キーワードはパーソナライズ、ショッパブル、サステナブル〜ファッションの未来を探る「DECODED FASHION TOKYO SUMMIT 2016」レポート

2016.10.12 08:45

10月11日、Tokyo American Clubで、昨年に引き続きの開催となった、「Decoded Fashion Tokyo summit 2016」。国内外からファッション、テクノロジー、スタートアップが集まり最新のグローバルトレンドを語りあうセッションを取材した。取材を通して見えてきたファッション×テクノロジーの今を解釈するために重要なキーワード:パーソナライズ、ショッパブル、サステナブルである。

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Decoded Fashion Tokyo summit 2016会場:Tokyo American Club

今シーズンの東京サミットのコンセプトは、「Redefining The Meaning Of Luxury - Building Digital Communities - Sincere Storytelling - Brand Responsibility - Curated Retail Experiences --ラグジュアリーの再定義、デジタルコミュニティの構築、真摯なストーリーテーリング、ブランドの責任、編集されたリテール体験--」。会場では、ファッション界そしてテクノロジー界を牽引するイノベーターが集い、トークセッションが行われると同時に、企業ブースコーナーでは、実店舗を模した展示や、体験型ブースが今年も賑わいを見せた。

■カンヴァセーション :百貨店の未来

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(左から)鈴木正文:『GQ JAPAN』編集長
北川竜也:三越伊勢丹ホールディングス、情報戦略本部IT戦略部IT戦略担当長

「百貨店の未来」を題材にしたカンヴァセーションは購買体験を愛するお二人によるセッション。「webで服は買わない」と断言し、専門的な知識を有する店員からの買い物を重要視する鈴木編集長に対し、これからの購買体験、そして百貨店の未来像について語る北川氏。お互いの共通認識として、過度なデータ駆動型やレコメンデーション機能などテクノロジーが最近"うるさく"なっているとした。その中で北川氏は人、テクノロジーのどちらの接客にも求めるものが「パーソナライズ化」であるとし、これからの百貨店のあり方を考える上で重要なのは「何が大切か見極め、すべきことをいかに絞り込むか」であるとした。

■プレゼンテーション:「ぼくらが"ググる"本当の理由」

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ピーター フィッツジェラルド: グーグル株式会社 日本法人 代表取締役

「日本の若者の情報収集方法が高度化している」とする調査結果を引用して始まったプレゼンテーション。検索エンジンだけでなく、web接客や、ファッションデザインにも進出したグーグルのキーワードはここでも「パーソナライズ化」。 世界に比べて若者がラグジュアリーを購買する比率が高い日本では、ラグジュアリー店員のITリテラシーも高いため、モバイルやアプリで、まだまだやるべきことがあるとし、その一つがレコメンデーションなどのパーソナライズ化されたweb接客であるとした。また、その実現には多ジャンルの企業とのパートナーシップが必要不可欠だと結論づけている。

■パネルディスカッション:スマートなストーリーテリング−−−誠意と責任

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(左から)モデレーター:ケイティ・バロン:スタイラス、リテール部門責任者
カースティ・エメリー:アンソメイド、共同創設者、ファッションディレクター
ジョージーナ・ハーディング:セメイン、共同創設者
クリストファー・レイバーン:クリストファーレイバーン、デザイナー、ディレクター

リテールやブランドに関わる、イノベーターたちが集ったセッションで話されたのは、"ストーリーテリング"の重要性。すなわち、顧客体験や、ブランドの背景をストーリーとして紡ぎ、伝えることの重要性だ。"ショッパブル"なオンラインマガジン「セメイン」を運営するジョージーナ氏が語るように現代の消費者にはかつてのマーケティング手法で注目された「Branded Contents」はすぐにバレてしまうと語る。そのために重要なのは背景や込められたアイデアを真摯に語ることとした。その真摯さを生み出すものは、まず、何がメッセージなのか明確にすること、そして誰に伝えるのかを丁寧にイメージして発信することである。それがブランドや小売りが長く愛されるのに重要なコミュニティを創出することにつながる、とまとめた。

■プレゼンテーション:素材と服づくりの未来像

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アマンダ・パークス:マニュファクチャー・ニューヨーク、テクノロジー&リサーチ責任者

MIT客員研究員/コロンビア大学建築学科非常勤講師の肩書きを持ちながら、ファッション系スタートアップでCTOを務めるなど異色の経歴を持つ彼女のプレゼンテーションでは、海外におけるファッションとテクノロジーの関わり方に関する考察の最先端を知ることができる。
ファッションのパーソナライズ化の流れのなかで、アマンダ氏が始めたのが、糸や生地などのマテリアルとテクノロジーの融合。「実はファッションとテクノロジーは一緒に始まったんです。原始の織り機は最初のコンピュータの原型だったと言えます。」と語るようにファッションとテクノロジーの親和性を強調し、現在のウェアラブル端末とは違った共存の可能性を模索している。繊維サイズのバッテリー、防水テキスタイル、柔らかい回路、洗えるウェアラブルなどこれからの時代に必要な素材開発の事例も紹介した。また、本来共存しないとされているテクノロジーとサステナビリティ(持続性)の関係に注目し、現在スナップチャットのようにシーズンが終わると融解して自然にかえる繊維を開発中であるとしている。「バイオロジーもこれからのファッションには重要になってくる」パーソナライズやサステナブルなど、次世代のファッションの可能性を感じさせてくれるセッションになった。

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ウェアラブルは2024年に700億ドル市場となる、と語るアマンダ・パークス



今年のDECODED FASHION TOKYO SUMMIT 2016では多くの企業で、単に新しいことではなく、顧客に対して本質的に価値のあることは何かを突き詰めようという気概を感じ取ることができた。パーソナル化や、ストーリーテリングなど、単に新しいことをすることが目的ではなく、顧客価値の最大化という目的の中にテクノロジーが一手段として存在していたという表現を使う方が多かったように思う。非常に当たり前なことではあるのだが、重要なことを再認識させられたイベントとなった。今後もテクノロジーがいかに我々の顧客体験を向上してくれるのか、期待して待ちたい。

文:岡本孔佑

フリーライター。慶應義塾大学文学部4年在籍。編集者を志し、複数の媒体で執筆、編集を経験。「ファッション」、「テクノロジー」にアンテナを張っています。
Facebook:www.facebook.com/kohsuke.okamot

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