシンキングも重要ですが、デザインシンキングとアートシンキングがセットでイノベーションが起こります。どちらだけではなく両方必要。アートには批評する力があり、現実の常識を見直す機会を与えてくれる」

■ アーティストと企業によるトークセッション

PHOTO:Ars Electronica Tokyo Initiative / Hitoshi Motomura

次は、登壇者を入れ替えて、「未来を創造するアートシンキングの重要性について」をテーマにトークセッションが開始。筒井岳彦(日本たばこ産業株式会社 執行役員)、村上臣(ヤフー株式会社 執行役員 IDサービス統括本部長 チーフモバイルオフィサー)、福原志保(アーティスト・研究者・開発者)、そしてSENSORSのMCもつとめる落合陽一(筑波大学 学長補佐・助教 デジタルネイチャー研究室主宰、Pixie Dust Technologies.Inc CEO)が登壇。「社会に何を問いかけているのか?」「アートに期待することは何か?」などを各者の立場から意見交換がおこなわれた。

落合:
「僕は近代とどう向き合うかをテーマにしている。近代的な既存の価値観を壊していくことが重要。先日、ヤフー株式会社のオフィスエントランスで、デジタルネイチャーグループの展示会を行った。これは、企業の遊休資産の活用。活用することが大事」
村上:
「ヤフーのエントランスでデジタルネイチャー展を開催したのは、堅いイメージになっていたヤフーの企業イメージを変えるため。さまざまな来客が来るエントランスにアート作品を置くことで、話題が増えて面白がってもらえる。エントランスも資産でありコストだが、有効活用ができる。今の会社をどれだけ使い倒せるかが重要」
福原:
「アートは定義がないんですよね。そもそもアートは方法だと思う。新しいものを見て体験を得て、理解して個人から方法を広める。それがアーティストの仕事だと思っている。グーグルとコラボレーションして導電性のテキスタイルを作っているが、やり方がグーグルらしくないと言われる。エンジニアやデザイナーと違って、200年あるテキスタイルの歴史を変えようとする意思があるから」
筒井:
「企業の中で『人はなんでこんなに不思議な存在なんだろう』という問い立てをすると、まず収益について問われることが多い。そうではなく、企業としての問いは、『社会に大事なのか?』が問われる。遊休資産があればある程度使っていいと思う。施しではなく、どういう結果が出るかはわからないけれど問うてみることで気づくことがあると思う。会社というインフラを使って問いを立てると面白くなるはず」

PHOTO:Ars Electronica Tokyo Initiative / Hitoshi Motomura

以上はイベントの一部になるが、喋り慣れた登壇者による想像力を飛躍させる論議によって、笑い声も起きて会場には一体感があった。今回のイベントはキックオフということもあって、各者の取り組みを紹介しつつ、お互いの接点を見出す内容となった。終了後は、登壇者と観客含めた参加者同士の交流が盛んに行われ、コミュニティ育成の第一歩となった。

この取組みは今後、国外ではアルスエレクトロニカ・フェスティバルと連携し、世界中の先端テクノロジーアートが提示する問題意識をスキャニングし、自社の課題と照らし合わせるオーストリア・リンツ市に向かうツアー。そして、国内では2014年より博報堂とアルスエレクトロニカが共同実施しているディスカッションワークショッププログラムが行われる予定だ。

PHOTO:Ars Electronica Tokyo Initiative / Hitoshi Motomura

これを期にアルスエレクトロニカに足を運び、イノベーティブな作品に実際に触れて、アートシンキングを実際に体験してみてはいかがだろうか。また今後、国内からアート作品が創出される環境づくりを取り組むことに期待が高まる。

取材:高岡謙太郎

たかおかけんたろう: オンラインや雑誌で音楽,カルチャー関連の記事を執筆。共著に『Designing Tumblr』『ダブステップ・ディスクガイド』『ベース・ミュージック ディスクガイド』など。

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