【カンヌライオンズ2016】知っておくべき今年のキーワード7つ

2016.06.29 19:30

6月18日から23日まで開催された、第63回カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル。カンヌライオンズ2016のオフィシャルメディアサポーターであるSENSORSでは、開催後もレポートをお届けしていく。
■過去記事一覧はこちら:【カンヌライオンズ】連載まとめ:新設部門紹介からクリエイターへのインタビューまで

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カンヌライオンズ2016授賞式

毎年開催される世界最大のクリエイティブ広告祭に今年も90カ国から約13,500名の参加者がフランス・カンヌに集結した。参加者だけでなくエントリー数も年々増えており、今年は全43,101もの応募作品を300名以上の審査員によって審査され、1,360作品が受賞した。
7日間の開催を通して話題となっていた、カンヌライオンズの7つのキーワードを紹介する。

1 : 最新テクノロジー (VR・AI・ウェアラブル・データ)

VR、AI、ウェアラブルそしてデータと、今年はこれまで以上に多くのテクノロジーがカンヌを取り巻いていた。受賞作品を見ても、最新テクノロジーを駆使して今まで以上のブランドストーリーの感動、体験、経験を消費者に届けている作品が目立った。
プロダクト・デザイン部門でグランプリを受賞した、Google ATAPの衣服に織り込んだ繊維センサーでデバイス端末をリモート操作できる「Google Project Jacquard」。アパレルブランドLevi'sと来年サイクリストに向けた展開シリーズで商品化を進めている。
また、今回最も受賞している作品のひとつでもあるオランダ金融機関・ING Bankの「The Next Rembrandt」はサイバー部門とクリエイティブ・データ部門でグランプリを受賞している。バロック絵画の画家・レンブラントの作品を3Dペインティングとして再現した作品。AI学習によって、レンブラントの全作品を凹凸まで全てにわたりデータ化した上で13層にもおよぶ絵具の塗重ねを繰り返し、3Dプリンティングされレンブラントが実際に描いたような作品の再生に成功した。

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サイバー部門のグランプリ受賞時には実際の絵画も一緒に登壇

©Cannes Lions International Festival of Creativity

2 : Fearless

ブランド企業が登壇するセッションに出てきていた共通キーワードが"Fearless"。失敗を恐れては良いクリエイティブが生まれない、時にはリスクを負う覚悟でコンテンツを作らないと消費者に届くことは難しく、大胆に行動することで少しでも手を止めて見てくれるコンテンツを作ることはブランド企業内でもキーポイントとなっている。
ジョンソン・エンド・ジョンソン CMO、Alison Lewis氏はThe wake up with the Economistに登壇した際に良いクリエイティブコンテンツを作る為に社員だけでなく協力制作会社にも「You take a brave, I take a risk.自分が責任を取るから、あなた は勇敢に立ち向かえ。」と話をした上で失敗する勇気について話をするという。また、氏はこれが今日のブランド企業に必要なリーダーシップとも考えているという。
モンデリーズ・インターナショナルは今回新しいFearlessキャンペーン「Stride Gum presents HEAVEN SENT」の詳細内容を発表した。その内容は人間の限界ラインを究極まで引き延ばし、世界にインパクトを与えるコンテンツを作るをテーマに2016年7月30日に世界で初めてパラシュートやウイングスーツ無しの状態で一人のスカイダイバーがスカイダイビングを行い無事に着地出来るがどうかという内容である。その様子はテレビ特番としても放送が予定されている。準備期間は企画から含めると約2年、ついにその時がやってくる!と、とても楽しそうに話をしていたが高度なリスクのかけ方に驚愕した。

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モンデリーズ・インターナショナルセッション @ Dentsu Aegis Networkエリア

3 : VR

VRは今年のカンヌで一番話されていたトピック。実際の体験スペースとして大きく出展ブースを構えていたのはCreative Marketer of the Yearにも選ばれたSAMSUNGが最新の4DVR体験コーナーを持ち、参加者が悲鳴をあげて体験を楽しんでいた。
受賞作の中でも既存メディアとの融合で称されたのはアメリカ日刊新聞社 the New York Times が読者に提供した「The Displaced」、子供難民が母国から離れて生き延びるための移動の道中や生活の様子をVR体験を通して実情を知ってもらうというコンテンツ。紙媒体業界が厳しいと言われているが最新テクノロジーによって、紙面では伝えることが困難な体験型コンテンツを実現した。
もう一つはアメリカ航空機・宇宙船の開発製造会社 Lockheed Martin社の「Bus Ride to Mars」。VR空間を複数人で同時に体験共有を可能にしたソリューションはVRの前進とも言われている。

