ドローンを見れば世界のテクノロジートレンドがわかる - DRONE 編集長インタビュー

2016.02.18 09:30

去年に引き続き、2016年も収まることを知らないドローンをとりまく盛り上がり。これが単なる一過性のラジコンヘリブームではないと多くの人が気づき始めています。
しかし、この盛り上がりはどのように私たちの生活に関わってくるのでしょうか。
ドローンについてより詳しく知るためのコツはあるのか。そしてその未来をどう予測すればいいのか。
世界中を文字通り飛び回り、ドローンに関する動向をレポートしてくれるwebメディア「DRONE」編集長の猪蔵氏にお話を伺いました。



DRONE編集長 猪蔵氏

--ドローンに関する話題はここ数年で驚くほど増えました。しかしそういった話題が出る度に、現象ごとで大きな流れには結びついていないように感じられてしまいます。
全体の大きな流れを捉えるとしたら、どのように見ていけばいいのでしょう?

猪蔵:
まずはドローンを取り扱っている会社に注目してみることが重要です。その中で、名の知られている大手企業と新進気鋭のスタートアップを対比してみてみることがドローン業界といわれるものの動向を掴む鍵となるでしょう。

出典:Drone Industry Insights
DRONE内記事"2016年注目ドローン企業!VCから投資を受けているドローン企業TOP20"より転載

猪蔵:
例えば、大手と言われるドローン企業は、その多くがアメリカと中国の企業です。
しかし、大手ドローン企業が20社あったとして、それぞれの取り扱っている機体を部品レベルで見比べてみると、ほとんどが同じ中国にある工場の部品を使っていることがわかります。いわば機体はコモディティ化していて、差別化が難しい。結論から言えば、それぞれの企業が成長期に入っており、それはドローンというものが一つの産業としてアメリカや中国の社会に受け入れられてきていることの表れです。
そして多くの人々が新たに出来上がったドローンマーケットでお金を稼ごうと、虎視眈々と狙っているのが感じられます。

--その中で機体そのもので差別化を図ろうとする企業もいるのでしょうか?

猪蔵:
例えばドローン大手のParrotが開発しているドローン、Discoはいわゆる「固定翼ドローン」と言われるもので、長距離を高速で安定して飛行することが可能です。
Parrot Disco PV
猪蔵:
現在「ドローン」という言葉を聞いて皆さんが思い浮かべる姿は「マルチコプター」と呼ばれる、ラジコンヘリのプロペラが4つから8つついて、ゆっくりと飛行するものだと思いますが、元をたどればドローンは、軍事用の無人偵察機で、固定翼のものが初めてのものといわれています。ですので、固定翼の機材は、現在のようにドローンという言葉が普及する以前から、軍事はもちろん、農業の分野では農薬の散布に利用されたり、工業の分野では測量に利用されてきたりしてきました。
用途によって使われるドローンも変わってくるという至極当たり前の力学が働く段階を過ぎて、Parrotのように、マルチコプターが増えたから固定翼、といった、成長市場で勝ち残るための発想の転換が必要とされてきていることも間違いないでしょう。
日本のKOMATSUが投資しているアメリカの会社skycatchなどは、工業の分野でマルチコプターを活用しようと奮闘しています。

--その一方で、新たに出てきたドローンスタートアップで注目すべき企業はどういう特徴を持っているのでしょうか?

猪蔵:
大きな特徴としては「小型化」「手軽さ」というキーワードが挙げられるでしょう。
「Lily」は、手のひらサイズで、空中に投げるだけで起動することが可能。そのあとは細かな操縦を必要とすることなく持ち主のあとを追従して空中からのHD撮影をしてくれます。こういった手軽さが評価され、新規のスタートアップで最も多額の資金調達に成功しました。
Lily PV

出典:Drone Industry Insights
DRONE内記事"2016年、注目のドローンスタートアップTOP20"より転載

猪蔵:
またLilyをはじめとしたドローンスタートアップのほとんどはアメリカの企業が中心となっているのですが、唯一6位につけているイギリス発のスタートアップ「ExtremeFliers」から出ている「Micro Drone 3.0」は以下のような驚くべき性能を持っているにもかかわらず、小型化にこだわっている点や、トイドローンのみビジネスターゲットにしている点で非常に面白いと思います。

Micro Drone 3.0

1.Auto - Levelling機能
複数のセンサーを組み合わせることで、飛行およびホバーの両方において機体を水平に保つことが可能となっている。この機能により、飛行に気を取られることなく撮影に集中することができる。

2.逆風に強い
今まで小さなマルチコプターは風に弱いとされてきたが、Micro Drone 3.0の修正アルゴリズムは最高時速72kmの逆風の中でも飛ぶことができる。

