【CES 2017】自動車の進化は"人間のぬくもり"につながる(速報記事)

2017.01.07 01:30

2,3年前から自動車メーカーが新しいコンセプトカーやビジョン発表の場を家電ショーであるCES(Consumer Electric Show)に設けるようになった。それは家電も車も"Connected"になり、家電業界と車業界の垣根が溶け始めているからである。
CES 2017は自動車が"人間のぬくもり"を持ちはじめそうな予感を感じた。そう感じさせた自動車関連メーカーの動きに注目し、現地からお届けする。

【関連記事】世界が注目するテクノロジープロダクトが集結「CES Unveiled」リポート(速報記事)

toyota-ai2.JPG

トヨタは未来のモビリティを具体化したコンセプトカー「TOYOTA Concept-愛i」をCES 2017で公開した。「人工知能により人を理解し、ともに成長するパートナーを目指す」という。

■自動車の呼吸が聞こえはじめたCES 2017

「自動車の呼吸を感じる。」
CES 2017に展示されている自動車メーカーの展示を一日かけて回った結果の感想だ。CESは3年ほど前からモーターショウ的な色合いが強くなってきている。フォードやメルセデスなどの車メーカーがビジョン、コンセプトを発表する場としてCESを選びはじめたのである。 それは、"Connected"な時代において、家庭やオフィスと車内空間がシームレスにつながるようになり、家電と自動車の垣根が溶けつつあることの現れだろう。 そしてメーカーの垣根も溶け始めている。グーグルやマイクロソフトなどインターネットビジネス企業が自動車作りに密接に関わるようになってきた。フォードは音声認識技術Amazon Echoの採用を発表している。日産はマイクロソフトの音声認識「Cortana」の採用を発表した。 既存の業界の垣根がなくなりつつあるなか、各自動車メーカーがどのような発表を行うのか?昨年のCESレポートでは「車が馬やラクダのようになる」と伝えたが、今年はどうだったのか?

CES 2017では、人に寄り添い、支える自動車メーカーの姿が浮かび上がってきた。

CES展示の自動車関連ブースを巡った結果、特に「呼吸を感じた」メルセデス・ベンツ、トヨタ、ホンダを紹介する。

■"自動車は究極の健康デバイスである"

benz-session.jpg

メルセデス・ベンツのCES 2017会場ではAppleの初代エバンジェリスト ガイ・カワサキ氏をモデレーターに迎えセッションが行われていた。

メルセデス・ベンツの会場はAppleの初代エバンジェリスト ガイ・カワサキ氏をモデレーターに迎え、メルセデスが掲げるCASEストラテジー(Connected, Autonomous(自動運転), Share & Service(共有), Electric Drive(電気自動車))に沿ったセッションが展開された。 一日に複数回セッションが開催される中で、筆者は一番最初のセッション「自動車は究極の健康デバイスである」を受講した。医学工学博士をお招きし、車こそが人間の健康管理に一番最適な場所であるというお話を伺った。
ドライバーの心拍数、ストレス度などのバイタルデータを取得し、新鮮な空気を送り込んだりリラックスする音楽を流してくれるらしい。自動車社会のアメリカならではの、車こそが一番ドライバーの健康管理できる空間であるという発想に驚きつつ、納得もした。メルセデスとしては人々の関心事は"Fit & Health"であると定義し、人々の健康管理のための自動車というポジションを狙っていきそうである。

■「人工知能により人を理解し、ともに成長するパートナーを目指す」

toyota-ai0.jpg

トヨタは未来のモビリティを具体化したコンセプトカー「TOYOTA Concept-愛i」をCES 2017で公開した。

メルセデスがドライバーの健康管理をするものだとしたら、トヨタはドライバーの感情を察してくれる相棒としての自動車を紹介していた。コンセプトカーの名前は「愛i」。人工知能、パーソナルアシスタント「YUI」がドライバーの安全と安心、そして楽しさを考えてくれるものだった。 昨年のトヨタは人工知能研究を発表し、衝突実験のデモを行うマスキュランなブースだったが、今年はフェミニンな優しさを感じるブースだった。テクノロジー優位性、差別化が難しくなった時代にはエモーションに訴えかけ、寄り添う姿勢が大事であることをトヨタのブースを通じて感じた。

toyota-ai1.JPG

CES 2017トヨタブース内ではコンセプトカー「TOYOTA Concept-愛i」が、映像シナリオと共に表情を変えていた。

■ロボットからモビリティのヒントを得る

honda-bike.jpg

CES 2017ホンダブースでは『ASIMO』に代表されるヒューマノイドロボット研究で培った独自のバランス制御技術元にモビリティの新しい形提案するバイク(世界初公開の実験車)を紹介

