3331α Art Hack Day 2015に見る、ハッカソンにおけるチームビルディングの大切さ

2015.09.04 10:00

8月22日、9月5日・6日の3日間で実施するアートに特化したハッカソン「3331α Art Hack Day 2015」。選考を通過したアーティストやエンジニアが会し、芸術と技術が融合した新たな作品をこの期間で作り上げる。8月22日、初日の模様にSENSORSも潜入した。そこで体感した「3331α Art Hack Day 2015」の"意外な"一面とは?

「3331α Art Hack Day 2015」は、アートとテクノロジーをどれだけ近づけることが出来るかというテーマのもとに開催。このハッカソンを主宰する、3331 alpha ディレクターであり、VOLOCITEE Inc. CEO の青木竜太さんの持つ課題意識として、「アート」は作品として世の中に出ているものと、世の中が求めるものにギャップがあったのではないか、社会にとってのアートの存在価値を高める為にはどうするのがよいか、というものがあったという。そこからアート以外の分野との横断をさせるべきと考えた時に、青木さんが元々エンジニアであったということもあり「テクノロジー」との横断の機会としてハッカソン、という発想で実施に至ったそうだ。

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3331 alpha ディレクター/VOLOCITEE Inc. CEO 青木竜太さん

青木:
いろんなアーティストのお話を聞いていると、社会的な評価が低く、それだけじゃ食っていけないという状態が多い。つまり「アート」と「社会」に距離があるんです。それは、私が10年ほど前、プログラマーとして働いていた時に、今でこそプログラマーは評価されているけれど、当時はそこまで評価されていなかった。その時の状況に似たものを感じていました。
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3331α Art Hack Day 2015 初日

この「3331α Art Hack Day 2015」で広報を担当する(ご自身も京都市立芸術大学出身)塩谷舞さんも、アートにおいては「風通し」の面から課題を感じることがあったという。

塩谷:
エンジニアって、クライアントさんと仕事をすることも多いので、違う業界の方と絡むことに抵抗がないのですが、アーティストはアート界が中心で、すごく閉ざされているので。「ハッカソン」と聞いても「テクニカルな技術がないから参加出来るのかな...」って尻込みする人が多いんですよね。そのハードルを下げていくといいますか、いかにアーティスト側の人にとっても良い場所であるということを啓蒙していく必要があると思っています。このハッカソンはすごく風通しのいい機会だと思いますし、しきたりに囚われず、アートという枠にも囚われない。青木さんが主宰するとこんなフラットでポジティブな場になるんだなと思いましたね。

青木さんは、この場で良い作品が生まれることだけではなく参加者同士の交流が生まれることも強く期待しているようだ。

青木:
自分だけでは実現出来ないことを、他の人とコラボレーションすることで実現出来るということをもっと知ってもらいたいですね。(参加することで)新たな価値を生み出すことはもちろんですが、あとは今回出会った人達と関係性を構築して欲しいですね。これからも友達として。

実際にアイデアソンの時間で発表された参加者の声でも「面白い人と知り合いになりたいという、繋がりを求めてくる人が多いと思いました」という声が挙がり、さらにそれに共感して手を挙げる方も多数いた。 ちなみにこのアイデアソンの時間、「3331α Art Hack Day 2015」ではとにかく極力多くの人と話せるように、テーブル間の移動も促しながらとにかくじっくり時間をかけるのが特徴だ。

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一斉に参加者がテーブル間を移動中。熱気溢れる会場で、アイデアソンをオーガナイズする青木さん

そしてその後「自らのアイデアを発表して仲間を募りたい人」「自分のスキルを活かして、他の人によるアイデアの実現をサポートしたい人」に分かれて、前者のメンバーのプレゼンを聞いて、チームを作っていく。ここでもチームを決めるための双方のコミュニケーションの時間が十分にとられていて、このアイデアソンからチーム決めまでの時間はなんと約5時間。60名を超える参加者とほぼ全てコミュニケーションが取れる程のじっくりとした時間のかけ方は、いわゆる「ハッカソン」のイメージとは異なり、驚いた。青木さんがここまでコミュニケーションを重視するのは何か理由があるのだろうか。その点が気になり、改めて質問をぶつけてみた。

--これだけ、参加者同士のコミュニケーションに時間をかけることは何か狙いがあるのでしょうか?

