"資本主義のバグ"をFinTech技術で解消する--木村新司(AnyPay)× 佐藤航陽(メタップス)

2017.06.02 13:24

落合陽一×齋藤精一が『SENSORS』新MCとなってから初のサロン、テーマは「FinTechと日本の未来」。ゲストに迎えるのは木村新司氏(AnyPay)と佐藤航陽氏(メタップス)だ。個人間の支払いができるわりかんアプリ「paymo」とスマホで簡単にモノの売り買いができる決済サービスを提供するAnyPay、ビッグデータとAIの活用により新しい経済やお金のあり方の実現を目指しメタップス。日本のFinTechを牽引する両社代表に「FinTechと日本の未来」について語っていただいた。4週にわたってお届けする第2弾記事。

前回記事「FinTechは日本の"現金主義"をいかに打ち崩すか」 

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■テクノロジーと融合することで、見えるようになるお金

落合:
財布を落とすことに関しては、日本一の自信があります。月1くらいで落とすので(笑)そこで僕が一番最初に入れるのをやめたのが現金です。次に入れるのをやめたのがキャッシュカード。キャッシュカードは紛失した際の再発行がとても面倒くさい。逆にクレジットカードは超簡単に再発行できます。今はすべてApple Payに移行させているので、財布を落としても損失が0です。もしかしたら、財布をよく落とす人から順に現金主義じゃなくなっていくのかもしれませんね。
斎藤:
僕は一時期アメリカに留学をしていたので、そのときからクレジットカードで決済するのが当たり前の習慣が身についています。以前どなたかに聞いて面白かったのが、日本のGDPではトラッキングできない物々交換がかなり多くあるそうなんです。たとえば、うちの隣の息子さんが幼稚園のみかん狩りで取ってきたみかんを、隣の農家の人に渡す。すると、みかんが大根5本になって返ってくる。見えないところで行われている経済活動が多くあるはずなんです。
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落合陽一氏(筑波大学学長補佐・助教/メディアアーティスト)

落合:
とくにローカルコミュニティでは普通に行われていますよね。最近うちのラボで研究し始めたのは、モノの価格がどのように決まるのかを機械学習させることです。たとえば、ヤフオクさんは物品に対して今の落札相場が出てきます。モノをみただけで大体の価格を当てるというのは人間が持っている基本的な機能なのですが、それすらまだコンピュータでは解かれていない問題ではある。
佐藤:
一方で、簡単には価格を決められないモノもありますよね。たとえば、アイドルの色紙。ある人にとっては0円の価値でも、ある人にとっては100万円の価値があるかもしれない。先ほどYouTuberへの投げ銭の話もありましたが、投げ銭としていくらが適切なのかは人によってかなり変わるはずです。相対的な価値がネット上に溢れてきているので、そもそも高いのか安いのかの感覚もよく分からなくなっています。
木村:
あとは、現金の渡し合いも実は全くトラッキングできていません。そのため、日本においてどれくらいのお金が本当に動いているかは誰にも分からないんです。中国なんかの場合だと、テクノロジーとお金が融合し情報化することで、見えないものまで見えるようになってきています。だからこそ、お金の貸し借りに関する新しいサービスもどんどん出てくると思います。

■仮想通貨、法律面で日本は世界をリードしている

--先ほど3〜5年のスパンで現金主義が変わりそうだという議論がありました。日本においてFinTechを推進する上で、具体的な取り組みや打開策についてはどのように考えられていますか?

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佐藤航陽氏(metaps代表取締役社長)

佐藤:
個人的に象徴的だと思ったのは、仮想通貨の法律です。海外ではまだグレーで何も取り決めがないのに対し、日本は先駆けて法律を黒から白にしました。仮想通貨、ブロックチェーンに関してはアジア、特に日本が今後牽引していくのではないかとみています。
木村:
ただ、問題になるのは日本に個人IDがほとんどないことだと思います。悪い目的でお金の送金をし合っている人を止めるためには、チェックの段階でIDが必要になるんです。アメリカをはじめ海外には国民IDのようなものがありますが、それが日本ではないのが障壁になっています。
斎藤:
マイナンバーカードではダメですか?
木村:
全然できるとは思うのですが、皆さんあまりちゃんとマイナンバーカードを使っていないですよね。

--お二方が開発されているサービスについても詳しくお聞きできますでしょうか?

