未来の日常生活にある?「au未来研究所」ハッカソンから生み出されるプロダクトたち

2015.06.05 19:00

"スマホの次"の発明を目指す「au未来研究所」。KDDI・生活者・外部パートナーのトライアングルを機軸に展開されるハッカソンから生まれた、プロダクトはどれも斬新で未来を感じさせるものが多い。今回は仕掛け人のKDDI 宣伝部 担当部長・塚本陽一(つかもとよういち)氏にインタビューを敢行。さらに、ハッカソンから生まれた靴型ウェアラブル・デバイス「FUMM(フーム)」を開発したメンバーが集まり、開発の舞台裏を語った。

■コミュニケーションの未来を創造する「au未来研究所」

au未来研究所HPより(http://aufl.kddi.com/

2013年11月、KDDIが開設した「au未来研究所」はWEB上の仮想オープンラボラトリーで、「"スマホの次"を発明する」をキャッチフレーズに、オープンイノベーションの実験的な取り組みを続けてきた。とくに生活者を巻き込んで行われたハッカソンでは、「衣・食・住」という3つのテーマを切り口に、生活者発想ならではの未来を先取りしたプロダクトが生み出された。このプロジェクトの仕掛け人であるKDDIの塚本陽一氏が「au未来研究所」に込めた意図とは何なのであろうか。

塚本:
au未来研究所は、「コミュニケーションの未来を創造する」をキャッチフレーズに展開している活動です。ハッカソンを通して、生活者の皆様から募ったアイデアを具現化し、商品化を目指す研究所であり、オープンイノベーションブランドでもあります。モノづくりを行なっていくプラットフォームになっていければと思っています。

■生活者発想のアイデアを起点にしたハッカソン

ハッカソンといえば、プログラマーやデザイナーといったスキルを持った技術者がグループを形成し、あるテーマの元、決まった期日以内にサービスやプロダクトを完成させることが通例。しかし、KDDIが主催するハッカソンで問われるのは「技術」ではなく、「アイデア」だ。

塚本:
我々のハッカソンでは、通常のものより参加のハードルを下げています。技術者でなくとも、気軽に参加できます。アイデアを出す能力、情熱さえあれば参加できるハッカソンになっています。

また、ハッカソンに際しては、生活者がアイデアを出しやすいようなスキームを用意しているという。アイデアを出すフェーズにではブレインストーミングのフレームワークを呈示し、プロトタイプ化するフェーズでは識者を交え、技術的なサポートを行う。

「衣・食・住」をそれぞれのテーマに計三回行われたハッカソンでは、総計15個のプロダクトが生み出された。「衣」の回では、靴や手袋といったウェアラブル・デバイスのアイデアが数多く生み出されたという。手袋型のデバイスでは、職人の技術をデータ化し、クラウドから転送することで実際にその技術が体験出来るアイデアだったそう。

X-Benのプロトタイプ写真。au未来研究所HPより(http://aufl.kddi.com/prototypes/detail/8

「食」の回で秀逸だったアイデアが「X-Ben」で、これはお弁当箱型ガジェットで、おかずを交換することをベースにコミュニケーションを誘発しようというサービス。言語を介さない、新しいコミュニケーションの可能性を秘めている。

(KDDI 宣伝部 担当部長 塚本陽一氏)

--さまざまなバックグラウンドを持つ生活者からなるハッカソンでは、通信業者としてスマートフォンなどを扱うKDDIさんからしても、驚くような楽しいアイデアが多かったですか?

塚本:
本当に驚きの連続でした。我々がどうしても、普段からビジネス的な観点から考えてしまうので、知らず知らずのうちにアイデアを出す境界線みたいなものを引いてしまっていたことに気づかされました。生活者のアイデアは良い意味で純粋無垢というか、制約にとらわれないニュートラルなものだったので刺激になりました。

■KDDI・生活者・識者からなるトライアングル

たしかにアイデアだけなら誰もが出せそうなものである。しかし、それを実際に形に落とし込んでいくフェーズでは、技術的サポートが不可欠となる。「au未来研究所」のハッカソンでは、外部サポーターとして有識者が技術的な側面をカバーする。

塚本:
様々な領域の識者を招聘し、KDDI・生活者・識者のトライアングルでアイデアをブラッシュアップするスキームを用意しています。15人の「特別研究員」はそれぞれに専門性を持たれていますので、テーマに合わせてこちらでコーディネーションしていきます。

(写真:擬似ハッカソンの様子)実装部分に関わったのはプログラマーの二人のみで、残りのメンバーはそれぞれプレゼンを担当したり、アイデア出しに専念したりしたという。【左から】まさきちさん、つのさん、Yazooさん(http://aufl.kddi.com/openlab/fumm