青木:
今回ここに来ているアーティストの方も例えば受賞歴があるような方がいらっしゃったり、エンジニアの方も経験豊富だったり、それぞれ、スキルも才能もあります。ただ、「一緒にやりたい」と思わなければ良いものは作れない。(初対面から)お互いが関係性を丁寧に作っていくことで、アウトプットの質が変わるんです。つまり関係性を構築出来るかが、このハッカソンにおける一番のキーになるんですね。

--ハッカソンといえば、連続した日で集中的に実施されることが多いですよね。「3331α Art Hack Day 2015」は8/22に初日、二日目・三日目が9/5,6。こうしてスケジュールが空いているのも、その期間中のコミュニケーションを深めてもらうという狙いがあるのでしょうか?

青木:
それもありますし、連続した日で行われるとコンセプトもアウトプットの質も弱くなります。「アート作品」というからにはある程度のレベルに持っていかないといけない。その間の二週間を活用しコンセプトをより深めたり、技術検証から成果物の質を上げて頂きたいという狙いです。
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3331 alpha ディレクター/VOLOCITEE Inc. CEO 青木竜太さん

--その間、チームでじっくり活動していくにあたり想定される事態としては、どんなことが想定され、どう乗り切るべきですか?

青木:
必ず起きるのは意見の対立。ただ、それをどう乗り越えるかは自分自身。どこを妥協してどこを妥協しないかは、お互いディスカッションを重ねることで乗り切るものだと思います。

--近しい関心のもと集った方々とはいえ、ほぼ初対面で、普段の生活もそれぞれ違いますよね。

青木:
「なぜ相手がそういう考えに行き着いたのか」を理解することですね。今は情報が溢れている分、ひとつひとつの情報がおざなりになっている気がするので、それら(相手の情報に)しっかり丁寧に向き合っていけば、考えの違い、職種の違いなども乗り越えられるはずです。

--各チームで作ったFacebookグループには、必ず青木さんも入られているとのことですが、そのグループ内のやり取りは、どのようなスタンスで接している(見ている)のでしょうか?

青木:
チームの温まり具合、連帯感を見ています。チームの向かう方向を尊重し、作品に対してコメントはしません。コミュケーションが活性化していない場合には、火入れ的にメンバの数名などに今の問題点などについて質問を投げたりしますが、こちらの意見を押し付けることは決してしません。チームが温まっていたら特に何もしないですし、その方が良いと思っています。

--スタートから各チームの動きを見ていて、印象的な部分はありますか?

青木:
昨年よりも関係性構築の時間を少し増やした結果からかもしれませんが、昨年と比べるとコミュケーション量がすごく増えていますね。お互いの考えが融合していく過程を見るのは本当に楽しいです。

--チームで物事を進める時というシチュエーション、注目すべき事例・組織などはありますか?もしくは青木さんが今回(22日)進められていたチーム作りの方法で、参考にしている事例・メソッドなどがあれば、お教え頂けますか?

青木:
私はTEDxKids という活動も行っているのですが、そちらで培ったチーム作りの手法をかなり取り入れています。キーワードとしては、「自己組織化」ですね。自ら考え行動する、そんなチーム作りです。それを生み出すために、メンバー間の関係性を構築するプロセス、ワクワク感や非日常空間の演出、内発的動機から行動してもらえるように知的好奇心を刺激するそもそものイベントのコンセプト設計など、様々なことを行っています。 組織論、対話の方法論やワークショップ手法などをベースにしながらも、かなりカスタマイズして我流で行っています。単純に言えば、自分だったらこうあってほしい、こうだったらいいなという考えから設計しています(笑)

「新しいものを作る時は、関係性をどれだけ構築出来るかが重要」という青木さんの考え方が色濃く反映された「3331α Art Hack Day 2015」。9/6の最終日にはどんな作品が発表されるだろうか。

取材・文:市來孝人

SENSORS WEBエディター
PR会社勤務の後独立。福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経て、メディアプランナー・プロデューサーとして活動中。

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