木村:
「paymo」ではクレジットカードをスマホに登録しておくことで、アプリを介し、ユーザー間で簡単に割り勘ができます。飲み会が終わり、家に帰ったあとに「5,000円払いますよ」といったことができるサービスです。
佐藤:
私の方では、決済の購買行動のデータにどんな価値があるのかを突き詰めた新しい事業「LENDIA」を立ち上げています。最終的には行動購買のデータから、その人に対していくらお金が貸せるのか、もしくは投資ができるのかというところまで可視化したいと思っています。最終的には土地や家を担保がなくてもデータで担保することで、お金が貸せたり投資ができたりするところまで進めたいです。

■"資本主義のバグ"を解消するような新しいシステムを作りたかった

--そもそもお二方はどうしてFinTech業界に参入しようと思われたのですか?

木村:
スマートフォンで何でもできる社会になりつつあるのに、どうして小銭を出してお金を払わなければいけないのか。お金に対する不便さが日々高まっていたのがあります。たとえば飲み会に行ったときに、「今払えないから、あとで銀行振込します」だとかなり面倒くさい。こうした事態を解消し、便利にしたいという、自分が欲しいものを作っている感じです。
佐藤:
私はサービスというより、資本主義について昔から考えていました。「FinTech」という言葉が出てきたので助かりましたが、もともとは"資本主義のバグ"を解消するような新しいシステムが作れるのではないかと思っていたんです。2010年頃、スマホや仮想通貨といったテクノロジーを組み合わせることで、自分がもともと持っていた思想に近いものが実現できるのではないかと考えていました。それがようやく時代と噛み合ったと言えるかもしれません。
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齋藤精一氏(ライゾマティクス代表取締役社長/クリエイティブディレクター)

斎藤:
僕が日本でやる意味があると思うのは、ポイントサービスと現金の融合です。日本人はポイントを集めるのが大好きですよね。金融庁さんでもポイントと現金は区別されていますが、それが混ざり合うことで日本人のなかで変わるものがあるのではないでしょうか。

あとはデータをマーケティングに活用していくこと。たとえば、「新潟のこの街にこの種類の人が多いから、ここにもっと投資しよう」といったことが見えてくるはずです。同じで0田ベースなのかプロトコルを使うことで、データをファイナンス業界に限定するのではなく、自動車や不動産の業界に生かしていく。そうしたことも可能ではないかと思いました。
落合:
僕が木村さんにすごく期待しているのは、クレジットカードが使えない場所での決済にまつわる不便さを解消してもらうことです。たとえば、屋台や激安の飲食店ではカードが使えません。なぜかといえば、当座の現金がないとビジネスが成り立たないから。ただ、それも明らかに一瞬でお金を渡すことができれば解決出来る問題です。そこを電子化できれば、縁日でわざわざポケットから現金を取り出すといったこともなくなると思います。
木村:
中国は屋台にQRコードが貼ってあったりするので、その場で簡単に決済ができますよね。面白いのはホームレスの人までもQRコードを張っていること。日本や他の国では、「この中にお金を入れてください」と器を持っていることが多いですが、中国ではそれがQRコードになっている。こうした風景の決定的な違いに、日本と中国の差を感じますね。

翌週公開予定の「FinTechの未来『経済は選べるようになる』」では、経済や通貨を選びながら自己の価値を保存していくであろうとの予見がなされる。また、中国のFinTech事情にも触れながら、個人と国家にもたらす変容を議論。国家と企業の境界線が消失しつつあるなか、理想の経済システムを構想する。 

【FinTechと日本の未来】
FinTechは日本の"現金主義"をいかに打ち崩すか(5/26 公開)
"資本主義のバグ"をFinTech技術で解消する(6/2 公開)
FinTechの未来「経済は選べるようになる」(6/9 公開)
お金とコミュニケーション、経済に"エモーション"が復活する(6/16 公開)

取材・文:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。リクルートホールディングスを経て、独立。複数媒体で編集・ライティング、構成、企画、メディアプロデュースなど。『WHITE MEDIA』企画顧問。『木曜解放区』レギュラー出演中。夢は馬主になることです。

Twitter:@_ryh
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