FinTechの未来「経済は選べるようになる」--木村新司(AnyPay)× 佐藤航陽(メタップス)

2017.06.09 12:00

落合陽一×齋藤精一が『SENSORS』新MCとなってから初のサロン、テーマは「FinTechと日本の未来」。ゲストに迎えるのは木村新司氏(AnyPay)と佐藤航陽氏(メタップス)だ。個人間の支払いができるわりかんアプリ「paymo」とスマホで簡単にモノの売り買いができる決済サービスを提供するAnyPay、ビッグデータとAIの活用により新しい経済やお金のあり方の実現を目指しメタップス。日本のFinTechを牽引する両社代表に「FinTechと日本の未来」について語っていただいた。4週にわたってお届けする第3弾記事。

前回記事「"資本主義のバグ"をFinTech技術で解消する」 

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■"経済"は選べるようになる

--お二方が目指すビジョンとFinTechによって実際の生活がどのように変わっていくのかをお伺いしたいです。

木村:
やはりスマホでなんでも払えるような世界を作りたいです。外に遊びに行くときに、財布を持っていく必要がない状態ですね。現状、銀行のネットワークによってお金が払える仕組みが築かれています。対して、個人が持つ現金のネットワークはできていません。スマホとスマホを繋げることでネットワークを作れれば、「新しいお金」が生まれるのではないかと考えています。銀行の外側にあるお金をデジタル化することで、新たな通貨が広がっていくのではないでしょうか。
落合:
ブロックチェーン技術によってセキュアにお金を発行できるようになりつつあるという意味では、安全な社会が近づいていますよね。現金を持っていると撃ち殺されるリスクがありますが、それがパラメーターの一部になると殺そうとは思わないじゃないですか。「身長が高いから、殺してやろう」と思わないのと一緒です。
佐藤:
落合さんの話にも近いですが、最終的に経済は選べるものになっていくと思っています。私たちは結婚相手や住む場所を自由に選ぶことができますよね。100年、200年、1000年前にはこうした自由はありませんでした。おそらく今後10〜20年、どの経済システムのどの通貨で自分の価値を保存していくのかを選べるようになっていくのではないでしょうか。個人の嗜好に合わせて選べる経済を作りたいです。
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(右から)落合陽一氏(筑波大学学長補佐・助教/メディアアーティスト)、齋藤精一氏(ライゾマティクス代表取締役社長/クリエイティブディレクター)

斎藤:
以前、ゲームデザイナーの水口哲也さんと「感謝経済」の話をしたことがあります。お金のやり取りや物々交換だけではなく、サービスを受けたときに10〜100円単位で感謝の気持ちを表すことのできる仕組みは簡単にできるはずなんです。こうした新しいビジネスは今後ボコボコ出てくるのではないかと思います。テクノロジーの利点として、遠くの誰かのモノを買ったり、サービスを受けることができるようになったので1人が100万円を払うのではなく、100万人が1円を払うようなビジネスが生まれてきてもいいはずです。
佐藤:
通貨の設定自体もバリエーションがありそうですよね。今の基本通貨は増えていくのが一般的ですが、価値が時間とともに減っていく通貨があってもいい。もしかすると、通貨に賞味期限のようなものがあってもいいかもしれない。
落合:
コミットメントが明らかなところにお金を払える仕組みはすごくいいですよね。社内のチャットツールを導入する利点は、働いている社員と働いていない社員を見分けられることだと思います。仮想通貨を導入する利点の一つも、どこが淀んでいるかを一発で突き止められることです。その観点からすれば、価値が減損していく、いわば"腐るお金"を特定し、それを失くしていくような施策が打てるようになるはずです。

■FinTechが個人の生活、そして国家にもたらす変容

--つづいて「FinTechの発展と日本の未来」というテーマに入っていきたいと思います。キャッシュレス社会において、消費者の生活はどのように変わるのか、改めてお伺いできますでしょうか?

