「私にとって、ソーシャルメディアは広場なの」クリエイティブに魅せられた、21歳のストーリー・テラー--ケイラ×草野絵美 #EmisSensor

2018.08.03 18:00

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SENSORS MC草野絵美が、今をときめく気鋭のクリエイターをピックアップし、インスピレーションの源泉を紐解いていく新連載「#EmisSensor」。第二回のゲストは、現役大学生でありながら、音楽、映像作品を媒介に、ストリー・テラーとして活躍するアーティスト、ケイラ・ブリエットをゲストに招いた。ケイラは、弱冠21歳にして、サンダンス映画祭受賞作家であり、SXSWにも出演したミュージシャンでもある。

彼女たちは、2016年にサンディエゴで開催されたAdobeMaxで出会って以来、意気投合した。年間二週間ほど、ロサンゼルスと東京でお互いの家に泊まりあってて創作活動を行う仲だ。

SENSORS MC草野絵美が、弱冠20歳のストリー・テラーの半生、世界を股に掛けるクリエイターとしてのマインドセットを聞いた。

ケイラと絵美「大切なことはすべて、iMacが教えてくれた」

草野絵美(以下、草野):
ケイラ、久しぶり。去年の今頃もこうして日本にいたよね。『Break! Break! Tic! Tac!』のVR MVを撮ってもらったのを鮮明に覚えています。
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ケイラ・ブリエット

ケイラ・ブリエット(以下、ケイラ):
今日は、私と絵美がクリエイターとして対談し、インスピレーションについて話をするんだよね?
草野:
そうなの。楽曲制作や映像制作など、弱冠21歳にして、SXSWを初めとするフェスで活躍するミュージシャンであり、サンダンス映画祭で受賞する映像監督、多方面で活躍するケイラと、お互いのクリエイションの源泉ついて話をしていきたいと思います。

そもそもケイラは、どうして音楽を作ったり、映像作品を手がけるようになったの?
ケイラ:
随分むかしの話になるけど、まだとても幼い頃。私は、人の目を見て話すのが苦手なくらいシャイだったの。ただ、8歳の頃に、父が私にアメリカの南西部に古くから伝わる踊りを教えてくれて。そこで、「言葉以外にも伝える手段はあるのだ」と知りました。

そこで、自宅にあったiMacで音楽を作り、音楽によってコミニュケーションを取るようになりました。これが、アーティストになる原点です。ちなみに絵美は、どうしてアーティストになったの?
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草野絵美

草野:
クリエイションの原点は、同じくiMacの『キッズピクス』というソフトで絵を描いていたことかな。それから、自分で歌を作ってみたり、服を作って人形に着せて写真を撮ったり、いわゆる"アート"的なものを制作していて、ホームページで発表してた。

そのなかでも、私は「二度と戻ることのできない」過去のコンテンツに夢中だった。10代後半くらいにテーマが定まり、『Satellite Young』でレトロな音楽を手がけるようになったの。すごく協力的な親の元に生まれ、「好きなことをしなさい」と育てられたことも、今の活動に少なからずつながっているかもしれない。

ちなみにケイラは「ストーリー・テラー」を名乗っているけど、その呼び名はどこからきたの?
ケイラ:
少し長くなるけど、説明するね。私の母親はオランダ系インドネシア人と中国人の移民のあいだに生まれ、父はアメリカの先住民・ポタワトミ族です。なので私には、どの国にも帰属意識がなかった。お父さんやお母さんの文化を学び、それらの架け橋になることで、自分のアイデンティティを確立しようとしていたの。

そんな折、とある楽器に出会います。おばあちゃんが持っていた中国の古筝です。古筝は、5音の音階によって調律されていて、この音階は、世界中のさまざまな音楽に含まれます。中国の民謡はもちろん、アメリカの先住民族の音楽も、エレクトロミュージックもです。

この発見に気付いたとき、私は自分の"言語"を手にしたような感覚を得ました。この一体感を、過去から今に続く物語を、音楽や映像というタイムカプセルに入れ、伝えていきたいとも思いました。私が「ストーリー・テラー」を名乗る所以です。

"肩書き文化"の日本に現れた、草野絵美という異色のアーティスト

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草野:
ストーリー・テラーとして、過去から今に続く文化を伝えていきたい。その手段が楽曲制作であり、映像制作なんだね。ケイラは大学生だけど、音楽映像が専攻ではないんだね。
ケイラ:
今は通信制の大学で主にコンピューターサイエンスを専攻しているんだけど、その理由は、ストーリー・テリングの手段になりうるから。VRやARも研究しているけど、根底にある想いは変わらないの。

MITでもブロックチェーンのカンファレンスに奨学生として選ばれて参加したんだけど、イノベーションが起こる現場を間近で見れる機会が多かった。そんな光景を見ていて、テクノロジーとクリエイティブを組み合わせることに関心を持っています。
草野:
そうなんだ!私もこれまで、フォトグラファーをしたり、アプリの会社を起業したり、いわゆる"飽きっぽい"性格で。でも、Satellite Youngを結成してからはずっと活動を続けられているの。

