FinTechは日本の"現金主義"をいかに打ち崩すか--木村新司(AnyPay)× 佐藤航陽(メタップス)

2017.05.26 12:30

落合陽一×齋藤精一が『SENSORS』新MCとなってから初のサロン、テーマは「FinTechと日本の未来」。ゲストに迎えるのは木村新司氏(AnyPay)と佐藤航陽氏(メタップス)だ。個人間の支払いができる わりかんアプリ「paymo」とスマホで簡単にモノの売り買いができる決済サービスを提供する「AnyPay」、ビッグデータとAIの活用により新しい経済やお金のあり方の実現を目指すメタップス。日本のFinTechを牽引する両社代表に「FinTechと日本の未来」について語っていただいた。4週にわたってお届けする第1弾記事。

まず『SENSORS』MCの二人は、「FinTech」をどのように捉えているのだろうか。 

落合:
FinTechがファイナンスとテクノロジーの掛け合わせであれば、ATMも立派なFinTechです。「金融技術」という言葉自体は2000年代前半から使われるようになり、それが「フィンテック(FinTech)」と新たな呼称を与えられたことで近年再度注目されるようになった状況と理解しています。
齋藤:
最近注目される「AI」や「IoT」と同様、「FinTech」も定義は曖昧でいいような気がしています。ATMに加え、SuicaやPOSレジ端末のように以前から存在するものもFinTechといえばFinTechと言えるかと思います。僕は分かりやすく、「お金にまつわる、もしくは経済にまつわる技術を総称して"FinTech"」と自分のなかでは定義しています。いずれにしても、定義がおぼろげなビッグワードによってスタートアップを含めた多くの企業が参入しやすくなったのではないでしょうか。

■日本人の"現金主義"という文化をいかに打ち崩していくか

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--まずは自己紹介も兼ねて、お二方がどのような形でFinTechに携わっているかお教えいただけますか?

木村:
AnyPay(エニーペイ)の木村新司と申します。AnyPayではアプリを介し、個人間で支払いができるわりかんアプリ「paymo (ペイモ)」を提供しています。もう一つの「AnyPay」はスマホで簡単にモノの売り買いができるオンライン決済サービスです。
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(左から)木村新司氏(AnyPay代表取締役)、佐藤航陽氏(metaps代表取締役社長)

佐藤:
メタップスの佐藤と申します。インターネット上でモノを売ったり、お金を送るといった今までの決済はハードルが高いものでした。弊社ではリンク一つで個人間の決済や支払いができる仕組みを提供しています。

--それでは早速一つ目のテーマ「現在のFinTech事情」についてお話していきたいと思います。落合さん、齋藤さんからゲストのお二方に聞いてみたいことはありますか?

齋藤:
日本人はやはり現金主義ですよね。たとえば、うちの親も「カードはなんとなく怖いから使いたくない」と言っています。日本でももしかすると、BtoB領域でFinTechが進んでいるかもしれませんが、BtoCではまだまだ進んでいない印象を持っています。お二方に聞きたいのは、現在の決済サービスに行き着くまでにあった参入障壁を聞いてみたいです。もしくは日本人の現金主義という文化をいかに打ち崩していくか。
木村:
「クレジットカードだとお金を使いすぎてしまうかもしれない」という恐れが日本人の現金主義の背景にあるかと思います。たしかにクレジットカードの場合は請求があとから来るため、払えなくなるといった事態も起こります。しかし、デビットカードのように銀行口座から直接払えば、そうした事態は起こらないはずです。海外ではデビットで払う文化が根付いているので、日本でも、スマホが銀行口座と連動し、そこから引き落とされるようになれば現金主義も少しづつ変わっていくのではないかと思っています。
佐藤:
日本の場合は既存の金融システムが普及したあとに、新しいものを作ろうとしているので、普及が遅くなっているのではないかと思います。対して中国は何もないところからゼロベースで新しい金融サービスを作っているので、普及が早いんですよね。歴史があるが故に動けなくなっているのが一つ目の理由。

もう一つは単純にスタートアップにとってのハードルが高い領域と言えます。私たちも決済に関しては参入までに1年ほど準備をしました。資金や法律を全てクリアしなければいけないので、アプリや広告サービスを作るのとはハードルの高さが全く異なります。