3.複数のデバイスで操作ができる
専用のメインコントローラでの操作はもちろんのこと、Micro Drone 3.0のアプリをダウンロードすればiOSやAndroid端末からの操作が可能となる。アプリの3Dモードを使えば、ドローンが撮影したHD映像を立体視することもできる。

4.逆さ飛行
iPhoneを振る、またはコントローラーの反転スイッチを押すと、Micro Drone 3.0は180度回転し、プロペラも反転させ、逆さで飛行を続ける。

5.新しくなったカメラモジュール
Micro Drone 3.0のカメラは720×1280のHD画質を30fpsで撮影することができる。スマートフォンとWi-Fiで接続することで、撮影内容をリアルタイムで確認することもできる。

引用:DRONE内記事『Micro Drone 3.0現る!クラウドファンディングサイトIndiegogoで久々の成功例』

--海外では数々の企業やスタートアップが乱立しているということがよくわかりました。
ここまでドローンが盛り上がり、注目される理由としてなにが考えられるのでしょうか?

猪蔵:
最大の理由としては、ドローンそのものではなく、ドローンの開発につきまとう乗り越えるべき困難が多くの腕自慢の技術者たちを惹きつけているのでしょう。
自由に空を飛び回ることが可能なドローンが、人々の役に立つことは誰の目にも明らかです。しかし、そこでどう役立たせるか?ということや、そのためにはどんな機能が必要で、どんな技術的な問題があるのか?というところまで考えなくてはなりません。逆に言えば、世に出てくるドローンたちをつぶさに観察すれば、そういった課題を発見するプロセスや、その課題を解決するための試行錯誤の跡まで見えてきます。
氷河のクレバスなど、人力では到達不可能な場所での人命救助を目的に作られたFlyability社のドローンGimball(ギンボール)
猪蔵:
また、3Dプリンターなどの普及によってハードウェアの試作が容易になったことや、ソフトウェアの開発環境が著しく発展していること、そして通信技術の向上など、ここ数年で起こった技術的なトレンドが、全てドローンの開発に結びついているといっても過言ではありません。それぞれの分野でしのぎを削ってきた技術者たちが、次なる力試しの場としてドローンの開発に着手しているといえるでしょう。

ドローンはもとは独立していた様々な技術の潮流が、一つの潮目でぶつかる結節点として世の中に現れてきていると言えるのではないでしょうか。
結果として多くの人の関心を引き、ドローン業界というものが盛り上がっているのだと考えています。

--それでは、2016年以降のドローンをとりまく状況について、猪蔵氏が考える未来について教えて下さい。

猪蔵:
すでにその兆しが見え始めていますが、ドローンがコモディティ化していく段階を過ぎると、より用途ごとに特化した機能を持つものが主流となって、ジャンルが細分化していくと考えています。

より想像しやすいところから言えば、映画の撮影を想定した安定性が高く、解像度の高いカメラを搭載したものが開発されたり、可能性の話ではありますが、警察が犯人追跡のために機動性、追尾能力の高いドローンを導入することになるかもしれません。

またドローンに関する規制についても、現行のものはドローンを飛ばしたことがない人が、あらゆる危険を想定して一時的に厳しく制定したものであって、今後はドローンを安全に飛ばすことができるような規制がきちんと敷かれていくことになると考えます(昨年末12月10日には改正航空法が施行され、飛行申請・承認許可制になっている)。
またそれに伴って、ドローンに関する保険であったり、飛ばすために必要な申請を代行するといったような新たなビジネスも開拓されていくことでしょう。

私はドローンが完成する日は来ないと考えています。
ドローンという言葉そのものが持つ揺らぎのようなものが、さまざまな人を巻き込みながら常にドローンそのものの可能性を広げていき、あらゆる分野に浸透していくのではないでしょうか。
その動向を追いかけ続ければ、人間の可能性自体が広がった未来を誰よりも早く正確に捉え、楽しむことができると考えています。

--ありがとうございました。

人間の空に対する憧れを追い風にして、ますます発展をしていくドローンは、まさにSky is the limit(可能性は無限大)なものとして、この熱狂はしばらく続くことになると思います。
そしてスマートフォンが我々の生活になくてはならなくなったように、ドローンがない生活が考えられないと言えるような未来がもうすぐそこまで来ているかもしれません。

取材・文:兵藤 友哉

1995年生まれ。フリーライター。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系在籍。テクノロジーを用いたアート表現を目下のところ勉強中。SENSORSでは「VR」「ドローン」の記事を担当。
Twitter @do_do_tom

聞き手:西村真里子

SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobeにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×クリエイティブ×マーケティングを強みにプロデュース業や執筆活動を行う。スタートアップ向けのデザイン&マーケティングアクセラレーションプログラム「HEART CATCH 2015」総合プロデューサー。 http://events.heartcatch.me/

最新記事