「何者かになりたい」思いが消えたとき、自分らしいクリエイションに出会えた--藤原麻里菜×草野絵美 #EmisSensor

2019.01.23 18:00

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SENSORS MC草野絵美が、今をときめく気鋭のクリエイターをピックアップし、インスピレーションの源泉を紐解いていく新連載「#EmisSensor」。第四回のゲストは、YouTubeチャンネル登録者7万人越えの「無駄づくり」クリエイター・藤原麻里菜氏。

何者かを目指し、バンドマン、お笑い芸人として活動をするも、なかなか芽が出ない。そんな彼女が「無駄づくり」クリエイターとして注目を集めるに至った原点は、"自分がいなくなる"感覚との出会いだったという。

"鼻につく大学生"みたいだった自分と決別し、自分らしいコンテンツで評価されるまでの経緯、「無駄づくり」の名前に込めた想いなど、唯一無二のクリエイションを続ける藤原氏の活動に迫った。

"違和感の排除"としてのクリエイション----「無駄づくり」の原点と、物作りの本質

草野絵美(以下、草野):藤原さんが手がける「無駄づくり」動画を見て、日を追うごとにクオリティが高くなっていく様に感銘しました。同じクリエイターとして学ぶべきことがたくさんあると。まずは、そもそも「無駄づくり」を始めたきっかけを教えてもらえますか?

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藤原麻里菜氏

藤原麻里菜(以下、藤原):やることが特になかったから、始めたんですよね。もともと物作りが好きだったわけではないし、当初は何も考えていなかったというのが本音です。

ただ、続けるうちに"物作りの本質"が見えてきました。その過程があって、今は物作りが好きになれています。

草野:藤原さんが考える、"物作りの本質"って何でしょうか?

藤原:手を動かして、違和感を排除することだと解釈しています。大きな目標があるわけではありませんが、コンテンツの制作によって、日々感じる違和感を排除することが、今「無駄づくり」を続ける理由です。動画に対して視聴者の方から反応をもらえることも、コンテンツの制作を継続する一つの要因になっています。

草野:継続することで得られることも多いですよね。でも私、納得いかない作品をアップするのが苦手なんです。だから、毎週動画をアップしている藤原さんはすごいなって思っています。

藤原:アウトプットを継続するコツは「サブアカウントをつくる」ことです。ブログを書こうすると気合が入ってしまいますが、ツイッターなら気軽に呟けるじゃないですか。

インスタの投稿はすごく凝った写真をアップしたくなりますが、ストーリーなら気軽にアップできます。そうやって、ある意味適当なアウトプットを続けていくと、それらが集合体になって作品のアイディアになることもあるんです。

"自分がいなくなる"感覚が、自分らしさを生み出した

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草野絵美

草野:藤原さんの作品は、アート作品として評価されることも少なくないですよね。ご自身では、自分の作品をどのように解釈されているのでしょうか?

藤原:アート作品ではなく、あくまでコンテンツだと解釈しています。というのも、私は大学を卒業していないので、専門的なことが分からないんです。

たとえばアートの知識がないので、アートとして何が良くて、何がダサいのかを分ける価値基準を持っていません。そうした基準を持たずして、自分の作品を「アートです」と言い切るのが怖いんですよね。美大を苦労し卒業した人が見たら、全くアートではないかもしれないじゃないですか。

でも、そうした恐怖感を持ったままでは、好きなことができなくなってしまいます。そこで生まれた言葉が「無駄」です。「無駄だけど、やります」というスタンスでいれば、自分の制作活動を正当化できると考えました。

草野:自分が信じる作品を制作する、つまり自分をさらけ出せるようになるまでの過程が知りたいです。

藤原:今振り返れば、昔の私は、"鼻につく大学生"みたいだったと思います。「具体的には分かりませんが、何かやってみたいんです」とよく分からない夢を口にするタイプで、高校時代はとりあえず音楽をやっていました。

ただ、「何者かになりたい」という思いだけで物事に向かっていたので、常に自分との対話になっていました。上手くなれなかったんです。ハードルだけが上がっていき、意義を見出せなくなってやめました。

その後も「面白いことをしたい」の一点張りでお笑い芸人になりましたが、音楽をやっていた頃と同じように、掲げたハードルを越えられず、楽しさを感じられなかったんです。

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草野:そこから「無駄づくり」に?

