思考停止の時代に求められるのは、"ぐうたら"なサービス。気鋭のアイディア起業家・光本勇介のアタマの中

2018.09.12 18:00

「連続起業家の思考法」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストは起業家の光本勇介氏だ。

全4回にわたってお届けする第1弾記事では、光本氏の掲げる「事業は表現」という信念をテーマに行われた、ディスカッションの様子をお届けする。

目の前のモノが一瞬で現金に変わる「CASH(キャッシュ)」や、手元にお金がなくても、後払いで旅行に行ける「TRAVEL Now(トラベルナウ)」など話題のサービスを次々と生み出してきた光本氏。なぜ彼の手がけるサービスは、人びとをワクワクさせるのだろうか。「目新しい概念がなくても、表現次第で新しい市場がつくれる」と話す光本氏とMC陣の対話から、サービスの価値を世の中に伝えるために必要な「表現力」を、紐解いていく。

bank01_01.jpg

(左より)齋藤精一、光本勇介氏、落合陽一、黒田有彩

黒田有彩(以下、黒田):
MCのお二人は、「連続起業家」にどんなイメージをお持ちですか?
落合陽一(以下、落合):
社会課題に目を向けて、解決できる人じゃないですかね。自分の周りにいる連続起業家は、そういう人が多いです。
齋藤 精一(以下、齋藤):
僕は連続起業をしたことがないので、むしろこっちが「連続起業家とはなにか」を聞いてみたいですね。
落合:
ライゾマティクスの建築部門、「Rhizomatiks Architecture」を別会社だと思えば、齋藤さんも連続起業家だといえますよ(笑)。
齋藤:
たしかにそうですね(笑)。その点でいうと新規事業を手がける際、単純に事業部を新設すべきなのか、別会社を設立して切り離すべきなのかは気になりますね。
黒田:
お二人とも起業されていますが、会社員として働こうとは思わなかったんですか?
落合:
大学一年生くらいまでは、電通で働こうと考えていました。クリエイターになるためには、広告代理店に入るのが妥当だと思っていたので。しかしいつの間にか、社会的な風潮の変化にも後押しされ、考えが変わりましたね。だから就職活動もしていないです。
齋藤:
僕も就職活動をしていません。はじめての就職が海外で、そのあと帰国して自分で会社をつくっています。

以下、光本勇介氏をゲストに迎えてディスカッションが行われた。光本氏は、わずか16時間で総額3億6,000万円を現金化した「CASH」や、後払いで今すぐ旅行に行ける「TRAVEL Now」など、ユーザーの度肝を抜くサービスを次々に生み出してきた連続起業家だ。同氏はなぜ、新しい市場を創り続けることができるのか?光本氏の掲げる3つの信念のうち、まずはじめに「事業は表現」をテーマに取り上げ、その思考法を掘り下げていく。
黒田:
今回のゲストは、光本勇介さんです。光本さんは、株式会社BANKの代表取締役社長兼CEO。今話題のサービスを次々と手がける連続起業家です。本日の収録は、BANKさんの社内で行わせていただいております。ここは全面ガラス張りですね。普段どういった目的で使われている場所なんですか?
光本勇介氏(以下、光本):
会議室です。
黒田:
執務スペースが丸見えなので、社員のみなさんの働いている様子がよく見えます。
落合:
超見えますね(笑)。
光本:
BANKはまだ設立1年ほどの会社で、70名ほどいる社員のうち、ほとんどが入社したばかりの人なんです。だから、みんなで会社のカルチャーをつくっていきたくて、あえてオープンな空間をつくっているんです。
bank01_02.jpg
黒田:
ブレインストーミングをされているからか、付箋が貼られているボードも見えますね。日常的にされているんですか?
光本:
はい。新しいサービスをつくっているから、サービスの骨格がない状態で。だからこそ、みんなで意見交換をしながら日々開発を進めています。

枯れた技術で市場を切り開くーー光本勇介"表現力の魔法"

黒田:
それでは、連続起業家としての光本さんの思考法を深掘りするために、光本さんが掲げている「3つの信念」についてお伺いしていきたいと思います。その3つとは、「事業も表現」、「いつぶっこむか、ぶっこみ方が大事」、「チャレンジや挑戦ではなく、実験と言い換える」。

