VRによるファッションブランディングの幕開け 落合陽一×Psychic VR Lab×chloma懇談

2016.09.07 12:00

テクノロジーの進化によって姿を変えるファッションの未来を体感するイベント 『SENSORS SHIBUYA FASHIONCODE WEEK』。各界の第一線で活躍するゲストを招いた『ファッション×VR』セッションは、 VRとファッションの関係性を探っていった。ファッションの定義に始まり、VRによって浮き彫りにされたストーリー性の重要性、 そのような時代に必要なファッションとは何か? と進んだトークを追っていきたい。

fcw2.jpg

左からゴッドスコーピオン氏、八幡純和氏、鈴木淳哉氏
落合陽一氏とモデレーター西村真里子

MITで学んだ社長が率い、超能力の実現を目指すPsychic VR Labからはエンジニアの八幡純和氏とメディアアーティストのゴッドスコーピオン(以下「ゴスピ」)氏が参戦した。西暦3016年の百貨店をテーマとした「宇宙支店」などVRを駆使し、多くの表現を刷新してきた。
「現代の魔術師」であり、メディアアーティストの落合陽一氏からは「我々の持つイメージを実現しようとするテクノロジー」という観点からのコメントが繰り出される。そして、ファッションブランドchlomaのデザイナーである鈴木淳哉氏は、2次元あるいは2.5次元の世界にインスピレーションを得た衣服を販売しており、唯一実際の衣服を扱う立場として上記3名と議論を重ねていく。モデレーターはSENSORS.jp編集長西村真里子。

■ファッションの定義とブランド・ストーリー

西村:
ファッションの世界では、毎年「今年はアーミー調が流行る」とか「80'sリバイバル」とか、その年のトレンドが紹介されますが、ファッションはトレンドやコレクションを追うだけではなく、個人個人が見ているものもファッションになっている気がします。現在のファッションの定義を教えてください。
鈴木:
僕は、自分は何とともにありたいかを選択するのがファッションだと思ってます。自分がいたい世界を選択する手段という意味でVRはファッションとして機能するのかなと。
落合:
ファッションというのはモードを指す場合と、トータルコーディネートを指す場合のどっちもあるじゃないですか。今鈴木さんが言ったのは、どの世界観に属したいか。今のモードの世界でいえば間違いなくVRはモードだね。
西村:
ファッションってカッコ良く見せたいとか、美しくいたいとか、そういう第三者の視線を意識して着るものと思っているのですが、今後は変わっていく?
落合:
いい質問ですね。俺らは似合っている「と思っているもの」を買っているわけじゃないですか。でもこれからはその精度が上がる。つまり、鏡で見た自分って一方向的にしか視点がないけどVRなら360度。実際に実験すると、ヘッドマウントディスプレイでの試着は全然違うものを選ぶんです。猫背な人は猫背であることを自覚するから、選び方が変わる。

