「FAKE FUTURE」から本質をあぶり出す。東大生によるメディアアート作品展示会「東京大学制作展」

2016.11.19 14:15

東大生を中心にメディアアート作品を展示している「東京大学制作展」。 過去には、「現代の魔法使い」と称される筑波大学助教・メディアアーティスト落合陽一氏も作品を出展しており、 18年目となる今回は「FAKE FUTURE」をテーマとして11/17(木)~11/21(月)の5日間開催されている。 そこで、「FAKE FUTURE」の指導教官である苗村健氏(東京大学大学院 情報学環/情報理工学系研究科 教授)、 小松宏誠氏(同大学院 情報学環 非常勤講師)、 赤川智洋氏(同職) にお話を伺い、制作展の裏側に迫った。

「FAKE FUTURE」というコンセプトが意味するもの、 それは「ありえない未来を極端に示すことで、 時空を超えて存在するものごとの心理をあぶり出すこと」であると運営メンバーは語る。 例えばタワシと人間の恋愛を表現した「OH MY BABY」では、 あらゆる無機物にAIが搭載された結果、無機物と人間が恋愛をするようになるという「FAKE FUTURE」を想定し、 恋愛・結婚・出産の本質を捉えようと試みる。

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OH MY BABY-「FAKE FUTURE」公式HPより

「FAKE FUTURE」ではメディアアートを「テクノロジー×アート」と柔らかに定義している。 作品によって「テクノロジー×アートをどう定義したのか」考えてみるのも面白いかもしれない。

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浮遊するは思考-「FAKE FUTURE」公式HPより

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雨時々カエル-「FAKE FUTURE」公式HPより

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hello kengoro-「FAKE FUTURE」公式HPより

■学生たちの自主的な取り組みがアルスエレクトロニカに呼ばれるまで

--制作展の目的はどういったものでしたか?

苗村:
元々、授業や講義ではなかったんです。現在は単位の出るものになりましたが、 有志の学生による取り組みだったんです。 技術を学んでいる学生の中にはそれを表現したいと思う者も多く、 テクノロジーをより良く見せる方法を学んでいるうちに発表したくなったんだろうと思います。 指導教官として、作家性や作品のクオリティは任せていますが、広報の大変さを学んでほしいと思っています。 それもまた伝え方を考えるということですから。
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<苗村健氏(東京大学大学院 情報学環/情報理工学系研究科 教授)>

--主に院生が関わっているかと思いますが、授業としての価値はどういったところにあると思いですか?

苗村:
一言で言うと「伝え方を考えさせることができる」点ですね。 テクノロジーやアートについて詳しく知らない観客の方にわかってもらうためにはどうすればいいか。 作品作りはもちろん、展示の仕方、広報の仕方まで徹底して考える経験は研究発表にも役に立ちますし。 2008年にはアルスエレクトロニカからインバイトも受けました。 建物一つ埋めてくれとお願いされて困りましたが、なんとか実現できました。 美術大学ではない総合大学が招待されるのは当時あまりなく、新しい動きでしたね。
小松:
学生だった頃、第2回の制作展に参加させてもらったんです。 当時の記憶が鮮明に残ってて、それで現在講師を務めさせていただいています。 基本的には相談に乗る程度なんですが、そもそもいいものを作りたいっていう モチベーションがすでにみんなにあるので、積極的に指示するというのはないですね。
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<小松宏誠氏(同大学院 情報学環 非常勤講師)>

■東大生の見る「メディアアート」

--落合陽一さんは現代を「メディアを生成すること自体がアートになる時代」 と形容されていますが、制作展ではメディアアートをどのように定義付けているのでしょうか?

苗村:
少なくとも僕らから定義を与えてはいません。 定義付けは時代の流れを受けて、毎年のメンバーによって変わっているよう思います。 見せたいものが技術の人もいれば、メッセージ性を重視する人もいますしね。 強いて言うなら、今年はスペキュラティブデザインの考えが強いように感じます。
赤川:
技術が使いやすくなってきているので、作品を作りやすくなっただろうなという印象は受けます。 そのおかげで、これまで「どうやって作るか」を考えていた時間を、「何を表現するか」という内容を考える時間 にあてることができるようになりました。学生が新規の技術や流行のテクノロジーを試してみたいという思惑もあって、 作品にもシンクロ性が出ているのが面白いですね。
一昔前はモニター上で収まっていた作品が、プロジェクターを使ったインタラクティブな作品に、 そしてちょっと前はキネクトが流行りましたね。今はHMDを使用したり、VR技術をベースにした作品が増えてきているなと思います。 学生には、画面の枠内に収まるコンパクトな作品だけでなく、大掛かりな作品にも挑戦してもらいたいと思っています。
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<(左から)小松氏、苗村氏、赤川氏>

ありえない未来から、本質をあぶり出す「FAKE FUTURE」。 アートというストーリーが付与されたテクノロジーの祭典である「東京大学制作展」。 見せ方に徹底的にこだわった本企画を堪能してみてはいかがだろうか。

第18回 東京大学制作展 「FAKE FUTURE」
日時:11月17日(木)~ 21日(月)(11:00 - 20:00)
主催:東京大学大学院 情報学環・学際情報学府
入場無料

会場:
〒113-8654 東京都文京区本郷 7-3-1
東京大学本郷キャンパス工学部2号館 (2階 展示室、フォーラム、9階92B)

アクセス:
東京メトロ南北線 東大前駅 徒歩7分
東京メトロ丸ノ内線・都営大江戸線 本郷三丁目駅 徒歩8分
東京メトロ千代田線 根津駅 徒歩8分
東京メトロ三田線 春日駅 徒歩8分
ウェブサイト:http://www.iiiexhibition.com/
Twitter:https://twitter.com/iiiEx
Facebookイベントページ: https://www.facebook.com/events/1175403299169825/


文:長濵幸大

フリーライター
東京大学院学際情報学府修士課程在籍。 研究テーマは「大戦直後の日本の洋裁文化」。 最近興味があるのは仏文学と植物
Twitter:@nghmkt

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