ブロックチェーンの本質は、価値創造。世界を熱狂させる、ブロックチェーンの魅力

2019.02.11 18:00

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(左から)上野広伸氏、伊藤佑介氏、齋藤精一、落合陽一、黒田有彩

「ブロックチェーンとエンターテインメントの可能性」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストに迎えたのは、上野広伸氏(double jump.tokyo株式会社 代表取締役)と、伊藤佑介氏(博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ)だ。

全3回にわたってお届けする第1弾記事の前半では、伊藤氏が「ブロックチェーンの歴史」を語った様子をお届けする。たった9枚の論文から生まれたブロックチェーンは、なぜ世界中で注目されるようになったのか。落合が「一つのツールとして捉えている」というブロックチェーンの歴史を探っていく。

後半は、「ビットコイン」をキーワードにトークが展開。ビットコインの仕組みを例に挙げながら、伊藤氏はブロックチェーン技術の特徴を解説した。さらに落合からは「ピアツーピア通信とブロックチェーンの違い」について質問が投げかけられ、議論が白熱した。

言葉だけが一人歩きし、実態の理解が進んでいないブロックチェーンについて、伊藤氏の話から理解を深めていく。

黒田有彩(以下、黒田):こんにちは。草野さんに代わって番組アシスタントを務めさせていただきます、黒田有彩です。そしてMCは、日本を代表するクリエイター集団、ライゾマティクス代表の齋藤精一さんと、メディアアーティストの落合陽一さんです。

今日は新年一発目の収録ですが、MCのお二人は、年末年始どのように過ごされたのですか?

落合陽一(以下、落合):年末は朝までテレビ番組に出演して、その後はラボで研究していましたね。

黒田:お疲れ様です。お正月とか関係ないんですね。

落合:お正月は研究どきなんですよ。周囲の音も静かだし、振動もないので。齋藤さんは?

齋藤精一(以下、齋藤):ライゾマティクスのメンバーが関わっている番組をチェックしたりしていましたね。そうしたら、落合君が出ていたりして(笑)。それを朝まで観て、普通のお正月を過ごしました。

黒田:落合さんはお餅を食べたりとかしていないんですか?

落合:正月の夜だけは、妻と一緒に家でご飯を食べましたよ。

齋藤:お子さんにお年玉をあげたりしたんですか?

落合:まだ貨幣のことは「音がなる金属」としてしか認識していないので、あげていないですね(笑)。

齋藤:最近は、お年玉も電子マネーであげる人がいるみたいですよ。

一同:えー(笑)!

たった9枚の論文から誕生した、ミステリアスなブロックチェーンの歴史

黒田:今回SENSORSが注目したテーマは「ブロックチェーンとエンターテインメントの可能性」です。仮想通貨への応用のみならず、インターネットやAI開発と同じくらい、今後の発展が期待されるブロックチェーン。今回は、ブロックチェーンを活用して、エンターテインメントがどのように進化していくのかを深掘りしていきます。MCのお二人は、ブロックチェーンについてどのようなイメージを持たれていますか?

落合:「ブロックチェーンを使ったVR」についての論文を書いたりしていますが、僕はブロックチェーンは一つのツールとして捉えています。

黒田:既にブロックチェーンをツールとして使う機会は多いですか?

落合:ブロックチェーンを使ってデータベースを構築したりしていますね。

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黒田:齋藤さんはいかがですか?

齋藤:仕事上、ブロックチェーンの話が登場することは多いですが、やっぱりまだセキュリティ強化のために使われている機会が多い気がしますね。なので、今日のテーマである「ブロックチェーンとエンターテインメントの可能性」について、どんなお話が聞けるのか楽しみです。

落合:エンターテインメント業界って「あまり効率的じゃないな」と思う仕組みも多いので、そうした課題をブロックチェーンがどのように解決するのかは気になりますね。

黒田:それでは、本日のゲストをご紹介します。今回お越しいただいたのは、double jump.tokyo(ダブルジャンプトーキョー)株式会社 代表取締役の上野 広伸さんと、博報堂ブロックチェーン・イニシアティブの伊藤 佑介さんです。

お二人の簡単なプロフィールをご紹介させていただきます。上野さんは、株式会社野村総合研究所にて金融システムの基盤構築に参画。その後株式会社モブキャストにてゲームサーバーの設計開発、スマートフォンゲームの開発基盤の構築を指揮されていました。そして現在は、ブロックチェーンゲーム開発を行うdouble jump.tokyo株式会社の代表取締役を務めていらっしゃいます。伊藤さんは、株式会社博報堂にてデジタルマーケティングを担当。2016年からは広告・マーケティング領域でブロックチェーン活用の研究に取り組まれており、去年の9月からは「HAKUHODO Blockchain Initiative」(博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ)という社内プロジェクトで活動されています。

