事業づくりはタイミングが命。連続起業家 光本勇介の"ぶっこみ"論

2018.09.19 18:00

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「連続起業家の思考法」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストは起業家の光本勇介氏だ。

全4回にわたってお届けする第2弾記事では、光本氏の掲げる「いつぶっこむか、ぶっこみ方が大事」という信念をテーマに行われた、ディスカッションの様子をお届けする。

これまでに10個以上のサービスを世の中に送り出してきた光本氏は「どんなに良いサービスでも、出すタイミングを間違えればその価値が理解されず、流行らない」と話す。光本氏は過去の経験から何を学び、どのようにして新規事業に活かしているのか。新しい市場をつくる上で、光本氏が心がけていることを解き明かしていく。

さらに後半は、起業家である落合、齋藤が常日頃から意識している「大企業にはないスピード感」についても話が及び、事業成長の鍵とはなにか紐解いていく。

"早すぎたシェアリングエコノミー"の失敗体験に学ぶ、光本式起業家視点

黒田有彩(以下、黒田):
続きまして、光本さんが掲げている3つの信念のうち、2つ目の信念をテーマにトークを進めてまいります。「いつぶっこむか、ぶっこみ方が大事」ということですが、こちらはどういった意味でしょうか?
光本勇介(以下、光本):
「サービスは、リリースのタイミングが重要」だということです。どんなに良いサービスでも、出すタイミングを間違えればその価値が理解してもらえず、流行りません。僕が10年前に、起業家としてはじめてつくったサービスが分かりやすい。個人間で車を貸し借りできるサービスだったのですが、当時は個人の所有物を他人とシェアする文化がありませんでした。「大切な車を他人に貸すサービスなんて、成り立つわけがない」と、誰にも理解してもらえなかったんです。シェアリングエコノミー時代である今であれば、もう少し共感してもらえると思いますが、当時はまったく流行りませんでした。
黒田:
時代を先取りしすぎていたんですね。
光本:
それ以降、リリースのタイミングは重要視しています。たとえば先月出した「TRAVEL Now」も、数年前からアイディアはあって、画面デザインもできていたのですが、ずっと「今じゃない」と思っていて。でも「今年は旅行の年だ」と思ったので、リリースしました。
黒田:
"ぶっこむ"という表現を使っているのはなぜでしょう?
光本:
どうせやるなら中途半端ではなく、思い切りやろうということです。「CASH」のリリース当日、3.6億円を世の中にばらまいたことなんかはまさに"ぶっこみ"。「CASH」は、モノを写真で撮るだけで現金化できるサービスなので、私たちがユーザーさんに現金を振り込まないといけなかったんです。
齋藤精一(以下、齋藤):
ニュースにもなっていましたよね。
光本:
予想以上だったので、その日の夜にサービスを停止せざるを得なかったんですけれど(笑)。でも100万円とか中途半端なバジェットを組んでいたら、あそこまでは話題にならなかったと思いますね。
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光本勇介氏

齋藤:
あれは、PRの意味合いもあったんですか?
光本:
そうですね。話題性を狙った施策でもあります。意図的に行った施策ではあるものの、どうせやるなら中途半端にやりたくなかったので、思いっきりフルスイングしていましたけどね。ただ、まさかあそこまで話題になるとは思っておらず、予想以上の金額になってしまったので、ちょっと焦りましたけど(笑)。
齋藤:
話題になったあとに1回停止して、また再開したじゃないですか。あのやり方はすごくうまいと思いました。良いところだけ見せられるよりも、ちょっとダメな部分が見えた方が好感が持てる。昔は広告で"良く見せる"ことが主流だったけど、これからは失敗を見せて、ユーザーからの信頼を集めていく方がいいのかなと。
光本:
ありがとうございます。中途半端ではなく、徹底的にやりきることを、常に意識していますね。

気鋭のアイディアを生み出す、感覚的情報収集術。時代を創る嗅覚は、いかにして生まれたのか?

齋藤:
普段、どうやって情報収集しているんですか?
黒田:
たしかに、どういった嗅覚をお持ちなのか、気になります。
光本:
特に意識はしていないですが、常にアンテナは立てています。僕はビジネスをつくるのが好きで、ビジネスであれば究極的になんでもいいというか、なんでも興味をもっちゃうんですよね。
落合陽一(以下、落合):
なんかすごいカジュアルですね(笑)。
光本:
割と感覚的に情報収集をしているので、ロジカルではないですね。
黒田:
先ほど「今年は旅行の年だ」と仰っていましたが、なぜそう思ったのですか?
光本:
それも全然理由がなくて。僕は毎年、年始にその年のテーマを決めるんです。昨年は「お金の年だ」と決め、「CASH」をリリースした。そして結果的に、お金の年になりました。お金というか、価値の年ですね。「フィンテック」という言葉も昔からありましたが、改めて流行りましたし。仮想通貨をはじめ、現金以外のあらゆるものに価値がつく年になりましたよね。
齋藤:
そうですね。
光本:
どの業界にもトッププレイヤーがいて、彼らは5年、10年と同じ事業を続けています。しかし世の中の仕組みが進化して、消費者の行動も変化しているのだから、本当はサービスも変わるべきなんです。なので、世の中の変化とギャップが生じている事業や業界は常に見ていますね。旅行業界からはまさにそのギャップを感じたので、「今年は旅行の年だ」と言って、旅行のサービスをつくりました。
落合:
旅行サービスなんかは、まさにそうですよね。インターネットで予約するのが普通になってきているのに、フォームの入力が面倒だったり、希望のプランを探しにくかったりと、使いにくさを感じる部分が多い。不満を感じている人も多いはずなので、ユーザー目線のサービスがあれば、新しい市場が生まれますよね。
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(左より)齋藤精一、落合陽一、黒田有彩

