次世代クリエイターの考える2020年のライブ演出~BAPA・卒業制作アイデア発表

2015.06.23 12:00

Bascule×PARTYが始めた、次世代クリエイターのための学校「BAPA」が、6月10日(水)に渋谷・ヒカリエで、初の特別公開授業を開講した。この日の授業は「公開アイデアチェック」。2期生である42名の生徒達が、卒業制作に向けて練っているアイディアを、講師陣に初めて公開する一大イベントだ。広告代理店、TV局など様々なフィールドで活躍するクリエイターであり、難関の入学審査を通過した、選ばれし生徒達の作品を一目でも見ようと、集まった観客や報道陣で満席の会場で、授業は開講した。

一般参加者にも公開された、特別講義の会場は満員御礼

次世代を担うスタークリエイターを生む学校、BAPA。開校から早3ヶ月、7月20日(月)の卒業制作ライブに向けた、アイディアの中間発表会が、6月10日(水)に渋谷・ヒカリエにて行われた。

2期生に課された卒業制作のテーマは、「2020年の渋谷系--次代のライブエンタテインメント--」。既に、pixiv発の話題のアイドルユニット「虹のコンキスタドール」とのコラボが決定しており、生徒42人が9チームに分かれ、7月20日(月)ヒカリエホールで開催の卒業制作ライブにて既存のライブにはないインタラクティブなライブ演出作品を披露する。

卒業制作のアイディア審査を行う講師陣

会場には、BAPA講師陣に加え、特別審査員としてRhizomatiks・石橋氏が参加。さらには虹コンの生みの親であるpixiv・永田氏、ABBALab・小笠原氏、卒展ライブの会場を提供してくれている東急電鉄・磯辺氏ら豪華な面子が特別ゲストとして招待された。

「2020年のライブエンタテインメント」に挑戦

このお題をもとに、審査員により順位を決定、さらに選ばれたチームが虹コンとコラボができる。アイデアプレゼンの制限時間は、わずか5分。限られた時間内の発表が運命を分ける。会場の生徒達の緊張が高まる中、プレゼンテーションは幕を開けた。

■萌えて、燃える。自分の応援で、会場を推しメン色に「NIJICON LIVE GYM」

トップバッターであるAチームが着目したのは、「変化の激しい音楽業界」。

楽曲ビジネス全盛期の90年代も2000年代には、MP3の登場によりCDセールスは下降線を辿った。さらに2010年代には音楽の購入形態がダウンロードにシフトしたのと同時に「体験型の音楽ビジネス」が台頭。そんな、新陳代謝が激しい音楽・ライブ業界の「2020年」に、人々が求めるモノは一体何なのだろうか。

ひとたび音楽から離れ、社会全体を俯瞰してみると、2020年には、自動運転や人工知能などが一般化することで、私生活の中の身体的負荷が減少する。未来の生活では、我々は便利さと引き換えに、運動の機会が減る。ゆえに、多くの人は「ダイエット」に対する欲求が強くなるのではないか、と彼らは仮定した。

そんな彼らが提案するのは、ライブ会場で「萌えて」「燃える」、アイドルを応援しながら、カロリー消費を楽しめる、ライブエンターテイメント「NIJICON LIVE GYM」だ。

Aチームの「NIJICON LIVE GYM」。会場が推しメンカラーで染まっている状況

メンバー7色のLEDバングルから、自分の推しメンの色を選び装着し、腕を振り応援すると推しメンのカラーボールがもらえる。それを会場スクリーンに投げると、会場全体がその色に染まるという仕組みだ。

「推しメンが一番目立ってほしい!」というファンのモチベーションを利用し、動き回ってもらうことで、どんどんカロリーを消費してもらう。

また、ゲーム最後の1分間は投げ放題タイムで、7色のカラーボールがランダムに投げられることで、会場が虹色に染まるという、会場全体で一体感を楽しめるような仕掛けもあるという。

■「手を挙げる」を利用した玉入れバトル型エンターテイメント「EXCITOSS!!」

渋谷のDNAと言えば、人が集まり楽しむ「イベントに参加するDNA」なのではないだろうか。ライブも観客がただステージを見るだけでなく、アーティストと観客の壁をなくし、「一緒につくるライブへアップデート」というのが、コンセプト。

そんなBチームが提案するのは、「EXCITOSS!!」。

会場全体を赤組・青組に分け、スクリーンを使った玉入れでファンが競争しながら、ライブを楽しめるというゲーム性の高い演出だ。ライブ会場ならではの光景である、「手を挙げた応援」に着目し、手を挙げるとセンサーが反応し、スクリーン上の自分の色の玉入れに玉がどんどん入って行くという仕組みだ。

