プロゲーマー『DetonatioN』が語るeスポーツの魅力

2015.07.10 08:30

西船橋にある一軒ではゲームをプレイすることを生業にした"プロ集団"が共同生活を送っている。彼らの名は「DetonatioN FocusMe」(デトネーション)。日本では知られざるプロゲーマーの実態とeスポーツの魅力に迫る。

http://team-detonation.net/team/focusme より

■世界ではメジャーな「eスポーツ」とは?

eスポーツ/エレクトロニックスポーツとは、コンピューターゲームやビデオゲームを通じて複数のプレイヤーが対戦する競技の総称で、世界のeスポーツの競技人口は5000万以上とも言われている。海外ではeスポーツの大会で、賞金総額が1億円を超える大会も数多く開催され、eスポーツだけで"億"を超える年収を稼ぎ出す「プロ」のプレイヤーも誕生している。

日本ではまだまだ馴染みの薄いeスポーツだが、世界的には見れば大きく普及している競技だ。2013年にアメリカ政府はPCゲームの「League of Legends」(LoL)の公式大会「League Championship Series」(LCS)をプロスポーツとして認定している。韓国でもKeSPAと呼ばれるeスポーツ協会が韓国オリンピック委員会の上位組織である大韓体育会から準加盟団体として認定され、既存のスポーツ競技と同列的に扱われている。

そんなeスポーツだが近年になって日本でも盛り上がりを見せ始め、それだけで生活をする「プロ集団」も存在している。

■日本初のプロゲーマー集団「DetonatioN FocusMe」とは?

「DetonatioN」(デトネーション)は2012年7月にFPSゲームの「Counter-Strike Online」のチームとして設立された。現在では、「バトルフィールド4」や「大乱闘スマッシュブラザーズ」、「Alliance of Valiant Arms」、「Starcraft2」といった著名ゲームタイトルの国内トップレベルのプレイヤーが30名近く所属している。「DetonatioN」ではプレイするタイトルによってさらにチームが編成されている。

その中でも、「League of Legends」(LoL)をプレイするチーム「DetonatioN FocusMe」は"プロ"のゲーミングチーム。所属メンバーは「フルタイム・給与制」で千葉県西船橋の一軒家、通称「ゲーミングハウス」で共同生活を行いながら、世界中のプロプレイヤー達に勝利を収めるべく日々鍛錬を積んでいる。チームにはスポンサー企業がついており、メンバーの給料は、スポンサーより支給される他、大会の賞金やインターネット上でのゲームプレイ動画の配信料、イベント出演料などで賄っているという。

DetonatioN FMによる「League of Legends」プレイ動画

「League of Legends」は5人対5人で行われるチームストラテジーゲーム。各プレイヤーは「チャンピオン」と呼ばれる100種類以上のキャラクターから任意のものを選択し、「Nexus」と呼ばれるお互いの本拠地を破壊することが目的。多様な戦略や戦術があり、個人の操作スキルも求められる。

LoLプレイヤーのCeros(セロス)さんはプロになった理由を次のように語っている。

Ceros:
プロになる前からチームを組んで夜にプレイしていたりしたんですけど、プロになるかどうかという提案がスポンサーからあり、その時は即断でプロになろうと決めました。僕はチームでゲームをすることが好きなので、それを仕事にできるならと思って。オンラインゲームを始めたのはだいたい7年前で、その時はプロになるなんて全く思ってませんでした。まだ日本のeスポーツはそこまで発展していないことをわかっていたので、日本でプロのチームが出来るっていうのはあまり現実的ではないと思っていたんですよ。でも、今僕たちがこうしているように日本でもプロのチームが出来て、本当にここ半年くらいで大きく変わっていますよね。

■プロゲーマーが語るeスポーツの魅力

「DetonatioN FocusMe」のメンバーは共同生活を送りながら、朝から晩までLoLの鍛錬を積んでいる。彼らは毎週土曜日に開催されるLoLの日本リーグ「LJL」に参戦しており、そのために相手の分析をしたり、毎日30分から~時間、試合前は3時間近く及ぶミーティングを通じてメンバー同士の連携を深めているという。

チームの中には、相手の分析を専門に行うアナリストも存在する。「DetonatioN FocusMe」のアナリスト Kazu(カズ)さんは自身の仕事を次のように語っている。

Kazu:
次に戦う相手がどういうキャラクターを選ぶか、そのキャラクターでどういう動きをしていくか、どういう試合運びをするかなどを事細かに分析するのが仕事です。いろんなチームのいろんなプレースタイルに合わせて、自分たちのプレースタイル変えていていくことが大事。そのために相手の過去の試合動画をみたりしながら、そのためのデータ集めをしています。選手たちはゲームに集中していて、僕らアナリストは毎晩の意見交換の時間に分析したもの、相手チームがどういう考え方なのかを選手たちに共有するという役割分担です。