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SAMSUNG 4DVRのジェットコースター体験

4 : VR / メッセージ

ブランド企業に向けて今後のトレンドは?の質問に答えられた共通キーワードは二つ、VRとメッセージ。VRは上記でも書いたようにブランド側も新しいコンテンツ提供としてVRに期待をしている。ただ、VRコンテンツを製作したい気持ちは強いが、まだまだVRコンテンツ製作費がとても高いために実際に踏み出すことが出来ていない、とAirbnb グローバルCMO Jonathan Mildenhall氏は言う。
また、メッセージについては個と個のつながりを強化するための必要なコミュニケーション手法になるという。ブランドマーケターが参考にしているのは中国のメッセージアプリ・WeChat。ユーザーが同サービスを使用して友人にプレゼントを送ったり、お金まで送れることが出来るなどWeChatほど優れたメッセージアプリは事例がないとまで言う。
企業と消費者がメッセージアプリ上で対話する時代がすぐそこまでにきているということを実感したのはモンデリーズ・インターナショナル、グローバルメディア/Eコマース責任者Bonin Bough氏のカンヌ期間中に実施した自身の最新著書「TXT ME」キャンペーン。カンヌ参加者とSMSメッセージのやり取りをしながら氏がおすすめするセッション情報や意見交換をリアルタイムで出来るコミュニケーションキャンペーンを行った。実際にやってみると3分以内に返信があり、なんだか嬉しい気持ちになった時にまさにBoug氏の思う壺にはまってしまったが、メッセージがカスタマイズされていることで信用性がとても高く感じた。キャンペーンの裏側としてはマンパワーで動いていたのだが、近い将来AIを使って24時間いつでも消費者とのコミュニケーションエンゲージメントを可能にする日は近いだろう。

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Wake up with the Economist 毎日豪華なCMOセッション

5 : AI / 機械学習

VRとともに多く話されたのはAIや機械学習。セッション内でも誰が最初に真剣にAI/機械学習に向き合いクリエイティブ作品の生み出すのか?また、AI/機械学習がクリエイティブ作品を生み出す時代がくるのか?という話が多くされていた。
そんな中、Dentsu Lab Tokyoセッションでは機械知能が、いかにして人間のようなクリエイティビティを獲得することができるかという可能性を追求する音楽プロデューサーBrian Eno氏の最新プロジェクト「THE SHIP Presented by Brian Eno」を発表。Eno氏はAIを使うことに対して他の人が持っているような不安はまったく感じてなく、また恐る必要はないと思う。ただ、誰がAIをコントロールするか、というポイントは今後予想される問題点のひとつになるだろう、と話した。

6 : Diversity

ダイバーシティは今年も多くのセッションで話題になっていた。男女雇用だけでなく宗教・国籍など多様性を受け入れることで、企業カルチャーや新しいクリエイティビティの創出につながっているということを多く聞かれた。カンヌライオンズも欧米からだけでなく多くのアジア人スピーカー、そしてカンヌ初となるナイジェリアからのスピーカーを迎えてカンヌ自体がダイバーシティに熱心に取り組んでいた。
しかし、今回カンヌ期間中に開催されたパーティ招待メールで物議を醸す"事件"が起こった。ある企業のパーティ招待メール文章内に "attractive females and models only - 魅力的な女性とモデルのみ参加可能"と書かれているメールを受け取った女性が昨年のGlass Lion審査委員長を務めたCindy Gallop氏にシェアしたことで発覚し、Twitter上で抗議した。パーティ主催企業CEOは協力会社からの配信だから認知していなかったとTwitterでコメントしているが、多くの参加メディアが一斉にこの件について報じた上でトッププレイヤーとしての自覚をもって参加、主催するべきだと各社コメントしている。
また、アウトドア部門でブロンズライオンを受賞したブラジル広告会社が手掛けた医薬品企業のポスターコピーが性差別のコメントと捉えられる内容だ、との指摘を受け受賞を辞退したこともニュースになった。

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辞退したOutdoorポスター作品.mov Bayer Ad 3x2 Credit: Almap BBDO São Paulo

7 : スキャム問題

今から始まったことではないが、受賞したいがためのスキャム作品については今年も議題として挙がった。
その中でも大きなニュースになったのはプロモーション&アクティベーション部門でブロンズライオンを受賞したシリア難民のレスキューモバイルアプリ「I Sea」である。本アプリは既にApp Storeからも取り下げられておりスキャム広告と発覚した際には、実はアプリはまだテスト期間であった。と応募した広告会社が心苦しいコメントをだしておりカンヌ事務局では現在事実確認を行った上で対処を決めるとのことである。
PR部門の審査員からも今年はスキャム作品が多かったとコメントしていることもあり、本問題について事務局にスキャム作品に対するポリシーを再考するべきだという声も上がっている。

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問題となった広告作品:I Sea



次回は、今年カンヌライオンズ2016受賞者のSENSORSに向けた特別インタビュー掲載を予定している。


ライター:中村寛子

大学を卒業後、グローバルデジタルマーケティングカンファレンス、ad;tech/iMedia Summitを主催しているdmg::events Japan株式会社に入社。 ad:tech tokyo 2010より、主にコンテンツプログラムの責任者として従事。 また、東京開催以外にもad;tech kyushuやiMedia Brand Summit, Data Summitなど8つのカンファレンスローンチを展開。2015年11月にmash-inc.を設立し、現在グローバルPRチャンネル制作をしている一方で企画プランニングなどプロジェクトベースで携わっている。

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