究極のクルマとは、まるで馬やラクダのよう?- CES 2016 で見た自動車の近未来

2016.01.20 19:45

現地時間1月6日(水)〜9日(土)アメリカ・ネバダ州ラスベガスにて開催された「CES」=Consumer Electric Show。SENSORS Web編集長・西村真里子もラスベガスに飛び取材を実施しました。現地レポートをお届けします。

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CESの楽しみのひとつに、自動車メーカーの発表があります。昨年はメルセデス・ベンツ、ダイムラーのディータ・ツェッチェ会長がステージ上で「車は家庭、オフィスの次の人々が集うサードプレイスになる」と発表していました。車の存在意義がトランスフォームしていると私はとらえます。移動手段としての車から、快適空間としての車へ。それはいままでのスピードやドライビング操作性重視の移動手段としての車から、センサー技術による障害物特定による事故防止、人工知能、ディープラーニングによる安全性の高い走行サポート、そしてスマートフォンとの連携によるコネクテッドな存在として家庭とのシームレスな延長上にある車へと存在意義を再定義していると言えます。

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今年のCESで発表の、メルセデス・ベンツ コンセプトカー。

米国大手自動車メーカーのフォードは、コネクテッドな車をつくるためにデベロッパープログラムを立ち上げWeb/アプリの開発者へとアプローチし、CES 2016ではAmazon Echoと連携し音声認識技術で家庭と車をつなぐという発表を行っていました。また、特別なセンサーを搭載したフォード車がアメリカ中の道路を走り、来たるべきセルフドライビング時代の安全走行に備えるデモと発表も注目を集めていました。

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家庭内コミュニケーションを音声認識技術で行うAmazon Echo(手前)がフォードの自動車とつながり、リビングルームから車のコンディションチェックやロックを行うことができます。

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車周り360度の状況を確認できるフォード車のデモ画面。展示会場でリアルタイムに車周囲の人や障害物を認識している様を表しています。

トヨタは10億ドルを投資して人工知能、マシンラーニングを活用し車同士の衝突を避けるセルフドライビングカーの研究開発を行うことや、スタンフォードとMITの近くにR&D施設をつくり人工知能とロボティクスリサーチの支援投資することも発表していました。いよいよドライバーレスの車社会がやってくることを予感させるニュースやデモにあふれています。

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トヨタブースではミニチュアカーを人工知能搭載ミニチュアカーを展示し、自動車同士が自動学習し安全走行するデモを実施。最初は秩序なく走る車同士も時間を経ると矢印の通りにルールを理解して走り始めます。

これは確かに未来への一歩です。セルフドライビングはドライバーレスで目的地に移動できます。歩行者をセンサー認知して自動ストップし、事故を未然に防ぐ事ができるのです。政府統計「平成27年中の交通事故死者数について」によると交通事故死者数が増加した要因としては、事故に遭った際の致死率が高い高齢者の人口が増加していることが挙げられていました(交通事故死者に占める高齢者の割合が54%を超えている)。CESで発表されたテクノロジーにより、今後高齢化社会を迎える日本でも交通事故を減らす事が可能なのではないでしょうか。

我々は技術の進化により「未来」を作っているように感じていますが、実はその「未来」は、人間や動物などのプリミティブな生活叡智への回帰でもあるのではないでしょうか。先進国の高度成長を支え、豊かさの象徴である"車の未来化"は奇しくも、先代があたりまえとしていた「移動手段に必要な要素」を思い出させてくれます。

セルフドライビングや、事故を未然に防止してくれる移動手段でいうと、実は馬やラクダ、家畜の方が車より格段に賢いのです。馬は自分の判断で障害物を避け、ゴツゴツした岩山も突き進んでくれますし、疲れ切った砂漠の旅人であればラクダは優しく月明かりの中目的地を黙々と目指してくれます。我々が未来を創っていると考えているテクノロジーの進化、その一例としてのセルフドライビングは移動手段として馬やラクダに劣っていた車の部分を補いはじめたとも考えられます。

「人間が本来求める移動手段」-- 安心して障害物を回避してくれる、かつての馬のような相棒を求めるためセルフドライビングセンサーと、人間とコネクテッドな車を創っているのかもしれません。CESの発表をみて21世紀のテクノロジーの進化は、高度成長・工業中心主義が横行した時代を経て我々が忘れかけている本能を呼び戻してくれているのではないか?と考えています。

取材・文:西村真里子

SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobeにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×クリエイティブ×マーケティングを強みにプロデュース業や執筆活動を行う。スタートアップ向けのデザイン&マーケティングアクセラレーションプログラム「HEART CATCH 2015」総合プロデューサー。 http://events.heartcatch.me/

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