中村貞裕×柴田陽子×齋藤精一「空間をいかにリ・デザインするのか」〜デザインアーク事業戦略発表会

2016.03.04 12:00

2月22日、デザインアークの事業戦略発表会が行われ、amidusと共同で進める新規プロジェクト「Transight」のコンセプトモデルが初お披露目された。"世界一の朝食"として知られる「bills」の日本展開やシェアオフィスのブランディングなどいち早く海外の最新トレンドを日本でプロデュースしてきた中村貞裕や、ライゾマティクスに新たに建築部門を設けた齋藤精一ら空間創造のイノベーターたちのトークセッションも併催。今後、空間のリ・デザインは海外のトレンドを後追いするのではなく、未来のライフスタイルに憧れを持つことが鍵になっていく。 【Sponsored by 株式会社デザインアーク】

※「Transight」が生まれた背景についてはこちら:"コトづくり"を編み出す共創「Transight」〜デザインアーク×amidusのオープンイノベーション

デザインアークの事業戦略発表会で初披露された「Transight」のコンセプトモデル。

大和ハウスグループの一員であるデザインアークは約50年にわたり、インテリア・建材・オフィス・レンタルという4つの事業で空間創造を手がけてきた。今回行われた事業戦略発表会のような形で対外的に同社が目標やプロジェクトを発信するのは初の試みとなる。 発表会の目玉であるamidusとのオープンイノベーションから生まれたモジュラーシステム「Transight」開発の舞台裏については前記事をご参照いただきたい。
イベント冒頭では同社代表取締役社長・島正登氏、取締役 営業本部長・嶋田二郎氏が登壇し、「産業のリ・デザインへ挑む」事業戦略・ビジョンが語られた。

■"Transight"は産業のリ・デザインへのチャレンジの第一歩

株式会社デザインアーク 代表取締役社長・島正登氏

島:
当社デザインアークはより多くのお客様と快適な空間や豊かな暮らしをつなぎ、新しい価値創造の架け橋となることを目指す会社です。本日発表させていただきます「Transight」は当社の社員に対する問題提起でもあります。ステークホルダーの皆様にさらなる満足をしていただくための商品・サービスとは何か、働き方をどのように変える必要があるのか、こうしたことを考えてもらいたい。今回の事業は答えを持っているわけではありません。皆様と一緒に議論を起こし、最適な答えを生み出し、産業全体に明るい未来をもたらしたいと本気で思っております。

株式会社デザインアーク 取締役 営業本部長・嶋田二郎氏。「家を逆さまにしたとき、ポロポロと落ちてくる家具・インテリア・エクステリア・etc」の企画・製造・販売・レンタル・コーディネート・メンテナンスが現行のデザインアークのビジネスだと語る嶋田氏。

嶋田:
事業環境は刻一刻と変化し、多様化・複雑化が進んでいます。そこで我々が掲げるのが「産業のリ・デザインへのチャレンジ」です。既成概念から脱却するための"イノベーション"とは何か。私たちが(Transightで)作りたかったものは家具ではありません。これまでは企業が商品定義を行ってきました。これからはライフスタイルによってモノの価値が変わっていく。空間を支配するべきは多様なライフスタイルであり、ニーズ、生活者自身だと思うのです。
「Transight」のコンセプトムービー
嶋田:
「Transight」のキーワードは三つでございます。①時間と共に価値を高めていく、②可変・拡張、③オープンプラットフォーム。モジュラーシステムということで、自由自在に動かせて好きな形に変えることができます。ずっと半完成品であり、そこにあるは世界に一つの「Transight」。使う人が価値を定義することができる変幻自在のプラットフォームを作っていきたいと思っています。

■「"名前"を外すことからイノベーションは生まれる」可変・拡張性が高い"Transight"の可能性

イベントの後半では「リ・デザイン・オブ」と題されたトークセッションも併催され、空間創造の分野でイノベーションを起こしてきた中村貞裕氏(トランジットジェネラルオフィス代表)、柴田陽子氏(柴田陽子事務所代表)、齋藤精一氏(ライゾマティクス代表)らがゲストスピーカーとして参加。自身の仕事の中身にも触れつつ、「Transight」をみた感想や今後の展開に期待を寄せた。

