起業家は、刺激的で面白い仕事。"ぐうたら"な社会でフレッシュに生きる、光本勇介の仕事論

2018.10.03 18:00

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「連続起業家の思考法」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストは起業家の光本勇介氏だ。

全4回にわたってお届けする第4弾となる最終回では、起業家として生きるゲスト、MC陣の実体験を踏まえ、起業家の行動哲学を探っていく。

前半は、齋藤が提示したキーワード「失敗のデザイン」をテーマに対話が進む。「失敗は悪いことじゃない」と話す光本氏のバックグラウンドにある、青年期の体験も語られた。

後半は、起業を目指す視聴者に向けて、ゲスト、MCからアドバイスが送られた。「社会性を養うために、一度就職するのも良い」「起業家はプロの仕事でバリューを出すべき」など、それぞれの経験を踏まえたアドバイスで、本サロンを締めていただいた。

"属性"と"個性"を履き違えてはいけない。成功は、失敗体験によってつくられる

黒田有彩(以下、黒田):
続いて、齋藤さんからいただいたキーワード「失敗談」に移りたいと思います。
齋藤精一(以下、齋藤):
はい。「失敗をどうデザインしているのか」をお伺いしたいです。失敗を次に活かすために、どのような思考をされているのでしょうか?
光本勇介(以下、光本):
先ほどの繰り返しにはなりますが、僕たちがやっているのはすべて実験です。だから、失敗は当然のように起こるものとして捉えています。失敗の繰り返しが成功につながりますから。だからメンバーにも「失敗は悪いことじゃない、バンバン失敗しろ」と常に言っていますね。失敗した場合に起こりうる最悪のケースも想定した上で、常に動いています。リスクヘッジをしているので、痛い目を見たこともないですね。
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(左より)光本勇介氏、齋藤精一、落合陽一、黒田有彩

齋藤:
しかし、その考え方が外から理解してもらえないこともあると思います。自分たちは実験のつもりでも、業績が下がれば銀行からお金を借りることができなかったり。
光本:
立場によって、考えるべきことが違うと思っています。たとえば僕が上場企業の社長だとしたら、社員だけではなく、株主や世の中に対しての責任を持たなくてはいけません。しかし僕はこれまで自己資本で起業したり、会社を売却してケアすべき人の数を絞ってきたので、外の目を気にせずに実験を続けていられるのだと思います。
黒田:
光本さんの失敗を恐れない姿勢は、どこで培われたのでしょうか?生物学的には、失敗を恐れるのが自然な気もしていて...。
光本:
十代の頃、イギリスとデンマークに住んでいた経験があるので、その影響が大きいかもしれません。向こうの学校では、みんなと違うことが良しとされていたので、どんどん新しいことにチャレンジして、個性を出していくことが重要視されていたんですよね。チャレンジには失敗はつきものです。チャレンジと失敗を繰り返したことで、失敗に対する耐性がついたのかもしれません。
落合陽一(以下、落合):
日本では、スポーツができることや勉強ができることなど、その人の持つスキルを個性だと捉えがちなのですが、違うんですよね。それはただの属性です。個性というのは、その人の性質や性格といった内面的な要素を表すものですから。日本の教育システムは、スキルを伸ばすことが目的となっていて、個性を伸ばすことができていないと思います。

起業家の名を冠する者は、プロであれ。SENSORSが次世代起業家に送るメッセージ

黒田:
続いては、「起業のメソッド」をみなさまに伺いたいと思います。まず、起業に対するメリットとデメリットについて、教えていただけますか?
光本:
僕はデメリットを感じたことはないですね。これだけ刺激的で面白くて、毎日新鮮な気持ちでいられる職業ってないと思います。後悔をしたこともないですね。
齋藤:
大学を卒業してすぐ、起業したのですか?
光本:
最初は就職して、その会社を辞めたあとに起業しました。僕は高校生の頃からネットで物を売っていて、大学生の頃には新卒の手取り分くらいのお金は稼げていました。だからそのまま就職せず、起業家として生きていこうと思っていたのですが、社会の仕組みも知っておきたくて。変な話、名刺交換の方法も敬語の使い方も知らなかったので。それに、学生ビジネスで稼げる額には、限界があると思ったんです。
齋藤:
一度大きな組織に入って、社会経験を積むことは大事ですよね。僕は就職した経験はないものの、自分で会社をつくったあとに海外の会社に出向していたんです。そのときの経験があったから、社会に通用する素養を身につけることができたと思います。だから弊社のメンバーにも「1回大きな会社に就職した方がいいよ」と言うことが多いです。僕の会社は、礼儀やメールの出し方などを教えられる環境は整っていないので...。落合君はどうですか?
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落合:
僕も、光本さんと同じような感じですね。大学2年の時から働いていて、一般のサラリーマンくらいの年収があったんですよ。

でも当時、サイバーエージェントの方と一緒に働いたことがあり、そのときに言われた言葉を今でも覚えています。当時の僕は忙しすぎて、酷い出来のデザインをあげてしまったんです。そうしたら先方から「もっとプロっぽい仕事をしてくれると思っていました」とメールがきたんですね。

