DJブースは無人...真鍋大度・徳井直生らが仕掛ける人工知能ライブ「2045」vol.2

2015.04.10 21:50

2015年2月13日、恵比寿にて開催された真鍋大度と徳井直生が仕掛ける実験的イベント「2045」。その第2回が4月3日、青山骨董通り沿いにある表参道IDOLで開催された。前回が入場規制のかかる大盛況ぶりだっただけに、前回以上の注目と期待を浴びながら「2045」は始まった。今回のイベントを通じて2人は何を試し、どのように人々の心を揺さぶったのだろうか。

■8000万曲以上の曲を解析し、クラスターで表現

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よく流されているアーティスト・ジャンルの分布図。右下がテクノ・EDM系でギャップが伺える

2045に備えて、1週間ほど前から真鍋氏と徳井氏の動きが騒がしくなった。真鍋氏は、ヨーロッパで行われていたSWSXなどのイベントに参加しており多忙を極めていた中で8000万曲以上のプレイリストを細かく解析。前回よりも、より高精度の人口知能DJを作り上げようとしていた。

また徳井氏は、自身のブログに自身のDJプレイリストのアーカイブデータを可視化したものをアップしていた。これは、自身のDJにどのような傾向があるかということを分かりやすく示して「2045」のDJプレイに活用しようとするもの。両者とも、第2回「2045」に向けて準備に余念は無い様子だった。

■精度向上のため、会場内のセンサーもアップデート

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徳井氏とToru Urawaka氏のユニット・The Modern Times。人工知能と人間の融合を目指す。

さて、第2回となると我々が否が応でも気になるのは「前回と何が変わったのか」ということ。それは前回よりキャパシティの大きなスペースにしたとか、豪華なゲストDJが来るとかそういったことではない。

「人工知能は人間DJを淘汰するのか」ということをそもそものテーマにおいているイベントだけに、真鍋氏と徳井氏がそれぞれ仕掛けるテクノロジーと音楽の融合という部分の変化を誰もが楽しみにしていた。

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手前のパソコンにQRコードをかざし、その奥にある四角いセンサーに息を吹きかける。

楽曲選曲の精度向上のために、いくつかの装置もアップデートされていた。その1つが、アルコール検知器。前回から引き続き設置されたアルコール検知器もより精度を高められており、さらに会場限定でダウンロード出来るアプリから個人のQRコードを発行できる。バーカウンターでお酒を注文する時に、カメラにQRコードをかざした後にセンサーに息を吹きかけると、オーディエンスのアルコール濃度がプロジェクターにリアルタイムで表示されるというものだ。その濃度の変化にしたがって、選曲にも影響が出てくる。

また、会場内に設置するキネクトセンサーやiBeaconも増やし、フロアのどこに人がいるのかということが分かるシステムを構築。今回はフロアとバーカウンターがワンフロア内にあるため、フロア全体の人口移動をセンサーで察知し、この音楽の時はフロアに人が集まり、このDJの時はバーカウンターで休憩している人が多いなどといったフロア状況が一目で分かるようになった。

「自分のDJのときにどんどんバーに人が流れてしまう、なんてことがないようにしたいです。」と徳井氏が語っていたように、人工知能が盛り上がる曲とそうでない曲を判断できるのだ。DJ側からすると、どれだけフロアに人を呼び込んで躍らせるDJができるかといった楽しみ方が出来るようになった。

■エンターテイメントに溶け込むテクノロジー

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人のいない真鍋氏のDJプレイ。VJも前回から変化しているのがわかる。

20時にイベントがスタート。23時の時点で、200名をゆうに超える人がフロアにごった返していた。前回も参加した私がその場で肌で感じたのは、今回の方が明らかに盛り上がっているということだった。200名を超えるフロアは一体となり、みんな楽しそうに踊っていたのがとても印象的だった。

真鍋氏と徳井氏が語った「プログラムの精度を前回よりも上げる」ということは、素人には分かるようでよく分からないというのが正直なところ。私は前回のイベント記事で、「人間DJの選曲の方がエモーショナルに響き、人工知能はどこか機械的なように感じた。」と書いた。しかし今回フロアで皆と同じように聴いていて、人工知能と人間DJの境界線が徐々になくなってきているということを実感した。というのも、人間DJが鳴らす音と徳井氏や真鍋氏の仕込んだ人工知能DJが鳴らす音、どちらも同じように自然と身体が動いていたのだ。