【写真、左より】中村貞裕氏、柴田陽子氏、齋藤精一氏

中村貞裕
(以下、中村):
「Transight」を見て僕が思い出したのが、親友の建築家・谷尻誠さんが言っていた「クリエーションやイノベーションは名前を外すことからスタートする」という言葉。例えばコップといえば水を入れるモノですが、"コップ"という名前を外した瞬間にそれは"花瓶"にもなるし、もしかしたら"ペンシル立て"になるかもしれませんよね。まさに「Transight」は棚にもなれば、テレビにもなるし、無限の可能性があります。

柴田陽子氏(柴田陽子事務所 代表取締役)

柴田陽子
(以下、柴田):
「Transight」の開発には家電メーカー、自動車メーカーなど様々な作り手の方が参画しているとのことですよね。考えられた分だけ、佇まいからはそうした重みが感じられます。モノの形に出るなというふうに思いました。
齋藤精一
(以下、齋藤):
僕が一番最初に見させていただいたのは2年くらい前ですかね。そのときのデザインから進化し、しっかりと製品化、形になったのは素晴らしいと思いました。MAKERSの盛り上がりもそうですが、最近では3Dプリンターも一般化しつつあって、あらゆるところでファブリケーションの可能性が広がっています。"いつも使うもの"から"自分でも変えられるもの"というマインドチェンジをいかに起こすのがこれから一番大事なことではないでしょうか。

■オープンプラットフォームとして定着するために、海外ではなく未来へ憧れを持つ

中村貞裕氏(トランジットジェネラルオフィス 代表取締役社長)

中村:
僕の仕事は「日本人はまだ欧米のライフスタイルに憧れを持っているのではないか」という一つの仮説に基づいています。「bills」という朝食をやったときも、NYでブレックファーストミーティングをしたときに「こんなのカッコイイな」と思ったのがきっかけだったり、「シェアオフィス」を始めたのもブルックリンやロンドンで倉庫をシェアオフィスにしているクリエイターとミーティングしたときに「カッコイイな」と思ったのがきっかけでした。
ただ、今後は欧米ではなく、未来に憧れを持つ時代だと思うんですね。なので「Transight」も未来の素敵なライフスタイルにつながっていくものかもしれません。
柴田:
私は商業施設のプロデュースや新しいビジネスモデルを作ることを仕事にしています。仕事をする上で意識をしているのは、出来上がるところで皆さんに共感していただき、参加したあとも一緒にこのフレームを作っていく一員になりたいと思い続けてもらうこと。デザインアークさんには「Transight」の旗振り役としてリーダーシップを発揮してもらい、オープンプラットフォームに参加するメーカーさんや消費者の方とのシナジーの良い循環を引っ張っていってほしいと思います。

齋藤精一氏(ライゾマティクス 代表取締役社長)

齋藤:
ライゾマの中でも「ライゾマティクス・アーキテクチャー」という建築部門を作って、「デジタルやテクノロジーをいかに建築や空間に関与もしくは貢献できるのか」という話をしています。デジタルの良さはやっぱりアップデートが容易なこと。Webやアプリなら後から変更や追加が簡単にできますよね。建築や空間はなかなかそういうことが難しいですが、「Transight」はそうした中間にある。アップデートが可能でかつ、デジタルのプラットフォームもついています。
海外の潮流から見ると日本のプラットフォームビジネスは一歩遅れているような認識がありますが、一方でモノづくりのクオリティや今までのナレッジは海外からも未だに賞賛されていますよね。これを生かして作り手側と必要な人たちを繋ぐためにも、「Transight」のようなプラットフォームには期待したいです。

翌2月23日にはamidusが主催したBusiness Design Programの第一弾として「Transight 事業創造会議」が開催された。企画チーム、技術サプライヤー、協業パートナーの三者が協働して店舗・住宅・オフィス空間における「Transight」を使った事業企画を考えるイベントからは思いもよらない大胆な発想で革新的な案がいくつも提案された。

取材・文:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。『SENSORS』や『WIRED.jp』などで編集者/ライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。東京大学大学院学際情報学府にてメディア論を研究。最近は「人工知能」にアンテナを張っています。将来の夢は馬主になることです。
Twitter:@_ryh


写真:延原優樹

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