そこから、自分がプロである自覚を持つようになりました。だからそれ以降、リソース不足などで100%の力を発揮できない仕事は、断るようにしています。自分のスタイルに合わない仕事は、クオリティの低いものしかあげられないですし。プロと自覚して仕事を選ぶことも、起業家として持っておくべき思考かと思いますね。
光本:
プロの仕事、つまり社会に通用する仕事とは何か、を知ることは大事ですよね。
落合:
価値のない仕事はするなってことだと思います。自分にしかできないことが、プロの仕事。それがなくてもお金がもらえるのがサラリーマンかもしれないですが。起業家は、常にプロの仕事をして社会にバリューを発揮しないといけない職業だと思いますね。
光本:
たしかに。落合さんのお話を聞いていて、すごく重要なことだと思いました。
齋藤:
黒田さんも起業していますよね?
黒田:
私は宇宙が大好きなので、宇宙に関する事業がやりたくて会社を設立しました。

これから宇宙に誰でも行けるような時代がくると思っているので、宇宙のことを発信していきたいなと。法人格にした方が仕事の幅も広がるので、まずは会社をつくってみました。私1人しかいない会社ですが、社会的な信用も得られましたね。
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齋藤:
僕は30歳になるまではフリーランスで働いていて、肩書きは個人事業主だったんです。でも法人格でないとできない仕事が発生してきたので、仕方なく会社を設立したんですよね。起業は社会的な信用を獲得するための手段にもなり得ます。
光本:
「まずはつくってみる」ってまさに実験的ですね。そのくらい、カジュアルにやってもいいんじゃないかなと思います。やって学べることの方が多いので。
齋藤:
会社を潰したことはありますか?
光本:
事業を畳むことはあっても、会社自体がなくなったことはないですね。
齋藤:
いまはいくつの会社を持っているのですか?
光本:
今いるBANKの他に、STORES.jpという会社があって、そちらでは会長職をしています。
齋藤:
これから新しい事業をはじめる場合、さらに会社を増やすことも想定されていますか?それとも、ひとつの傘の中で事業を増やしていくのでしょうか?
光本:
むりやり会社を増やすことはないと思います。特別な理由がない限りは、同じ傘の中で事業を増やしていく予定です。
落合:
ひとつの傘の中で、ポートフォリオをたくさんつくっていくことが大事ですよね。その分、外部とのパイプラインが生まれて、新しい事業にもつながりますから。弊社も小さい会社ですが、40個くらいのパイプラインを持っています。ひとつの場所で、事業をたくさんつくり続けることが、会社の成長にもつながると思います。
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齋藤:
ポートフォリオをたくさん持っていても、複数のドメイン配下に分散していると評価されにくいかもしれないですね。ドメインといえば、光本さんに質問したいことが。「CASH」のドメインを400万で購入した話をある記事で読んだのですが、なぜそこまでネーミングにこだわっているのですか?
光本:
基本的に、提供したい価値をそのままサービス名に反映しています。お金をテーマにした事業を行う会社だから、社名もBANKにしましたし。ご指摘いただいた「CASH」のドメイン費用は高いと思われるかもしれませんが、サービス名のわかりやすさでたくさんの人に使っていただければ、結果的に安い買い物になると思ったので、即決でした。
落合:
5,000万円だったら躊躇するけど、400万は安いですよね。
齋藤:
「STORES.jp」のドメインも、うまいなって思ったんですよね。当時はjpドメインができたばかりだったので。
光本:
あれは、中国人の方から20万円で購入したんです。その頃はお金がなくて、20万円でも高額に感じていましたが。でもそれ以降、「STORES.jp」という名前で得をすることが圧倒的に多くて、いい買い物だったと思います。僕たちは新しいサービスをつくることが多いから、わかりにくいサービス名だといちいち説明しなくてはいけないんです。でも、サービス名をわかりやすくすれば、その説明コストが下がることにある日気づいて。だから、なるべくサービス内容がイメージできる、わかりやすい名前を選ぶようにしていますね。

「あなたも明るい未来を期待するでしょう?悪くなる方を望む人なんて誰もいない」

「世界最高の起業家」であり、デジタル決済から電気自動車、さらに宇宙事業まで次々に事業を起こしてきた連続起業家イーロン・マスクの言葉である。

失敗を恐れずにイノベーションを起こし続け、明るい未来を創造し続けること。その繰り返しで、人びとの暮らしは豊かになり、新しい世の中が生まれていく。社会を変えるために持つべきものは、特殊能力ではない。必要なのは、失敗を恐れないで突き進む強い心と、挑戦を楽しむ無邪気さだ。これは連続起業家、起業家を志す者だけでなく、次世代で輝ける人材すべての人に必要な要素だろう。

今回ご登場いただいた光本氏とのディスカッションからは、これからの社会で必要とされる、次世代型人材になるためのヒントが垣間見えたのではないだろうか。

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(SENSORS|落合陽一のスケジュールはだだ漏れ状態!?ゲスト:光本勇介( 連続起業家の思考法 4/4))


執筆:いげたあずさ

株式会社モメンタム・ホース所属のライター/編集者。ビジネス・テクノロジー領域をはじめ複数媒体で取材・執筆。 アパレル販売・WEBマーケターを経て現職。 映画と音楽が好き。未来の被服の在り方、民族学、伝統文化などに興味があります。
Twitter:@azuuuta0630



編集:小池真幸

ビジネス・テクノロジー領域を中心に取材・執筆・編集を重ねる。東京大学で思想・哲学を学んだのち、AIスタートアップのマーケター・事業開発を経て、現職。1993年、神奈川県生まれ。「人文知とビジネス・テクノロジーの架橋」に関心があります。
Twitter:@masakik512

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