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若くテクノロジーとは遠そうな人たちも多く集まっていたのが印象的だった

ビッグデータを丹念に解析し、リアルタイムな人の動きを高精度でリンクさせることで音楽はこれほど進化するのかと、テクノロジーの可能性に圧倒された。前回と比べて若い年代の来場者が多かったのは、「人間×人工知能」という仰々しい対立軸抜きにして、「2045」というイベントがしっかりとエンターテイメントとして成立していたということの証である。

実験的に始めたこのイベントだが、はじめはいかにも機械的だったテクノロジーが、エンターテイメントの世界に溶け込んできた瞬間に私は立ち会えたのではないのだろうか。



■明らかになった、人工知能に対する2人の立ち位置

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似て非なる2人の融合が、これからどのような化学変化を起こすのだろうか。

さらに、このイベントを通じて、真鍋氏と徳井氏の人工知能に対する考え方がより明確になったことも見逃せない。

徳井:
人工知能の立ち位置を考えた時に、大度くんは人間に人工知能を置き換えちゃおうっていう、極端に言うと人間のDJはいなくていいよねっていう立場でやっていて。逆に僕は、人工知能と人間が協力してプレイリストを作るような、どちらかだけではできないような協力関係を作ろうとしています。
真鍋
そうですね。コンセプトは徳井くんと一緒にやってるんですが、自分でやってみたいなと思うのは自動ミックス。曲のどの場所でミックスしていけばいいか、どれくらいのフェードイフェードアウトができるのかとかっていうのをやってみたくて実装しているだけなんで、すごくメッセージ性の強いことをやっているということでもないんですよ。人工知能×人間とかって、トピックとしてはすごく議論しやすい分野じゃないですか。しかしすぐ実験・実証できることではないし、だからこそ面白いことが出来ると思うんですよね。

「人工知能は人間DJを淘汰するのか」という仰々しいテーマを掲げているものの、「2045」はそのどちらがどれだけ優れているのかという検証をするためのイベントではない。人工知能に対する2人のスタンスは異なるが、両者とも「もっと面白いものを作っていきたい。面白いことをやっていきたい」というただそれだけを追求しているのだということが、今回浮き彫りになった。

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準備をしている真鍋氏。自身のDJの時には、ビールを飲みながらフロアで来場者の様子を観察する。

真鍋
今度はストリーミングをしてみたいですね。会場外の人も巻き込んで多くのデータを取り入れたい。もちろん著作権の問題もありますが、データが増えれば増えるほど精度が上がっていきます。アプリを会場外でもダウンロード出来るようにして、家でもこのイベントを楽しんでもらえるようになったらおもしろいです。あとプレイヤーをリリースすれば、人がどんなシーンでどんな曲を聞いているのかということも分かるようになってくる。音楽の聴き方のところまで知れると、さらに選択肢が広がるんじゃないかなと思いますね。

この日訪れた人々の多くは、満足感を得て帰っていったのではないだろうか。「2045」は、一般的に想像されるような、ただのギークが集まるイベントではない。それは膨大な量のデータを解析し、そのアルゴリズムのよってソフィスティケイトされた曲に酔いしれる、簡単に言うとただひたすらよい音楽に酔いしれたい人の空間だ。

こうなると次回に大きな期待をせざるを得ない 。今後の課題としては、観客とDJの距離をどれだけ縮めて、お互いがどれだけインタラクティブに関わり合えるかということではないだろうか。例えばアプリから曲をリクエストしても、自分たちのリクエストした曲が実際のプレイにあまり反映されていなかったという声が観客の中から上がっていた。それに対応し、リクエスト曲が採用された人にはプッシュ通知がいくなどの仕掛けを作る。このように、DJと観客のよりインタラクティブな関係性を築いていくことが更なる進化に繋がっていくのではないだろうか。

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取材・文:石原龍太郎(いしはら りゅうたろう)


ライター・編集者。 テクノロジー・ファッション・グルメを中心に、雑誌やウェブにて執筆。本と音楽とインターネットが好き。@RtIs09

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