Bチームの「EXCITOSS!!」。虹コンvs講師陣の白熱の玉入れが行われた

その他にも、リズムボールのタイミングで入れると得点加算されたり、間奏にはアーティストメンバーも参加し、相手チームの玉入れを邪魔したりすることも出来る。

また、現状は天井から吊るしたキネクトを利用した演出になっているが、将来的には、手に何もつけず「手ぶらで楽しめるライブ」を想定している。

■観客のアツいメッセージがスクリーンに「CHEER WALL」

「見る側」と「演出側」という乖離した関係を壊すことで、会場全員が演出に参加出来るライブを実現する「CHEER WALL」。会場の観客が送ったメッセージが、スクリーン映像として、映し出されるというライブ演出ツールだ。

観客は専用サイトにアクセスすると、"自分だけのWALL"をゲットできる。そのWALLを、ライブ中にスクリーンに向け振り投げることで、自分のWALLがスクリーン画面の一部となるというものだ。

Cチームの「CHEER WALL」。会場のスクリーンが様々なwallで埋まるシーン

配布されるWALLは、文字や記号などが一人一人異なるため、自分のWALLがスクリーンの一部になっているのを見ることで、観客も演出の一翼を担っている使命感が感じられ、より参加意欲を高める仕掛けになっているという。

■虹コンの声が自分だけに届く!?特殊スピーカーを利用した「Ultrasound Live」

SENSORSメンバーでもある生徒の池澤さんが、何やら変わったスピーカーと共に登場し始まったDチームの発表。

ライブ中、アイドルは目線はくれるものの、声は一人一人に届けられていないという点に着目し、「音の拡張」を利用し、「アイドルの声をファン一人一人の耳元に届けよう」というコンセプトだ。

そんなDチームのアイディアは、マイクを組み込んだ指向性スピーカーを利用して、"音の大砲"をファンに届ける、題して「Ultrasound Live」だ。

ライブでは、虹コンメンバーが、その特殊なスピーカーを通して、歌ったりトークしたりすることで、ファンが自分にメンバーの声が届いたような感覚を楽しめる。

Dチームの「Ultrasound Live」のイメージ画像

現状では開発途中ということもあり、スピーカーの音質や音量が不十分なことが課題。今後は、スピーカーの性能の向上と共に、スピーカー本体にカメラを搭載することで、今どこに音が放たれているのかや、音の波長のビジュアライズ化も考えているという。

(なおSENSORSではBAPAの受講生でもある池澤あやかを追いかけた連載をおこなっている:DAYS OF BAPA 〜池澤あやかのBAPAな日々〜

■みんなの前で歌唱力が評価されちゃう「LIVE SCORE --みんなで目指そう高得点!--」

続いてEチームが提案したのは、「LIVE SCORE --みんなで目指そう高得点!--」だ。コンセプトは「虹コンメンバーの採点」。まだまだピチピチで、アイドルとしても成長途中の虹コンメンバーの歌声を、会場で採点してしまおうというアイディアだ。

楽曲演奏中の、虹コンメンバーそれぞれの歌声がカラオケのようにスクリーン上で採点される。観客は、会場でスマホにアクセスすると、携帯を振るだけで「かわいい〜」や「虹コン!」といった応援音が出せるようになり、採点中に会場全体をさらに盛り上げられるといった仕掛けも用意されている。

Eチームの「LIVE SCORE --みんなで目指そう高得点!--」発表風景

またライブ終了後には、メンバーそれぞれのランキングや、観客の参加率をもとにしたライブ全体の評価も発表されるため、「みんなで100点満点のライブをつくろう!」という一体感が会場に生まれるという。

音を外してしまう、歌詞を間違えてしまうといったライブならではの醍醐味がアイドルもファンも楽しめる形のコンテンツとなっている。演者と観客が双方向のコミュニケーションを築ける場を提供する提案だ。

■ファンの応援が、アイドルの輝きに。「煌めけ!!虹のコンキスタドール」

「必死の雄叫びや、本気のオタ芸をしても、本当にアイドルには届いているのか? 」

こんなファンとアイドルの想いがすれ違うライブなんてもったいない!観客の誰もが、簡単に確実に推しメンに届く応援が出来るライブを実現する。そんなFチームが提案するのが、「煌めけ!!虹のコンキスタドール」だ。

