「J-POPを乗っ取りたい」水曜日のカンパネラ・コムアイから湧き出る生命力の源とは

2016.01.05 10:00

「J-POPを乗っ取りたい。」そんな一声から始まった対談企画。そのどこにもカテゴライズできない楽曲と"鹿の解体"などの刺激的なパフォーマンスで、多くのファンを魅了する『水曜日のカンパネラ』とそのセンターに立つボーカル・コムアイ。そんなコムアイがテーマソング『西玉夫』を提供するイベント「FLOWERS BY NAKED」の開催を記念し、Web編集者の塩谷舞氏をモデレーターに迎え、「FLOWERS BY NAKED」の仕掛人であるNAKED・村松亮太郎氏とコムアイによる対談が行われた。

コムアイが主演・歌唱をつとめる『水曜日のカンパネラ』は、ケンモチヒデフミ・Dir.Fの3人により、2012年に結成されたHIPHOPユニット。その楽曲の独特な世界観や、ライブでのコムアイによる"鹿の解体"などの刺激的なパフォーマンスが、「やみつきになる」「忘れられない」とYouTube上やライブ会場で大きな話題を呼んでいる。昨年11月に新作『ジパング』を発売。

水曜日のカンパネラ・コムアイ

対談相手は、イベント「FLOWERS BY NAKED」の仕掛け人でもあるクリエイティブディレクター・村松亮太郎氏。東京駅 丸の内駅舎を利用したプロジェクションマッピングなど、数々のデジタルアート作品で世界的注目を集める株式会社ネイキッドの代表をつとめる。その他にも映画や広告・ミュージックビデオなどジャンルを問わず活躍している(参考:NAKEDの制作実績)。

■メインストリームとアウトローの役割が入れ替わった2010年代の表現

塩谷:
コムアイさんと村松さんの共通点として、"肩書き"が一つに定まらないという点がある気がします。
コムアイ:
そうかも!楽曲のジャンルもいつも方向性バラバラですね。飽くまでもJ-POPをやっているつもりですし、最終的にはJ-POPの中心を乗っ取れればいいなって思っています。HIPHOPでもないし、HOUSEだけでもないし、テクノも入っているときもありますし......。記者やライターの皆さんにも、毎回なんて呼ばれるか楽しみにしているんですよ。
村松:
え、J-POPを乗っ取るって具体的にどういうこと?
コムアイ:
活動を始めた当初はアングラの領域で活動していたいと思っていたんですけど、ここ数年変わってきました。というのも山田智和さんというミュージックビデオの監督と話していて思ったんですけど、カッコイイ映像ってVideoで探せばいくらでもあるのに、それをCMという土壌でやっている人ってあまりいないんですよね。同じ映像でも、ミュージックビデオかCMかだけで全然価値が変わっていて。アウトローなものをメインストリームに持っていくときに生む大きな価値を知ってから、それをやりたいと思うようになったんです。
村松:
僕らが制作を始めた90年代はメインストリーム側の影響力が強いからこそ、サブカルチャーは価値を持っていた。けど、今はメインストリーム、つまりど真ん中からそれたアウトローな存在が「マス」になってきているから、その中に埋もれないようにしないといけないよね。
塩谷:
確かに、テレビに少し出ているミュージシャンよりも、ニコ動の生主やYouTuberの方がフォロワーが多いですよね。どっちがメインストリームかわからなくなってきちゃった。
話が戻りますが、水曜日のカンパネラはジャンル分けできないし、ネイキッドも映像会社だとか、広告会社、アート、どれにも収まらない。そういう、定義されないからこその悩みはありますか?東京にはいろんなジャンルに区切られた "島"が点在する中で、孤独を感じたりしませんか?
コムアイ:
絶対こっちのほうが楽です。高校生の時から群れるのが好きではなくて。そのうえ、島に入ると「島のルール」を知って、それに乗るか乗らないか決めないといけないですし。
塩谷:
最近Instagramなどのインフルエンサーと呼ばれる子たちを見ていると、個人での発信というよりも、グループの塊として影響力を強めていく印象が強いように思います。まるで絵本『スイミー』みたいに、みんなで大きな魚になって、力をつけていくんです。そういった同世代、近い感覚を持った人たちとの「つながり欲求」とかもないですか?
村松:
ないと思っていたんだけど、そうでもないらしくて。自分は様々な方向性の映画を撮ってるつもりだったんだけど、スタッフに指摘された共通のテーマが「一体感欲求」でした。創ることを通して「世界と繋がりたい!」と思っているらしく、自己と社会の統合を図ろうとしているのかもしれない。

【左から】水曜日のカンパネラ・コムアイ、株式会社ネイキッド代表・村松亮太郎氏

コムアイ:
私は......ちょっとあつかましいんですけど、つながりたいというより「出会う前から、もうつながってるよ!」って感覚ですね。音楽を始めるずっと前から、なんとなく「私は皆に認めてもらえる」って根拠のない自信があったんです。
村松:
君、スゴいこと言いますね。さすがはJ-POPを乗っ取りたいだけあるわ(笑)。

■"鹿の解体"がもたらした楽曲から湧き出る「生命力」

実際にその楽曲だけでなく、ライブ中にパフォーマンスとして行う「鹿の解体ショー」が大きな話題を集めた「水曜日のカンパネラ」、そしてその仕掛人であるボーカル・コムアイ。

