ライゾマティクスリサーチ・真鍋大度のルーツを探る--NYで音楽に打ち込んだ大学時代

2016.04.08 10:00

第一線で活躍するクリエイターの、今の活動に繋がるルーツを探る【SENSORS "BACK TO ROOTS"】。第一回目はライゾマティクスリサーチ真鍋大度氏。大学時代のDJ活動、ニューヨークで過ごした思い出を、写真とともに語ってもらった。(写真提供:真鍋大度氏)

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​真鍋大度氏とラッパーJeru氏

--まず真鍋さんの大学時代の専攻を教えていただけますか?

真鍋:
数学を満遍なく学んでいたという感じですね。
出席は関係無く、紙と鉛筆で受けるテストが全てというストイックな世界で、容赦なかったです。ゼミは代数系でフェルマーの最終定理の証明に関することをやっていました。当時の数学科にしては珍しく、このゼミでJavaで画像処理をやっていましたが、今だったら便利なツールキットやライブラリがあるので自作することは無いような地味なものばかりですね。

--キャンパスの外では何をしていらっしゃいましたか?

真鍋:
DJ、家庭教師、塾の講師など色々やっていましたが、一番長く続いたのがDJでした。ほぼ毎日やっていて、多いときは一晩で4つ掛け持ちということもありましたが留年したのをきっかけに毎日プレイすることはやめました。
同じ頃、WebページやCGI掲示板を作る授業があってそれをきっかけにHiphopの元ネタサイトを作るようになって、ネットのHiphop元ネタコミュニティに参加する様になり、最終的には趣味が高じてレコード屋のバイヤーもやる様になりました。リリースはされませんでしたがネットの情報をかき集めてHiphopの本を作ったりもしてましたね。
1996~1998年当時は一部のバイヤーしかネットや検索のシステムを駆使していなかったので、独占的に元ネタレコードを買うことが出来て今から考えると夢の様な時代でした。

あとはDJ活動の延長で、色んなJazzバンドに打ち込みやスクラッチで参加していました。
Shiinabandというバンドにいる頃は日本ツアーをしたりCDを出したり、ガッツリバンド活動していましたね。エンジニアの方がバンドにいたので日々スタジオに通ってミックスやエフェクトの使い方を教えてもらいましたが、今でも役に立っています。あとLittle Creaturesのアルバムにもスクラッチで参加しました。Hotel New Tokyoの今谷忠弘君ともバンドをやってましたが、Maxを使う様になったのは彼のバンドが最初だった気がします。
そんな中でスケボービデオの音楽を作ったり、広告案件のサウンドデザインの仕事をやったりと音楽系の仕事を色々やっていました。ライゾマ黒瀧節也くんと一緒にやることも多かったですね。
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​バイヤー時に作った元ネタ本。マニアックだ。

--そのような大学生活の中でニューヨークで過ごされた時期が多かったとお聞きします。なぜニューヨークに行こうと思われたのでしょうか?

真鍋:
NYのストリートカルチャーをテーマにした『Kids』という映画の影響、ただそれだけです(笑)。大学時代は親友が住んでいたこともあり(留学を決める前から)レコード買いがてらしょっちゅうNYには行っていました。同じ大学の建築学科だったライゾマ齋藤(精一)がコロンビア大学に留学してNYにいたこともあり、卒業後就職した会社を辞めてIAMASに行くまでや、ダートマス大学の大学院に交換留学で行っていた頃も良く遊びに行ってましたね。

Grouphome, JeruなどHiphopの人たちとも交流があったので彼らのツアーのバックDJをしたり、スタジオに一緒に入ったり刺激的なこともたくさんありました。信じられないような経験をたくさんさせてもらいましたね。彼らには感謝しています。 Jeruとの再会Instagram
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​ライゾマティクス結成当時

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​バーテンダーをする真鍋大度氏

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​バーテンダーをしている真鍋大度氏の元に齋藤精一氏が遊びに来ている

--大学時代の原体験で、いまの真鍋大度を作り上げたものを教えてください。

真鍋:
Hiphopとは全然関係ないのですが、000studioという建築ユニットが一個上の先輩にいて、彼らからインスタレーションの音作りのお願いをされたのが原体験かもしれないですね。
お手本にもらったトラックはRyoji Ikedaさんのトラックでした。確か10chのサラウンド音源だったと思います。当時は位相幾何、微分幾何の授業によく出席していたこともあり、その辺と結びつけようとしていたのですがうまく行かず、適当なアルゴリズムでWavファイルを生成してProtools上で編集していました。何より000studioから学んだのはお題を抽象化することですね。"その音が存在することでより静かに感じる音"をデザインする、というお題でした。

単純にマイクで計測すると無音が正解ですが、無音というのは小さな物音が逆に聞こえやすくなるため、人間の感覚中心で考えるとうっすらノイズが鳴っている状態の方が静かでそちらが正解です。建築や美術の人に取っては当たり前の思考回路だと思いますが、当時の自分にはそういう考え方が無かったのであまりうまく行かず、いわゆる理系的な考えから脱却するのが大変でした。メディアアートに興味を持ってICCに行くようになったのも000studioの影響ですね。
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--いまでもニューヨーク留学時代の友人と親交はありますか?

真鍋:
Hiphopはトラックもリリックもコンテキストが重要なので、深く知りたい時は当時仕事していた人たちに聞いたりします。"Kendrick Lamar のLucyってどういう内容?"とか。最近はCoachellaの準備でLAのビートメーカーNosaj Thingと一緒に日々スタジオで作業してますが、HiphopをはじめとしたBeat Musicを肌で知っていることはコラボに役立っているかもしれないですね。

Nao Tokui君と人工知能にDJをさせる2045というイベントもやっているのですが、正反対のアナログ縛りのイベント「ANALOG」も今月からはじめます(詳細)。テクノロジーって、一見便利になった様な気がしてしまうけど不自由なことも多いので、アナログレコードのDJingのように不便だけど自由に遊べることも色々やって行こうかなと思ってます。普通のDJをやることもあるのでそちらも是非。

眞鍋氏が言う"普通のDJ"イベントとは、2016年4月9日(土)16:30~23:30、東京 江古田Buddyにて開催される「selfservice vol.6」でも楽しめそうだ。料金は当日3,800円(1ドリンク付き) / 前売り3,300円(1ドリンク付き)。詳しくは当イベントのWebサイトより

また4月中旬には米国Coachella Festivalにも参加予定とのこと。詳しくは http://www.benw.de/NT/web2/に掲載されるそうで興味ある方はチェックしてみてはいかがだろうか?

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