note発・cakesで人気のエッセイスト スイスイの「色で文章を紡ぐ」創作術

2016.08.25 12:00

コンテンツプラットフォーム「cakes」で人気連載「メンヘラ・ハッピー・ホーム」を展開中のエッセイスト・スイスイさん。「note」のクリエイターコンテストの入賞をきっかけにエッセイストデビューを果たした彼女は、元CMプランナーで二児のママ。「メンヘラはネガティヴなことではない」など独自の感性を持つスイスイさんに、コラムを書く上での創作術についてお話を伺った。
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『メンヘラ・ハッピー・ホーム』はメンヘラだったというスイスイさん自身の半生を、リア充となった今の視点から振り返っていくエッセイ。メンヘラ時代の強烈なエピソードと鋭い考察で、「メンヘラ」の習性・生態系・本質を明らかにしていく。

メンヘラのレベルを「1重(おも)~10重(おも)」で表現するなら、自分は「8.5重にチーズトッピングくらいだった」という。
【 当店のメンヘラ】カレーが飲み物なら、メンヘラは持ち物です【メニューはこちら】より)

■noteでコラムを発表し、cakesでエッセイストデビューを飾るまで

新卒でリクルートに入社後、CMプランナーへ。昨年度よりエッセイストとして活動しているスイスイさんだが、noteでコラムを書き始めるきっかけ、そしてcakesで連載を持つまでの経緯はどのようなものだったのだろうか。

--コラムを書き始めるにあたり、なぜ「note」を選ばれたのでしょうか?

スイスイ:
noteを初めに気に入った理由は単なる日記やブログだけではなく、漫画のような作品まで載せられる、クリエイターに開かれたプラットフォームだと思ったからです。
書き続けたいと思ったのは、編集部による「noteのおすすめ」があったから。記事を書いた人が有名人ではなくても、「スキ」が多く付いていなくても、編集部が面白いと思ったものをピックアップしてくれます。これによって新しい読者の方も付いてくれたことが、私がnoteにハマった理由かもしれません。

--noteでコラムを書き始めてから、cakesで連載を持つに至った経緯を教えてください。

スイスイ:
去年の9月頃、本格的にnoteでエッセイを書き始めました。その翌月クリエイターコンテストが開催されることが発表されたんです。私はすごく真面目な性格なので、仕事も辞めて、友達からの約束も入れないようにしました。この一ヶ月間、子供が昼寝をしている間に集中的に執筆。さながら受験勉強のようでしたね(笑)
下書きには90記事近くありましたが、その中から「これは」と思うものを毎日上げ続けていきました。その中でも特に、「【SNSで「私は人に恵まれている」と書きたい系女子】別名【フライ級女子】が気づかせてくれた大切なこと。」などは好評でしたね。

Facebookの投稿で、言われてみればたしかに見かけることの多い「私は人に恵まれている」という一言。スイスイさんは「読むだけで脳に熱量を消費させるハイカロリーなこの言葉が、揚げ物のように見えてきた」といい、こうした言葉をSNSで使う女性を"フライ級女子"と名付けた。
誰もがなんとなく感じている違和感を次々に言語化していく、その着眼点の鋭さには独特の感性が見え隠れする。

スイスイ:
出産後、今日が初めての取材なんです。なので今日のために万田酵素を飲み続けたり、ダイエットをしたり、美容院に行ったり、服を新調したりしてきました。出産の後は体重も増えるし、髪も少なくなる。こういうことは本来言いたくないし、書きたくもない。だけど、私の中で言いたくないことをそのまま言わずにいると、どこか気持ち悪くなってしまうんです。だから恥ずかしいことは隠すことなく、書いたり、口に出したりします。

■「昔から人の悪口を言ってきた」創作のヒントにはお笑いや映画の演出をみる

--日常の中でも、創作の種を探しているのですか?例えば、街を歩くときは何を考えていらっしゃいますか?

スイスイ:1985年名古屋生まれ。大手広告会社での営業を経て、コピーライター・CMプランナーに。2015年コラムニストを目指しnoteで執筆をスタート。cakesクリエイターコンテストで入賞し今連載がスタート。プライベートではメンヘラを経て100%リア充になり、現在は二児の母。
twitter: @suisuiayaka
noteコラム: https://note.mu/suisuiayaka

スイスイ:
例えば、今日も信号待ちをしていると、こんな情景に出くわしました。赤信号の間にドライバーさんが車を降りて、トランクを開けて荷物を出して、また戻って出発。限られた中でのギリギリの作業なのに落ち着き払って行動していました。業者の車だったので、恐らく運転手さんはここの交差点の信号がどれくらいの時間で変わるのかを熟知していたのでしょう。私は昔から人が気づいていないことを発見し、自分の生活に活かしている人を見ると、「ああ、カッコイイな」って思うんです。
日常の中でこういうシーンに遭遇すると、すぐに下書きに書き溜めてしまいます。

--一方でスイスイさんの作品は揶揄のような、斜に構えた視点を内包しているように感じます。

スイスイ:
昔からいつも友達と会うと、人の悪口ばかり言ってきましたね(笑)でも人の悪口を言い続けるって、悪いところを見つけないといけないので意外と難しいんです。だから人一倍、人間観察のようなことはしているかも。ただ、単に悪口だけを言ってもしょうがないので、友達同士で盛り上がれるように話す訓練は無意識で行っていますね。
実はnoteで何かを書く際も、友達に受けそうなネタを想定して書いています。

--人との関わり合い意外で、作品の源泉はどこにありますか?

