鈴木えみの考える、「雑誌」「テクノロジー」これからの時代における役割とは〜「THE FASHION HACK TOKYO 2015」【前編】

2015.10.02 12:00

SENSORSでは「ファッション×テクノロジー」を「FashTech(ファッシュテック)」と定義。タレントとして、IT業界誌の編集長として、二つの顔を持つタレント&エディターの坪井安奈による、この「FashTech」の現場をレポートする連載「FashTech〜ファッション×テックで何が変わる?」をスタート。第一弾は大手出版社4社が手を組んで実施した「THE FASHION HACK TOKYO 2015」だ。

それは、たくさんのワクワクに溢れた夜でしたーー

昨年、「アンダーズ」ブランドが日本に初上陸したことでも話題の最新鋭ホテル「アンダーズ 東京」(虎ノ門ヒルズ)にて、ハースト婦人画報社、小学館、講談社、集英社の大手出版社4社によるパーティーが行われていたのです(8月28日)。

普段は、ある意味ライバルでもあるこの4社...。大手マスメディアが一緒にパーティーを行うとは一体何事でしょうか?

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実はこの日行われていたのは、上記4社によるファッション×テクノロジーの未来を考えるハッカソン「THE FASHION HACK TOKYO 2015」のプレパーティーを兼ねた「アンダーズ サロン」。

「雑誌業界を盛り上げたい、雑誌コンテンツの力を再発見したい」との思いから開催に至ったそうですが、出版業界のハッカソンという大変画期的な試みに好奇心をくすぐられ、私、坪井はこのプレパーティーへ潜入しました。

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■ファッションは「B to C」から「B to I」へ?

華やかな雰囲気の中、翌日(8/29-30)に控えたハッカソンに向けて参加者みんなの気持ちにエンジンをかけてくれたのは、モデルとして活躍しながらWebマガジン『s'eee』の編集長も務める鈴木えみさんと、ITジャーナリストの林信行さん。お二人による、雑誌とファッションとテクノロジーの未来についてのトークセッションが行われました。

「世界中のものが一気に見られる時代」の中、Instagramで画像を見ながら買い物選びに役立てているという鈴木さんに、Pinterestを「時間があるときに一番使う」という林さん。そんな日常でのITツールの使い方から、徐々にトークはファッション業界全体における話題へ。興味深かったのは、ファッション業界がB to C(business to consumer)からB to I(business to individual)へと変わってきているというお話でした。

林:
最近は、撮影した自分の顔をタブレットの中の3Dモデルに反映し、実際に試着している自分を画面で確認できるという「ヴァーチャルフィッテング」の技術の開発が進んでいます。さらに、3Dプリンターを使ってそれぞれの体型に合わせた服を作ろうという動きもあり、ECサイトで自分にぴったりのサイズの服がすぐオーダーできるというのも夢ではなくなるかもしれません。 これまでB to Cという言葉が言われていましたが、consumerといっても、皆一人ひとり好みも体型も違う。そういったところに合わせて、B to Iにファッションは変わっていくんじゃないかと言われています。

ますます多くの人が利用するようになっているECサイト。ただ、実際に購入する際に頭によぎるのは「本当に自分が着て似合うのか」「本当に自分のサイズに合うのか」という点。こういった課題も、テクノロジーの発達によって解決されようとしているんですね。

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モデル・Webマガジン『s'eee』編集長の鈴木えみさん(右)と、ITジャーナリストの林信行さん(左)

トークセッションでは「ファッション×テクノロジーでどんなものがあったらいいか?」というお題も。このお題に対しては様々なアイデアが溢れ出し、まるでその場でプチ・アイデアソンがスタートしたかのように...!

鈴木:
携帯を雑誌の写真にかざすと、そのアイテムのディテールがわかる物撮りの写真が出てきて、そのままその場でサクっと買えたら最高ですよね。アイテムは360度から見ることができて、モデルが着て動いているところも見れて、カラーバリエーションや在庫もわかって...!
林:
ヴァーチャルフィッティングを使って、別々のページにある服同士を組み合わせて画像上で試着。そのまま自分の体型にぴったりのサイズが買えると面白いですね。
鈴木:
たとえば、この洋服を素敵に着こなすには、ダイエットで自分の体型のココをこれくらい絞ればいいっていうのもわかったらいいかも(笑)。さらに、エクササイズまで提案してくれたり。
林:
さらに、雑誌の定期購読者へのサービスとしては、自分だけのB to Iの雑誌ですね。たとえば、「鈴木えみ」とタグをクリックすると、1年間の鈴木さんの写真や特集が全部出てきて、それを雑誌としてプリントアウト出来るようになっているとか。