齋藤:
光本さんのような動きって、日本の大企業だと絶対にできないですよね。そのギャップに気づく嗅覚も必要だし、瞬時に動ける体制も必要だから。たとえば、民泊に関する法改正があったとき、大企業だったら企画書を書いているうちにタイミングを逃すことになるじゃないですか。優れた嗅覚を持っていて小回りがきいて、すぐに動ける優秀なスタッフがいる会社でないと、新しい市場をつくることは難しい。
光本:
数値で示せるものじゃないから、大企業だと難しいかもしれないですね。逆に言えばそういう人たちが参入しないからこそ、可能性があるんですけどね。

目的地の共有と、信頼関係。急成長スタートアップの、生き馬の目を抜く事業戦略

黒田:
MCのお2人も会社を経営されていらっしゃいますが、そういったスピード感は意識していますか?
落合:
大企業と組んで商品開発をすることが多いのですが、そのときの僕らの強みは「スピード感」だと思っています。大企業は意思決定までの時間がかかるからこそ、僕らはスピード感を意識しているんです。大企業同様に、僕らにスピード感がなかったらやばいでしょ。
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齋藤:
僕たちが心がけているのは、先回りする素早さです。「波がないなら起こしちゃおう」と考えています。

そういえば、この前聞いて面白かったのが「日本のリサーチ企業は、上司を説得するために存在している」という話。リサーチ会社が出すデータって、本来は日本の未来を先読みして予測を立てるために使うものですよね。なのに日本では、上司を説得するための材料として使われている。
落合:
それ、面白い。
齋藤:
結局のところ、組織内で信頼関係がないから、そういったプロセスが必要になるんですよね。だから、信頼をベースに仕事ができる組織をつくっていきたいですし、信頼できる仲間を集めています。
黒田:
光本さんの会社にも、70名ほどの社員さんがいらっしゃいますよね。それだけの人数がいると、だんだんとスピード感が落ちていったりしないんですか?
光本:
メンバーのことは、プロフェッショナルな人材として信頼しています。信頼しているからバンバン仕事を任せていますし、僕が細かく指示を出したり、チェックをすることは少ないですね。だからこそ、スピード感を持って前進できていると感じます。

ただ、会社としてやりたいことは常に共有しています。目的地さえ共有できていれば、そこに向かって走ってくれると信じているんですよね。

続く第3弾記事では、「生涯起業家」と公言する光本氏の起業家マインドを深掘りしていく。

前半は、光本氏の掲げる3つ目の信念「挑戦を、実験と言い換える」をテーマにトークが繰り広げられた。「挑戦を実験と言い換えるだけで、失敗を恐れなくなる」と話す光本氏に、研究者である落合も共感を示し、起業家と研究者に共通する思考が明かされていく。

後半は、落合が提示した「社会の空気」というキーワードをもとにトークが白熱した。サービスのつくり手として、社会と向き合う立場である起業家。しかし"マスのサービス"をつくるためには、「社会の空気」を敏感に感じとる嗅覚が必要だ。起業家として時代の先端を走り続ける光本氏の、優れた嗅覚の源泉を探る。さらに話題はゲスト、MC陣の「情報収集術」についても話が及び、情報の偏りを防ぐために行なっているという、落合のユニークな情報収集術も披露された。

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(SENSORS|落合陽一はイカのプロモーション担当!?ゲスト:光本勇介( 連続起業家の思考法 2/4))

執筆:いげたあずさ

株式会社モメンタム・ホース所属のライター/編集者。ビジネス・テクノロジー領域をはじめ複数媒体で取材・執筆。 アパレル販売・WEBマーケターを経て現職。 映画と音楽が好き。未来の被服の在り方、民族学、伝統文化などに興味があります。
Twitter:@azuuuta0630



編集:小池真幸

ビジネス・テクノロジー領域を中心に取材・執筆・編集を重ねる。東京大学で思想・哲学を学んだのち、AIスタートアップのマーケター・事業開発を経て、現職。1993年、神奈川県生まれ。「人文知とビジネス・テクノロジーの架橋」に関心があります。
Twitter:@masakik512

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