ホンダは10年ぶりにCESに戻ってきたという。10年前はヒューマノイドロボット『ASIMO』紹介をしたそうだ。いまでこそCESではロボットが当たり前のように展示されているが、ホンダはヒューマノイドロボット研究を人間が乗れるモビリティとして復活させてやってきた。 それが、独自のバランス制御技術を元にモビリティの新しい形を提案するバイクや椅子のように座ったまま自然な動きで移動できる「ユニカブ(UNI-CUB β)」だ。
筆者が以前所属していた会社では『ASIMO』が展示してあったのだが、ひょこひょこと歩き転びそうになるとバランスを取る『ASIMO』が可愛らしくも、自律歩行できることに感動を覚えた記憶があるが、その『ASIMO』のバランス制御技術をバイクやユニカブに展開したという。

unicab_honda.jpg

「ユニカブ(UNI-CUB β)」は「人との調和」をテーマに、人が行き交う空間でも使用できるパーソナルモビリティ。CES 2017会場でも試乗可能だ。

unicab_demonstration.jpg

筆者も体験した「ユニカブ(UNI-CUB β)」は座ってすぐに、直感的な操作が可能だ。ヒューマノイドロボット『ASIMO』で培ったバランス制御技術が根底にあるそうだ。

CESの会場では、バイクがドライバーレスのまま自動二輪運転でバランスを取りながらドライバーのところまで来るデモンストレーションに多くの観客が湧き、そして来場者もユニカブに試乗し、直感的に操作できるそのバランス感覚に賞賛の声が集まった。 そのバランス感覚から「バランスを取るのが難しいバイクがいきなりウマになったような安心感に変わる」というコメントもあった。
ここでハッと気づいたのだが、車やバイクは既にウマやラクダのように安心できる乗り物になりつつあるということ。 昨年の筆者CES 2016レポートでは「車が馬やラクダのようになる」と伝えたが、ホンダのブースでは既に実現化されていることに気づいた。 面白いと思うのは、ヒューマノイドロボット『ASIMO』の研究が、移動手段である車やバイクを安心できるパートナーとして身近なものに近づけていること。 いま進んでいるロボット研究も、実は既存の生活に身近なものに変化して我々のもとに戻ってくるかもしれない。

CES 2017初日では自動車関連の「呼吸」を感じた。テクノロジーの進化は無機質なものに命を吹き込み、我々のエモーションをくすぐるようになることを改めて実感した。CES 2017の会場はまだまだたくさんのテクノロジーが筆者をワクワクさせてくれそうである。追って記事化するので気になった方はまた目を通してもらえると嬉しい。

■関連記事
■【CES 2017】世界が注目するテクノロジープロダクトが集結「CES Unveiled」リポート(速報記事)
■究極のクルマとは、まるで馬やラクダのよう?- CES 2016 で見た自動車の近未来
■「車のデザインにもオープンイノベーションを」孫泰蔵や坂井直樹が応援する新しいデザインプロジェクト
■【独占インタビュー】石黒浩が「SXSW 2016」講演後に語った、人工知能・アート・エンターテイメント
■【SXSW 2016】自動運転車が初めて起こした事故から、Googleが得た教訓

ライター:西村真里子

SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。エンジニアとしてキャリアをスタートし、その後外資系企業のフィールドマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブ会社のプロデューサーを経て2014年株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×デザイン×マーケティングを強みにプロデュース業や編集、ベンチャー向けのメンターを行う。Mistletoe株式会社フェロー。

最新記事