IoT、自動運転、音声認識..小笠原治に聞く【CES 2017】イノベーション動向

2017.02.04 08:30

「家電市」からテクノロジーやイノベーションの見本市に進化する「CES 2017」。出展社として、IoTプロダクトの投資家としての立場で小笠原治氏にCES 2017動向を伺った。
※当取材は2/5(日)1:30~『SENSORS』OAでも放送予定だ。

IoTスタートアップを投資&各種プログラムで支援するABBALab代表取締役、世界レベルのIoTプロダクトを支援する さくらインターネット フェロー、家電ベンチャー Cerevo 取締役、DMM.make.Akibaプロデューサーという立場で日本のIoTスタートアップを支援する小笠原治氏にCES 2017トレンドを伺った。「家電市」から「世界最大規模のテクノロジー、イノベーションの祭典」へと進化しているCESは小笠原氏の目にどのように映ったのか?

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CES 2017スタートアップ、テクノロジートレンドについてDMM.make.Akibaにて小笠原治氏に伺った。

■日本の出展社減、フランスや中国の台頭

--CESはテレビや白物家電を売る「家電市」からIoTプロダクトやスタートアップの世界の最新トレンドが見られる場所へと進化していると感じます。小笠原さんから見て今年のCESの特徴を教えていただけますか?

小笠原:
Cerevoの出展歴にあわせてCES 5年目なのですが、今年は日本の出展社の勢いが感じられなかったですね。日本からの来場者はすごく増えたと思うのですが...。

--少しさみしいですね。他国の状況はいかがでしたか?

小笠原:
ここ2,3年CESの中でも出展社数やエリア数で勢いを増している『Eureka Park』というスタートアップエリアではフランスの勢いが感じられました。フランスのHardware ClubをはじめとするVC & スタートアップエコシステムを作るラ・フレンチ・テック勢がスタートアップエリアの3割程を占めていました。フランス勢は国の支援もあり存在感がありますね。あとは、中国勢がCES全体の1/3ほど出展しており、こちらも勢いを感じました。勢いとともに、中国プロダクトのデザインクオリティが向上しているのも、昨年までと違い印象的でしたね。

■自動車メーカーの動向

--ここ2,3年自動車メーカーの存在も大きいCES。モーターショー以前に各社最新情報を解禁する場としてもCESが選ばれており、自動運転、"Connected"カーなどのニュースがCES期間中に溢れております。小笠原さんは自動車メーカーのCES出展についてどのように見られましたか?

小笠原:
日本の主要自動車メーカーが揃って出展していました。日産は初参加、ホンダは10年ぶり、トヨタは人工知能搭載コンセプトカーを出していてCESの自動車産業への影響力が増していることを感じました。ただ、フォードが『Amazon Alexa』(人工知能を備えた音声認識プラットフォーム)に全対応する発表をしていたことと、GPU企業エヌビディアがアウディや主要車メーカーとの協業を発表し、そして自動運転デモを行っていたのは印象的でしたね。
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エヌビディアの自動運転デモ。ドライバー不在で道路状況を判断して運転する。

--エヌビディア、昨年までは別エリア出展だったのですが、自動運転の台頭に伴い彼らの画像認識エンジン、GPUが欠かせないということで今年は自動車エリアで存在感を示していました。エヌビディア代表が基調講演も行っていましたし。小笠原さんは自動運転デモを体験しましたか?

小笠原:
僕らが案内してもらった時に、ちょうどデモ自動運転車の人工知能に運転方法を学習をさせているところでした。人工知能による自動運転を行うためには、学習が肝。エヌビディアが運転手の癖を覚えさせる学習シーンを見られたのはラッキーでしたね。

--それはすごいですね。私も同じエヌビディアの自動運転を体験したんですが、実際に学習シーンは拝見できなかったのでちょっと羨ましいです。

小笠原:
行き止まりをわざと作って「ここでストップすべき」という情報を教えたり、砂利道を走るときのブレーキングを教えたり、という学習を延々とやっていましたね。教育しているスタッフが楽しそうなのが印象的でした。

--子どもに車の運転を教えているような感覚なのですね。

小笠原:
本当に、そんな感じでした。
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スタートアップTsumgのスマートロック『Tink』を展示していました。顔認識と指紋認識、ジェスチャー認識セットで物理カギをなくす

■音声認識技術の台頭、日本語対応の弱さ

--自動運転や音声認識、今年のCESでは家庭内から車まで"Connected"に繋がるプロダクトやソリューションが多く展示されていました。この先にどのような未来を想像しますか?現在足りないのは何でしょうか?