伊藤佑介氏(以下、伊藤)、上野広伸氏(以下、上野):よろしくお願いします。

黒田:まずはブロックチェーンについての基本的な理解を深めておくために、伊藤さんからご解説していただきたいと思います。

伊藤:ブロックチェーンが誕生したきっかけは、2008年に謎の人物"サトシ・ナカモト氏"が書いた論文です。この論文には、大きく分けて二つのことが書いてありました。一つは皆さんご存知のデジタル通貨「ビットコイン」の話。もう一つが、ビットコインの流通を実現するための「ブロックチェーン技術」についてです。この二つの内容が、わずか9ページの論文に書かれていて、そこからブロックチェーンの歴史が始まっている。まるでSF映画のように謎めいていて、面白いですよね。

ブロックチェーン業界には、「仮想通貨派」と「ブロックチェーン派」といった二つの流派があります。仮想通貨派の人たちは「ブロックチェーンは仮想通貨にしか活用できない」と思っていて、ブロックチェーン派は「仮想通貨以外のものにも活用できる」と思っている。ブロックチェーン業界の歴史はまだ浅いですが、流派が分かれるほど、非常に盛り上がっているんですよね。

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黒田:齋藤さんも落合さんも、ブロックチェーン派ですよね。

落合、齋藤:そうですね。

伊藤:僕もブロックチェーン派ですが、時々仮想通貨派のセミナーに行くと、彼らの中でも思想の違いがあって面白いんです(笑)。

黒田:ブロックチェーンの技術自体は、2008年以前から存在していたのでしょうか?

伊藤:実はこの論文の中に、「ブロックチェーン」という言葉は書かれていないんです。論文を読んだ人たちが「ビットコインを実現するための技術」をブロックチェーンと呼ぶようになったんです。

「ビットコイン株式会社」は存在しない。自律分散型のブロックチェーンシステム

黒田:ここからは、ブロックチェーンを理解する上で知っておきたい3つのキーワード「ビットコイン」、「トークンエコノミー」、「Dapps」を、伊藤さんに解説いただきます。まず「ビットコイン」からお願いします。

伊藤:ビットコインは、ブロックチェーン技術によって誕生した、仮想通貨の一種です。その仕組みは、インターネットの仕組みと比較すると分かりやすいんですよね。インターネットは、各個人のデバイスから中央サーバーにアクセスする形で成り立つ仕組みなので、サーバーの管理者が必要不可欠です。そのため、それぞれのWebサービス毎に、管理者となる企業が存在していますよね。

しかしブロックチェーンは、管理者がいなくても成り立つ仕組みなんです。ブロックチェーンの技術は各個人のデバイス上で動いていて、データも分散しています。なので、企業が提供するサービスとしてビットコインがあるわけではありません。「ビットコイン株式会社」は存在しないんです。ビットコインは自律分散型で、色々な人が参加して作られているものなんですよね。「管理者がいなくても動くシステムができる」ことが、ブロックチェーンの面白いところでもあります。

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上野:僕は、インターネットとブロックチェーンは、近いものだとも思っています。たしかに各企業が運営するWebサービスによって、インターネットの概念が構築されていますが、どこか一つの会社が潰れたとしても、インターネットが消滅することはありません。インターネットもブロックチェーンも同様に「半永続的なもの」ではあるんです。

ただ、今までは一つのWebサービスは一つの会社しか運営できませんでしたが、ブロックチェーン技術を使えば、多数の人で運営できるようになるんですよね。だから、客観的にデータを扱うことができるようになるのだと思います。

落合:ちなみにピアツーピア通信とブロックチェーンの違いについては、どのようにお考えですか?

伊藤:ピアツーピア通信は、個々のデバイスが相互に接続することによって成り立つので、全員が同じデータを共有することができます。一方で、ブロックチェーンの場合、データを共有するのではなく、個々人がデータを保有できる。そこが、ピアツーピアとブロックチェーンの違いだと思います。

落合:ピアツーピア通信って、今はあまり使わないんですか?