普段はスタートアップに勤めているという、開発メンバーのchikaikeさん(http://aufl.kddi.com/openlab/fumm

「衣」の回のハッカソンで、靴型ウェアラブル・デバイス「FUMM(フーム)」を開発メンバーが集まり、ブレストでアイデアを出す擬似ハッカソンの様子を見せてくれた。職種も住んでいるところもバラバラなメンバー5人だが、異なったバックグラウンドを持っているからこそ自由な観点で、制約のないディスカッションが行えるのだという。

「FUMM」のアイデアを提案したまどかさん(http://aufl.kddi.com/openlab/fumm

「FUMM」のコンセプトアイデアを出した女性メンバーのまどかさんは着想のキッカケについてこう語る。

まどか:
うちの姉に小さい子供がいるんですが、子供と外出しているときに、子供を抱っこするのが大変だと言っていたんです。子供が自分自身で歩いてくれれば、親も楽になるなと。かつ、子供が楽しく遊べれば、両者にとって嬉しいことじゃないかと、この「FUMM」を思いつきました。

--アイデアを思いついてから、プロダクトに落とし込んでいくまでに苦労はありましたか?

つの:
紆余曲折ありました。踏み込みのタイミングで音がうまく鳴らないと、気持ちよくないので、そこの部分は試行錯誤が続きました。技術面では、教えてくれる外部の先生に助けてもらい、プレゼンの二時間前に作り直したりもしました(笑)

■いつもの散歩を冒険に変える、靴型ウェアラブル・デバイス「FUMM」

【au未来研究所】FUMM(フーム)のコンセプト・ムービー(http://aufl.kddi.com/openlab/fumm/

上記の5名が開発したこちらの「FUMM」。まどか氏が親族が生活の中で抱えていた身近な問題から、その解決のために具現化されたプロダクトだ。親子のコミュニケーションの双方にとって楽しいものにするウェアラブルデバイスで、コンセプトは「足音で遊べるキッズシューズ」。

子供靴には感圧/加速度/気圧/カラーの各4つのセンサーが内蔵されており、子供の動きや踏んでいる地面の色に合わせて、スマートフォンから足音が鳴る仕組みとなっている。

「FUMM」に使用されているセンサーの構成図。au未来研究所HPより(http://aufl.kddi.com/openlab/fumm/

今回の取材時には、FUMMを使った「でんしゃでしゅっぱつしんこう」という遊具を実演していただいた。これは内蔵された4つのセンサーのうち、中敷の感圧センサー、靴の裏のカラーセンサーの二つのセンサーを使用したもの。中身としては、線路上を子供が歩くと、"ガタンゴトン"という効果音がスマートフォンから流れてくるというものだ。音が鳴るタイミングやスピードは子供が線路を歩くスピードと連動しているため、電車の運転士になったかのような気分を味わうことができる。

3/31に代官山T-SITE GARDEN GALLERYにて1日限定で行われたイベント「FUMM KIDS PARK」でも、この「でんしゃでしゅっぱつしんこう」は一番人気だったとのこと。

子供の動くスピードに合わせ、スマートフォン上のアプリの汽車も連動して動く仕組みとなっている。また、異なった色の駅の上に足を乗せると、モードが切り替わり、"ガタンゴトン"という音から"ポッポー"という汽笛に変わる。 塚本氏によれば、「二足歩行ができるようになる2,3歳から小学校低学年までのお子さんならお楽しみいただけると思います」とのこと。

■「靴×スマートフォン」だからこそ変えられる生活の未来

--子供の遊びとしてはとても楽しいものだと思うのですが、この技術はこれからどのように発展していくのでしょうか?

塚本:
まだ計画段階ですが、「靴×スマートフォン」というウェアラブル・デバイスだからこそできる可能性の範囲は広いんじゃないかと思っています。例えば、目の見えない方のサポートができるのではないかと思います。地面をカラーセンサーで認識したり、歩く速度・歩数を計測して、スマートフォン経由でナビゲーションを送ることによって、日常生活のアシストができるのではないかと思っています。

--他にはどういったアイデアがありますか?

塚本:
"スマートハウス"のような考え方もあるかと思います。例えば、両手が塞がっている場合でも、「FUMM」を履いて玄関の前を踏めば、鍵が開いて電気も点く。これによって日常生活はより便利になると思います。靴型ウェアラブル・デバイスだからこそ付加価値を出せることはあると思いますね。

「FUMM」の開発背景が日常の悩みに因るように、生活者発想なくして生活をより豊かにする未来デバイスは生まれない。KDDIが自社・生活者・外部者というトライアングルを組んで行った独自のハッカソンの真髄もまさしくここにある。

塚本:
通信事業者がよく言われる言葉に「コモディティ化」があります。その最たるものにiPhoneがあると思いますが、サービスが同質化してきているということです。どこの通信事業者も同じサービスラインナップになりがちになっている現状があります。なので、今後もKDDI・生活者・識者のトライアングルからなるハッカソンからイノベーションの可能性を探求していきます。

取材・文:長谷川リョー

1990年生まれ。フリーライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。「BOSCA」編集長。東京大学大学院学際情報学府在籍。@_ryh

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