小笠原:
自動車メーカー、家電メーカー共にAmazon Alexa音声認識対応プロダクトを出展、紹介していました。数で言うと100以上は音声認識系プロダクトがあったと思います。いわゆる生音声を収集するというのが、一つのトレンドになっていると思うんですけど、残念なことに、そこに日本語がないんですよね。日本語の音声コントロール、ボイスコントロールは、かなり致命的な状態であることを強く認識させられたのが今年のCESです。なので、音声認識ソリューションを持っているスタートアップ、IoTプロダクトが日本発でもっと活躍して欲しいと切に願っています。

--小笠原さんは今年どのようなプロダクトをCESで紹介されたのでしょうか?

小笠原:
Cerevoブースも含めて複数出展のお手伝いをしていたのですが、その中からいくつかご紹介します。まずはスタートアップ Tsumg のスマートロック『Tink』を展示していました。顔認識と指紋認識、ジェスチャー認識セットで物理カギをなくそうというモノで民泊時代に受け入れられるプロダクトです。あとは、さくらインターネットとしても、IoTプロダクトを作るスタートアップ向けに通信を気軽に利用出来るようなモジュールの世界展開をブースで紹介しておりました。来年は日本からもっと面白いものが出展できるんじゃないかと思っています。

今年出展してないのですが、音声認識プロダクトが多い今年、出展したかったプロダクトでいうと『Gatebox』という音声認識スマートホームプロダクトがあるのですが、ホログラムキャラ「ひかりちゃん」に自然な会話で「テレビをつけてほしい」「電気を消してほしい」とコマンドを送ると家電制御してくれるものです。これは日本語自然言語にも対応しているので、日本発の音声認識プロダクトとして来年のCESに出展できると、Amazon Alexa一人勝ちの市場に一石を投じることができると考えております。

--来年に向けてのCES構想はございますか?

小笠原:
CerevoはCES内でも年々存在感を増しているので、そのCerevoブースを中心に日本のスタートアップブースを固めたいと思っています。今年CESは50周年だったのですが、その表紙にCerevoのプロダクトが掲載されるほど、CES内でのCerevoのポジションは大きくなってきているように感じます。

--参加したいスタートアップはどのようにすれば良いのでしょうか?

小笠原:
まだしっかり考えているわけではないですが、さくらインターネットとしてグローバル展開対応IoTモジュールを出すので、そのモジュールを積んだプロダクトだと僕らとしても一緒にCES 2018に出展しやすいです。日本発で発信できるIoTプロダクトができたら是非お声がけいただきたいです。
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パナソニックのFuture Tech Labではスタートアップとの協業プロダクト、スマートテーブル、ロボットなどが展示されていた。

■大手企業もスタートアップとの協業をアピール

--今年の大手家電メーカーの出展はどう見られましたか?

小笠原:
SONYブースの正面にあった8Kディスプレイ『CLEDIS』ステージで踊っていたダンサーは僕が経営する『awarbar』のスタッフだったんです・・・というのはおいておいて、今年のパナソニックブースは僕がCESに参加しているこの5年の中で一番良かったと思っています。理由は、パナソニックがスタートアップと協業しているプロダクトを説明員付きで紹介していたからです。スタートアップなど外部企業と組んでプロジェクトを進めていく姿勢が見られたのは素晴らしいと思いました。日本の家電メーカー同様の規模で展開していたSamsungはちょっとトーンが沈んでいた気がします。見せ方が一番うまかったのはLGでしょうか?