まず、1つ目の「事業も表現」はどういった意味なのでしょうか?
光本:
目新しい概念がなくても、見せ方次第で新しい市場がつくれるという意味です。

たとえば、昨年リリースした「CASH」。これは、モノをカメラで撮るだけで現金化させるサービスですが、泥臭い言い方をすれば買取アプリです。でも買取アプリと言われても、誰もワクワクしませんよね。だから「目の前にあるモノが一瞬で現金に変わるアプリ」と謳ったんです。そう表現するだけで、なんだか魔法っぽく聞こえるし、ワクワクする。だからあれだけ話題にしていただけたのだと思います。
bank01_03.jpg
光本:
既存サービスの掛け合わせでも、新しい概念を生みだせます。先月、後払い専用の旅行代理店『Travel Now(トラベルナウ)』をリリースしたのですが、後払い決済サービスも旅行代理店も、すでに世の中に存在する事業です。でもそれらを掛け合わせることで、まったく新しいサービスとして世間に受け入れてもらうことができたんです。
落合:
昔はLANケーブルがなければネット接続ができなかった。でも今は、スマホひとつでコンテンツがつくれるし、発信もできる。世の中の流れを見ても、同じことが言えると思います。インフラが整ってきたからこそ、その上に載るコンテンツ、つまりサービスをどう見せるかが問われている。魅力的なサービスに見せるために、何かと何かを掛け合わせてみるのも、ひとつの手法ですよね。
光本:
そうですね。新しいサービスをつくるときは「サービスの価値を世の中にどのように伝えるべきか」を常に考えています。

"ぐうたら"な現代人が手に取る設計が鍵。流行するサービスは、思考停止状態に合わせて進化する

光本:
以前つくった『STORES.jp(ストアーズ・ドット・ジェーピー)』は、誰でも簡単にオンラインストアがつくれるサービスで、現在100万店舗ものお店が開設されています。ユーザーさんがお店を開設すると「世界でひとつだけの、あなたのオンラインストアです」と表示されるのですが、そのページって、構造的にはヤフオクや楽天の商品紹介ページと同じものなんですね。特別感を演出したことで、多くの人にご利用いただくことができて、現在は100万店舗ものお店が開設されています。
齋藤:
『STORES.jp』はUIも素晴らしいですよね。新しいサービスを使うとき、目に見える分かりやすさって大事じゃないですか。
bank01_04.jpg
光本:
UIやUXは、いかにシンプルにサービスの価値を伝えるかを意識して設計しています。なぜなら、世の中がだんだんと、"思考停止時代"になっていると感じているからです。現代は、あらゆる技術が発達し、ツールもたくさんある。つまり、思考しなくても生きていける世の中なんです。良くも悪くも、世の中の人たちが"ぐうたら"になっています。

だから、これからは思考停止状態で使えるサービスが流行っていくだろうし、そういうサービスをつくらないと普及しない。小難しさとか複雑な機能があると、使わない人が多いんですよね。
齋藤:
そこで問題になってくるのが、思考停止が良いのか悪いのか...。
落合:
僕は思考停止の状態を、"音楽的"だと捉えています。「身体で感じることができればいい」というか。頭を使って解釈する必要があることと、音楽的に感じること。ふたつともあっていいと思います。"ぐうたらエリア"と、超難しい"哲学エリア"が一緒に存在している世界って面白いですよね。ひたすら思考を繰り返して上梓された哲学書が売れているエリアと、キャッチーでわかりやすいベストセラーの本が売れているエリアが、両方存在している。
光本:
たとえばレシピのサービスも、思考停止状態に合わせて進化していますよね。今まではテキストベースでつくられていて、頭を使わなくてはいけなかった。読んで、想像しないといけないから。

でも、最近流行っているのは動画のレシピサイトです。動画を見て、真似するだけで料理ができるんですよね。ユーザーに頭を使わせず、価値を提供しているサービスだと思います。

続く第2弾記事では、光本氏が掲げる2つ目の信念「いつぶっこむか、ぶっこみかたが大事」をテーマに行われたトークの様子をお伝えする。これまで10個以上のサービスを世に出してきた光本氏は「どんなに良いサービスでも、出すタイミングを間違えれば価値が理解されず、流行らない」と話す。では、サービスの価値が正しく理解されるためには、どのタイミングでリリースすべきなのか?「常に世の中の動きにアンテナを立てている」という光本氏が、いかにして「正しいタイミング」を見極めているかを解き明かす。

後半は「大企業にはないスピード感」で事業を回し続けているゲスト、MCの話から、事業成長における鍵はなにか紐解いていく。

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(SENSORS|落合陽一の存在意義はスピード感!?ゲスト:光本勇介(連続起業家の思考法 1/4))

構成:いげたあずさ

ライター・編集者。アパレル販売、WEBマーケターを経て、現職。関心領域はファッションテック、映画、文化人類学。
Twitter:@azuuuta0630



編集:小池真幸

93年生まれのライター・編集者。AI系スタートアップのマーケターを経て、現職。関心のベクトルは、人文知をバックグラウンドにビジネス・テクノロジーを考えること。
Twitter:@masakik512

最新記事