■"物質から情報"へと変わるお金のあり方

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(左から)齋藤精一氏(ライゾマティクス代表取締役社長/クリエイティブディレクター)、落合陽一氏(筑波大学学長補佐・助教/メディアアーティスト)

落合:
僕は小さい頃、「お金は大切なものだから財布に入れましょう」と習いました。でも僕の生活スタイルは、現金をとりあえず畳んで、クリップに挟んで入れておくのが基本なんです。僕のお金に対する印象はFacebookの友達の数とか、身長や体重と同じパラメーターの一つ。僕のなかではお金を物質的なものとして捉えていないのですが、お二人はどのような見方でお金を見ていますか?
木村:
たしかにお金は物質から情報へ変わりつつあると思います。メルカリが流行しているのをみても、遠くの人と普通にお金やモノのやりとりをするようになってきています。コミュニケーションにおけるテクノロジーは発展しているのに、お金のテクノロジーは未発展です。たとえば、お気に入りのYouTuberにキャッシュをその場で渡すことはできません。コミュニケーションが情報になりつつあるのに合わせ、お金もより情報化していく必要があると考えていますね。
佐藤:
私もお金はデータでしかないと思います。お金を処理しているシステムからすれば、ただの数字列でしかないわけですから。ネットが普及したことで、ようやくお金もパラメーターでしかないことが普及しつつあるとは思います。

お金に対する定義は人それぞれですが、私が面白いと思ったのはお金を「時間の塊」とする見方。たとえば、時間さえかければ身の回りにあるモノも作れるのではないかと思います。あくまでも時間を短縮するためにお金を払っているので、お金=時間の塊という見立ては正しいと個人的には思いますね。
落合:
マルクス的には時間の塊だけど、ビットコイン的には電力の塊。その変換は超面白いですね。

■テクノロジーとお金が融合した、真のFinTech時代までにあと5年

--世界と対比した日本のFinTech状況についてもお伺いできますか?

木村:
たしかに先ほども出たように、ATMはとても普及しています。しかし、「個人の手に乗った情報」にはまだまだなっていませんし、世界と比較すると全く普及していないのが現状だと思います。
佐藤:
やはりネット以前の既存システムがあまりにも普及しすぎていたこと、それがそこそこ便利だったことで、新しいものを作るモチベーションが湧きずらかったのはあるでしょうね。便利が故に、「SuicaがあればApple Payなくてもいいか」と思う人もいるでしょうし。
落合:
日本人にはルーズな人が少ないというのも一因かもしれません。ちょっくら騙くらかしてネコババするような人っていませんよね。逆にそれがある場合は、スマホがあった方が正確だということに気づきやすいのですが...。
佐藤:
治安もいいですし、信用力も違います。日本では銀行口座を持てるのが当たり前ですが、世界的には持てないのが当たり前。

--冒頭でも話題になった「現金主義」はどれくらいのタイムスパンで変わっていきそうですか?

木村:
私たちは個人間における支払いの仕組みを作っていますが、こうしたサービスはコミュニケーションと一緒で、バイラルで広がっていきます。みなさんのスマホの中にアプリが入り、そこにお金も入る。そして、お店の方でもそれで払えるようになる。状況が変わるまでにあと3〜4年かかるのではないかと思います。
佐藤:
私も同じで、5年ほどではないかとみています。先日、中国のメンバーが「財布を落としたのに1週間気づかなかった」と面白いことを言っていました。3年ほど前までは財布がなければ生きていけなかったのに、今ではスマホですべて完結するので、財布が失くなっても気づかないというんですね。

翌週公開予定の「"資本主義のバグ"をFinTech技術で解消する」ではテクノロジーと融合することによって見えるようになるお金、仮想通貨の法律面ではリードしてる日本の状況、「"資本主義のバグ"を解消するような新しいシステムを作りたかった」というFinTechに参入した訳を語る。 

【FinTechと日本の未来】
FinTechは日本の"現金主義"をいかに打ち崩すか(5/26 公開)
"資本主義のバグ"をFinTech技術で解消する(6/2 公開)
FinTechの未来「経済は選べるようになる」(6/9 公開)
お金とコミュニケーション、経済に"エモーション"が復活する(6/16 公開)

構成:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。リクルートホールディングスを経て、独立。複数媒体で編集・ライティング、構成、企画、メディアプロデュースなど。『WHITE MEDIA』企画顧問。『木曜解放区』レギュラー出演中。夢は馬主になることです。

Twitter:@_ryh
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