齋藤:いや、使いますよね。

落合:ピアツーピア通信って、ビデオ会議やファイル共有の必要性が高くなった2000年代にに生まれたものですよね。相互に通信することで、それぞれが個別に保有しているデータベースを共有できるんです。ブロックチェーンの場合、一本の長いデータベースがあって、その保有権が個々にある。仕組みが似ているから、よく混同されやすいんですよ。

伊藤:インターネットの登場以降、個人間で簡単に情報伝達ができるようになりました。そしてブロックチェーンの登場によって、今度は「価値の流通」が手軽にできるようになると言われています。今は仮想通貨が注目されていますが、人の価値や感謝の価値といった、経済価値以外の価値を、誰もが自由にデジタル上でやりとりし、データとして保有できるようになると言われています。

たとえば、SNSサービスの「VALU」さんは、「個人の価値」を可視化し、流通させることに取り組んでいます。また不動産会社のLIFULLさんは、「不動産の価値」の流通に取り組んでいます。

このように、各業界でさまざまな取り組みがなされていますが、目的の多くは「データの保有」です。たとえば今、オンラインストレージサービスに保存されているデータは、ユーザーではなくサービスを提供する会社の管理下にありますよね。「その会社が大企業であれば、データが消滅することはない」と思う人が多いでしょうが、突然サービスが終了してしまったら、オンラインストレージサービス上にあるデータは消えてしまいます。しかし、ブロックチェーン技術を使ってデータを管理すれば、理論上は半永久的に残り続け、ユーザー自身がデータを保有できます。

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落合:誰しもが参照可能でオープンなデータベースということですよね。改ざんができないから、永続性が高い。

黒田:「公文書の書き換え問題は、ブロックチェーン技術で解決できる」といった意見もありますよね。

齋藤:コンテンツ課金のサービスだと、コンテンツの流通と共に著作権の所在が分からなくなってしまうことがあります。そうした課題を解決するために、今後はブロックチェーンを使ったコンテンツ管理が当たり前になっていくんじゃないですかね。

落合:コンテンツ保護のために、ブロックチェーンは有効ですよね。ダウンロード不可の画像でも、誰かがスクリーンショットを撮って流通する場合もありますし、コピーガードされた音楽も録音されてしまえば、簡単に流通してしまいます。ブロックチェーン上に暗号情報を載せてコンテンツを配信すれば、購入者のみに閲覧権限を付与することもできますし、そのコンテンツが「どこで」「誰に」使われたかが記録できます。中央サーバー不要でそれが実現できるサービスを作りたい企業が、ブロックチェーンに注目していることが多い気がします。

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齋藤:黒田さん、昔あった「ドングル」というものを知っていますか?

黒田:ドングル...?

落合:今もありますよね。

齋藤:ありますね。ソフトウェアの不正コピー防止に使われるハードウェアキーのことです。USBポートに挿すとライセンス認証されて、アプリが起動できるもの。昔は中央サーバーにデータがあったから、不正コピーを防ぐためにはドングルのような鍵が必要だったんです。しかし今や、インターネットは空気のような存在です。世界中のデバイス同士が繋がっていて、24時間オンラインであるからこそ、中央サーバーから情報を取りに行くのではなく、みんなで分散的に情報を管理していくべきだと思います。一人の人が情報を持つのではなく、「みんなで情報を持つ」というのが、ブロックチェーンの考え方ですね。

続く第2弾記事の前半では、「トークンエコノミー」をキーワードに展開されたトークの様子をお伝えする。主に仮想通貨領域で生まれる経済圏を指す「トークンエコノミー」だが、経済価値以外のトークンでも、コミュニティが発生しつつあるのだと伊藤氏は言う。さらに落合と齋藤からは、ブロックチェーンを活用した新たな取り組みの内容も明かされた。

後半は上野氏構想する「俺嫁プロジェクト」をもとに、ブロックチェーンゲーム会社設立の背景が語られた。「ブロックチェーンゲームは、新しい概念の遊びだ」と話す上野氏に対して、齋藤は「強固なコミュニティ生成ができるブロックチェーンは、熱狂的なファンが集うゲームと相性がいい」と、その思想に共感した。

ブロックチェーンによって生まれる「新時代のコミュニティ」の在り方を、伊藤氏と上野氏の話から、紐解いていく。

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(SENSORS|落合陽一がブロックチェーンをわかりやすく例えると!?ゲスト:伊藤佑介・上野広伸(ブロックチェーン 1/3))

執筆:いげたあずさ

株式会社モメンタム・ホース所属のライター/編集者。ビジネス・テクノロジー領域をはじめ複数媒体で取材・執筆。 アパレル販売・WEBマーケターを経て現職。 映画と音楽が好き。未来の被服の在り方、民族学、伝統文化などに興味があります。
Twitter:@azuuuta0630



編集:小池真幸

ビジネス・テクノロジー領域を中心に取材・執筆・編集を重ねる。東京大学で思想・哲学を学んだのち、AIスタートアップのマーケター・事業開発を経て、現職。1993年、神奈川県生まれ。「人文知とビジネス・テクノロジーの架橋」に関心があります。
Twitter:@masakik512

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