サンフランシスコにオープン「D.Haus」【後編】シリコンバレーからサンフランシスコへ移る、スタートアップの震源地

2015.10.19 16:00

人と技術をデザインで繋ぐコミュニティー・ワークスペース「D.Haus」がアメリカ・サンフランシスコSOMA地区にオープンした。「D.Haus」を立ち上げたのは、サンフランシスコのクリエイティブ・エージェンシーbtraxだ。今回は、カリフォルニアのライフスタイル誌「Cal」でも執筆しているSENSORS編集・市來と、UCバークレーへの留学経験のあるライター・神田の"カリフォルニア好き"両名が、サンフランシスコを舞台に12年以上デザインコンサルティングを行ってきたbtrax CEO ブランドン 片山 ヒル氏に、サンフランシスコとシリコンバレーの違いを中心にお話を伺った。

D.Haus ミーティングスペース/画像提供:btrax

■ヒッピー文化のサンフランシスコと、エリート気質なシリコンバレー

最新のサービスへの感度が高く、デザインスクールも豊富なサンフランシスコ。近年では、デザインセミナーが開催されることも多く、デザインを学ぶのに最適な街だと言われている。ブランドン氏によると、サンフランシスコのスタートアップは、シリコンバレーと比べても総じてデザイン性にすごく注目しているという。地理的には近接しているサンフランシスコとシリコンバレーだが、なぜ、サンフランシスコ発のディスラプティブなスタートアップが増えているのか。それぞれの地域に根付いている文化と気質に迫る。

市來:
サンフランシスコで特にデザインが重要視されているのは、どうしてでしょうか?
ブランドン:
まず、サンフランシスコはシリコンバレーと比較すると(人口密度が高く)企業にとってユーザーが距離的に近いことですね。さらに昔からデザインファームやデザインスクールが多く、デザインを勉強した人間が多いという面でも感度が高い。プロトタイプを持っていっても「いや、これ見た目イケてないよね」とか「この部分が使いにくいよね」という意見が出て来やすいんです。
また、文化的にもかなりオープンな気質なので、コラボレーションに対するハードルも低い。アメリカの中でもより一層オープンといいますか、分け隔てがないんです。必ずしも白人社会ではないことや、多人種が交じり合っていて外国の方も入って行きやすいので、人種や文化が異なる人と交流することに対して、抵抗は非常に低いと思いますね。

カラッとした晴天も、サンフランシスコの魅力だ。/画像提供:btrax

市來:
日本からみていると、サンフランシスコとシリコンバレーは同じものと認識されることも多いように感じますが、実際は気質的にも違う部分が多いのでしょうか?
ブランドン:
そうですね、実際は大きく違います。サンフランシスコからシリコンバレーは、自動車で移動すると30分から1時間くらい距離があるんですね。まず、皆さんが思われているよりも距離が離れているんです。
文化的にも、もともとシリコンバレーはスタンフォード大学等を中心とした「難しいことができる頭のいい人たち」が集まる場所で、高度なテクノロジーや最先端の研究に携わってきた人が大きなことをやるという文化が強いです。一方で、サンフランシスコは昔からヒッピー文化が強い地で、「あんまり難しいことはわからないけれど、おもしろいことやってやろうぜ」という気質がありますね。世の中の概念や常識にとらわれずに、自分たちのやりたいことを自由にやるという文化です。いわゆる若者カルチャーに近い。
つまり、シリコンバレーは比較的エリートが集まり、潤沢な資金を使って高度なプロダクトを作っていこうという傾向。かたやサンフランシスコは「俺たちは失うものはないんだから、おもしろいことやって世の中を驚かせてやろうぜ」というところから始まるケースが多い。そんな若者が何人か集まって、Twitterのような、「なんだかよくわからないけど面白そうなもの」が出来上がったりするんです。
市來:
ちなみに、サンフランシスコとシリコンバレーの他にも、様々なアメリカの都市の情報を収集したり、視察されたりすることも多いと思いますが、他の都市でも感じる傾向の違いなどはありますか?
ブランドン:
やはりその都市が持つビジネスドメインに近いサービスが生まれることが多いですよね。ロサンゼルスであればSnapchatなどのエンタメ系や、メディア系。ニューヨークだとアドテク系、フィンテック系。自ずとその都市が持つインダストリーに近いものが出来てくるようですね。