Psychic VR Lab ゴッドスコーピオン氏と八幡純和氏、鈴木淳哉氏

西村:
実は、本日のタイトル「ファッション×VR」にも疑問符を浮かべていて。「服にストーリーを持たせるものがVRである必要ってないんじゃないか?」 と。VRではなく、アニメや漫画でもいいんじゃないか? なぜVRなのか。私はまだそこにジャンプできていなくて。
鈴木:
現時点ではそもそもVRが目新しくて、そこでできる新しい表現があるからファッション性が担保できている。けど、もう少し時間が経ちVRが一般的になった時、今の質問にお答えするために大事になるのは、ずばり空間性だと思っています。 
ゴスピ:
VRというのは世界への没入であるけれど、まだそこに入る身体は整備されていない。ファッションに特化したVR上の身体及び空間がこれから作られていくと思いますし、それがお答えになるのかな。現実空間だとネットで調べないと、誰かが着ている服のブランドやストーリーはわからないけど、VR上ならその商品の持つストーリーがどうなのかが見えるといった風に。それってVRだからこそできるストーリーテーリングだと思います。
鈴木:
端的に言って、VRは空間を着るということなんですよ。空間までコントロールできること、それがVRとファッションについて個人的にも一番ワクワクしていることです。
西村:
そうすると空間も含めてファッションということ?
八幡:
まさに今僕らが作っているSTYLYでは空間をデザインしています。ヘッドマウントディスプレイ越しに表現した空間とアイテムでそのブランドのイメージを表現することに挑戦していますよ。
西村:
なるほど......腑に落ちました。ちなみに、鈴木さんがVR空間にこだわる理由ってなんなんですか? 単に面白いってだけ?
鈴木:
ヴァーチャル上の無限の空間において身体性を獲得することができたら......って考えるとワクワクしません? 単純にあの世界で読書したいくらいの意識でしたが、自分の好きなブランドが自身のイメージで構築した世界を提供してくれたら面白くないですか?
落合:
人間にとって空間は視聴覚で認識できるものがほとんどを占めている。そうするとVRだけで空間を再構築できるのは間違いない。そうやって空間をとらえると面白いね。
八幡:
(鈴木)淳哉さんの話の続きになっちゃうんですけど、今まではショップから発信された情報が大きかった。そこに行って、情報を得るってのが大きくて。ある場所の雰囲気から情報を得るってのは自然に行われていたことで、それがVRに移行するのは自然かなと思う。

 "現代の魔術師"落合陽一氏とモデレーター西村真里子

ゴスピ:
chlomaのOSがインストールされた世界ってことですよね。chlomaのOSをインストールするとヘッドマウントディスプレイ越しにその世界が誕生する。

■2020年代のファッションとは

西村:
今ヴァーチャルで流行ったものが現実の世界で売れるようになっていますけど、落合さんだったらどんな服を流行らせたい?
落合:
質量と動きの関係を再定義したいね。着ている人が動いても服が波うたないとか。軽そうだけど重いとか、暑そうだけど涼しい、熱伝導率がちがうとか。
西村:
騙されたー! みたいな感覚にしたいってこと?
落合:
というよりは、春夏のコレクションは当たり前のように薄着でしょ? それをぶっ壊したい。電気の力を借りたり高度な計算をもとにして、ある程度の物質性からの解放を図りたい。あとはマテリアル自体をどうパブリケーションしていくか。生き物使ってもいいし。ファッションを菌が作ってもいいし、虫が作ってもいいし、人工的に毛皮を作ってもいい。

chlomaデザイナー 鈴木淳也氏

鈴木:
今の落合さんの話めちゃくちゃ共感するところがあって。僕もやはり画面の中のルールが好きで、自然な布の動きとかそんなに好きではない。着脱に不快感があると当然買ってもらえないので、そこにも気を払って表現していきたい。
八幡:
僕は正直何も着たくないのでオートモザイクVRとかあるといいよね(笑)。まあ冗談は置いておいて、おしゃれな身体が欲しいですね。身体自体がファッションになるような。衣服と身体、リアルとヴァーチャルの垣根が曖昧になっていくだろうね。
西村:
八幡さんの話で、中里唯馬さんのコレクションを思い出しました。モデルの身体の一部を3Dプリンターで作って透けて見えるとか。これからのファッションデザイナーってモデルの体自体を作っていくのかなと。そうすると今年の夏は肩パット入れなくていい時代が来るのかな。怖いような楽しみなような。
八幡:
ヘッドフォンが身体に内蔵される未来がくるといいね。

VRによる空間設計を通して、既存ファッションブランドはこれまでと全く異なるプロモーションを獲得し、連日我々を驚かしている。 しかし、衣服はそもそも時代を映す鏡として機能していた。2010年代にヴァーチャルの世界と作用し合っているのは当然なのかもしれない。2020年にはどのようなファッションが誕生しているのだろうか。

文:長濵幸大

フリーライター
東京大学院学際情報学府修士課程在籍。研究テーマは「大戦直後の日本の洋裁文化」。好きな小説家は吉行淳之介と福永武彦。最近読んで面白かったのは三好達治『詩を読む人のために』
Twitter:@nghmkt

写真:延原優樹

最新記事