コムアイがなぜ鹿の解体にこだわるのか、そしてそれが彼女の音楽性にいかに影響力をもたらしているのか。

塩谷:
バンドをやる前はどんなことをしていたんですか?
コムアイ:
大学に通う傍、鹿の解体に興味があって、師匠の元で解体をやっていました。狩猟する人がいて、鹿を食べたい人がいる。でも、鹿を解体して調理する過程はけっこう見過ごされていたので、「私がやらなきゃ広めなきゃ!」って必要性を強く感じたんです。そこで鹿の解体をパフォーマンスとして多くの人に見せて、興味を持ってもらいたかった。
塩谷:
解体師からボーカルとは、振れ幅が大きいですね。
コムアイ:
最初二年間くらい、自分が歌を歌うことにピンとこなかったんですけどね。夜遊びをするようになって、自分がいいなーと思った音楽を取り入れるすべを身に付けてからは楽しくなってきましたね。
塩谷:
『ラー』のMVなんかでは、コムアイさんの演技力すごっ!と思わされました。表情や仕草の堂々とした感じがもう、大女優かと。
コムアイ:
うーん、MVもセリフはないですし、芝居とは違うので、役という絶対的ルールがない。その分気楽ですね。とにかく、映像と映っている人が強ければいいんです。生命力がワーッと出ていたらいいんですよ。
塩谷:
「強さ」や「生命力」は、村松さんもよく仰っていますよね。
村松:
そうなんですよね。説明しなくても伝わる圧倒的な強さを作りたい。コムアイさんの表現において、「強さ」って基準は昔から持っているもの?

水曜日のカンパネラ・コムアイ

コムアイ:
そうですね。「生命力を讃えたい」という考えがあります。今、ちょっと忙しくなってなかなか鹿の解体が出来ていないんですけど、昨年、1日時間があったので海釣りに行ったんですよ。すると、海面から魚がバタバタ出て来るときの鱗の光り方がもう。キラキラしてて、すっごく綺麗で。そういう目の前にある強いエネルギーを食べて、体に取り込めることが純粋に嬉しくて、「よっしゃあ!」って感じでしたね(笑)。

■サブカルチャーという枠には収まりたくない、コムアイの挑戦

「生命のエネルギーを体に取り込めることが嬉しい」と語るコムアイが、村松がプロデュースする体験型庭園「FLOWERS BY NAKED」とコラボレーションする。昨年11月にリリースされたニューアルバム『ジパング』に収録された『西玉夫』という楽曲は、テクノロジーを駆使した花の庭園でどのように融合するのだろうか。

水曜日のカンパネラ『西玉夫』
(https://www.youtube.com/watch?v=1546Z08uTUk)
塩谷:
「FLOWERS BY NAKED」のテーマソングになった『西玉夫』はどんな曲ですか?
コムアイ:
今回のアルバムをまとめた歌なんです。アルバムを「ユーラシア大陸の色んな所にそれぞれ曲が散らばっている」という設定にして、タイトルは「ジパング」にしました。昔日本は東の果てにある、黄金の国って言われていましたよね。「金の茶室があるってことは、全部金で出来てるんじゃないか」なんて妄想が広がっていて、当時妄想されていたジパングを、曲にしたかったんです。けどイメージが壮大すぎるので、それを表現するのに「大河」の力を借りました。川の周りで文明が栄えて、いろんな人の「生死」が繰り返されている。東京に辿り着いて、隅田川や多摩川に辿り着くんです。それで曲名にタマちゃんを当てました。あ、曲名の『西玉夫』はタマちゃんの住民票での名前なんです。
塩谷:
壮大な曲名に見えましたが、タマちゃんだとは......(笑)。そして今回は、日頃のライブハウス会場よりも、グッとミセスの方々の来場が増えそうですよね。この点はどう考えていますか?
コムアイ:
嬉しいですよ!小さい頃の遊び場がデパートだったり、元々そういうコンサバティブなカルチャーの中で育ったので。私自身もサブカルチャーって枠に留まりたくないし、どんな反応があるのかすっごく楽しみです。楽曲のテイストも、自由に広げていきたいと思っていますし。

【左から】水曜日のカンパネラ・コムアイ、株式会社ネイキッド代表・村松亮太郎氏、モデレーターのWeb編集者・塩谷舞氏

塩谷:
毎回、歌詞はどうやって決めているんですか?
コムアイ:
水曜日のカンパネラの曲名は、必ず人物の名前になっています。だからメンバー三人の中で曲を作るときにはまず、「次、誰にしようか?」っていうのが合言葉になっていて。最初に歌詞の中の人物を決めて、その人のキャラクター性を上げていって、そこからちょっとズレた部分を作っていって......。例えば『千利休』であれば「わび・さび」だけじゃなくて、「ギラギラした飲料会社の起業家」をイメージに入れたり。そのへんはケンモチ(ヒデフミ・水曜日のカンパネラのメンバー)さんの仕事です。

鹿の解体にも、歌の世界にも「生命力」を強く感じながら、その素晴らしさを活き活きと語るコムアイ。流行的なだけではなくて、脈々と流れる生命力が多くのリスナーを惹き付ける肝になっているのだろう。

今回取り上げた『西玉夫』がテーマソングとなり、村松氏が演出を手掛けるデジタルアートが創り出す体験型庭園空間を楽しめるイベント「FLOWERS BY NAKED」は2016年1月8日(金)から2月11日(木・祝)まで、日本橋三井ホールにて開催される。

次回の記事では、村松氏がデジタルで表現する「生命力」を解剖する。それぞれのクリエイターの表現が交差する先には、どんな体験が待っているのだろうか。


文:長濵幸大

フリーライター
東京大学院学際情報学府修士課程在籍。研究テーマは「大戦直後の日本の洋裁文化」。最近興味があるのは仏文学と植物
Twitter:@nghmkt

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