■地方都市から大企業まで、様々な活用法

画像提供:btrax

「D.Haus」にはすでに、福岡市(福岡地域戦略推進協議会)、電通、FOVE, incなど様々な企業・団体が世界展開の拠点として入居することが決まっている。福岡市のよう自治体が入居することは興味深いが、福岡市が拠点を置くことで、福岡発の企業のサンフランシスコでの拠点として活用されるという。

ブランドン:
地方都市や、地方の企業には世界展開にあたって非常に大きな強みがあると考えています。「どちらにせよ外に出ていかないと、ビジネスとしてスケールしない」ということに強い危機感を持っているところが多い。それはまるでヨーロッパの小さい国が、うちの国だけでビジネスをしていても仕方ないから、ヨーロッパ全土もしくは世界規模でやらないと成立しないと思っているのと近い感覚だと思います。
また、大都市と比較すると結束力が強い傾向があるので、離職率が低かったり、いわゆる横のつながりが強かったり、産官学間のつながりが強かったりします。なので、会社がチームとして強固になりやすい土壌があり、会社として強くなりやすいですね。「D.Haus」を拠点にして、そのような強固なチームが世界規模で戦える仕組みや流れが生まれるといいなと考えています。

他には、いわゆる大企業にとっても「D.Haus」の活用は有用だという。

ブランドン:
個人的には、大企業が新しい試みや面白い企画を行って、世界的にヒットさせるところを見てみたいです。日本の大企業が最初から海外で展開して、逆輸入型の成功をするパターンって少ないんですが、デザインの力で大企業の持つアセットがより一層活かされて、世界で成功するプロダクトが生まれてほしいと思っています。

画像提供:btrax

市來:
「D.Haus」に入居すると、どのようなサポートが受けられますか?

ブランドン:
まず普通なようで実は珍しいのが、バイリンガルサポートです。アメリカに来たばかりで英語に慣れていない方でも、安心してご入居いただけます。また日米間での移動が頻繁に発生して不在になることも多いので、スマートロックを標準装備しています。入国前から、アプリでキーを受け取れるのでとても便利です。もちろん、周囲のレストラン・カフェ情報やイベント情報も提供します。
弊社のスタッフや入居している方の間の交流も注目されています。電通さんをはじめとした大企業さんと、日本のベンチャー企業さんがすでに入居を決めてくださっているので、コラボレーションのきっかけになったりすると良いなと。
また、「せっかくサンフランシスコに来たのに日本の企業だけ」というのでは面白くないので、現地のスタートアップにも入居してもらう予定です。特に、日本やアジアのマーケットに進出希望のスタートアップに入ってもらうことで、新たな相乗効果が生まれるのではないかと思っています。

「デザイン」を軸に、日本の大企業とスタートアップ、日本の自治体と企業だけではなく、現地の企業との交流も期待出来る「D.Haus」。デザインワークショップ、ピッチコンテスト、ネットワーキンングパーティーといった機会も頻繁に実施されるそう。 この「D.Haus」を起点に、サンフランシスコならではの「デザイン」面でも優れたサービスが生まれることを期待したい。

聞き手:市來孝人

SENSORS WEBエディター
PR会社勤務ののち、かねてより旅行でよく訪れていたロサンゼルスに在住。帰国後、福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経てメディアプランナーとして活動中。また、タレント・企業トップなど個人に特化したPR・ブランディングにも携わっている。

Twitter:@takato_ichiki
Instagram:@travelling_la

構成:神田ゆうき

1993年生まれ、フリーライター。早稲田大学国際教養学部在籍。Twitter:@93yu_ki

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