そして私が一番印象に残っているのが、鈴木さんの雑誌とテクノロジー、それぞれがある中での役割・バランスについての考え方でした。

鈴木:
普段、モデルとして撮影をする中でも感じているんですが、最近雑誌の写真がどんどんリアルになっていっていると思うんです。でも、個人的にはもっと雑誌は空気感が伝わるような雰囲気重視の写真を使ったりして、感覚的な提案をしていってもいいんじゃないかと思うんです。

雑誌の役割は「感覚的な提案」...ではテクノロジーがファッションに果たす役割とは?この点をより深く探るべく、特別に鈴木さんに個別インタビューに応じていただきました。

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SENSORS Fashion Editor 坪井安奈

■雑誌を舞台に活躍してきた、鈴木えみさんの"テクノロジー"への考え方・活用術とは?

坪井:
最近雑誌がどんどんリアルになっていっているとのお話がありましたが、もう少し詳しくお話を伺えますか?
鈴木:
最近は「きっちりアイテムの形が見えないといけない」といった考え方がよくあって...。でも、ファッションって、リアルすぎると素敵なものじゃなくなっていってしまう気がするんです。ファッションに対して、もっと夢を抱いてほしいなという思いもあります。もちろん、アイテムの正確な情報を伝えることも重要なことですが、たとえばそれは携帯を写真にかざしたら商品のディテールがわかる、といったようにテクノロジーに任せて、雑誌は雑誌で提案の仕方を変えられたらと思っています。そうすれば、どちらも良いバランスになるのではないかなと。
坪井:
昔からずっとモデルとして雑誌業界の動きを見てこられて、変化の時期も経験してこられて...。だからこそ、鈴木さんのお考えや言葉からは雑誌への想いが伝わってきます。
鈴木:
雑誌がだんだん元気がなくなってきているとも言われていますが、今も紙で読むのは好きですね。
坪井:
そんな"紙"を愛する一方で、鈴木さんといえばInstagramのフォロワーは50万人を超えていて、ご自身でガールズマガジン『s'eee』の編集長もされていて、最新号『s'eee MAMA & BABY』はアプリでリリースされたりと、ITのイメージも強いですよね。
鈴木:
実はSNSを始めたのは遅めだったんです。専属の雑誌が休刊になったタイミングで、もっと自分の言葉で発信する場を作りたいと思ってブログを始めたのがきっかけでした。Instagramは『s'eee』立ち上げの時に一緒に始めましたね。
坪井:
そうだったんですね。『s'eee MAMA & BABY』はなぜ、アプリにされたのですか?
鈴木:
『s'eee MAMA & BABY』は子育て中や出産を控えているお母さんに向けて作ったので。私自身も今子育て中ですが、子供と接していると、まず両手が空くということがないので紙の雑誌を見るのは難しいんです。片手で見ることを考えてアプリにしました。でも今度『s'eee MAMA & BABY』の紙版もできる予定で、デジタル→紙という逆の流れになっていますね。
坪井:
まさに、ご自身の経験からの提案だったわけですね。鈴木さんは、ご自身の雑誌でアイデアを出す時はどのように工夫されていますか?
鈴木:
「こういう写真を撮りたい」と、絵から入ることが多いかもしれませんね。そういった時にもSNSやアプリを活用していて、最近はPinterestに自分の好きな写真を集めて、イメージソースの資料として見せたりしています。Pinterestを使う前はTumblrに自分の好きな写真を貯めてたときもありました。
坪井:
本当にITをフル活用されているんですね。今回のハッカソンの審査員に鈴木さんはぴったりだと改めて感じました。どんな部分を重視して審査しようと思われていますか?
鈴木:
「需要」ですね。やっぱり(需要があって)広まっていかないと意味がないと思うので。あとは「将来性」だとか...。どんなアイデアが出てくるのか本当に楽しみです。

アンダーズ 東京のプレパーティー会場では、鈴木さん、林さんのトークセッションの後は参加者によるアイデアソンがスタート。そして、皆のワクワクが高まったところで迎える翌日からのハッカソン本番。果たして、どんなアイデアが生まれ、どこまで開発・実装されるのか!?ハッカソン本番の様子とその結果を、お楽しみに。

取材・文:坪井安奈

タレント&エディター / SENSORS Fashion Editor
学生時代はNYでの出版社インターンを経験。新卒で小学館に入社後、ゲーム会社・グラニにてIT業界誌『グラスタ』編集長。編集者としての活躍のみならず、番組やイベントMC、映画やMV出演等のタレント活動を行う。SENSORSでは" Fashion Editor"として「ファッション×テクノロジー」の現場を取材。
Twitter:@anchuuuuuuu
Instagram:@tsuboianna

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