その理由は、Satellite Youngを軸に、歌を作ったり、映像を作ったり、演技をしたり、ライブの演出をしたり、インスタレーション作品を作ったり。さまざまな活動をできているから。これかも、肩書きにとらわれず、いわゆる"ミュージシャン"の枠を飛び越えていきたいと思っています。
ケイラ:
絵美の素晴らしいところは、肩書きにとらわれがちな文化にいても、仕事の裾野を自分の力で広げていけるところ。会社員をして子育てもしながらも音楽制作をしていたなんて、本当に尊敬します。

私にとって、ソーシャルメディアは"広場"ーーインターネットが育んだケイラのクリエイション

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草野:
私たちの共通点を考えてみたんだけど、「ソーシャルメディア」の存在が創作活動に大きく影響をあたえていることだと思います。ケイラと直接会ったのは多分5分くらい。それでも、仲が深まって一緒に旅をしたりコラボすることになったのもインスタでつながってたからだよね。世界中の人とつながれる環境があったからこそ、生まれた作品が多いの。ケイラも音楽と映像の作り方をYoutubeで全部学んだっていってたよね。創作活動とネットやソーシャルメディアとの関係性について教えて!
ケイラ:
ソーシャルメディアがない時代のアーティストは、「自分のために作る」ことがメインになっていたと思います。ただ今となっては、いつでも、どこにいても、世界中に作品が発表できる。同様に、世界中のアーティストから学べるようになったので、たくさん影響を受けているかな。

もちろん、インターネットから離れて1人で過ごす時間も大事。そこはバランスです。私にとってソーシャルメディアは、人と人とのつながりを保って集まれるような広場のようなもの。自分だけの時間と広場に行く時間を行き来して、クリエイションにつなげています。
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ケイラ:
こうして誰でも発信ができる時代に、ストリー・テラーを名乗ることには重大な責務があります。情報を伝えることは、歴史を作ることと同義です。

たとえば、いま世界で起こっている差別だったり人権問題も、過去の歴史のネガティブなストーリーが原因になっている。もしかすると、もう少しポジティブに伝えることができていれば、世界は変わっていたかもしれません。「私の発言や作品が歴史を左右することもある」と考えながら、ストーリーを紡いでいるの。

街に咲く「素敵な花」から言葉を紡ぐ。ストーリー・テラーは、テクノロジーと日常をつなぐ

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草野:
ケイラは、一貫性を保ちつつも、TEDに登壇したり、VR作品を手がけたり、毎年新しいことに挑戦しているところが素晴らしいと思います。そうした活躍をする上で大切なことって何だろう?
ケイラ:
環境にとらわれず、ポジティブなマインドセットでいることが大事だと思っています。自分自身がどのような考えを持って取り組むかで、結果は大きく変化する。たとえば、ネガティブなマインドセットが染み付いていると、良い結果は出ないんです。

文化の壁があろうと、自分自身に壁があったとしても、恐れてはいけない。私はどんなときも、「失うものはない」と信じています。
草野:
素敵!そうしたポジティブなマインドセットでいれば、作品もいいものになっていくのかな?
ケイラ:
そうだね。創作活動をしていると、集中しすぎて視野が狭くなってしまうことがあるけど、意識的にポジティブでいれば、日常にある幸せに気づくことができるの。たとえば日本に来てから、素敵な花を見たり、美しい建築を見たり、街にいるだけで感謝すべき幸せを感じられる。そうした感覚は、ストーリー・テラーの活動に生かされています。
草野:
ケイラといるとこっちも前向きな気持ちになれるよ!今回も一緒に一曲書いたりしたのが楽しかった!近々発表するのが楽しみです!
Kayla Briët - Odyssey

ケイラ・ブリエット

1996年 アメリカ・ロサンゼルス出身。ポタワトミ族の父と、オランダ系インドネシア人と中国の母をもつ。父の民族文化についての短編ドキュメンタリー「Smoke That Travels」はサンダンス映画祭を初めとする多くの国際的な賞を受賞し現在スミソニアン博物館に貯蔵されている。また、中国の伝統楽器古筝を駆使した音楽家・歌手としても活動し、サウス・バイ・サウスウエストを初めとする数々の音楽フェスに出演。2017年のTEDフェロー、2016年のサンダンス映画祭フェロー、2016年のAdobe創造性奨学生、2016年のMIT ブロックチェーン奨学生、2016年のOculus Launch Pad Artist等に名前を並べている。現在はVRに強く関心をもち、VR作品を手がけている。
Twitter:@kaylabriet

SENSORS MC:草野絵美

草野絵美 Sensors MC: 1990年東京出身。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス環境情報学部卒業。元広告代理店テクノロジー専門プランナー。歌謡エレクトロユニット 「Satellite Young」として活動中。再構築された80'sサウンドに、ポストインターネット世代の違和感をのせて現代社会を歌う。スウェーデン発のアニメ『Senpai Club』の主題歌提供、米国インディーレーベル「New Retro Wave」からのリリースにより、欧米を中心にファンを増やし、2017年には「South by South West」に出演。
Twitter:@emikusano

編集:オバラミツフミ

1994年、秋田県出身。2016年からフリーランス。各種メディアでのインタビュー連載・ブックライティングがメイン。
Twitter:@obaramitsufumi



写真:小林真梨子

Twitter:@marinko5589

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