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木村新司氏(AnyPay代表取締役)

木村:
みんなスマホをずっと触っていますよね。たとえば、お金を貸すという行為は誰かの生活行動に対してお金を貸しているとも言えます。面白い話では、スマホユーザーが何をやっているのかというデータを見た上で、お金を貸す貸さないの判断ができるようになりつつあることです。これが一般化すれば、今よりも簡単にお金が借りれるようになり、今まで動いていなかったお金が動きだす。すると次のビジネスにトライしたり、何かを買ったりすることが容易にできるようになるのではないかと思っています。
佐藤:
私はもうちょっとスコア化されるのではないかと思っています。中国では決済情報から信用度がスコアとして出ます。スマホのなかにお金の流れが凝縮されることで、結果的に自分の与信スコアが分かるようになる。人間はそのスコアを上げることに努力するようになるのではないでしょうか。つまり、お金ではなく与信を見るだけで良くなるということです。
木村:
個人の生活のみならず、日本という国全体でも変化が起こるでしょう。マイナス金利や量的緩和によってお金を外に押し出そうとしていますが、誰かと誰かがつながらない限りは取引になりません。逆に、どこで現金が動いているのかが可視化されると、どの人に対して量的緩和をすればいいのかが分かるようになります。お金やコネクションがないためにモノの売買をしていない人にお金を渡すことで、新しい動きが出て、次の経済が生まれます。
佐藤:
地方分権にとっては相当いいんですよね。
落合:
ふるさと納税にしても、もっともっと簡単になっていく。納税という大きな単位からより仕組みをバラバラにするべきです。paymoで払えるならなんら問題はないわけです。
木村:
寄付はしやすくなるでしょうね。

■FinTechの先にある理想の経済システムとは

--佐藤さんは日本全体の変化についてどのようにお考えですか?

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(右)佐藤航陽氏(metaps代表取締役社長)

佐藤:
日本というよりは国家と企業の境界線みたいなものが消失しつつあると感じています。FinTechのイノベーションによって誰でも金融インフラを持てるし、自分で通貨を発行できるとすれば、自分で経済システムを持てるようになってきているということです。楽天やリクルートが自分たちの会社でポイントを発行し、経済システムを築くのが当たり前になりつつあります。経済はもともと政府の大臣が考えていましたが、今では企業のCEOや担当者が自分たちの経済システムを構築しつつあるということです。状況は混沌としつつありますが、可能性も広がりつつあると思いますね。
落合:
あらためて「法人とはなにか?」を考えなければいけない局面に差し掛かっていると思います。法人にとって資本金はパラメーターの一つでしかない。ある意味で人間が法人に近づいてきているし、法人も物質的な人間に近づいてきていると言える。

--佐藤さんが考える理想の経済システムはどのようなものでしょうか?

佐藤:
要素は5つあります。まず、報酬(インセンティブ)が存在していること。2つ目は数値がリアルタイムに変動すること。3つ目は不確実性があること。つまり、実力やロジックだけではなく運の要素があることです。これがあることで一発逆転可能になるので。4つ目は秩序(ヒエラルキー)。最後はコミュニケーションで、ちゃんとみんなが喋れることが要素としてあります。

ただ、問題になるのが人間は飽きてしまうことです。お金にしてもパラメーターが一定まで達するとインフレを起こします。なので、一定期間で違うシステムに移行してあげることをぐるぐる回す必要でしょう。抽象的な話になりますが、それが国家なのか企業なのか、それともサービスなのかをいろいろな要素を当てはめていくと、理想的な経済システムが見えてくるの出はないかと思います。
斎藤:
最近、いろいろなところで小学校のときに読む『スイミー』という絵本の話をします。個が集まり大きな魚を形成し、離散をする『スイミー』は量子論的なシステムと捉えることができます。インターネットテクノロジーも同様に、塊だったものが離散するのが一番強かったところのはずです。『スイミー』のようなクォンタム(量子)のようになれば、経済が個人化していくイメージも掴みやすいかもしれません。

翌週公開予定の「お金とコミュニケーション、経済に"エモーション"が復活する」では、人口統計的に東洋・インドが中心になる21世紀に経済的価値はいかに変化するのか落合氏から疑問が投げかけられる。もともとコミュニケーションとお金は不可分な関係であったはずだという木村・佐藤両氏。FinTechは人間の感情面にいかなる影響を及ぼすのか。斎藤氏は経済にエモーションが復活するのではないかと指摘した。 

【FinTechと日本の未来】
FinTechは日本の"現金主義"をいかに打ち崩すか(5/26 公開)
"資本主義のバグ"をFinTech技術で解消する(6/2 公開)
FinTechの未来「経済は選べるようになる」(6/9 公開)
お金とコミュニケーション、経済に"エモーション"が復活する(6/16 公開)

取材・文:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。リクルートホールディングスを経て、独立。複数媒体で編集・ライティング、構成、企画、メディアプロデュースなど。『WHITE MEDIA』企画顧問。『木曜解放区』レギュラー出演中。夢は馬主になることです。

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