スイスイ:
cakesの連載で書くことが見つからなくて「どうしよう」と思ったときに、同ジャンルのエッセイを読むことはまずありません。むしろ、お笑いのコントや音楽にヒントを求めることがあります。例えば三人組トリオ、ロバートのコントはよく見てます。最近だと「版画クラブ」というネタで、人が版画になったら?という思いもよらない角度からお笑いが繰り出されるのを見て、ハッとさせられました。

--普通は映画や本という場合が多いですが、別ジャンルの表現技法からヒントを探るのですね。

スイスイ:
映画はほとんど演出の部分ばかり観てしまいます。例えば仏映画の『Mommy マミー』は、画面がいきなり狭くなったり、突然出力を大きくしたり、演出が変わっていてかなり文章をかくヒントになりました。文章を書くときの構成も、絵コンテのようなものを最初に決めた上で、文を書き出していきます。

--毎回、オチにとんでもない一行が来る印象があります。予想を裏切られるというか...。

スイスイ:
最後の一文で読者を置き去りにして、「あれ、どこに行っちゃった?」という読後感を持たせたいと思っています。

■「文字が色に見える」共感覚で紡ぐ独自の文章、流れる視覚的リズム

スイスイさんの文章全体に通底する視覚的リズム。初稿に担当編集の指摘がある場合も、あるバランスが崩れてしまうと自身で判断した場合は、日本語的には適切でない場合でもそのまま出すことがあるという。その理由はスイスイさんは"文字が色に見える"、共感覚の持ち主だからだ。

スイスイ:
例えば油絵を描く場合、黒で下書きを描いた後で、赤っぽい色でキャンバスを塗り広げ、最後に色を乗せていきます。私も一つのコラムを書く場合、最初は全て同系色の色で揃え、最後完成させるときに見栄えの良い色に文章を整えます。(詳しくは:共感覚についてスイスイさんが書いたnote「【知らせと裏話】連載/第二話公開」)

--一文字一文字違う色に見えるのですか?

スイスイ:
全然違います。例えば「メンヘラ」という文字は、緑・白っぽい黄色・薄いピンク。特に数字が分かりやすくて、4はピンク、3はオレンジ、2は緑、1は白というように私の中で見える色が決まっています。

全体としての文体でも独特のリズムがある一方で、単語レベルにも"スイスイ語録"とでも言うべき秀逸なフレーズが光る。
先述の「フライ級女子」や闇と決別したいのに完全には別れたくない状態を表した「ヒヤシンス」、黒歴史などメンヘラにまつわる負の側面をマイナスではなく守り愛す対象として転換する「いにしえ」などが好例。(詳しくは「【 ラスボス】忘れられない最強の元彼、攻略法【ダンジョン】」)

スイスイ:
やはりコピーライター時代に鍛えられたことが生きているかもしれません。コピーライターは一つのコピーを書くのに80案くらい出すこともザラで、私も量を出すタイプ。cakesの連載では一度文書を書き上げた上で、「この三行は一言のコピーにしないといけない」と思えば書き換えていきます。コピーにできるものはコピーに、文章のままで良ければ文章のまま。10回くらいは書き直します。

--一つのフレーズを作るのに、どれくらいの時間がかかるのですか?

スイスイ:
cakesの連載の場合、一回分を提出するまでに2週間あります。この間、授乳をしながら、運転をしながら、生活をしながらコピーを考えています。その意味で時間がかかることもありますが、特段これだけを考えているというわけでもありません。

--最後に、スイスイさんが作品を通じて読者に届けたいメッセージを教えてください。

スイスイ:
去年「【みんなが言いづらいと思うから】ママのママによるママのためのママ神格化現象がおこってますよね?【私がいうね!】」というnoteを書きました。旦那さんが会社で「これ読んだ?」と私のこの記事を見せられたり、友人の保育園のママ友同士で話題になっていたそうなんです。結果的に2万弱シェアされて軽い炎上を起こしたのですが、私が焚いたキャンプファイヤーの周りでみんなが踊っている様子になぞらえ「マイムマイム」と別の記事で表現しました。私を叩くことでも良いのですが、踊ってくれて、「これはおかしいと思う」ということを議論してくれたことが何よりも嬉しかったです。

noteをきっかけにエッセイストとなったスイスイさん。cakesでの連載を持つまでは、編集者と共に仕事をしたことがなかったのだとか。自分が書いた文章に入り込み、共に作品を作り上げていく担当編集を「まるでドリカムでベースを務める、中村正人さんのようだ」と当意即妙のスイスイ節で語ってくれた。
今後の「メンヘラ・ハッピー・ホーム」の展開からも目が離せないが、個人的には映画やテレビドラマなど、実写でもストーリーを観てみたい。

構成:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(学際情報学)。『SENSORS』や『WIRED.jp』などで編集/ライティング。『PLANETS』や『HIP』では構成を行う。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。将来の夢は馬主になることです。
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

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