Fチームの「煌めけ!!虹のコンキスタドール」メンバーが実際につける羽を装着中の様子

何やら羽を装着し始めるFチーム、この羽が演出の肝になるとのこと。

まず、観客はスマホでサイトにアクセスし推しメンを選ぶ。そしてライブ中に、メンバーに向かってスマホを振るとスクリーンにアイコンが飛んでいく。そのアイコンが、メンバーの応援ゲージとしてスクリーン上で貯まると、メンバーの装着する羽に吸い込まれ羽が輝く。

つまりファンの応援分だけ、虹コンの羽が輝くという仕組みになっている。

それゆえ、羽の輝きがメンバーの人気度を表す指標となる。ファンの推しメンの羽を輝かせようとするモチベーションを利用し、負けじとスマホを振る応援を促すことで、会場をより盛り上げてもらおうというのだ。

自分の応援が確実に推しメンに届き、さらに彼女達を輝かせられるという達成感をコンセプトにした、新しい演出だ。

■会場全体で一夜限りのバンド演奏!「会場全員でバンド組もうぜ!」

クラフト感満載の、大きな楽器を両手に現れたHチームが掲げるのは、「会場全員でバンド組もうぜ!」。

「盛り上がり方が分からない」「アーティストとファン以上の関係になりたい」 「自ら音楽発信したい」。こんな3つの観客の想いを実現するのが、会場全員でまるでバンドを組んだような感覚が楽しめる企画だ。

Gチーム「会場全員でバンド組もうぜ!」実際に虹コンメンバーが楽器の演奏を体験

会場では、紙で出来たギター・ピアノ・ドラムなどの楽器が配布される。スマホから指定のURLにアクセスし、楽器にスマホを装着。すると、自分と同じ楽器もつメンバーの楽器と同期され、メンバーの動きに合わせ、楽器に触れると、リアルタイムで自分の演奏音が会場に流れるのだ。
また、ステージ後方のスクリーンには演奏中の自分の顔が映ったり、メンバーの演奏とシンクロ率高い人順にランキングに表示されたり、観客の演奏を後押しするコンテンツも豊富だ。

「アイドルと観客」という関係を越え、「一つのバンドを組む」という共同作業を通じてアイドルとファン間の絆をより強固にする。会場にいる観客みんなで音をかき鳴らすという新しい形のライブエンターテイメントだ。

■布のスクリーンに投影されるアイドルとファンのエネルギー「プロジェクト 虹のサーキュレーション」

近年の渋谷と言えば、「泡パーティー」に代表される、みんなで集まって、一体化するイベントが絶大な人気を集めている。それゆえ、2020年の渋谷でも「全体が溶け合い、一体感を得られるイベント」が求められるのではないだろうか。

そんなHチームが提案するのは、観客とアイドルのエネルギーのやりとりを加速・循環させ、会場の一体感を創出する「プロジェクト 虹のサーキュレーション」だ。

Hチームの「プロジェクト 虹のサーキュレーション」モック風景

演出に使われるのは、「布のスクリーン」。布には「愛の波システム」「虹の架け橋システム」「秘密のささやきシステム」という3つのコンテンツが楽しめる仕掛けがある。

まず、観客は布に用意された穴の中に入り、スマホを設置する。楽曲が始まると、まず「愛の波システム」が作動し、虹コンメンバーが歌いながら、布に向かってステッキを振る。すると、布に歌詞が投影され、さらにその歌詞がファンにぶつかると虹の欠片に変わる。

また、「秘密のささやきシステム」では、ゲットした虹の欠片の個数によって、虹コンメンバー秘密のボイスが、ファン一人一人のイヤホンに届く。

さらに楽曲が終わると、「虹の架け橋システム」が始まる。ファンはアイドルライブならではの「ケチャ」のポーズで、ステージに向かってスマホ振ると、虹コンの方向に星が届けられ、メンバーの頭上に虹が架かったような演出が出来上がる。

布のスクリーンを通して、アイドルの歌うエネルギーと、ファンの応援するエネルギーが可視化されるアイディアだ。

■ファンの想いを形にして発射!「コトバズーカ」

いよいよ最後のチームIチームの発表。会場中央に設置された大きなメガホンに、会場の視線が集まる。

Iチームが提案するのは、ファンの叫びそのものが演出になる「コトバズーカ」だ。全てのアイドルファンに共通する想いである、「ステージ上のアイドルに自分の声を届けたい」を実現する特別仕様のメガホン。

