事業づくりは「実験」。"普通"を全力で生きる、連続起業家の思考法

2018.09.26 18:00

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「連続起業家の思考法」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストは起業家の光本勇介氏だ。

全4回にわたってお届けする第3弾記事では、「生涯起業家」と公言する光本氏の起業家マインドを深掘りしていく。

前半は光本氏の掲げる「挑戦を、実験と言い換える」という信念をテーマに行われたトークが繰り広げられた。「実験と言い換えるだけで、失敗を恐れなくなる」と話す光本氏の思考法に、研究者である落合も共感を示す。

後半は、MC落合が提示した「社会の空気」というキーワードをフックにトークが展開。「STORES.jp」や「CASH」など、多くの人に受け入れられるサービスは、いかにして生まれたのか。社会に向き合い続ける連続起業家が、社会の空気を感じ取るために必要なことは一体何なのか。さらに、ゲストとMC陣の「情報収集術」にも話が及び、フィルターバブルを防ぐためにそれぞれが行なっている工夫も明かされた。

失敗すればするほど、成功確度が上がる。挑戦を実験と捉え、恐怖を払拭

黒田有彩(以下、黒田):
それでは、光本さんが掲げている3つの信念のうち、3つ目の「挑戦を、実験と言い換える」についてお伺いしたいです。
光本勇介(以下、光本):
起業や、新しいことへのチャレンジを恐れる人は多いです。失敗にはリスクを伴うものですから。しかし成功よりも失敗から生まれる学びの方が価値がある。失敗すればするほど成功への確度も高くなります。だから、本当はどんどん失敗した方がいい。

メンバーには、よく「これはチャレンジじゃなくて、実験だよ」と言っています。チャレンジを実験と言い換えるだけで、「必ずしも成功しなくていい」となるし「失敗しても大丈夫」と思えるんですよね。
齋藤精一(以下、齋藤):
直感でやって「ダメだったら次に活かそう」というのは、研究者の考え方とも似ていますね。
落合陽一(以下、落合):
そうですね。研究者にとっては、成功よりも、何回失敗したかが重要です。じっくりひとつのことに取り組んで成功するよりも、何回も失敗した方が価値がある。良い結果も悪い結果も、たくさん知っている方が強いです。
光本:
数を打てば当たると思っているので、どんどんスイングしていこうと心がけています。「実験だ」と思い込むことで、思いっきりフルスイングできるんですよね。
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(左より)光本勇介氏、齋藤精一

黒田:
これまでの打率はどれぐらいですか?
光本:
難しい質問ですね。何を成功と定義するかにもよりますが、4,5回に1回とかですかね...。リリース当日に3.6億円をばらまいた「CASH」について、よく「多額のお金をばらまいて怖くなかったの?」と聞かれるのですが、僕にとっては実験結果が得られればそれでよかったので、まったく怖くなかったんです。結果的に大幅に上回りましたが、当初は1億円の予算をつけていて「1億円を無差別にばらまこう」と決めていて。世の中に1億円をばらまいた人なんていないから、実行すれば自分だけがその結果を知ることができる。
齋藤:
そこが今日のテーマでもあるし、大企業の人に見てもらいたいですね(笑)。「僕たち、実験をしなければいけない」と。
落合:
本当にそうですね。投資金額以上の価値を、仕事に見出すことって非常に重要です。今、大規模な予算をつけて行なっている国のプロジェクトがあるのですが、「これはかけた予算以上の意味がある」と思っています。そのプロジェクトによってエコシステムが生まれ、やがて自社事業に還元されるとわかっていると、たとえお金は減ってしまったとしても、すごく意義ある仕事になる。仕事に対して、そういう視点を持てるかが重要です。会社から与えられた仕事をこなすだけでは、仕事に意義を見出すことが難しいのではないでしょうか。
齋藤:
それともうひとつ、事業をマルチドメインで考えることも重要だと思います。「買取サービスがだめだったらデータビジネスに移行しよう」とか。ほとんどの人が、そういう考え方を持てていないんですよね。車だったら車、みたいに一本勝負しかしない人が多い。
光本:
僕たちの想定どおりにいくことって、ほとんどありません。だから、まずは最低限のものを出してみる。そうすれば、実験結果が得られます。想定どおりにいかなくても、その結果を見てさらに事業をブラッシュアップしけば、絶対にうまくいく。そもそも「自分たちが正しい」と思ってサービスを世に出すことはやめた方がいいですね。