これほどまでに徹底してゲームでの「勝利」にこだわる姿勢を見せるのは圧倒的なプロ意識からだ。

Kazu:
僕たちは「勝ち」にこだわる。勝たないと前に進まないので。勝つために全員で情報を共有する。仕事としてのゲームは、本当に真剣に勝つためにどうすればいいのかを常に考え、細かいミスをお互い指摘しあって成長し合う形がとれればと思います。

チーム全員が一軒家で共同生活するのも勝利にこだわる姿勢から。LoLは「チームスポーツ」。オンラインでお互い顔が見せない状態で鍛錬するのではなく、チームの絆の深さは勝利の掴むための大きな要因になると、監督のAtuさんは言う。

中国から招聘された監督 Atuさん

Atu:
みんなの練習を目の前で見て、コミュニケーションや絆を深める。お互い成長を促すために一緒に住むことは絶対必要です。海外の強豪チームでもこうした生活スタイルは当たり前で、監督である私自身も共同生活を送っています。私自身も元々プレイヤーとして活動していたので、監督としての仕事は、ゲームに関係ある戦略や個人的な技術面などを教えたりしています。

メンバーたちはゲーミングハウスの2階に寝泊まりし、1階のスペースで練習を行う。通勤時間は約10秒。毎週日曜日が「休日」で、メンバー達で話合いながらはプライベートと仕事の切り分けをしているという。この共同生活の重要性をプレイヤーのCerosさんも語っている。

Ceros:
チームでの共同生活は必要なことです。LoLでは、チームの仲の良さっていうのがゲームの強さにも直接関わってくるんです。このゲームは韓国が強いと言われているんですけど、「チームの仲の良さ」を重視していると聞きました。何をするにしてもゲーム以外のこともチームメンバーと行うということが常識としてあるので、共同生活の中で仲を深めていくというのは必要不可欠なものです。実際に三ヶ月共同生活をしてみて、仲も深まりましたし、ゲームの中で思ったことをその場ですぐ話し合えるっていうのはすごい大きいです。

そしてこのチームでのグルーヴ感こそがeスポーツの魅力だという。

Ceros:
チームゲームなので、仲間と一緒に勝つために全力を尽くすという所が一番の魅力だと思います。部分的に勝ったり負けたりいろんな状況があるんですけど、勝った時はすごい嬉しいですし、お互いに「ナイス!」って言って声を掛け合ったりとか、負けた時はもちろん落ち込んでしまいますし、仲間とともに勝つために努力をする、という点が僕は一番好きです。見る分にも、ゲームを深く理解していないとわからない戦術を認識している上級者は、戦術を楽しむことが出来ますし、初心者の方でも、見た目の派手なスキルや、集団戦、チームファイト、5人対5人でぶつかるなどの派手なシーンも見て楽しめるのが魅力ですね。

■日本のeスポーツの未来

DetonatioN FocusMe オーナ兼CEOの梅崎伸幸(うめざき のぶゆき)さん

韓国やアメリカと比べて日本のeスポーツ振興はまだまだこれからだ。DetonatioN CEOの梅崎伸幸(うめざき のぶゆき)さんは日本のeスポーツの未来展望を明るく語る。

梅崎:
日本の競技人口はまだまだ各国と比べると少ない。だいたい200万~300万の競技人口がいると言われているんですね。お隣の韓国はどうなのかっていいますと、実は2,500万人いると言われているんです。でも、私は何も悲観してないんですね。日本は、ファミリーコンピュータであったり、スマートフォンゲームが非常に盛んで、その人口は世界でも全然多いほうなんですよ。それを考えると、単純に「eスポーツ」という文化が日本で浸透していけば爆発的に人口は増えていくんじゃないかなと思っています。私たちはパイオニアの存在として、みんなに楽しんでもらう、魅せる試合をどんどんやっていく。そして注目を浴びて、世界でも勝てるようになっていきたいと思っています。

事実、日本でもアニメ・声優専門学校で新しくプロゲーマーを育てるための学科が設立されたり、学生向けのeスポーツの大会が頻繁に開催されるようになっている。また、ビジネスとしても成立する目途も立っているという。

梅崎:
設立当初は、ビジネスとして成立するかどうかっていうのは不透明だったんですけど、今は黒字が目前です。つまりビジネスとしては成立してますね。その理由としては、日本のeスポーツの価値がどんどん上がってきていることにあります。私たちが頑張っているからということもあるかもしれませんが、世界のeスポーツの流れが日本に来はじめている。「League of Legends」がもうすぐ日本のサーバーでローンチされることもあって海外の企業が注目している。それに負けじと日本の企業も注目し始めて、スポンサーをしたいという企業が増えてきているんです。

テクノロジーの進化は新しい才能を発掘する。かつての高橋名人や梅原大吾さんのように、ゲームが"あたりまえの職業"として成立する世界がやってきている。日本にeスポーツの世界でこれからどんなニュースターが誕生するだろうか。

文・構成:石塚 たけろう

ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、EIR(=客員起業家)として複数の大手企業、スタートアップの新規プロジェクトに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

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