Iチームの「コトバズーカ」実際に会場で声を吹き込み実演

メガホンには、Googleの音声認識機能が搭載されている。メガホンの前で、ファンが叫ぶとメガホンのLEDが光り、ステージのスクリーン上にその言葉が文字として届き、溜まっていく映像が楽しめる。

会場でも実演され、生徒が叫んだ声に連動して、スクリーンにその言葉が投げ落とされていくデモも楽しめた。

■9チーム発表を終えての総評、さらなるブラッシュアップに期待

永田(pixiv):
「応援方法」の部分に、インタラクティブ性を持たせたアイディアが多かったですね。最終報告までに、どこまでブラッシュアップできるかが今から楽しみです。
小笠原(DMM):
どのアイディアも、ファンもメンバーも楽しませるというコンセプトは共通していると感じました。ただ、2020年のアイディアの中で、どうしてもスマホを使った提案が多い気がしました。
磯辺(東急電鉄):
「同時参加性」と「ファンの特別感や優越感の盛り上げ」の2つのポイントが、ライブのおもしろさのフックになるような気がしました。この2点をどう担保したアイディアになっていくのか、楽しみです。
鶴見萌(虹コン):
全部やってみたいと思うものばかりでした。中でも印象に残ったのは、「Ultrasound Live」。ファンの人が何か出来るという提案が多い中、スピーカーであれば自分たちも参加しながら楽しめるので、惹かれました。

■ヒカリエのライブ会場で虹コンとコラボ出来るのは・・・遂に審査結果発表

会場が息を飲む順位発表風景

「みなさん、本当にお疲れ様でした。どこのチームもチャレンジングで、いい作品ばかりでした。審査では、ここをもっとこうしたら良くなるかもや、最終発表に向けて伸び代があるか等を考慮しました」と朴校長。

運命の順位発表の結果は・・・

1位 Bチーム「EXCITOSS!!」
2位 Iチーム「コトバズーカ」
3位 Dチーム「Ultrasound Live」
4位 Aチーム「NIJICON LIVE GYM」
5位 Gチーム「会場全員でバンド組もうぜ!」
6位 Cチーム「CHEER WALL」、Eチーム「LIVE SCORE」、Fチーム「煌めけ!!虹のコンキスタドール」、Hチーム「プロジェクト 虹のサーキュレーション」

中間発表で1位を獲得したBチームメンバー

そして、7月20日のライブ会場で実演できるのは・・・
「なんと全チーム審査通過しました!」

朴:
是非全チーム、会場全員がインタラクティブに楽しめるライブエンターテイメントを実現してほしい。本日の結果をバネに、最後に大逆転をかまして下さい。

また全チーム実演可能という大英断をされたpixiv永田氏、DMMの小笠原氏からも全体講評がなされた。

永田:
全チームのプレゼンを聞いた上で、どの演出も見てみたいと思いました。実現可能性に不安な部分もありつつ、当日はみなさん思いっきりやってみて下さい。
小笠原:
上位チームは、スマホ以外のモノを使った演出ですごくいいと思いました。観客が手ぶらで楽しめるような、Bチームの「EXCITOSS!!」や、Iチームの「コトバズーカ」のような、観客とアイドルのやりとりが実際に行われるなど、ライブの新しい楽しみがもっと増えるような提案にワクワクしました。

虹コンポーズで幕を閉じた公開授業

また、今回見事上位3位に選ばれたチームに対し、それぞれの講師陣より講評がなされた。

石橋:
Dチームの「Ultrasound Live」の「アイドルの声が一人一人の耳元に届く」という着想は新しい。その上、スピーカータイプなので、ライブ中アイドルがいつでも使って楽しめるという汎用性も期待出来る。
中村:
Iチームの「コトバズーカ」には唯一満点を入れました。非常にシンプルなのだけど、ライブが一番盛り上がりそうだなと感じました。上位に上がってきているのは、スマホ以外のモノを使っているものが多いですね。
馬場:
Bチームの「EXCITOSS!!」は実に楽しみ方が分かりやすい。虹コンと接せるインタラクティブ機能はすでに搭載されていて、ライブ時に実演出来ている、完成形が想像出来た。

卒業制作最終発表の場である虹コンライブは、7月20日。審査による順位付けはされたものの、全てのチームに卒業ライブでの虹コンとのコラボが保証された。選ばれし精鋭達が、現状のコンセプトをもとに、どんな作品に仕上げるのだろうか。そして、奇跡の大逆転は起こるのだろうか。残り1ヶ月の彼らの、「飛躍」に期待したい。

取材・文:長谷川輝波

フリーライター、慶應義塾大学法学部4年在籍。

最新記事