藤原:そうです。YouTubeも、最初は「ハードルを越えられない」時期がありましたが、続けていくうちに「自分がいなくなる」感覚があったんです。その境地にたどり着いてから楽しさを感じられるようになり、やりたいことが自然に湧いてくるようになりました。

草野:つまり、「自分がいなくなる」まで継続できたことが、逆説的に自分らしさを出せるきっかけになった...?

藤原:おっしゃる通りだと思います。「自分をさらけ出せる」状態をつくる現時点の答えは、「いろいろやるしかない」です。

グローバルニッチを目指すクリエイターが知るべき「ツボ」の話

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草野:藤原さんの作品には、とてもユーモアを感じます。芸人としてはうまくいかなかったとおっしゃっていましたが、YouTubeはニッチなファンをつくれるプラットフォームなので、今のようにご活躍ができているのかなと感じています。

藤原:たしかに、メディアは非常に重要だと思います。テレビの世界で通用しなかった人がYouTubeで評価されることもありますし、逆にテレビで活躍していた人がYouTubeで評価されないこともある。

きっとそれは、「スケール」の話だと思うんです。私の場合は、YouTubeが適切なステータスだった。そうしたことが理解できたおかげで、逆にテレビではどう表現したらいいのかを考えられるようになりました。

草野:今後は、海外への進出なども考えているんですか?

藤原:海外に発信する方法は日々考えています。以前、台北にあるLaugh&Peace Factoryというギャラリーで「無用發明展」という個展を開催したんです。すると、9日間で25,000人もの来場者が訪れ、想像以上に反響がありました。

爆笑してくれたり、わざわざアプリで翻訳して「面白かった」と伝えてくれたり、すごく嬉しくて。SNSが起点になったのですが、グローバルに接続していくより良い方法を模索しているところです。

草野:世界中にはいろんな「ツボ」を持った人がいるから、グローバルニッチを目指すのがクリエイターの生存戦略になるかもしれないね。

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藤原:あと、コンテンツを面白がる感覚も、少しづつ似てきているように感じるんです。たとえば、Netflixで海外コンテンツをよく観るようになりましたよね。今までは「うちうちで」楽しんでいる感覚が好きでしたが、海外の人と同じ「ツボ」で作品を楽しめるようになった気がします。

草野:たしかに、10年前のアメリカンジョークは理解できないけど、最近の海外コメディを観ていると、笑うツボが似てたりするかも。

藤原:昔は「日本のお笑いってすごい」と思っていましたが、今では「海外の方が面白い」と思うことも増えました。つまり、日本のコメディドラマも、最初から海外を視野に入れて制作すれば、広がり方が変わってくると思うんです。なので、私自身そうした考えを持っていたいなと感じています。

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「無駄づくり」活動を通して見つけた、好きなことを続けて豊かに暮らすための方法論を綴った著書『無駄なことを続けるために - ほどほどに暮らせる稼ぎ方』がヨシモトブックスより発売中。

SENSORS MC:草野絵美

草野絵美 Sensors MC:1990年東京出身。慶應義塾大学湘南藤沢大学 環境情報学部卒業。作品制作・執筆・ラジオやTVのMC・CM出演など活動の傍ら、歌謡エレクトロユニット《Satellite Young》を主宰。歌唱・作詞作曲・コンセプトワークを行う。再構築された80'sサウンドにのせて人工知能やオンライン交際など現代のネット社会や最新テクノロジーをテーマに歌う。2017年には世界最大の音楽フェス『South by South West』にSatellite Youngとして出演。現在CMが放送中の参天製薬『サンテPC』2018年度イメージキャラクター就任。
Twitter:@emikusano

藤原麻里菜

1993年生まれ。コンテンツクリエイター、文筆家、映像作家。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。頭の中に浮かんだ不必要な物を何とか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。2013年からYouTubeチャンネル「無駄づくり」を開始。現在に至るまで200個以上の不必要なものを作る。2016年、Google社主催の「YouTubeNextUp」に入賞。2018年、国外での初個展「無用發明展- 無中生有的沒有用部屋in台北」を開催。25000人以上の来場者を記録した。
Twitter:@togenkyoo

編集:オバラミツフミ

1994、秋田出身。フリーライター → 長期インターンプラットフォーム「InfrA」を運営する株式会社Traimmu広報PR。構成『選ばれる条件』(木村直人・エザキヨシタカ 共著) アシスタント 『10年後の仕事図鑑』(堀江貴文・落合陽一 共著)など。
Twitter:@obaramitsufumi

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