"普通"を全力で生きるーー「社会の空気」を感じるために意識していること

黒田:
ここからは、事前にMCのお二人からいただいたキーワードをもとに議論していきたいと思います。まずは、落合さんからいただいたキーワード「社会の空気」。
落合:
光本さんがつくってきた「STORES.jp」や「CASH」は、社会の空気に一致していると思っていて。空気って目に見えないものだからこそ、それを感じとるためには、優れた嗅覚が必要なんですよね。でも、自分で事業を回していると社会と距離が生まれるじゃないですか。さらに連続起業家の場合、どんどん視座が上がって、仙人に近づいていくイメージがあります。それでもなぜ、光本さんは嗅覚を鈍らせずにいれるのでしょうか?
光本:
僕は常に"普通"を全力で生きることを意識しているんですよね。といっても、僕も普通の人ですが(笑)。たとえば「STORES.jp」は、僕たちがECに関して「ド素人」だったから成功したサービスです。リリース当時、既に類似サービスはあったのですが、どれもECサービスに精通した人たちがつくっていて、素人から見れば小難しいものでした。そこに対して、素人目線のサービスを出せたので、多くの人の共感を得ることができたんです。
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齋藤:
僕が「STORES.jp」を使ったきっかけって、サイトのデザインが良かったからなんですよ。他のサービスに比べて、テンプレートのデザインがすごくイケてて、決済の部分もわかりやすかった。素人目線でつくっていたから、ユーザーがつまづく点がわかっていたのでしょう。ECサービスに慣れている人がつくっていたら、「そこは当たり前じゃん」とスルーされていたかもしれない。
光本:
ありがとうございます。BANKも「金融のド素人による、マス向け金融サービス」がつくりたくて、設立した会社です。世の中の人たちにとって、金融サービスは必要不可欠なものなのに、既存の金融サービスはどれも小難しい。僕自身も、金融サービスを使っていて不便さを感じることも多かったんです。だからこそ、わかりやすい金融サービスをつくろうと思いました。サービスをつくる側の人間ではあるものの、常にド素人である努力はしていますね。
落合:
素人目線でサービスをつくると、まったく新しい発想が生まれるんですよね。僕の会社でも、違う業界から来る"素人"としての仕事がありますが、それは世間を驚かすための大喜利に近いです。研究を事業化する場合とはまったく違う。大喜利を続けて行けば、すごく賢い素人になって、イノベーションを起こすことができるのかもしれません。

落合陽一は「可愛い女の子」をフォローする。フィルターバブルをかいくぐる、プロフェッショナルの情報戦略

黒田:
光本さんの情報収集源は、主にネットですか?
光本:
そうですね。常にアンテナは張っていますが、ネットで情報を得る機会が一番多いかもしれません。基本的にはTwitterで情報感度が高い人をフォローして、自動的に情報が入るようにしています。しかし自分と同じ考えの人ばかりをフォローすると情報が偏るので、たまに自分とまったく違うタイプの人をフォローしてバランスをとっていますね。新しい事業はアイディアの掛け合わせから生まれるので、色々な情報を自分の中に蓄積しておくことを心がけています。
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(中央より)落合陽一、黒田有彩

落合:
その気持ち、よくわかります。僕は、ちゃんとした基準を設けていて。タイムライン上に可愛い女の子の投稿が流れてきたら、必ずフォローするようにしているんですよ(笑)。その子たちって、僕がまったく知らない情報を持っているから。だから「この研究がクソだ」みたいな投稿の後に「このファッション可愛い」と流れてきたり(笑)。

それと、僕はエゴサーチのbotを動かしていて、僕に関する特定ワードが含まれた投稿が自動的にRTされるようにしているんですね。その中から、気になるアカウントをフォローしてみたりしています。そうやって工夫をしていかないと、気づかないうちに情報が偏ってしまいますよね。
齋藤:
僕はどうしても、関心がある領域の情報ばかりを追ってしまいます。だから紙や新聞といったアナログな媒体を見るようにしていますね。
光本:
僕も、雑誌は積極的に読むようにしています。毎日は読まないですが、移動時間は雑誌しか読まないと決めていたり。本はあまり読まないのですが、雑誌はバランスよくいろんな情報が集まっているから、いいですよね。
落合:
僕はメディア出演も、情報収集の機会と捉えています。月1のSENSORS収録でも、週1でやっているレギュラー番組でも、他の業界の人に直接話が聞けるので。現場の人に直接聞くのが一番早いので、こういう機会は大切にしていますね。

続く第4弾記事では、ゲスト、MC陣の実体験を踏まえ、起業家の行動哲学を探っていく。

前半は、齋藤からのキーワード「失敗をどうデザインするか」をテーマにトークが展開。メンバーにも常日頃から「失敗は悪いことじゃない、バンバン失敗しろ」と話す光本氏の、失敗を恐れない強さが磨かれた青年時代の経験も語られた。

後半は、長年起業家として時代の先端を走り続けてきたゲスト、MC陣の実体験が語られ、彼らが掲げる「起業家マインド」が深掘りされた。社会性を養うために、一度就職するのも良い」「起業家はプロの仕事でバリューを出すべき」など、それぞれの経験を踏まえたアドバイスで、本サロンを締めていただいた。

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(SENSORS|落合陽一の会社のポートフォリオは...!?ゲスト:光本勇介( 連続起業家の思考法 3/4))


執筆:いげたあずさ

株式会社モメンタム・ホース所属のライター/編集者。ビジネス・テクノロジー領域をはじめ複数媒体で取材・執筆。 アパレル販売・WEBマーケターを経て現職。 映画と音楽が好き。未来の被服の在り方、民族学、伝統文化などに興味があります。
Twitter:@azuuuta0630



編集:小池真幸

ビジネス・テクノロジー領域を中心に取材・執筆・編集を重ねる。東京大学で思想・哲学を学んだのち、AIスタートアップのマーケター・事業開発を経て、現職。1993年、神奈川県生まれ。「人文知とビジネス・テクノロジーの架橋」に関心があります。
Twitter:@masakik512

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