--LGブースは、どういった点でで見せ方がうまかったのでしょうか?

小笠原:
有機ELディスプレイの曲げられる技術を活かした巨大なプラネタリウムを作っていました。いままではディスプレイパネルを並べるだけだったのが、空間全体デザインしていてうまいなぁと。

--パナソニックブースのスタートアップ協業ですが、Cerevoと組んだ『Listnr』が展示されていました。デンソーブースでは社内ベンチャーの種としてプロトタイプが展示されていました。オープンイノベーション、社内新規事業開発の姿勢を打ち出す企業の姿がちらほら見えたのも新しい発見でした。

小笠原:
パナソニックやデンソーが実施しているということは、世界中ではもっともっとスタートアップとの協業、オープンイノベーション、社内新規事業開発が行われているということを理解してもらえればと思います。

■投資家が集まる場所、プロダクトの質の向上

--CESのスタートアップエリア「Eureka Park」についての話に戻ります。フランスや中国の勢いが感じられたというお話がありましたが、他に今年の特徴はございますか?

小笠原:
「Eureka Park」はここ数年で急激に伸びてきましたし、これからも、数は増えるか分からないですが、質は向上していくと思います。それが顕著になったのが、去年、今年でして、特に今年は投資家達がたくさん集まっていました。CES「Eureka Park」のスタートアップに対してアプローチしている投資家の数がかなり増えています。会場で知っている顔がちらほらあったし、「え、こんな人まで来てるの?」というレベルのハイエンドな投資家もいました。投資家が集まり、投資が回っていくと、プロトタイプレベルのものが利用可能なプロダクトへと進化していく。来年以降さらにCESスタートアッププロダクトの質があがっていくことが期待できます。

■「CES = テクノロジー、イノベーションのショーケース」

--最後の質問ですが、CESはもう「家電市」という枠を越えていると思います。日本でCESを紹介する時にどう紹介すれば良いでしょうか?

小笠原:
Consumer Electronics Showで、エレクトロニックと言ってしまえば、電気自動車まで、英語で言うCESは間違ってないんですけどね。日本語だとどうしましょうか?

--"世界最大のテクノロジーショーケース"と言っていいのかなとも思います。

小笠原:
スタートアップの集まる「Eureka Park」や意欲的な若手企業が集まる「Sands」エリアは"イノベーションショーケース"と言っても良いかもしれませんね。参加する立場が、スタートアップだろうが、大企業だろうが、テクノロジーとイノベーションの最先端のプロダクトが一堂に会す場所。
特にフランスのスタートアップを見たときに感じたのが、クロステクノロジー(×テクノロジー)みたいなものは感じて、彼らは元々デザインがある。そこにクロステクノロジーみたいな形で、新しいモノを生み出して、イノベーションするというのを地で言っているなと思うので、確かにCESがテクノロジーとかイノベーションのショーケースであるというのはしっくりきますね。

--ありがとうございました!

CES スタートアップブース「Eureka Park」の拡大は昨年同様の動きだが、今年は大企業とスタートアップの協業、社内スタートアッププロダクトが存在感を現した。 小笠原氏の来年のCES構想では、グローバル対応のプロダクトを作ったスタートアップ達と一緒に日本勢の勢いを示すことを目標としていそうである。筆者としては来年のCESにて世界各国の来場者、メディアが「日本のプロダクトの存在感を感じた」と、大きく取り上げる現場に遭遇したい。 そして、SENSORSとしても"クロステクノロジー(×テクノロジー)"のアイデアで生まれたプロダクトで、CESや世界に向けて挑戦するスタートアップを応援していければと考えている。

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ライター:西村真里子


SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。エンジニアとしてキャリアをスタートし、その後外資系企業のフィールドマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブ会社のプロデューサーを経て2014年株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×デザイン×マーケティングを強みにプロデュース業や編集、ベンチャー向けのメンターを行う。Mistletoe株式会社フェロー。

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